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どっちを撤回するんだ?@シンガポール・エアショー
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2月10日土曜日。
チャンギ空港の到着ロビーは大勢の人で賑わっているが、直樹の目は瞬時に近間を見つけ出した。
この人はいつもきらきら光って見える。
近間の方もすぐに直樹に気づき、手を挙げた。
「出張おつかれ。KL、どうだった?」
「出迎え、ありがとうございます。3日間ずっと雨でしたよ」
「それは災難だったな。荷物持とうか?」
「軽いし、1個だけなんで大丈夫です」
「じゃあ、その紙袋だけ持つよ。朝飯食った?」
「機内食が出ました。それに、昨夜3時まで接待だったんで、あんまり腹減ってないです」
「おまえの飛行機って朝8時発だったよな」
飛行時間は2時間だが、時差があるので、今は9時だ。
「はい」
「商社マンってすげえな」
すごいと言いつつ、半ば呆れた表情である。直樹はコメントはせずに肩をすくめた。
テイクアウトのコーヒーを買って、紺のBMWに乗り込んだ。
近間ほどBMWが似合う男もそうそういないのではないか。ロックを解除する仕草すら様になる。
「近間さん、カッコいいです」
「おまえ、やっぱ疲れてるだろ」
「疲れてないけど、近間さん不足です」
それを聞くと、近間はシートベルトを外して顔を寄せて来た。ちゅっと軽いキスをされる。
「応急処置」
にこっと笑うと、再びシートベルトをして、車を発進させた。
直樹は思わず指先を唇にあて、感触を反芻する。反則だ。
「直樹、本当に疲れてないか?」
「ないですよ」
「じゃあ、ちょっと付き合ってほしいとこがあるんだけど」
「いいですよ。どこに?」
「すぐ近く。男の子がみんな好きな場所」
近間がいたずらっぽく笑った。
到着したのは、空港からほど近いチャンギ・エキシビジョン・センターだった。
入口の横断幕には「Welcome to Singapore Airshow 2018」と赤い文字が躍っている。
「エアショーって、近間さん、今週毎日来てたんじゃないですか?」
防衛大臣一行がこのエアショーを視察するというので、近間は睡眠もトレーニングも削って対応に忙殺されていたはずだ。
「うん。ビジネス関係者しか入れないブース展示は昨日で終わってるけど、今日明日は一般開放日だから。チケットを買えば、誰でも入って、航空機やショーが見られる」
確かに、専用の送迎バスが大量に行き来しており、吐き出された人々が入り口前に大行列を作っている。
炎天下にもかかわらず、かなりの人混みだ。
「すごい人ですね」
「心配しなくても、並ばせたりしないから」
近間はダッシュボードから取り出したプレートをフロントガラスに置いた。「VIP」という文字が透けて見える。
すぐに係員が駆け寄ってきて、車を別の入口に誘導してくれた。並ばずに中に入れてもらえるようだ。
「うわ、さすが大使館」
「このプレート、明日までは使っていいって言われてるから。職権乱用じゃなく、役得な」
車を降り、海沿いの広場を抜けると、広大な敷地に出た。
「すげえ」
直樹は思わず声を上げた。
見渡す限り、航空機しかない。
戦闘機から民航機、ヘリにプライベートジェットまでがずらりと並ぶ様は壮観だ。
「だろ?」
近間がにっと笑う。
乗り物系にわくわくしてしまうのは、男の本能だ。
近間が「男の子が好きな場所」と言った理由が分かった。
直樹は出張帰りなことも忘れ、夢中で飛行機を見て回り、写真を撮った。
米軍からもF-35やF-22といった最新の戦闘機が参加していて、パイロット達がフレンドリーに話しかけてくる。
一通り見て回った頃、近間が腕時計を見た。
「そろそろかな」
「何かあるんですか?」
「あと10分で航空展示が始まる。行こう」
見ると、周りの人達もぞろぞろと一方向に移動し始めている。
最初に通過した広場に出ると、金網の向こうには海と空が広がっている。
『みんな、あと10分でショーの始まりだ! 今日も暑いから、忘れずに水分補給しといてくれよな』
大型スピーカーから、軽快な音楽とノリノリのMCが流れ出した。
盛り上がる群衆に嫌でも心が浮き立つ。
「わくわくしてきました」
「だろ?」
「近間さんもですか? 普段乗ってる側なのに」
「乗ってる側だから余計な。何度見ても飽きないし、いつでもわくわくするよ」
ジョーク満載のMCのトークを聞いていると、10分はすぐに過ぎた。
不意に、近間がサングラスを外し、V字に開いた胸元に引っかけた。
「来たぞ」
指先で右方の彼方を指す。その方向に目を凝らすが、何も見えない。
「え、どこ」
「あそこ、F-15が1機、そのあとにF-16が2機」
直樹には点すら見えないのに、機体まで識別している。
近間は尋常じゃなく目が良いし、何かを見つけるのが早い。
近間の声を追うようにして、MCが入った。
『さあ、まずはシンガポール空軍のF-15SGだ。右側から飛んでくるぞ。特別塗装の真っ青な機体にご注目! パイロットはパイソンとキューブだ、みんな、手を振ってやってくれ。その後を追うのはF-16!』
機体の継ぎ目が目視できるほどの近距離で、F-15が右から左へ飛び去り、そのままぐんぐん上昇していく。
その後をやや小ぶりなF-16が追いかけ、やはり天へ向かっで駆け上がっていく。
ハイビートの曲との相乗効果で凄い迫力だ。
観客から歓声と口笛が飛ぶ。
クライマックスに眩いフレアを発射したシンガポール空軍の展示が終わると、次は小型のプロペラ機が6機編隊で飛んできた。赤と白の塗装が空に鮮やかだ。
『さあ、次はお隣のインドネシアからの特別参加。インドネシア空軍曲技飛行隊、ジュピター・チームだああっ!』
6機の航空機が、一寸の乱れもなく編隊で飛行する。スモークで空に図形が浮かび上がる度、拍手と歓声が沸き上がった。
2機ずつのアクロバット飛行の後、再び編隊を組んだ6機が放射線上に飛び散った。
そのうち2機だけが戻ってきて、左右から中央に向かって進んでくる。
「次、見てろよ」
序盤の動きだけで次のフォーメーションが分かったのか、近間が言った。
その額に玉の汗が光っている。
直樹から見て水平線の位置でクロスした飛行機は、スモークを焚きながら、左右に分かれて上昇していく。
「これ、なんの図形ですか?」
「見てろって」
上昇した二機は弧を描くように中央に向かって下降していき、交わったところでスモークを切った。
「あ」
真っ青な空に浮かび上がるのは、白い。
「ハートだ。すごい」
「俺からのメッセージ、なんつってな。俺が飛んでるわけじゃないけど」
近間が楽しそうに言う。
二人で並んで、消えゆくスモークを心に刻み付けるように見つめた。
ああ。この人は、いつも。
ピンポイントで、俺が喜ぶことをしてくれる。
観客はみんな空に夢中で、他人のことなんて気にしていない。
直樹は指先を近間のそれに絡めた。
あんたが大好きです。
その気持ちを送り込むように強く握って、離した。
空を見上げていた近間が直樹を見た。
はにかむようなその顔があまりにも綺麗で眩しくて。
「直樹」
名前を呼んでくれる時に、ふわっとやわらかくなるアルトをずっと聞いていたくて。
手放したくなくて。
「近間さん」
「ん?」
だから、思わず言ってしまった。
「俺たち、結婚しませんか?」
あ。あれ。
俺、今、何言って。
慌てて口元を押さえた。
顔が熱い。
きっと、真っ赤になっている。
「ちがっ、間違えました。俺、一緒に住みませんかって言おうとしてて。すみませんすみません」
恥ずかしくて死にたい。
ちらりと横を見ると、近間がいない。
のではなく、その場にしゃがみこんでいる。
らしくないヤンキー座りで、腿の間に頭を落としている。
「近間さん? すみません、そんな困ると思わなくて。撤回します、忘れてください」
同じように腰を落とし、慌てて言い募る。
「撤回って、どっち?」
うつむいたまま問われる。
「どっちって」
「結婚か同棲か、どっちを撤回したいの」
「……どっちも、撤回したくないです」
「うん。俺も、どっちも撤回してほしくない」
顔を上げた近間は、直樹の手を取って立ち上がった。
引きずられるように、直樹も腰を上げる。
空では、米空軍のB-52戦略爆撃機がフライパスしている。
「おまえさ。生意気」
近間はきっと直樹を睨み上げた。
怒っているのではなく、どこか拗ねているようだ。
「え、は?」
「年下のくせに、先超すなよ」
意味が分からない。
「それは、どういう」
「俺が。言おうと思ってたんだよ。同じこと。なのに、おまえ。はああ」
大袈裟にため息をつかれる。
「近間さん?」
「ハートのスモークの下で、カッコつけて同棲の申し込みしようと思ってたんだよ。俺から」
そういえば、さっき、先に名前を呼ばれた気がする。
直樹は頭を掻いた。
「あ、ええと、じゃあ、やりなおしますか? 午後も同じショーあるんですよね」
「嫌だ。もういい」
むくれる近間にかぶせるように、能天気なMCがショーの終わりを告げた。
『さあみんな、ショーは楽しんでくれたかな! パイロットと話したいみんなは、左手のステージゾーンへレッツゴーだ。次のエアロバティックショーは午後の2時半からだ。それまで、展示を楽しんでくれよな。ああ、くれぐれも水分補給は忘れずに!』
「あの、近間さん」
「なんだよ」
「拗ねてる近間さんも可愛いです」
近間は、心底呆れたという顔をした。
「おまえ、本当、時々どうしょうもないくらいアホだよな」
「でも、そんな俺と同棲して結婚してくれるんですよね」
「知るか。前言撤回する」
憎まれ口を叩いているが、目は笑っている。
出口に向かって足早に歩きだす近間を、直樹はギャロップで追いかけた。
チャンギ空港の到着ロビーは大勢の人で賑わっているが、直樹の目は瞬時に近間を見つけ出した。
この人はいつもきらきら光って見える。
近間の方もすぐに直樹に気づき、手を挙げた。
「出張おつかれ。KL、どうだった?」
「出迎え、ありがとうございます。3日間ずっと雨でしたよ」
「それは災難だったな。荷物持とうか?」
「軽いし、1個だけなんで大丈夫です」
「じゃあ、その紙袋だけ持つよ。朝飯食った?」
「機内食が出ました。それに、昨夜3時まで接待だったんで、あんまり腹減ってないです」
「おまえの飛行機って朝8時発だったよな」
飛行時間は2時間だが、時差があるので、今は9時だ。
「はい」
「商社マンってすげえな」
すごいと言いつつ、半ば呆れた表情である。直樹はコメントはせずに肩をすくめた。
テイクアウトのコーヒーを買って、紺のBMWに乗り込んだ。
近間ほどBMWが似合う男もそうそういないのではないか。ロックを解除する仕草すら様になる。
「近間さん、カッコいいです」
「おまえ、やっぱ疲れてるだろ」
「疲れてないけど、近間さん不足です」
それを聞くと、近間はシートベルトを外して顔を寄せて来た。ちゅっと軽いキスをされる。
「応急処置」
にこっと笑うと、再びシートベルトをして、車を発進させた。
直樹は思わず指先を唇にあて、感触を反芻する。反則だ。
「直樹、本当に疲れてないか?」
「ないですよ」
「じゃあ、ちょっと付き合ってほしいとこがあるんだけど」
「いいですよ。どこに?」
「すぐ近く。男の子がみんな好きな場所」
近間がいたずらっぽく笑った。
到着したのは、空港からほど近いチャンギ・エキシビジョン・センターだった。
入口の横断幕には「Welcome to Singapore Airshow 2018」と赤い文字が躍っている。
「エアショーって、近間さん、今週毎日来てたんじゃないですか?」
防衛大臣一行がこのエアショーを視察するというので、近間は睡眠もトレーニングも削って対応に忙殺されていたはずだ。
「うん。ビジネス関係者しか入れないブース展示は昨日で終わってるけど、今日明日は一般開放日だから。チケットを買えば、誰でも入って、航空機やショーが見られる」
確かに、専用の送迎バスが大量に行き来しており、吐き出された人々が入り口前に大行列を作っている。
炎天下にもかかわらず、かなりの人混みだ。
「すごい人ですね」
「心配しなくても、並ばせたりしないから」
近間はダッシュボードから取り出したプレートをフロントガラスに置いた。「VIP」という文字が透けて見える。
すぐに係員が駆け寄ってきて、車を別の入口に誘導してくれた。並ばずに中に入れてもらえるようだ。
「うわ、さすが大使館」
「このプレート、明日までは使っていいって言われてるから。職権乱用じゃなく、役得な」
車を降り、海沿いの広場を抜けると、広大な敷地に出た。
「すげえ」
直樹は思わず声を上げた。
見渡す限り、航空機しかない。
戦闘機から民航機、ヘリにプライベートジェットまでがずらりと並ぶ様は壮観だ。
「だろ?」
近間がにっと笑う。
乗り物系にわくわくしてしまうのは、男の本能だ。
近間が「男の子が好きな場所」と言った理由が分かった。
直樹は出張帰りなことも忘れ、夢中で飛行機を見て回り、写真を撮った。
米軍からもF-35やF-22といった最新の戦闘機が参加していて、パイロット達がフレンドリーに話しかけてくる。
一通り見て回った頃、近間が腕時計を見た。
「そろそろかな」
「何かあるんですか?」
「あと10分で航空展示が始まる。行こう」
見ると、周りの人達もぞろぞろと一方向に移動し始めている。
最初に通過した広場に出ると、金網の向こうには海と空が広がっている。
『みんな、あと10分でショーの始まりだ! 今日も暑いから、忘れずに水分補給しといてくれよな』
大型スピーカーから、軽快な音楽とノリノリのMCが流れ出した。
盛り上がる群衆に嫌でも心が浮き立つ。
「わくわくしてきました」
「だろ?」
「近間さんもですか? 普段乗ってる側なのに」
「乗ってる側だから余計な。何度見ても飽きないし、いつでもわくわくするよ」
ジョーク満載のMCのトークを聞いていると、10分はすぐに過ぎた。
不意に、近間がサングラスを外し、V字に開いた胸元に引っかけた。
「来たぞ」
指先で右方の彼方を指す。その方向に目を凝らすが、何も見えない。
「え、どこ」
「あそこ、F-15が1機、そのあとにF-16が2機」
直樹には点すら見えないのに、機体まで識別している。
近間は尋常じゃなく目が良いし、何かを見つけるのが早い。
近間の声を追うようにして、MCが入った。
『さあ、まずはシンガポール空軍のF-15SGだ。右側から飛んでくるぞ。特別塗装の真っ青な機体にご注目! パイロットはパイソンとキューブだ、みんな、手を振ってやってくれ。その後を追うのはF-16!』
機体の継ぎ目が目視できるほどの近距離で、F-15が右から左へ飛び去り、そのままぐんぐん上昇していく。
その後をやや小ぶりなF-16が追いかけ、やはり天へ向かっで駆け上がっていく。
ハイビートの曲との相乗効果で凄い迫力だ。
観客から歓声と口笛が飛ぶ。
クライマックスに眩いフレアを発射したシンガポール空軍の展示が終わると、次は小型のプロペラ機が6機編隊で飛んできた。赤と白の塗装が空に鮮やかだ。
『さあ、次はお隣のインドネシアからの特別参加。インドネシア空軍曲技飛行隊、ジュピター・チームだああっ!』
6機の航空機が、一寸の乱れもなく編隊で飛行する。スモークで空に図形が浮かび上がる度、拍手と歓声が沸き上がった。
2機ずつのアクロバット飛行の後、再び編隊を組んだ6機が放射線上に飛び散った。
そのうち2機だけが戻ってきて、左右から中央に向かって進んでくる。
「次、見てろよ」
序盤の動きだけで次のフォーメーションが分かったのか、近間が言った。
その額に玉の汗が光っている。
直樹から見て水平線の位置でクロスした飛行機は、スモークを焚きながら、左右に分かれて上昇していく。
「これ、なんの図形ですか?」
「見てろって」
上昇した二機は弧を描くように中央に向かって下降していき、交わったところでスモークを切った。
「あ」
真っ青な空に浮かび上がるのは、白い。
「ハートだ。すごい」
「俺からのメッセージ、なんつってな。俺が飛んでるわけじゃないけど」
近間が楽しそうに言う。
二人で並んで、消えゆくスモークを心に刻み付けるように見つめた。
ああ。この人は、いつも。
ピンポイントで、俺が喜ぶことをしてくれる。
観客はみんな空に夢中で、他人のことなんて気にしていない。
直樹は指先を近間のそれに絡めた。
あんたが大好きです。
その気持ちを送り込むように強く握って、離した。
空を見上げていた近間が直樹を見た。
はにかむようなその顔があまりにも綺麗で眩しくて。
「直樹」
名前を呼んでくれる時に、ふわっとやわらかくなるアルトをずっと聞いていたくて。
手放したくなくて。
「近間さん」
「ん?」
だから、思わず言ってしまった。
「俺たち、結婚しませんか?」
あ。あれ。
俺、今、何言って。
慌てて口元を押さえた。
顔が熱い。
きっと、真っ赤になっている。
「ちがっ、間違えました。俺、一緒に住みませんかって言おうとしてて。すみませんすみません」
恥ずかしくて死にたい。
ちらりと横を見ると、近間がいない。
のではなく、その場にしゃがみこんでいる。
らしくないヤンキー座りで、腿の間に頭を落としている。
「近間さん? すみません、そんな困ると思わなくて。撤回します、忘れてください」
同じように腰を落とし、慌てて言い募る。
「撤回って、どっち?」
うつむいたまま問われる。
「どっちって」
「結婚か同棲か、どっちを撤回したいの」
「……どっちも、撤回したくないです」
「うん。俺も、どっちも撤回してほしくない」
顔を上げた近間は、直樹の手を取って立ち上がった。
引きずられるように、直樹も腰を上げる。
空では、米空軍のB-52戦略爆撃機がフライパスしている。
「おまえさ。生意気」
近間はきっと直樹を睨み上げた。
怒っているのではなく、どこか拗ねているようだ。
「え、は?」
「年下のくせに、先超すなよ」
意味が分からない。
「それは、どういう」
「俺が。言おうと思ってたんだよ。同じこと。なのに、おまえ。はああ」
大袈裟にため息をつかれる。
「近間さん?」
「ハートのスモークの下で、カッコつけて同棲の申し込みしようと思ってたんだよ。俺から」
そういえば、さっき、先に名前を呼ばれた気がする。
直樹は頭を掻いた。
「あ、ええと、じゃあ、やりなおしますか? 午後も同じショーあるんですよね」
「嫌だ。もういい」
むくれる近間にかぶせるように、能天気なMCがショーの終わりを告げた。
『さあみんな、ショーは楽しんでくれたかな! パイロットと話したいみんなは、左手のステージゾーンへレッツゴーだ。次のエアロバティックショーは午後の2時半からだ。それまで、展示を楽しんでくれよな。ああ、くれぐれも水分補給は忘れずに!』
「あの、近間さん」
「なんだよ」
「拗ねてる近間さんも可愛いです」
近間は、心底呆れたという顔をした。
「おまえ、本当、時々どうしょうもないくらいアホだよな」
「でも、そんな俺と同棲して結婚してくれるんですよね」
「知るか。前言撤回する」
憎まれ口を叩いているが、目は笑っている。
出口に向かって足早に歩きだす近間を、直樹はギャロップで追いかけた。
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