ヤンキーDKの献身

ナムラケイ

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Sorano: 楽しいわ、これ。★

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 シャワーから出て、アラームをセットするためにスマホをタップすると、充電残量が10%を切っていた。朝まで持たないだろう。
 空乃は通学用のメッセンジャーバッグを探るが、充電器が見つからない。
「あー」
 すぐに思い出して、頭を掻いた。
 学校だ。昨日、みのりに貸して、確かそのまま机の中に突っ込んできた。
 ユキちゃん、まだ起きてっかな。
 行人も空乃もiPhone愛用者だ。充電器を貸してもらおうと、空乃はビーチサンダルを突っかけた。
 夜なので大きな音を立てないように、呼び鈴は控えて軽くノックをする。
 反応がないのでドアノブを回すと、鍵は開いている。不用心だと何度注意しても、行人はよく鍵をかけ忘れる。

「ユキちゃん、まだ起きてる?」
 玄関と台所は暗いが、和室の襖からは明かりが漏れている。空乃は襖越しに呼びかけた。
「鍵しねえと危ないだろ。ユキちゃん、入っていい?」
「……そら、の? 駄目だ、入るな!」
「は?」
 思わぬ拒絶に空乃は眉をひそめる。声に混じる呼吸が荒かった。
「え、なに。ユキ、もしかして気持ち悪い?」
 泥酔はしていなかったが、それなりに飲んだようで酩酊はしていた。別れた時は吐きそうな様子はなかったが。
「違う、大丈夫だから。帰れって」
 やはり呼吸が荒いし、何やらガサゴソしている。
「いや、充電器貸してほしくてさ。開けるぞ」
 返事を聞く前にすらりと襖を開く。
 行人は腰から下にタオルケットを巻きつけるようにして、布団の上に座っていた。
「おまっ、勝手に入ってくるなよ!」
 行人は焦ったように抗議する。その顔は上気し、目は潤んでいる。
 やば、なんでこの人、こんな色っぽいんだよ。
 同じ男だから、気配と匂いですぐに分かった。オナニーをしていたのだ。
 空乃はごくりと喉を鳴らし、気づかないフリをして白々しく尋ねた。
「ユキちゃん、具合悪いん?」
「悪くないって。もう寝るから帰れよ」
 行人はタオルケットを強く握りしめたまま、視線を合わせようとしない。眼鏡は外していて、白い素顔を晒している。
 可愛い。なんでこんな、可愛いんだ。
「顔、赤いっすよ」
 空乃は布団の横に膝をついて、行人の頬に指先で触れる。
「……あっ」
 僅かな刺激だったが、行人はびくりと肩を震わせた。
 無理だ。好きな人のこんな姿を見て、何も知らないフリして立ち去るなんて、難易度高すぎるだろ。
 衝動にかられて、空乃はタオルケットの中に右手を差し込んだ。触れた行人の脚は、予想通り何も履いていない。

「おまえ、なに」
「黙って」
 ふくらはぎ、膝の内側、太腿。滑らかな肌をなぞり、脚の付け根に辿り着く。そっと包むように触れた行人のペニスは少し柔らかくなっていて、でも掴んだ瞬間にくっと硬度を増した。
「……やめろ」
 行人は睨んでくるが、潤んだ目でそんなことされても逆効果だ。
「やめない」
「空乃。駄目だ」
「駄目じゃない。一人でしてたんだろ? この感じだと、なかなかイケなかったんじゃねーの」
 耳元に吹き込むように喋り、硬く勃ち上がったペニスを扱いてやる。
「っ……」
 少し擦っただけで、先走りが溢れ出した。ぬめりで滑りがよくなる。
 行人の下半身はタオルケットで覆われていて見えない。見えないのが、余計エロい。
「やめ、ろ。マジで」
 空乃の肩を押し返す腕には全然力が入っていない。空乃はその手首を掴んで、床に縫い付けた。
「やめないって言ってんだろ」
 凄むと、行人は観念したように瞳を閉じた。ペニスはもうどろどろだ。
「……んっ」
「俺はここ好きなんだけど、ユキちゃんは?」
 雁首を強く擦ると、行人はふるふると首を振っている。
 本気で嫌がられたらすぐにやめるつもりだったが、ちゃんと気持ちよさそうだ。
 行人のモノはほっそりとしていて、触り心地が良い。他人の性器を扱くのは初めてだが、全く抵抗がない。ないどころか。
 楽しいわ、これ。

「ん……」
 行人は声を出すまいとしているのか、唇を噛みしめている。その唇にキスをして、舌でこじ開けた。
「ふっ、あんっ」
 漏れ出た声は甘くて艶めいていて、腰がずくりと重くなった。
 空乃の股間もとっくにガチガチになっている。
 突っ込んで、めちゃめちゃに腰を振りたい。
 やんねーけどさ。今はまだ。
 空乃の手淫で気持ち良さそうに震える行人が、愛しくて仕方がない。
 いつか、この人と心から愛し合いたい。愛して、愛されて、溶けあうようなセックスがしたい。
 その時のことを思うだけで胸が高鳴る。
「空乃、もう」
 行人が限界を訴えてくる。
「うん、いーよ。イって」
 キスをしながら、手を一層激しく動かす。
「あ、イく、イくからっ……ああっ」
 一際高い声が上がり、手の中のペニスがどくどくと震える。手のひらが生暖かい液体で濡れていく。
 出し切って、荒い呼吸を繰り返す行人の額に口づけた。

 ティッシュで後始末をする空乃を、行人が恨めしそうににらんでくる。
「……おまえ、最悪。やめろって言ったのに」
「気持ちよかったっしょ?」
「知るか」
「へーへー」
 行人は拗ねたように黙っていたが、やがて言いづらそうに口を開いた。
「その、俺も、しようか」
「はい?」
「それ」
 行人の視線の先は空乃の股間を見ている。立派に勃起したままの空乃自身を。
「え、いや、えっ! それは、いやっ!」
 予想外の申し出に狼狽してしまう。
 嬉しい。嬉しいし、是非してほしい。
「何、焦ってんだよ。自分はしたくせに」
「いや、そうだけど。え、マジでいいの?」
「いいよ」
 空乃は天を仰ぐ。
 お願いしますといえば、行人はしてくれるのだろう。あの指で、俺の。
 爆死しそうだ。
「遠慮しときます」
 空乃は姿勢を正して、丁重に辞退した。
「は?」
「すっげえお願いしたいけど。また今度にしとく」
「なんだよ、それ」
 行人は若干不服そうだ。
「こんな、お返しに、みたいな感じじゃなくて。ユキちゃんが、本当に俺のを舐めたいって思った時にしてくれよ」
 空乃はにっと笑った。後ろ髪は引かれるが、今はこれが正解だ。
 決め台詞のつもりもなかったが、行人は満足したように頷いた。
「分かった。おまえ、そういうとこ、ちゃんとしてるよな」
 それから遅ればせに気づいたのか、急に真っ赤になった。
「いや、舐めるとか言ってないからな。手だぞ、手」
「えー、そこはやっぱりお口っしょ」
「高校生が不謹慎なこと言うんじゃない」
「へーへー。じゃあな、おやすみ、ユキちゃん」
 空乃は笑って、行人のつむじにおやすみのキスを落とした。
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