龍の檻と青年

はる

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バレる

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廊下の角を曲がって、誰もいない物置部屋を開ける。

冷たい空気が頬を撫でた。

(今なら、誰にも見られない……)

奏多はスーツのポケットから、小さな白いケースを取り出す。

握りしめた指が、汗ばんで震えていた。

奏多「これさえ飲めば……落ち着ける。大丈夫、、、。」

ケースの蓋を開け、中の錠剤に指先が触れたそのとき――

組員I「へえ、そんなもんに頼ってたんだ?」

軽く笑いながら声をかけてきたのは、長谷川とよく一緒にいる組員の一人―。

もう一人、肩を並べるように歩く男がにやつく。

すると手に持っていたポーチをひったくられる。

奏多がとっさに取り返そうとしたが、右足に力が入らず、ぐらりとバランスを崩した。

梶原が中身を覗いて、眉をひそめた。

組員I「……抗うつ剤? 安定剤? おいおい、奏多くんってば、結構精神ヤバい系?」

組員II「マジかよ、怖っ。お前、キレたら刺してきたりすんじゃねぇだろうな?」

からかうような、人を見下しているような笑い。

奏多は言葉が出ない。

ただ、ただ胸がぎゅっと締め付けられる。

奏多「返してください」

絞り出すような声に、男は小馬鹿にしたような顔で言った。

組員I「へぇ? こんなもん飲んで仕事してんの? そりゃあ、桐谷さんも大変だな。情けか、趣味か……」

ぐちゃ、と錠剤の1つを指先で潰される音が聞こえた。

奏多の頭が真っ白になる。

鼓動の音がやけにうるさい。

手首の内側がズキズキとうずく。

奏多「……返して……ください……」

声が震える。息がうまく吸えない。

男たちが何か言っている。笑っている。

けれど、耳が遠くなったようで、意味がわからない。

不意に聞こえた低い声に、心臓が跳ねた。

振り返ると、ドアのの影から長谷川が現れていた。

いつからそこにいたのか。

奏多の手の中の薬を見て、彼はうっすらと笑みを浮かべていた。

長谷川「見せてみろよ、それ」

奏多「や、やめて……これは……っ」

長谷川「“俺のもの”じゃないよな? 何隠してんの、奏多くん」

長谷川の手がすっと伸びて、奏多の手から薬のケースを奪い取る。

抵抗する暇もなかった。

奏多「っ返してください、それがないと……」

必死に手を伸ばすが、長谷川は軽くかわして笑う。

長谷川「へえ、ほんとにやばいんだな。依存ってやつ?」
「俺、正直あんたが何で側近なんかやってんのか不思議だったけど……納得したわ
桐谷さんも大変なお荷物背負っちまったな」

声が遠くなる。耳鳴りが始まった。
呼吸がうまくできない。

長谷川「冗談だって。すぐ返すよ、な?」
「ただ……若頭に言っちゃおうかなー、薬に頼りすぎてるって
お前、完全にオーバードーズだろそれ笑」

奏多「……やめて」

奏多は声を震わせる。

奏多「頼むから……やめて、お願い……」

長谷川はその必死な様子を楽しむように、ひとつため息をついた。

長谷川「じゃあさ、俺にちょっとだけ協力してくれよ。そしたら返す」
「何も悪いことしろってわけじゃない。ただ、桐谷さんの“裏の顔”を知りたいだけ」

「……っ」
奏多の手が、ぎゅっと震える。

長谷川の目は笑っていたけれど、底の見えない何かを孕んでいた。
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