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虚な夜に咲く愛(流血表現あり)
しおりを挟む桐谷「長谷川によると、ここの場所に移動されたそうだ。
全員、周りを隈なく探せ!!!!」
すると、桐谷の目に怪しげな大きめの倉庫が目に入った。
ぎぎぎぃぃぃぃーーーばん!!
廃ビルの扉が激しく開き、桐谷の視界に飛び込んできたのは、荒れ果てた薄暗い部屋の中。
そこに倒れていたのは、かつての柔らかな笑顔を失った奏多だった。
彼の身体は砂埃で汚れ、衣服は裂け、血の染みが所々に広がっている。
右足は不自然な角度で伸び、歩くことすらままならないことを物語っていた。
震えるその細い指は、無意識に何かを掴もうとしているように、宙を掴むように揺れていた。
顔は青白く、唇は乾き、かすれた息遣いが荒い。
そして何よりも、その目は――虚ろで、遠くを見つめていた。
まるで魂がどこかへ置き去りにされたかのような、深い闇を湛えていた。
息を呑むほどに痛々しく、胸を締め付けられる光景だった。
奏多の体は小刻みに震え、まるで痛みと恐怖で今にも崩れ落ちそうだった。
薄暗い部屋の冷気が肌を刺し、埃の匂いが鼻をついた。
その空気は、奏多の心の深い傷を映し出すように重く淀んでいた。
桐谷「ッッッ…奏多っっっ!!!!!」
桐谷はすぐに駆け寄り、その細い身体を抱き上げた。
桐谷「奏多…すまない…よく耐えたな」
声は震え、胸の奥が締め付けられた。
奏多はわずかに体を震わせながらも、その声に反応してかすかに目を開けた。
しかし、言葉は出ず、ただぼんやりと桐谷の顔を見つめていた。
その虚ろな瞳の奥に、桐谷だけが見えるかのように、かすかな希望の光が揺れていた。
桐谷「奏多っ!!!」
目は虚ろで、呼吸は浅く、痛みに歪む表情が胸を締めつける。
桐谷「奏多…!!!!」
全身ボロボロで、右足は変な方向に曲がっていた。
桐谷「聞こえてるか…?返事をしてくれ…」
しかし奏多は肩を震わせ、唇を震わせて何度も開くが、声は一言も出なかった。
ただ、息が荒く、苦しそうに胸を押さえるばかりだ。
桐谷「おい、しっかりしろ! 俺だ、桐谷だ!」
桐谷は焦りながら何度も名前を呼ぶが、奏多は目を閉じ、震える手を桐谷の胸に押し当てた。
彼の身体は震え、苦痛が彼の全てを覆い尽くしていた。
言葉は、もう彼の中に存在しなかった。
桐谷「如月に……殴られたんだろ!?」
桐谷は問いかけるが、奏多はかすかな嗚咽を漏らすだけで、返事はできなかった。
桐谷「奏多、俺がここにいる。もう大丈夫だ。怖がらなくていい」
桐谷は優しく言いながら、彼の体を強く抱きしめた。
奏多の涙が頬を伝い、震える肩が小刻みに揺れる。
その痛みは言葉にできないほど深く、桐谷の心まで締めつけた。
奏多の唇がかすかに震え、涙が頬を伝った。
奏多「……桐谷さんが……殴った……
僕、、役立たずだって‥泣」
その言葉に、桐谷の胸は凍りついた。
桐谷「違う、絶対に違う! 俺はお前を守るって誓ったんだ」
奏多は怯えたまま、身体を震わせて桐谷の腕から逃れようとした。
奏多「嘘だ……嘘だよ……だって泣……」
桐谷はその姿を見て、胸が締め付けられた。
桐谷「奏多……お前の痛みは俺が受け止める。お前が何をされたのか分からない。だけど、俺は――」
桐谷が奏多の頭に手を置こうとしたその時、奏多は突然体を硬直させた。
奏多「やめて……お願い……もう、傷つきたくない……」
身構えるような姿勢をとった奏多を見て桐谷は
目を見開いた。
その叫びは、まるで自分自身に向けられた叫びのようだった。
桐谷は腕を強く引き寄せ、静かに囁く。
桐谷「すまないっ、俺はお前を守る。絶対にもう…。」
奏多は涙を流しながらも、わずかにその温もりに触れ、少しだけ心が揺れ動いた。
だが、混乱は深く、恐怖はまだ彼の内側を支配していた。
奏多「僕は……もう、誰を信用していいのか分からない……」
それでも、桐谷は奏多の肩を優しく抱きしめ、決して離れなかった。
桐谷が奏多を抱きしめ、必死に落ち着かせようとしているその時、背後から冷たい足音が近づいた。
如月「……ふん、遅かったな、桐谷」
如月の影が静かに現れた。
奏多の視界が歪み、心がさらに混乱した。
(――いや、違う、あいつは桐谷さんじゃない……でも、あそこにも……桐谷さんがいる?)
まるで同じ人間が二人いるかのように、桐谷の姿が二重に見えた。
奏多「お、お前は……?」
震える声で問いかけるも、声は裏返り、言葉がうまく出てこない。
桐谷は困惑しつつも、冷静に如月に向き合った。
桐谷「如月、よくも奏多を傷つけたな?」
如月は不敵に笑いながら答えた。
如月「お前が遅かったんだろ。それに、お前がほったらかしにしとくのが悪いだろ笑」
奏多はパニックの中、桐谷にすがりつこうと手を伸ばすが、その指先は震えて空を切った。
奏多「違う……桐谷さんは一人だけのはず……でも、二人に見える……」
心の中で現実と幻覚が交錯し、奏多の頭は混沌としていた。
奏多「助けて……お願い……」
桐谷はその声に応えるように、強く彼を抱き締めた。
桐谷「俺だけだ、奏多。俺がここにいる」
だが、奏多の目にはまだ二人の「桐谷」が映り、錯覚は簡単には消えそうになかった。
如月の冷たい笑みが、部屋の空気を一層重くした。
カチャ
すると、如月がポケットから銃を抜き、安全装置を解除して引き金に手を当てる。
その銃口の先は桐谷に向いていた。
パンッッッ!!!!
桐谷が身構えた瞬間、銃声が空気を裂いた。
身体が一瞬、時を止めたように固まる。
けれど痛みはない。
そして、何故か目の前には奏多がおり、
奏多「……あ……」
声にならない呟きがこぼれ、膝から崩れ落ちる。
倒れる奏多を支えて、桐谷はやっと状況を理解した。
奏多の横腹から血が滲み出る。
奏多の口の中には血の味が広がり、暖かく、重く、現実がじわじわと押し寄せてくる。
奏多「カハッッッ」
ボタボタボターーー
瞳は薄れていくけれど、その視線はただ一つ、必死に桐谷を捉えようとする。
奏多「桐谷さん……」
奏多『多分、この人が本物の桐谷さんだー。』
かすれた声に、痛みと恐怖、そして切なさが滲んだ。
胸の奥底にあるのは、ただ守りたいという想いだけだった。
誰よりも信じて、頼っていた人を、守るために。
それが自分のすべてであり、同時に自分を壊す刃でもあった。
桐谷「奏多ッッッッ!」
桐谷の声が震え、彼の身体を抱きかかえた。
冷たい夜風が二人を包み、緊迫した時間が静かに流れる。
桐谷「しっかりしろ、奏多! ここで終わらせるわけにはいかない!」
必死の声に、奏多は無理に小さくかすれた笑みを浮かべる。
奏多「ごめんな、、さい、
迷惑ばかり…、ゲボッッーーカヒュー」
「次は…僕が……守りたい……ただ、それだけで……」
その言葉は消え入りそうで、しかし確かな決意があった。
痛みに顔を歪めながらも、奏多の指がかすかに桐谷の腕を握り締めた。
痛みが全身を突き抜け、視界がぼんやりと霞んでいく。
奏多『今言わないと、もう言えないかも、。
もう後悔しないよう、に、、』
それでも奏多は、かすかに見える桐谷の顔を必死に追い続けた。
桐谷の頬に手を重ねて顔を近づける。
そして震える声で、最後の力で言葉を絞り出す。
奏多「ー、、す きです。愛し てま すー。」
桐谷は涙をこらえ、強く奏多を抱きしめた。
桐谷「ッッッ絶対に離さない。お前を守るって、誓ったんだ」
音もなく流れる涙が、二人の間に結ばれた絆の深さを物語っていた。
桐谷の腕の中で奏多の握った手が、次第に力を失っていく。
瞼が重くなり、まぶたの裏に星のような光がちらつく。
奏多「桐 っ谷さん……」
かすれた声が遠のき、言葉はもう紡げなかった。
視界がゆっくりと闇に覆われていく中、奏多の心は静かに静かに落ちていった。
痛みも恐怖も、すべてが遠ざかり、ただただ眠りに包まれていくようだった。
そして、その体が完全に力を抜き、身体が床に触れた時、桐谷は確信した。
奏多が――意識を失ったのだと。
桐谷「か、奏多っっ!!!!」
如月「っっっ、ははは笑笑」
如月の冷笑が遠くで響く中、二人だけの世界が、今、そこにあった。
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