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1章

10話 おうちデート(偽装)で、親もメイドもてんやわんや

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そうして一度目のデートを終えて、二度目のデートは三日も空けずに敢行された。

そう、ここで大事なのはスパンだ。
どんどん短くなっていき、挙句の果てには毎日になる。

そういう過程を踏んでこその、恋愛倒錯シナリオである。


ただし、私の生活はそれほど暇に満ちてはいない。基本的には、アイテムショップの店番をしなくてはならない。

どうしようかと考えた結果、

「……まさか、まさか本当にあのエリゼオ王子様が!? こんな、鳴かず飛ばずの男爵家に!? ディエゴ様なんて目じゃない大物!!」
「ちょっとお母さまったら、あまり大きな声は出さないでよ。はしたなく思われます」
「あぁ大変申し訳ありません、エリゼオ様。取り乱しました」

間を縫っての、おうちデート(偽)作戦になった。

そのためには家のものに、彼のことを紹介する必要があったのだけど…………

その顔を見た途端、母もメイドも執事も従者も、みんな纏めて石化してしまった。エリゼオ王子はみなにその顔を知られる超有名人なのだ。

お出迎えに来てくれたはいいが、むしろ入り口を塞がれ、邪魔になる始末になっていた。

「はは、やはりこうなるか」

揃いに揃ったほうけ顔に、エリゼオがぎこちなく苦笑する。

「大丈夫です。みんないい人ですから。あとで秘密にしておくよう伝えておきますよ」
「うん、よろしく頼む」

とにかくまず、家の中へと上がってもらった。

ちょうど昼時ということもあったので、食堂にお通しする。

事前に伝えて、準備してもらっていたはずだったのだが…………食卓にあるのは燭台とワイン、パン、サラダ程度ときた。

庶民すぎる私ですら、質素なランチだなと思う。
さながらダイエット中のメニューだ。霧崎祥子だった頃、一時期こんな生活をしていたっけ。

こうなった理由は、食堂の入り口からこちらを覗いていたコックの女性がペコペコ謝りながら教えてくれた。

「あの、すいません! 王子が来ると聞いて、色々と工夫をしようとしたのですが、どうしてもうまくいかず……」

要は張り切りすぎた結果、空回りしてしまったというワケらしい。
恐縮しきって、コックの女性は身を震わせる。

とんだ粗相を犯したと思っているらしい。クビを言い渡されないか恐々としているのだろう。

たしかに傲慢な王族ならば、それもありうる。

「いえ、むしろお気を使わせましたね。失礼いたしました」

が。
エリゼオ王子は、そんな彼女にこう優しく声をかけた。

内心どう思ってるかはともかくとして、格下の相手にもこうまで丁寧な態度を取るのだから、徹底されていた。

こういった点は、好感を持てなくもない。

「も、もったいないお言葉です! すぐに用意いたしますので」

そのコックの女性は、思いっきり顔を赤くして足早に去っていく。

うん、こりゃあ勘違いを生むわけだ。たぶらかし王子は伊達じゃないね。

「えっと、すいません。わたしたちの不手際ですね」
「いいんだ。本当に気にしていない。むしろ作戦の一つだと言うのに、気を遣わせた。たまにはワインだけというのも悪くないだろう」
「そうかもしれませんけど……」

私が渋ったのは、ゲームの記憶があったからだ。

この世界では貴族学校を出る歳からが成人扱いで、18からはお酒を飲めるようになる。

そのためパーティーで飲酒をするシーンがあったのだが、たしかこの王子、結構アルコールに弱いのだ。

酔って介抱する、なんてシナリオ外のイベントは避けたい。

「ちょっとだけ待っててもらえますか、エリゼオさま」
「それは一向に構わないが……君はなにをするつもりなんだい? 別に僕はこれでも十分さ。作戦を遂行するためだしね」

「あぁ、ほんとすぐなので! ワインだけは飲まないでお待ちくださいっ!」

空きっ腹に酒なんて入れさせてなるものか!

私はありったけ警告して、食堂を後にする。貴族の邸宅の不便なのは、キッチンと食堂がやたらと遠いことだ。

またお母さまに、はしたないと怒られるかもしれないが、事態が事態だ。
廊下を走って、私はキッチンへと飛び込む。

「あぁ、なにかお洒落で高級感のあるレシピは……」

なんて固まって悩んでいるシェフたちを前に、ぱんっと手を叩いた。

「とにかくさっと作れるものを出しましょうっ! 私も手伝いますから!」
「え、アニータお嬢様!? でも、お料理なんてされてことないのでは?」

「実はこそこそやってたんです。お夜食がほしい時とかに厨房に忍び込んで!」

人差し指を立てながら、適当な嘘をつく。
目が泳いでいたかもしれないが、王子の来訪で焦っていたらしい彼らは気づいた様子がない。

結果として、無理やり押し切って私も参加してしまうこととした。
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