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二章 幼なじみ攻略作戦スタート!
第16話 授業もアピールの場!
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三
結愛の考えた作戦は、予想に反して、およそまともなものだった。彼女は人差し指をピンと立てて、僕に説く。
「とにかくまずは印象アップです。今のご主人様の印象は、たぶん下の下、ケダモノだと思われてますから」
誰のせいと思ってるんだ。
しかし反論はぐっと飲み込んで、僕は続きを聞いた。
「いい印象って言っても種類があります。格好良さ、優しさ、それら全てです。通常は一つでいいんですが、今回は全てアップさせましょう。今のご主人様の印象は超マイナスからのスタートですから」
二回も言うなんて! だがそれもなんとか堪えきって
「ギラギラでいきましょう。なんせ最低の位置から捲らなきゃいけないんです」
結果、三度も現実を突きつけられた。
とはいえ事実は事実。僕は、結愛の考えた作戦に乗ることにした。その具体的な方法というのが、実に泥臭いものだった。
「手伝うよ、中之条」
「え、みっちゃんいいの? 今日の日直、私だよ」
「黒板消し、僕のおはこなんだよね」
とにかく思いつく限りの善行をする。
それが僕に課せられた任務だった。僕は実に丁寧に、マス目に沿うよう黒板消しをかける。それから、ぬれ雑巾でチョーク置きからなにから、隅までをくまなく拭きあげた。
まず一つ、結愛を見るとグッとこちらへ親指を立てていた。
「このプリントの束、職員室に持っていくんだよね。僕が代わりにやっとくよ」
「えー、いいよ。みっちゃん、本当にどうしたの」
「人が困ってると見てられないんだ」
正確には自分が困っているから、やるしかない。
観葉植物への水やりまで買って出て、学校に着いてから朝礼までの短時間だけで、僕は三つの善行を重ねた。
しかし澄鈴の様子を伺うと、別のクラスメイトと歓談に耽っていて、全くこちらを見てはいなかった。
「ねぇこれ意味あるの、正直そうは思えないんだけど」
「これくらいで結果を求めないでください。これからですよ。なんたってご主人様の評価は」
「分かった、分かったから! もう言わないで!」
あれやこれや言い合っていたら、一限め、数学の時間が始まった。
授業中に善行など不可能だ。やっと気を休められる、数学は苦手だからちょうどいい。そう思って僕が眠りにつこうとした矢先、
「別所くん、積極的でいいね。じゃあ、この問題解いてくれるかな」
思いがけず、当てられていた。それもそのはず、なぜか僕は挙手をしていた。
「お前、なんてことを」
視線を斜め下にやると、結愛の手が僕の肘を突き上げている。
「賢さも好感度アップ要素ですよ。スマートさ見せてください♪」
「そんなこと言ったって、僕、二次関数さえできないんだよ?」
四則演算さえ未だに間違えるのは秘密だ。
「別所くん? 早く書いてくれるか」
僕は先生の催促に応じるがまま、仕方なく黒板の前へ出ていく。
チョークを掴んでから、はたと気づいた。そういえば、どの問題かさえ知らない。教科書を開いて、それらしく唸ってみる。怪訝そうな視線がクラス全体から僕へ注がれた。
その時、つと答えだけが急に降りてきた。僕は同時に生まれた謎の自信で持ってそれを堂々と書きつけて、席へ戻る。
「成功ですね、私のおかげですよ。精霊を使って念を送ったんです。朝の課金分パワーアップ♪」
「そんなことできるようになったの、すごいな」
「お褒めに預かり光栄です。今のは澄鈴さんも見てましたよ。賢さアピール成功です、やりましたね」
本当に結愛が役に立つ日が来ようとは。
学校では魔法禁止の原則が当たり前に破られていることも忘れて、僕が半ば感動していたら、
「全然違います。まずは数字を書いてください。誰か他の人ー?」
間違っていた。
よく見ると、象形文字とも楔形文字ともつかぬデタラメな字が黒板には書かれてある。
「あら。文字データの変換に失敗したみたいですね☆」
「ゲームっぽいけども!」
てへっと、結愛は、ウインク一つ僕へ投げかける。
もはや僕には効果がない、ため息だけが漏れる。代わりに後ろで、クラスメイトが何人か目をハートマークにして、失神していた。
「おい吉田が倒れたぞ」
「吉田、大丈夫か!」
静まり返っていた教室が、ざわめきだす。澄鈴から蔑むような視線が短く投げかけられて、すぐにそっぽを向かれた。
結愛の考えた作戦は、予想に反して、およそまともなものだった。彼女は人差し指をピンと立てて、僕に説く。
「とにかくまずは印象アップです。今のご主人様の印象は、たぶん下の下、ケダモノだと思われてますから」
誰のせいと思ってるんだ。
しかし反論はぐっと飲み込んで、僕は続きを聞いた。
「いい印象って言っても種類があります。格好良さ、優しさ、それら全てです。通常は一つでいいんですが、今回は全てアップさせましょう。今のご主人様の印象は超マイナスからのスタートですから」
二回も言うなんて! だがそれもなんとか堪えきって
「ギラギラでいきましょう。なんせ最低の位置から捲らなきゃいけないんです」
結果、三度も現実を突きつけられた。
とはいえ事実は事実。僕は、結愛の考えた作戦に乗ることにした。その具体的な方法というのが、実に泥臭いものだった。
「手伝うよ、中之条」
「え、みっちゃんいいの? 今日の日直、私だよ」
「黒板消し、僕のおはこなんだよね」
とにかく思いつく限りの善行をする。
それが僕に課せられた任務だった。僕は実に丁寧に、マス目に沿うよう黒板消しをかける。それから、ぬれ雑巾でチョーク置きからなにから、隅までをくまなく拭きあげた。
まず一つ、結愛を見るとグッとこちらへ親指を立てていた。
「このプリントの束、職員室に持っていくんだよね。僕が代わりにやっとくよ」
「えー、いいよ。みっちゃん、本当にどうしたの」
「人が困ってると見てられないんだ」
正確には自分が困っているから、やるしかない。
観葉植物への水やりまで買って出て、学校に着いてから朝礼までの短時間だけで、僕は三つの善行を重ねた。
しかし澄鈴の様子を伺うと、別のクラスメイトと歓談に耽っていて、全くこちらを見てはいなかった。
「ねぇこれ意味あるの、正直そうは思えないんだけど」
「これくらいで結果を求めないでください。これからですよ。なんたってご主人様の評価は」
「分かった、分かったから! もう言わないで!」
あれやこれや言い合っていたら、一限め、数学の時間が始まった。
授業中に善行など不可能だ。やっと気を休められる、数学は苦手だからちょうどいい。そう思って僕が眠りにつこうとした矢先、
「別所くん、積極的でいいね。じゃあ、この問題解いてくれるかな」
思いがけず、当てられていた。それもそのはず、なぜか僕は挙手をしていた。
「お前、なんてことを」
視線を斜め下にやると、結愛の手が僕の肘を突き上げている。
「賢さも好感度アップ要素ですよ。スマートさ見せてください♪」
「そんなこと言ったって、僕、二次関数さえできないんだよ?」
四則演算さえ未だに間違えるのは秘密だ。
「別所くん? 早く書いてくれるか」
僕は先生の催促に応じるがまま、仕方なく黒板の前へ出ていく。
チョークを掴んでから、はたと気づいた。そういえば、どの問題かさえ知らない。教科書を開いて、それらしく唸ってみる。怪訝そうな視線がクラス全体から僕へ注がれた。
その時、つと答えだけが急に降りてきた。僕は同時に生まれた謎の自信で持ってそれを堂々と書きつけて、席へ戻る。
「成功ですね、私のおかげですよ。精霊を使って念を送ったんです。朝の課金分パワーアップ♪」
「そんなことできるようになったの、すごいな」
「お褒めに預かり光栄です。今のは澄鈴さんも見てましたよ。賢さアピール成功です、やりましたね」
本当に結愛が役に立つ日が来ようとは。
学校では魔法禁止の原則が当たり前に破られていることも忘れて、僕が半ば感動していたら、
「全然違います。まずは数字を書いてください。誰か他の人ー?」
間違っていた。
よく見ると、象形文字とも楔形文字ともつかぬデタラメな字が黒板には書かれてある。
「あら。文字データの変換に失敗したみたいですね☆」
「ゲームっぽいけども!」
てへっと、結愛は、ウインク一つ僕へ投げかける。
もはや僕には効果がない、ため息だけが漏れる。代わりに後ろで、クラスメイトが何人か目をハートマークにして、失神していた。
「おい吉田が倒れたぞ」
「吉田、大丈夫か!」
静まり返っていた教室が、ざわめきだす。澄鈴から蔑むような視線が短く投げかけられて、すぐにそっぽを向かれた。
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