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四章
第63話 似合っている
しおりを挟む昼頃、私はルベルトとデアーグとともに、お披露目会のパーティー会場へと入った。
その控室にて、ドレスを選ぶこととなる。
「とてもお綺麗ですので、どれも似合うとは思いますが、顔立ちがはっきりとされているので、どちらかといえば、赤っぽい色味がいいかもしれませんね」
こういうのは、かなり久しぶりのことだった。
そもそもドレスを半年以上着ていないから、どれを見ても、いまいちしっくりとはこない。
だから、とにかく目立たないことを意識して、比較的シンプルな薄い朱色のものを選択する。
肩口を見せる構造になっている以外は変わった趣向も少なかったため、おかげさまで着るのに、そこまでの時間はかからなかった。
丈の調整などだけその場で行ってもらい、スカート部分の裏にあるポケットに解毒薬を忍ばせたら、私は控室を出る。
すると、すぐそこにルベルトが待ち受けていた。
彼も正装をしている。
そしてその姿はといえば、やはり様になる。
「……輝いてますね」
というか、もう圧倒的だ。
黒地に金糸の装飾がついた、比較的あっさりとした服装だというのに、その飾らなさが彼の素材の良さを引き立たせる。
たぶん彼の横に並び立って、同じだけの存在感を出せる人間など、そうはいないだろう。
「ん、この飾りか? 生地が固くて、肩が凝る」
私は彼自身が輝いているという意味で言ったのだけれど、まさかの取られ方をしてしまった。
彼は肩口についたミュラ王国の紋章を引っ張りながら、渋い顔をする。
それから私のほうを振り向いて、
「……似合っている」
こう、ぼそりと言う。
「ありがとうございます。お世辞でも嬉しいです。しばらくは誤魔化せますでしょうか」
「誰よりも本物に見える。素晴らしい着こなしだ」
「……そうでしょうか」
ルベルトは首を一つ縦に振る。
それからどういうわけか、「待っていろ」と残すと、自分の控室へと下がっていった。
なにかあっただろうか。
そう思いながらも彼が戻ってくるのを待っていると、彼が手にしていたのは白い薄手の羽織だ。
ルベルトは私の背中の方まで腕を回すと、それを肩に掛けてくれる。
「これを使うといい」
見上げれば、ルベルトはどういうわけか壁の方に顔を背けていた。
真っ白な頬は少し赤らんで見える。
「……ありがとうございます。これって……」
「今、仕立て屋のものに見繕ってもらった。気に召さないか?」
「いえ、少し冷えるかもと思っていたので、助かります」
「それもあるが、その、なんだ。あまり見せるものでもないだろう」
言わんとしていることが、ここでやっと分かった。
肩が出ているのを気にしてくれたらしい。
夜会では、これくらいの露出は大したことがない部類だ。もっと大胆な衣装を着る令嬢のほうが多い。
だのに、慣れていないと思われているだろう私に、配慮してくれたらしい。
同じ王でも、ローレンとはまったく違う。
本当によく気が利くものだ。
「……まぁ、なんでもいい。とにかく、羽織っておいてくれ」
「はい」
私は羽織をしっかりと巻いて、胸元で緩く結ぶ。
「もう少ししっかりと結んでもいいんじゃないか」
「え」
「隙は見せないほうがいい。夜会とはそういう場所だ」
まぁたしかにそうだけれど。少し過保護すぎるような……?
「おぉ、すげー。まじでご令嬢じゃん!」
なんて思っていたら、そこへデアーグも合流する。
正装の彼は前にも見たことがあるが、今日はよりフォーマルだ。
ルベルト同様に、紋章のついたジャケットを羽織っている。
「めちゃくちゃ綺麗だ。見込み通り! すげー似合う!」
彼は全開の笑顔で、こう真正面から褒めてくれる。
「ふふ、ありがとうございます。デアーグ様もよくお似合いですよ」
「だろ? 自分でも思ってたところ!」
デアーグは腰に手をやり、ふんと鼻を鳴らす。
それに対してルベルトはといえば、大きなため息をつく。
「……お前はいいな」
「え、なんですか、いきなり」
「そのままの意味だ。いいから行くぞ」
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