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四章
第68話 俺が保証しよう。
しおりを挟む「なんでそんなものを持っている! やはり、お前たちミュラ王国の仕業じゃないのか!?」
これには、こんな声が飛んでくるが、当然想定済みだ。
「これは、ルベルト王子に危害が及んだ際の対応策として持ち込んだものです。ルベルト王子自体が狙われる可能性もありましたから」
「……だが、そんなもの――」
「将来の旦那の身を守るのが、婚約者の務めです。あらゆる状況を想定して、持ち込んでいました。本来の目的ではありませんが、これがあれば二人を救うことはできます」
私はここで一つため息をついて、さらに続けた。
「もっとも。ベラビス公爵ほどの立場の方が、ルベルト王子が実行犯だと決めつけるようであれば、これをあなた方に引き渡す義理もありません。オルセン国内で、毒を盛った犯人を探し出すことが条件です」
「……それが毒薬である可能性もあるだろう」
すっかり勢いをなくしたベラビス公爵がしわがれた声で言うのに、
「それならば、俺が保証しよう。もしこれを服薬して彼らが死ぬようならば、代償は俺の命でもって払う。一国の王の命だ。それくらいはしよう」
ルベルトがこう割って入ってきた。
その圧倒的な迫力にベラビス公爵は一歩、後ろへと後退する。
一方の私も驚ろかされて、言葉が出なくなる。
なにも言わなくてもよかったものを。自作の薬に一国の王子の命が賭けられるだなんて、聞いていない。……と、そんなふうにも思うが、しかし。
一方で彼の思いもまた伝わってきた。
たぶん私だけに責任を負わせるのをよしとせず、助けようとしてくれたのだ。
そしてなにより、私の作る薬を信じてくれた。
命を賭けるくらいの覚悟をこの短時間で決められるくらいには、はっきりと。
それは、実に頼もしいことだった。
「ちょ、まじで言ってます?」
ルベルトの横でデアーグがおろおろしているのを見て、私はくすりと笑い、
「それで、どうされますか」
ベラビス公爵ら、オルセン王国の面々にもう一度問いかけを行う。
その反応はまばらなものだった。
本来的に考えれば、すぐにでも首を縦に振るのが普通だ。なにせ一国の王と王妃の命が掛かっている。
だが、それは同時に、自分たちの中に犯人がいるのを認め、調査をすることとなる。
その展開をよしとしない、やましいところのある貴族らもいるだろうし、そもそも王家に不満を持つ者は、むしろ殺してくれと思っているだろう。
そんな思惑のせいか、オルセン王国の面々は牽制しあう。
私の父や母は、「早く!」と急かしてくるが、私はそれを捨て置き、全体の結論を待とうとする。
こちらもルベルトが命を賭けているのだ。変に、情を出すような場面ではない。
場が膠着状態になる。
と、そんなときのことだ。
「……く、すりを」
ハンナが呻くようにして、こう声を発した。
これには一気に、視線が床に倒れる二人へと向く。
「く、くすりをよこしな……さい」
毒薬が不完全だったのか、どうやらまだ毒は回り切っていなかったらしい。
ハンナは白目を剥きながら、片手で首を抑えつつ、必死にこちらへ震える手を伸ばそうとしてくる。
「くすりを……」
そこで今度はローレンも意識を取り戻した。
ハンナと同じように私に縋ってこようとする。
「あ……あたしをこんなふうにして、いいとでも思っているの。あたしは、おうひよ」
「いいからはやく……しろ」
私を勝手な理由で殺そうとして、ジールを死に追いやったくせに、いざ自分が死にかけたら、二人してこの傲慢さだ。
ぶわりと怒りがこみあげてくるが、私はそれをため息一つで追い払う。
ここは冷静でなくてはならない場面だ。
私は単に、這いよってこようとする彼らから少しだけ距離を取る。
「このままでは、あなた方が見殺しにしたことになりますよ」
そして少し語気を強めて言う。
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