料理男子、恋をする

遠野まさみ

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恋をしよう

予期せぬ展開(5)

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「…すみません、出過ぎた真似をして。これっきりなので、それは収めてください」

自嘲気味な笑みを浮かべる佳亮を、戸惑った薫子が見ている。それでも駄目なら、

「気持ち悪くて食べられないなら捨ててくれて構いません。僕が、お礼がしたかっただけなので…」

佳亮が言うと、薫子が口を開いた。

「そ、んな…。こんなことされたら、お姉さんお礼したくなっちゃうでしょ! 良いわ、杉山くん。明日はお仕事お休み?」

急に何を言い出すんだろう。確かに今日は金曜日で明日は休みだけど。

「それじゃあ、話は早いわ。貴方、明日、私の家に来なさい。そして料理を作って。私が食べて美味しいと言ってあげるわ」

ええっ、そんなの薫子に負担になるだけではないか。しかも「美味しいと言う」なんて決めつけている。

「大瀧さん、無理しないでください。僕なら卵を受け取っていただけるだけで良いので…」

「卵はもちろんありがたく頂くわ。でも、それとこれとは話が別よ」

別かなあ? 佳亮が首をひねると、薫子はこう言った。

「過去、どんな女の子に手料理を酷評されたのか知らないけど、今の世の中、料理が出来ない女だっていっぱいいるのよ。そう思ったら、料理のできる杉山くんは優秀なの! もっと自信持ってほしい」

ぐっとこぶしを握って薫子が力説する。でも、好きだった女の子に料理ができることを嫌がられた経験は、そう簡単には覆せない。

「兎に角! 明日、私の家に来なさい。そして、私の為に手料理を振舞って」
高い位置から見下ろされると、余計にノーとは言えない。佳亮は俯いて頷いた。

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