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恋をしよう
お味はいかが(1)-5
しおりを挟む「ありがとうございます、そこまで言うてもらえて嬉しいです。通りすがりの僕にこんなに親切にしてくらはる貴女は、そうとう良い人ですね」
「私? 私はなんにもしてないよ? ただ、佳亮くんの美味しいご飯を食べさせてもらっただけ。でもね、私の言葉で佳亮くんの辛かった過去を塗り替えられたのだったら嬉しいな」
にっこりと微笑む彼女は、確かに佳亮の心の傷にやさしく触れてくれた。それは今までほかの誰もしてこなかったことだった。
「いえ…。僕も久しぶりに人に食べていただける嬉しさを味わいました。本当にありがございます…」
ぺこりと頭を下げる佳亮に、薫子は、ふむ、と呟いて思案顔をした。佳亮は台所を片付け、残っているカレーを明日以降も食べられるように、冷めたら冷凍するよう薫子に伝えた。
「じゃあ、僕はこれで失礼しますね。今日はホンマにありがとうございまし…」
た、まで言い切れなかった。薫子が思いの外真剣な顔で佳亮の腕を引く。
「え…」
「佳亮くん。君のその腕、私が買いたい」
…………。
「は?」
間抜けな声を出してしまっても、おかしくはなかっただろう。
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