料理男子、恋をする

遠野まさみ

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恋をしよう

お味はいかが(3)-2

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とことん飾らない女性だなと思う。性格もそうなのだろう。だから、佳亮が付き合ってきた女性たちよりも、佳亮に寄り添ってくれたのだと思う。佳亮も、薫子のことを女性というより手のかかる子供のように思っている。その関係が気楽でいい。好きな料理を楽しめるのも良いし、その料理をおいしく食べてくれる薫子の存在は佳亮にとって大きい。人の縁は何処にあるか分からないものだなと思った。

考えていると、不意に薫子が話し掛けてきた。

「ねえ、佳亮くん。佳亮くんが私のご飯を作った後、家でもう一度ご飯を作らなきゃいけないんだったら、私の家で一緒に食べたらどうかな? 二度ご飯を作るのも大変でしょう。私の家で食べていけば一回で済むわ」

それは実は佳亮も考えた。しかし、会ってまだ数度の薫子と一緒に食事が出来るかどうか、自信がなかった。

「薫子さんは僕と一緒でご飯食べられますか? 作った僕を目の前にして、余計な気を遣わなきゃいけないんだったら、僕は遠慮します」

佳亮が言うと、なんだそんなこと、と薫子は笑った。

「私、お世辞言うように出来てないから。美味しかったら美味しいって言うし、不味かったら不味いっていうわ」

はっきりした人だな。でもその方が気を遣われなくていい。佳亮は薫子の提案に乗ることにした。どうせ月に二回程度だ。なんとでも繕える。

「じゃあ、お言葉に甘えて。そしたら材料の分量を考えないとあきませんね」

そう言って、スーパーで三人分の材料を買う。二人で一食分と、薫子のもう一回分の食材だ。事前に予定していた材料を全て三人分買う。随分嵩の増したエコバッグになったが、やっぱり荷物は薫子が持って、佳亮は隣を歩くだけだった。

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