ランジェリーフェチの純情少年と純愛青春

清十郎

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土屋朱美の章

第30話 朱美の決意

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(これまでのあらすじ……)

 愛するおばさんとの辛い別れを経た少年は中学生活の中で思いを募らせた少女と同じ道を歩み始めますが、高校3年の春、愛する少女は遠く異郷の土地で不慮の事故死を迎えました。その前後、少女の死に責任を感じるその少年の前に1人の少女が現れます。少年もまた次第に少女にひかれつつある自分に気づかされますが、かつての最愛の女性の死を引きずる少年はその葛藤に苦しみ始めます。そんな折、少年は中学時代に彼を慕っていた後輩の少女に合いました。少年の身を案ずる少女でしたが、他の後輩達は少年に冷たい視線を向けます。そして、その後輩達は少年を批判し絶交を宣言しました。しかし、その後輩達とのやり取りから少年は自分のしなければならないことを決意したのでした。

**********

(RRRRRRRR……)

 携帯電話の着信音が鳴り、少女はスマホを手に取りました。そして、画面に表示されている発信者の名前を見て、少女は少し頬を赤らめつつ、軽く息をついてから電話を取りました。

「はい、もしもし、……慎一くんから電話くれるなんて、どういう風の吹きまわし? ……なんだ、近くにいるんだ、……え? いま? ……いや、今ちょうど、短大の学校見学会から帰ったばっかで、まだ制服なんだけど……。」

 急な誘いに、ちょっと眉をひそめた少女でした。学校帰りの平日ならともかく、せっかくの休日に慎一と会えるなら、お気に入りのワンピースでも着て、可愛らしくお化粧して会いたいなと、一瞬だけ思ったのです。

 でも、すぐに気を取り直した少女は、少年の誘いを受けました。

「うん、まぁいいか。……すぐそこの角のファミレスね。……もう、いるんでしょ。……じゃあ、すぐ行くから。……うん、じゃあね。」

 少女は鏡台に向かい、セーラーの衿を整え、軽く髪をとかし、薄くリップ塗り、気合いを入れるように上下の唇を合わせてリップを馴染ませます。そして、鏡の中の自分に言い聞かせるように語りかけました。

「いいこと、朱美。これは慎一くんからの挑戦だからね。どうせダメ元なんだから、気合いだけは負けるなよ。……よし、行ってこい! 」

 朱美には先日の雨の日から、この日の来ることがなんとなく分かっていました。これからのことをあれこれ考えてもみましたが、でも、どうしても結論が見えません。どうして良いか、全然、分からないのです。そんな悶々とした毎日を過ごしていたのです。

 最初は、男子校の彼氏を作ろうかなという程度の、愚かな虚栄心から始まりました。そんな気持ちであれば、いつまでも面倒な男に引きずり回される必要もありません。メリットのなくなった時点ですぐにサヨナラすれば済む話です。

 しかし、彼女が少年の深い嘆き悲しみを知ってしまってからは、自分でも不思議なくらいに少年に対して何かをしてあげたいという、見えない何かに突き動かされる衝動がどうしても押さえきれなくなってしまいました。

(もともとわたしは、こんな甲斐甲斐しく殊勝に誰かを待っているような、そんなバカな女なんて大嫌い……だったのに。……でも、慎一くんのことが心配で心配で、わたしもバカになっちゃった。)

 エレベーターのドアが開き、少女は中に入ります。

(未練を残したままの理恵子さんが、もし、ここにいるなら、……ごめん、勝手なお願いだけど、力を貸して。わたしがどんなに頑張っても慎一くんの心はやっぱりあなたのもの。わたしにはかなわない。)

 いつもはイライラするほどじれったい遅いエレベーターでしたが、なぜか今日は、その遅さにかえって救われる思いでした。

(……わたしはどうせフラれるけど、慎一くんが立ち直れるように、……お願い、理恵子さん。わたしを助けて。)

 マンションの遅いエレベーターをゆっくりと降りながら、いつの間にか手を合わせて、何かを祈らずにはおられない少女でした。

**********

 ファミレスの場所はマンションから歩いて1分もかからない目の前でした。3人掛けの長椅子を対面にしたコンパートメントにいる少年からも、マンションから出てくる土屋朱美の姿がよく見えていました。

 すぐ目の前にあるお店ながら、少女は長い髪を揺らして、息せき切って少年のもとにやってきました。

「ごめんね~、分かってたら、もうちょっとましな格好で来たのに。」

「ぼくが勝手に来たんだから、こっちこそ急に電話しちゃってごめん。帰ったばかりのところに悪かったね。」

「ううん、ナイスタイミングだったよ。」

 そんな感じで、一般的な高校3年生らしく、話題はどうしても卒業後の進路の話しになります。最初のうち、ふたりは、その話しで場を持たせていましたが、そのうち、少年が進路の話しに合わせて本題を語り始めました。

「そろそろ、受験勉強がしんどくなって、模試の判定も厳しいから、毎日が勉強漬になりそうなんだ。もう、土屋さんともなかなか会えないかな、と思って。電話も出れなくなると思ったから。」

「そうだね、慎一くんは都内の有名私大を受けるんだから、わたしなんかとは違って大変だもんね。中央大学の文学部だっけ? 」

 少年はなんとなく面映ゆい感じだった。特に目的があって大学を決めたわけじゃありません。理恵子が中央高校だったから、なんとなく中央大学に決めただけのことでした。もっとも、文学部を選んだのには別の理由がありましたが。

「そっかそっか、じゃあ、慎一くんが大学に合格するまで、しばらくは会えなくなるよね。……そうかぁ、残念だけと、慎一くんの将来の大事な進路だからわたしも我慢しなきゃね。」

「ごめんなさい。土屋さん。」

 慎一は予想外にものわかりよく相手が素直に慎一の話しを聞いてくれたことにホッとしました。

「そうすると、しばらく慎一くんには会えないし、……そうだ、慎一くんにあげたいものがあるんだった。受け取ってくれるかな? 」

「え? いや、……そんな。」

 突然の申し出に驚いた少年は戸惑いましたが、少女はここぞとたたみかけてきます。

「遠慮しないで、ちょっと、家まで来てくれない? すぐそこだし、今日はパパもママも留守だから気兼ねしなくていいよ。もう、しばらく会えなくなるんだし、来て来て。」

 自分の主張だけを相手に承諾させることに若干の後ろめたさを感じていたこともあり、仕方なく、少年は、少女に誘われるままファミレスを出て、マンションへと向かいました。

**********

 少年は、少女の部屋に通されました。少女は何かしら準備があるのか、少年を部屋に待たせて出ていきました。部屋に待たされた少年は、改めて部屋の中を見渡しました。体操着や布団の中にも香った少女の良い匂いが少年の回りに漂っています。

 あの時は少年が熱でぼおっとしていましたが、その折に少年が休んだベッドが目の前にあります。少年はなぜかちょっとした恥ずかしい気持ちにもなりました。

(ここで、朱美に介抱してもらったんだよな。)

 あの時、自分がおぼろげの意識の中、理恵子の夢を見ていたと思っていたものが、実は朱美が介抱してくれていたものだったと後で気づきました。

 彼女が自分の服を着替えさせ、汗を拭き、洗濯をしてくれたことに思いを巡らすと、少年は改めて申し訳ない気持ちになると共に、彼女に対する好意をより深めてしまいそうでした。

(……だめだ、このままじゃ、本当に彼女を好きになってしまう。ぼくがそんなことをしたら、理恵子へのぼくの愛はその程度のものに過ぎなかったことになる。)

 少年は、彼女と何度もぶつかり、理恵子には見せたことのないような短気もしばしば見せていました。しかし、感情をぶつけ合いながら、いつの間にかその少女に好意をどんどん深めていく自分にもようやく気づき始めていました。

 それに、少年はまだ気づいていませんが、ふたりが度々ぶつかるのも、ひねくれた心となった少年の痛いところを、少女が的確に突いてくるからです。少女ほど、今の少年の心情を理解している者はいないし、少年の破滅的な将来を憂えている者はいないのです。

(ぼくは理恵子とはどんなことも話し合えた……でも、朱美の前でも不思議とぼくは素のぼくをさらけだすことができた。それはきっと、朱美に対してぼくが気持ちを許し始めているからかもしれない。……このままズルズルしていれば、きっと彼女を今以上に傷つけてしまう。)

 自分の殻に閉じこもろうとしている少年には、少年にとっての大事な人になりつつあるこの少女を傷つけないようにしたい、それが少年の思う少女に対するいたわりのつもりでした。

 少年は、少女に対する自分の思いがこれ以上深まらない内に、少女と別れることが少女のためだと自分勝手な思いを抱いていました。

「コンコン……。」

 その時、ドアをたたく音がしました。

「慎一くん、はいるよ。」

「あ、ああ、……はい、どうぞ。」

 自分の部屋に入るのにノックも変だな? と思いつつ、少年は反射的に答えてしまいました。しかし、ドアが開かれた瞬間、入ってきた少女の姿を見た少年は予想外の少女の姿に驚いて、ただ唖然として固まってしましました。

「え!……あけみ……。」

 そこには純白のスリップ1枚を身につけただけの少女がいたのでした。少女の美しく長い黒髪が、右肩から前に垂らされ、見事な白と黒のコントラストを描き、これ以上はない清楚な少女の姿をなしていました。

**********

 その少し前、少女は少年を部屋に通してコーヒーを出すと、部屋を出て洗面所に行きました。

(受験勉強なんて話しが通用するわけないでしょ。慎一くんも相変わらず勝手なくせに、やることが単純だよ。でも……。)

 少女は洗面所の鏡の前で、しばし自問自答しています。

(でも、……わたしも勝手なお願いでごめんなさい。理恵子さん、慎一くんのため、お願い、わたしに力を貸して。)

 少女は、鏡に写るセーラー服姿の少女を、キッと睨むように見つめました。

 まず、両腕袖のボタンをパチパチと外し、次に、右手を左側のセーラー衿の裏側にある棒タイの留めボタンをパチンと外します。右側のボタンだけが留まった状態の棒タイがブラブラする中、セーラー衿の先端のホックを外し、ふたつある胸元のボタン留めをパチンパチンと外します。そして、左脇のファスナーをジーッと引き上げると、一気に制服を上に脱ぎ去ります。

 次いで、少女の手は濃紺のプリーツスカートにかかります。左脇のホックを外し、ファスナーを下げると、スカートは自然落下して少女の足下に美しい弧を描きます。

 毎日毎日、何度も繰り返す行為でしたが、なぜかこの時は、ひとつひとつの動作がとても緩慢で、少女も意図的であったのか、まるで確認するかのようにゆっくりと制服を脱ぎました。そして、床に膝をつき、丁寧に制服をたたみました。

 再び立ち上がった少女は純白のスリップ姿になっています。

(やると決めたら徹底してやらないと……。)

 少女は更にそのまま己の姿を鏡の中に見つめたあと、スリップを着たまま、ブラジャーの背中のホックを外し、そのストラップを肩から外し、スリップを脱がずにブラジャーだけを脱ぎました。

(まだまだ、もう1枚……。)

 そして、意を決っしたようにスリップの両裾に両手を入れると、一気にパンティを脱ぎ去りました。文字通り、少女はスリップ1枚の姿になってしまったのです。スリップ1枚だけを残したのは彼女の最後の恥じらいのあらわれだったのでしょうか。

 再び、鏡に向かった少女は、最後にメガネを取り、そのまま洗面台に置きました。そして、鏡の中の自分につぶやくように語りかけます。

「いいよね、朱美。後悔はしないよね。……誰でもない、わたしが自分で決めたんだよね。……行くよ、朱美!」

 自分に念を押すようにつぶやくと、少女は、自分に更なる決意を促すかのように「よしっ! 」とひと言、小さく気合いを入れて洗面所を後にしました。
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