ランジェリーフェチの純情少年と純愛青春

清十郎

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三枝理恵子の章

第17話 探索の旅(改)

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 数日後の日曜日、2人は、クラスメイトの女子の自宅探しという意味不明の旅に出発することになりました。動機と目的は、いかにも、中坊らしい可愛いものでしたが。

 裕司は慎一の協力を受けて、勇躍して楽しそうに自転車を漕いでいきます。裕司の後ろに続く慎一は、やや複雑な心境でもありましたが、裕司の勢いに何とはなしに引きずられていきます。

 しかし、彼らの気合いの盛り上がりも、時間の経過と共に次第にしぼんでいくこととなります。目的の成果が十分に得られない状況の中で、士気の高さを維持していくのは、軍隊じゃなくてもなかなか難しいことです。ましてや勢いだけの中学生では……。

 住所からだいたいの当たりはつけられますが、結局、二人の少年は、半日かかっても三枝理恵子の自宅の特定はできませんでした。地番までは確認が出来ても、マンションなどの集合住宅が複数あり、どの建物かまでは分かりませんでした。

 それに、どのマンションもセキュリティがしっかりしていて、暗証番号が分からなければエントランスにも入れませんし、ポストも分かりません。

 後で考えれば全く迂闊なことでした。あらかじめネットで検索すればピンポイントで地番からマンションが特定できますし、本屋に行けば住宅地図だってあるし、住宅地図にはマンション内の住居者表示まで示されています。それがまた中学生の知恵の浅はかさ、もしくは限界というものだったのかもしれません。

「だいたい、このへんだと思うんだけどなぁ、こんなにマンションやビルがあるとは思わなかった。」

 ふと、道端に自転車を停めた裕司が溜息をつくように言葉を吐き捨てます。彼の胸算用では、もっと簡単に目的の一軒家にたどり着くものだと、勝手に希望的な観測に支配されていました。

「もう、無理なんじゃね?ここいら辺りだって分かっただけでいいべ。」

 慎一は、これで裕司が探索をあきらめてくれればそれでも良いか、それくらいの軽い気持で探索の打ち切りを提案しました。

「しゃぁないなぁ。」

 次第に裕司もあきらめの方向に傾き始めています。慎一としては親友をスッパリと断念させるため、ここで更なるダメ押しをしました。

「それに世の中じゃ個人情報とか何とかうるさいし、この辺の同じ処をあまりウロウロしてると、ストーカーとか不審者とかに思われて、お巡りさんに捕まるぞ。」

 もっとも、深夜ならともかく、中学生が二人、自転車に乗って街をうろついてるだけで職務質問をかけるほど、警察官も暇ではありません。

「だいたいさ、家をつきとめてどうすんだよ。」

 慎一はそもそもの素朴な疑問を聞き返します。まさか、彼が同級生の女子の家に押しかけて愛を告白するとは思っていません。だいいち、告白するだけなら学校でも良いわけですから。

 むしろ、マジにストーカーでもやりかねないかと、少々心配になりだしてきたのです。

「家が分かればさ、窓越しに三枝の姿が見えたりしたら嬉しいじゃんかよ。」

 慎一は裕司が街中からマンションの窓の灯りを眺めている姿を想像してみました。日中は学校や部活がありますし、窓辺に灯りがつく以上、既に日が暮れている時分です。

 思い人の自宅の窓を見るためだけに、夜な夜なこの近辺に来ると言うのでしょうか。それにそれを見るために、夜中に何時間、待つつもりなんでしょう。

「裕司よ、そうゆうのを世の中じゃストーカーって言うんじゃね?」

 慎一が裕司に振り返って言葉をかけました。しかし、その瞬間、慎一の視線の先に、思ってもみなかったものが見えたのです。

 そこにあるマンションの中層階のベランダ、そこに慎一は見慣れたある少女の姿を見かけたのでした。

 休日でありながら、部活帰りか塾帰りなのか、まだ制服を着たままの少女は、慎一の見慣れた真っ白いブラウスの制服姿で、部活のスポーツタオルのようなものを物干しにかけているのでした。いえ、見慣れた制服姿だからこそ、慎一も瞬間的に少女の判別が出来たのかもしれません。

 慎一の視線に気づいた裕司は、ふと何かと思って振り返りそうな素振りをみせましたが、その刹那、慎一は咄嗟に叫びます。

「やばい、お巡りさんだ!こっち見てる!ストーカーで捕まるぞ!裕司!逃げろ!」

 そう言って、唐突に慎一は自転車を漕ぎだします。一瞬だけ振り向いて確認しようとした裕司でしたが、猛烈なスピードで走り出した慎一に、慌ててその後ろを追いかけようと自転車のペダルを漕ぎだし始めました。

「お、おい、おい、待ってくれよ、慎一~~~~!」

 裕司は、てっきり自分たちの様子を窺っている警察官がいると思いましたので、背後の路上に一瞥をくれただけで、慌てて自転車を走りださせました。

 そのため、マンションの中層階までに視線を上げることもなく、そこに彼の求める姿があることも知らぬまま、慎一の後ろを追いかけたのでした。

 深夜じゃあるまいし、ただ自転車に乗っているだけの中学生をストーカーなんて思う警察官なんていやしません。まして職務質問なんてする筈もありません。

 でも、ちょうどそんな話しをしていたばかりでしたし、裕司としては、女子の住所を探しているというストーカー的行為の後ろめたさが、勝手に、いもしない警察官の影に怯えさせる効果を生み出してしまいました。

(裕司……ごめん。)

 自転車を漕ぎながら、慎一は心の中で親友に謝りました。

 少女の姿を見た瞬間、そして、裕司が振り返りそうな素振りを見せた瞬間、慎一は無意識のうちに裕司をその場から連れ去らなければならない、裕司に理恵子の家を知られてはいけない、という思いに駆られ、咄嗟に叫んだのでした。

(あれ?なんで?……理恵子の家探しのために裕司と来たのに、なんで俺は裕司に教えないんだ?……あれ?)

 自転車をこぎながら、慎一は自分の理屈に合わない行動に訳が分からなくなっていました。

「おい、慎一、待ってくれよ!」

 親友の絶叫も彼の耳には届かないほど、慎一の頭は混乱していました。

(なんで?……え?……まさか?……俺、理恵子を?……いや……。)

 慎一は頭の中に疑問を渦巻かせながら、一刻も早くその場から離れようと、必死に自転車を漕いでいました。

***********

 少女は受験を控えた中学3年生でした。志望校にはちょっと点数が足りないので、部活動のない日曜日には学習塾に通っていました。

 そして、塾から帰ってから、部活で使ったスポーツタオルや体操着、それに毎日のハンカチなどを洗濯して、ベランダの物干しに掛けていました。

 少女の所属している部活はテニス部でした。校舎の南側にあるテニスコートで、もっぱら、屋外の練習にほとんどの時間を費やしますので、特にこの季節、春から秋にかけて、いくらあっても足りないのがスポーツタオルでした。

 また、屋外の部活動であるだけに、顧問の先生からの熱中症に対する指導も日頃から耳タコで聞かされています。そのため、常にポットには冷たい氷を用意して、更に余分に多くのスポーツタオルを常に準備していました。

(ほんと、タオルと体操着だけは、いくらあっても足りないよ。)

 そんな時、少女の耳に、どこからか聞こえる声が、風に乗って聞こえてきました。。

「あれ……。」

 振り向いた少女は、ふと、ベランダから見える町並みの中に、誰か見知った人の姿を見かけたような、聞き慣れた誰かの声が聞こえたような、そんな感じを受けました。

「慎一……くん……?……まさか、……ね。」

 少女はベランダにタオルを干すと、部屋の中に入って行きました。

**********

 慎一は自分の気持ちの変化にようやく気づき始めたのかもしれません。それはあまりに遅すぎたのかもしれませんが、逆にそれだけおばさんへの思いが強かったと言うことができるでしょう。

 あの結婚式の日から、慎一はまともにおばさんとは会っていません。しかし、会っていないからこそ、慎一のおばさんとの思い出はますます美化され、また、思いが強くされていったはずです。

 それだけに、慎一にとっては、別の女性に対する思いが心の中に入り込む隙は、全くなかったと言えるでしょう。だからこそ、慎一は自分の心の動きに驚き戸惑うしかなかったと言えます。

 一方、全くの無駄骨に終わった裕司は、慎一が気の毒になるほど、かなりしょげかえっている様子でした。

 しかし、慎一には結構な満足感がありました。三枝理恵子の家が判明したことはもちろんですが、彼女が住み育った町とその雰囲気を感じただけで、なんとなく彼女との距離がより縮まったような気持ちになれたからです。

 なお、その後の裕司は、新たなアクションを取ることもなく、いつしか裕司の口からも、三枝理恵子についての話題は出なくなっていきました。
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