7 / 10
始動
始動 上
しおりを挟む翌日、再び会議室に集められたリエルとノラのメンバー達。
アクトが机一面に地図のような物を映し出すと、会議が始まった。
「この前は派手に動きすぎたから、今度は偵察を行う。
情報を得られそうなものは、持って帰ってきて欲しいが…機械類は探知機が仕込まれている恐れがあるから絶対に触るな。
怪しい機械があったら、紙媒体の資料の奪取と写真撮影を頼む。」
前置きとしてアクトは、そう話すと指揮棒を伸ばして先端で地図を指していく。
今回向かう場所は奪われてしまったかつての人間の居住区の一つ。
向かうメンバーは、アクト、ベル、B.K、アンナで後は休みと警備を兼ねた留守番。
「いつも通りだ、ベルのゴーレムで近くまで向かい…そこからは俺とアンナで内部に侵入。
B.Kは何かあった時の為に、いつでも狙撃できるように高台で待機。
ベルは、ゴーレムで表側の情報収集とB.Kの護衛。
大きな心配はしていないが…他の皆はリエルの事を頼む。」
あとは…とアクトが言葉を紡ごうとしたら、リエルは大きく手を挙げた。
予想外の行動にぱちくりと、目を見開いたがすぐに表情を戻してアクトは話を聞く姿勢になる。
「どうした、リエル。」
アクトは、優しいトーンでそう言ったが全員がこちらを注目していると出そうとしている声が引っ込みそうだ。
ごくっと喉を鳴らし覚悟を固めて口を大きく開く。
「…私も連れていってほしい。」
「理由は?」
周りがざわつく中、アクトはシンプルにそう聞いた。
アンナが止めるべきだと抗議しようとしたが、アクトは無言で視線だけをアンナに送り静止を促す。
「私は、この組織についても今の世界についても何も知らない。
うまく言葉にできないけど…いかなくちゃいけないと思った。」
「何も今じゃなくてもいいじゃありませんか。
偵察は今回に限った話じゃありませんし、訓練をしっかり行った後でも…。」
アンナ。
アクトはそう一言だけ会議室に響かせてアンナの言葉を止める。
ふぅ…と大きく息を吐きだして、少し間を置く。
「リエルも訓練した方がいいのを重々承知の上での発言だ、それを訓練してからといって後回しにするのはいけないだろう。
しかし戦闘を避けた偵察とはいえ危険な事には変わりない、それはリエルもしっかりと理解しているか?
リエル、お前の行動や失敗が自分や仲間、ここにいる非戦闘員の人達も危険にさらすことになる。」
アクトはそういうと、椅子から立ち上がり皆に背を向けて会議室の扉をあける。
「本当に覚悟があるなら訓練室に着いてこい。
付け焼刃くらいにしかならないが、必要最低限行動ができる位の訓練をしてやる。
訓練についてこれたら連れて行ってやるが、無理だったら今回は諦めてもらう。
リエルもアンナもこれでいいな?
後は他に何かあるか?」
意見や要望が帰ってこないのを確認するとアイクは会議室を出ていく。
リエルも直ぐに後を追うように駆け足で会議室を出ていった。
アンナはそんな2人の様子をソワソワとしているのを見かねたB.Kがゴシゴシと頭を掻いた後にアンナの手を引く。
「気になるならついていけばいい。
怪我が一番の心配なら尚更だ、お前のキーウエポンは壊すことしかできないのか?」
「いいえ、違いますわ。
ありがとうございます、行きましょうB.K様!」
B.Kの言葉を聞いたアンナはハッとした表情になり今度はB.Kを引っ張るように前にでて会議室を出て行った。
0
あなたにおすすめの小説
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから
渡里あずま
ファンタジー
安藤舞は、専業主婦である。ちなみに現在、三十二歳だ。
朝、夫と幼稚園児の子供を見送り、さて掃除と洗濯をしようとしたところで――気づけば、石造りの知らない部屋で座り込んでいた。そして映画で見たような古めかしいコスプレをした、外国人集団に囲まれていた。
「我々が召喚したかったのは、そちらの世界での『学者』や『医者』だ。それを『主婦』だと!? そんなごく潰しが、聖女になどなれるものか! 役立たずなどいらんっ」
「いや、理不尽!」
初対面の見た目だけ美青年に暴言を吐かれ、舞はそのまま無一文で追い出されてしまう。腹を立てながらも、舞は何としても元の世界に戻ることを決意する。
「主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから」
※※※
専業主婦の舞が、主婦力・大人力を駆使して元の世界に戻ろうとする話です(ざまぁあり)
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる