Nora First Edition

鷹美

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第五話

第5話 28

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ベルの矢は、グラムの肩を貫く。
身体をひねり上手く即死を避けたようだが…かなりの大穴を開けられたから致命傷にはかわりない。


撃ち抜かれた肩を押さえて初めて表情を歪めた。



「まったく…〝エース〟め、何が脆弱な肉体ダ。
中々にやりおるじゃないカ。」



ここにはいない、誰かに恨み言のようにそう言うと膝を地面につけた。


アイクはそんな隙を逃さないように大きな声で号令をかける。



「今がチャンスだ!
全員、技でアイツを打ち抜け!」



“技の1段”



アイクの号令で、全員がグラムに向かって火の玉を放つ。


心特化型のヤスは、 杖の先端に炎の刃を出現させてそれを放った。




「これで、終わりです!」


“技の1段 炎魔
〔ぎの1段 えんま〕”





カナは、その場で地面を火花を散らすように引きずりながら横に7回転すると刀を振り上げる。
火花は徐々に集まっていき大きな炎の塊となると振り上げた際に前方に飛んでいく。




「っちィ。

森羅万象…全。」



“クロス・ゼロ”





グラムは、両手を前に向けると透明な幕のようなものを出現させる。
そして、透明な幕に当たった攻撃は全て消えていった。



まるで何事もなかったかのように。



手負いにも関わらずまだ、余力があることにアイクの表情が青ざめていく。




「倒すことは考えるな、逃げるぞ!
逃げ切るなら手負いの今しかない!!」



ベルも同じ気持ちだったようで直ぐにキーウエポンを地面に叩きつけ魔方陣を展開する。



“心の0段”



ベルは人数分のユニコーンを召喚すると一番を抱えてユニコーンに乗り先頭を走りだした。



「…ここまでやったのだ、タダで逃がられるとは思わないことダ。」


本当に怒っているのだろう。
グラムは怒気を強めたドスの効いた声をひびかせると右手で傷跡に触れる。


“リセット”


グラムは、右手で触れた傷跡を素早く治癒した。
まるで何事もなかったかのように。


そしてグラムは強い敵意を込めた瞳でアイクとベルをみる。


「やれやレ。
これをつかうとはナ。

森羅万象、全てを組み合わせるとどうなるかわかるかネ?

冥土の土産に講習を開いてやろう時空、重力をもねじ曲げる大きな自然の力についてナ。」



“プラス”



グラムは、そういうと地面に手を当てた。
周囲に風が吹いたと思ったら、グラムの周囲にある全ての物が地面にめり込む。

アイク達も例外ではない。
ただ、アイク達は体の加護があるためめり込むまではいかないが、動きを止められる程の負荷はかかっているようだ。

あたりに他の獣が見当たらないことから、グラムがこれを見越して他の獣達を前もって避難させていたのだろう。
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