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プロローグ
プロローグ12
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「お疲れ様。
僕の方は、この通り無事さ。
僕の方は、死者しかでなかったよ。
拘束しても自害した余程、僕達に情報を渡したくなかったみたいだね。
蓮が拘束していた賊も歯に毒を仕込んでたのか、舌を噛んで自害していた。」
優は疲れをみせない様子で淡々と護にそう報告した。
痛々しそうに護は、優が連れてきた賊の骸を眺める。
彼は一人で非常口を守っていた。
彼だけじゃない、蓮も単身で馬をつかった大介と同じ距離を移動していたにもかかわらず疲労の表情を見せていない。
…恐ろしい人達だ。
東はそんな事を考えながら、民と一部の兵士を客室に残し地下牢に向かう。
民の安全を考慮して東野を襲撃した捕縛した賊達は一人残らず牢に入れる。
勿論、あの金髪の子供もだ。
椿は何か言いたげだったが、事態も事態だからグッと堪える。
そんな椿の頭を蓮は軽く撫でた。
「知っているものもいるだろうが、初めまして。
余は東、この地の長だ。
怪我をしているものは、他にはいないな?
いないのであれば、さっそく話を聞かせてもらう。
この中で、一番位が高い若しくは一番状況を把握しているのは誰だ?」
東の声は、牢の柵越しだからなのかそれとも民に危害を加えたからなのか震えている様子もなく、威圧的な声だった。
東はそう言いながら、牢の中全体を見渡すように賊達を見た。
勿論、素顔は全員を晒されている。
位が高いのは…と東は言葉にしたが、全員が男で痩せ細っておりとてもじゃないが武士や戦士…そして賊には見えない。
すると、一人がポツリポツリと言葉を溢した。
涙を流し、声を震わせながら。
「私達は、ここから山を超えた先にある名もない小さな集落の人間です…。
豊かではありませんが、食べ物に困るほど貧しい訳でもなく…集落の人間同士が手を取り合って暮らしていました。」
彼の話をより詳しく聞くと、この牢の中にいるのは集落の人間と山賊が買った奴隷が混ざっているようだった。
この発端は、小さな集落に山賊が襲撃してきたと下手な話だった。
山賊騒ぎなど、戦では日常茶飯事なのだが他の領土に作物を寄付する代わりに戦士を警護に回してもらっていたようだ。
その領土も確実な食力確保の為に手練れの戦士や侍を派遣してくれていたようで皆は平和だったのだが、山賊を引き連れた一人の剣士が警備の兵を悉く倒していき…ついには完全に占拠されてしまったのだ。
女、子供は人質。
賊達の強固な拠点制作の為に、男達は賊が集めた奴隷と共に強制労働。
こんな目にあっているため、奴隷と区別していってはいたが自分達も大差はないだろうとポツリとつ呟くように言っていた。
砦が完成すると、山賊達は先ずは規模が小さく特別軍事が長けていない東野に攻めると言ったのだ。
逆らえば、どうなるかは…言われるまでもないだろう。
話せる事を全て話すと、男は両手の掌を地面に当てて深々を頭を下げて謝罪した。
その事に一番腹を立てていたのは、東だった。
16歳とは思えないほど、ピリピリとした圧を放っている。
話を聞き終えた東は一呼吸置くと、ゆっくりと牢の淵まで移動して話してくれた賊…捕虜の側まで移動した。
「父上、母上が亡くなってから民はまるで自分の家族のように親しく余を支えてくれた。
そんな東野の全ての民を余も父や母、祖父母、姉兄、弟妹だとおもっている。
大切な家族に手を出した者は絶対に許さない。」
怒りに震えるその声は、蓮が対峙した時には考えられないほど力強いもので流石の護も思わず目を見開いて東を見てしまう程だ。
その圧にやられたのか、あの金髪の子供を除き他の捕虜達や奴隷達も頭を地面に当てるように下げた。
東は、牢の中に一人で入ると捕虜の肩に左手を置いた。
ビクッと一瞬震えた捕虜だったが、恐る恐る顔を東に向けた。
「だからこそ、家族や幸せを奪われた者の気持ちは痛いほど分かる。
東野の名にかけてその山賊を討伐しよう。
居場所がない者がいるなら、東野が受け入れよう。
仕事は勿論こなしてもらうが…食糧や住処等は東の名にかけて全て補償しよう。」
捕虜が顔を顔を上げた先には、右手を差し出して優しい顔を浮かべる東の姿があった。
その姿に目の前の捕虜だけでは無く他の捕虜達も一斉に東の手をとり、大きく大きく泣き出した。
東はそんな捕虜達のひとりひとりを抱きしめていった。
もう大丈夫だと。
僕の方は、この通り無事さ。
僕の方は、死者しかでなかったよ。
拘束しても自害した余程、僕達に情報を渡したくなかったみたいだね。
蓮が拘束していた賊も歯に毒を仕込んでたのか、舌を噛んで自害していた。」
優は疲れをみせない様子で淡々と護にそう報告した。
痛々しそうに護は、優が連れてきた賊の骸を眺める。
彼は一人で非常口を守っていた。
彼だけじゃない、蓮も単身で馬をつかった大介と同じ距離を移動していたにもかかわらず疲労の表情を見せていない。
…恐ろしい人達だ。
東はそんな事を考えながら、民と一部の兵士を客室に残し地下牢に向かう。
民の安全を考慮して東野を襲撃した捕縛した賊達は一人残らず牢に入れる。
勿論、あの金髪の子供もだ。
椿は何か言いたげだったが、事態も事態だからグッと堪える。
そんな椿の頭を蓮は軽く撫でた。
「知っているものもいるだろうが、初めまして。
余は東、この地の長だ。
怪我をしているものは、他にはいないな?
いないのであれば、さっそく話を聞かせてもらう。
この中で、一番位が高い若しくは一番状況を把握しているのは誰だ?」
東の声は、牢の柵越しだからなのかそれとも民に危害を加えたからなのか震えている様子もなく、威圧的な声だった。
東はそう言いながら、牢の中全体を見渡すように賊達を見た。
勿論、素顔は全員を晒されている。
位が高いのは…と東は言葉にしたが、全員が男で痩せ細っておりとてもじゃないが武士や戦士…そして賊には見えない。
すると、一人がポツリポツリと言葉を溢した。
涙を流し、声を震わせながら。
「私達は、ここから山を超えた先にある名もない小さな集落の人間です…。
豊かではありませんが、食べ物に困るほど貧しい訳でもなく…集落の人間同士が手を取り合って暮らしていました。」
彼の話をより詳しく聞くと、この牢の中にいるのは集落の人間と山賊が買った奴隷が混ざっているようだった。
この発端は、小さな集落に山賊が襲撃してきたと下手な話だった。
山賊騒ぎなど、戦では日常茶飯事なのだが他の領土に作物を寄付する代わりに戦士を警護に回してもらっていたようだ。
その領土も確実な食力確保の為に手練れの戦士や侍を派遣してくれていたようで皆は平和だったのだが、山賊を引き連れた一人の剣士が警備の兵を悉く倒していき…ついには完全に占拠されてしまったのだ。
女、子供は人質。
賊達の強固な拠点制作の為に、男達は賊が集めた奴隷と共に強制労働。
こんな目にあっているため、奴隷と区別していってはいたが自分達も大差はないだろうとポツリとつ呟くように言っていた。
砦が完成すると、山賊達は先ずは規模が小さく特別軍事が長けていない東野に攻めると言ったのだ。
逆らえば、どうなるかは…言われるまでもないだろう。
話せる事を全て話すと、男は両手の掌を地面に当てて深々を頭を下げて謝罪した。
その事に一番腹を立てていたのは、東だった。
16歳とは思えないほど、ピリピリとした圧を放っている。
話を聞き終えた東は一呼吸置くと、ゆっくりと牢の淵まで移動して話してくれた賊…捕虜の側まで移動した。
「父上、母上が亡くなってから民はまるで自分の家族のように親しく余を支えてくれた。
そんな東野の全ての民を余も父や母、祖父母、姉兄、弟妹だとおもっている。
大切な家族に手を出した者は絶対に許さない。」
怒りに震えるその声は、蓮が対峙した時には考えられないほど力強いもので流石の護も思わず目を見開いて東を見てしまう程だ。
その圧にやられたのか、あの金髪の子供を除き他の捕虜達や奴隷達も頭を地面に当てるように下げた。
東は、牢の中に一人で入ると捕虜の肩に左手を置いた。
ビクッと一瞬震えた捕虜だったが、恐る恐る顔を東に向けた。
「だからこそ、家族や幸せを奪われた者の気持ちは痛いほど分かる。
東野の名にかけてその山賊を討伐しよう。
居場所がない者がいるなら、東野が受け入れよう。
仕事は勿論こなしてもらうが…食糧や住処等は東の名にかけて全て補償しよう。」
捕虜が顔を顔を上げた先には、右手を差し出して優しい顔を浮かべる東の姿があった。
その姿に目の前の捕虜だけでは無く他の捕虜達も一斉に東の手をとり、大きく大きく泣き出した。
東はそんな捕虜達のひとりひとりを抱きしめていった。
もう大丈夫だと。
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