コバナシ

鷹美

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プロローグ

プロローグ13

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「避難民であれば、ここにいる必要はない。
他の者には私から伝えよう。

先ずは客間にいき、事情を話しする。
それから、幹部を集めて…。」


そんな話をしながら、東は捕虜を連れて客間に戻っていったが…一人だけ残ったものがいた。

金髪の子供だ。


「君は…。」


「童、どうした。
お前さんはいかぬのか?」


優がを子供みてそう呟いた瞬間に、蓮がそう言いながら牢の中に入り子供の側まで行く。
それに気がついた椿も蓮の後に続き、子供の隣に座る。

自分の娘と同じくらいの子供を見てしまったのだ放ってはおけないな。
ふぅ…と大きく息を吐いた優も二人の後に続き牢の中に入った。



「結局は、武器を手に取りここにきたんだ。
俺も山賊の仲間と変わらないさ。」


体育座りをした男の子は、素っ気なくそういった。
膝の中に顔を埋めて丸くなり始める。


こんっの石頭め…。
蓮は顔に手を当て、ひどく困った顔をする。


「先程の捕虜も言っておったろ。
この集まりは、どの肩書きであれ奴隷と同じじゃったと。
嫌でもやらなければ、いけない状態まで追い込まれておったのだ。

東様も、原因が原因な故に不問としており居場所がない者は東野の民として居場所を提供すると言っておるのじゃぞ?
誰かを除くなんて事は一言も言っておらん。」


それでも子供は、動く気配はない。
椿もご飯とか食べればきっと考えも変わるよと、丸くなった体を揺らすが反応はない。

どうしたものか…。
困り果てた蓮と椿だったが、その後に優が力技で高い高いするように高く持ち上げる。

顔に似合わず力強い行動に子供は少し動揺した表情を浮かべた。
そんな事を気にもせず、優は子供の全身を軽く回して口を開く。


「彼が…簡単な情報共有の時に、蓮の攻撃を避けた子?」


蓮が優の一言に頷くが、優は子供を下ろす気配はない。
子供も子供で、抵抗するわけもなく顔や視線を優の足元に向けて力なくブラーンとぶら下がってる。

優はうーんと少し考えるように唸った。



「まぁ、君の胸の内は大凡予測できる。

武器を向け人を殺そうと動いたことで罪悪感で胸がいっぱいとか…。

結局、東野にいた所で自分が変わることができないと考えてしまっている事…かな?」


変わる事ができないと考えている。
そういった瞬間に男の子の顔がバッと優に向けられた。

原因が分かって満足なのか、ニヤリと笑みを浮かべる。
そして子供をゆっくりと下すと前に腕を組んで話を続けた。


「そうかそうか、君は…卑屈くんかぁ。
変わることができる出来ないなんて、行動しなくちゃ分からない。

変わる覚悟が本物なら…僕達の所に来るといい。
蓮の攻撃をまぐれでも避けたのであれば、多少でも資格があるものとして守護者の跡継ぎ候補として君を迎え入れよう。」


優はそういうと、右手を男の子に差し出した。

そんな大事な事をあっさりと言っていいのか?
それを蓮と椿は優に目で訴えているが…優が気にしている様子はない。

勿論、突然の話に子供も半信半疑でジト目で優を見上げている。
優はそんな子供の姿を見てクスッと笑うと、差し出した右手で子供の頭をグリグリと撫でてクルリと体を半回転させて背を向けた。


「まぁ、兵士になる気があるのならね。
僕達の住んでいる所の力のある兵士は実は少ないんだ。
後継者に仮になれなかったとしても、能力があれば一般兵にはなれる。

どうせ捨てる命だというなら、僕達が拾おう。
僕が手助けできるのはここまで、覚悟があるならついておいで。」


優はそう言うと、護達の後を追うように牢から出て行った。


訓練もしたことのない子供にいきなり兵士になれと言われても困るじゃろうに…。
そう困りながらクシャクシャと頭をかいた蓮だったが、視線をすぐに子供に向ける。


「無理に兵士に並んでもよい、童には童の幸せがある。

今まで血生臭い場所にいたのじゃ、、いったん戦場から離れて農家とかどうかの?
植物を育み、食を通じて自分の命と向き合うにも悪くない。

武器の造形が好きなら鍛冶師もいい、これはワシが教えられる。」


争いごとから離れる。
それには椿も大いに賛成のようで蓮の提案になるように子供にどうだろうと聞いた。

しかし子供は蓮の提案にどれも首を横に振った。


「俺はもう何も奪われたくないんだ。
そのための力が欲しい。」



子供は蓮の目を真っ直ぐに見つめてそう答えた。


なんで自分の周りには頑固な者が多いのだ…。
蓮は、一度視線を下して諦めたように大きく息を吐く。

再び視線を子供に向けると先ほどまでの虚ろな瞳ではなく、生き抜くことを決めた強いものに変わっていた。


「あー、もうどうにでもなれだな。
ワシも全力を尽くすといった以上、童の面倒を見てやろう。

覚悟を決めたのなら、泣き言は許さないぞ。」


蓮はやや威圧的に言ったが、子供は怯んだ様子もなく小さく頷いた。
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