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第一話
第一話 7
しおりを挟む勝ちを確信した忍者だったが、血を噴き出していたのは自分自身だった。
忍者が鎌を振り下ろすよりも先に、優は左手に握った盾に変形する剣で忍者を切り上げていたのだ。
最初に手放した剣を握っていることに対し、冷静で淡々としていた流石の忍者も動揺で瞳が揺れている。
何故、何故、何故と。
「ごめんね。」
そんな事はお構いなしに、優はあげていた左手の剣をそのまま振り下ろして忍者にトドメを刺した。
口からも血を吐いて、忍者は仰向けに倒れる。
優はゆっくりと忍者の顔の方に向かい、喉の方に右手の剣の刃を近づけた。
「君には聞きたいことがある。
忍びが動いているんだ、賊がやったなんて言い訳は通用しないよ?
首謀者は誰かな?」
「我らの神、〝威(たける)〟様だ。」
忍びがそう簡単に吐くはずもないか…。
そう考えていたが、忍者は思いの外あっさりと口を開いた。
しかも神ときたか。
「…威といえば、少し前に死んだんじゃなかった?
祟りだか、なんだかで。」
「そうだ。
そして、我が国のために黄泉の国から単身で戻ってきてくださったのだ!
人の身を超えた神となって!」
血を吐きながらそう力強く言葉を放つ忍者。
威の事はよく知っている。
人柄や家族構成、故郷や彼の死因も。
あの領地は、宗教洗脳が盛んになっていたのかな?
「生き返る?
そんなものがあるのであれば、僕と娘も悲しい思いなんてしなかったさ。
それに、間違いなく威は死んだよ。」
「戯言を!
確かに私は見た…あの力強い甲冑と纏い猛々しい火の四大を扱っていたあの姿を!
火山の噴火のような力強い火を扱えるお方は彼の方以外あるまい!!」
甲冑ねぇ…。
あまりにも忍者がグイグイするもので、優は咄嗟に首元の剣の刃を裏返した。
まだ、聞きたい方があるのだ事故死みたいな事をされても困る。
「それに…威様の父君である〝皇芒(こうぼう)〟様が泣きながら抱きしめたのが何よりの証拠!
自分に至らぬ所があったと、人の目があったにも関わらず泣いて謝っていのだ!」
「なるほど…、大体の事はわかったよ。
お礼にいい事を教えてあげるよ、威を殺したのは祟りじゃなくて僕だ。」
忍者は一瞬同様していたが…先程の戦いぶりをみる限り相当な手練れ。
威の状態によっては勝つかもしれない。
祟りにあって弱っている隙を逃さずに倒した。
そう解釈した忍者は、怒りの色を露にした瞳で優を睨みつける。
「おのれぇぇえ!」
びしゃびしゃと口から血を吐きながら、忍者は吠えた。
致命傷なのによく喋る忍者だ。
優がそんな事を考えると忍者は素早く右手で顔を隠してる布を剥ぎ取ると力一杯歯を噛み締める。
コンと歯同士がぶつかる高めの音と一緒に火花が起きた。
…まずい!
優は咄嗟に距離をとるように後ろに跳ぶ。
【摩り火(すりび)】
優が後ろに飛んだ瞬間に忍者の体が大きく爆発を起こした。
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