コバナシ

第一話

第一話 6

振りおろした剣は、直ぐに受け止められる。


「なんともベタな格好をしているね、君は。」


優の視線の先には、忍者と主張しているような真っ黒な格好をしていた。
忍者は直ぐに後ろに飛んで距離をあける。

武器は鎖鎌。


「なるほど、僕の剣を奪ったのはそれだね？」


忍者は、グルグルと頭上で鎖を回して優に向かって投げる。

【急火（きゅうび）】


優はそれを難なくよけたが、忍者は自分の足の裏を爆発させるとすごい勢いで優に向かっていく。
そして、その勢いを利用して投げた鎖と鎌を擦りながら前進して火花を散らす。


【車火】


そして、そのまま縦に回転するように鎌を振り下ろした。

優は右手の剣でそれを受け止めると、すぐさま左手の剣で右手の剣に打ち込む。


【白虎】


刀を打ちつけた衝撃で鎌鼬を作り出し、敵を攻撃する技なのだが忍者はそれを知っていたか直ぐに後ろに下がっていたのか多少の切り傷はあるものの傷は浅かった。
しかも、後ろに下がる瞬間に追撃を防ぐために手裏剣まで投げている。


優は両手の剣で手裏剣を弾いた。



自分は今は怪我はないが…火の四大をもろに食らうと場所によっては即死だろう。


引き際もしっかりとした小回りのきく敵で、何もやりにくい相手だ。
…動きを止めるか。




【煽風（あおち）】


優は左手の牙のような長めの剣を更に長く伸ばすように変形させるとそれを大きく振って風を起こした。
風は、強く吹き荒れ優に向かっていくような流れで吹き荒れる。

動きにくい事には変わらないが、動けない訳ではない。
忍者は鎖を振りまわし始める。

先程と同じように投擲をするのだろう。

そんな事をさせる気はないけれど。
ぽそっとそう呟いた優は、風を右足に纏わせて地面を踏みつける。


【塵風】


ズンッと重たい音と衝撃を周囲に響かせて、地面にヒビを入れる。
蓮とは違いひび割れは、忍者を目指して進み忍者の足元を中心に崩れ始めた。


流石の忍者も驚いたようすで、踏ん張れないためか鎖を回すのをやめて体勢を崩さないように踏ん張りだした。


優は忍者の隙を逃さないように、左手の剣を忍者に向かって投げた後に走り出す。


優自身が風を操れる為か、荒れ狂う風の中でも一寸の狂いも無く剣は忍者に向かっていった。
しかし、忍者は鎌で投げられた剣を弾き鎖を回して優の右手の剣を絡めて軌道をずらす。

そして、歯がない頭身の背を足で踏みつけて地面に思い切り刺した。


勝った。
そんな確信を胸に、忍者は優の隙だらけになった体に鎌を振り下ろした。