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第一話
第一話 16
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男はわざとらしく大きなため息をつき始める。
戦意が感じられず、椿もまだ無事。
手の内もわからない、あの雷を落としたような攻撃はこの男がしたのか。
優は、状況を確認して整理する。
蓮の不意打ちも効果がなかたから、おそらく速さで攪乱はできなさそうだ。
「んで、てめえらはどうしたい?
ここで、俺と殺し合いをしてぇのか?
それとも、このまま引き下がりてぇのか?
俺としては、さっさと帰りてぇから今日は戦いたくねぇーんだが。」
男はそう言うと大きく欠伸をした。
言われるまでもなく隙だらけだ。
優は咄嗟に腰にある八尺瓊の柄に手をかけるが、蓮に手を掴まれて阻まれる。
避けるか武器ではじかれるのがオチだ、動きなど制限できる見込みもない。
それに、椿を盾にされたら不味い。
男は視線が自分より、椿に行ってることに気が付くと閃いたように声を上げた。
「あー、このガキが気になってるのか。
侍は女を軽視する傾向があるから気がつかなかったぜ。
別に大した怪我なんてしてねーよ、ほら。」
男はそういうと、椿を力任せに蓮に向かって投げる。
椿が男の手から離れた瞬間、優は八咫を右手に握り男に向かって走り出した。
戦いは嫌いじゃない。
そんなことを思わせる笑みを一瞬だけ浮かべたが、何かを思い出したようで気怠そうな顔になる。
そして、左手を優に向けて光らせる。
【ブリッツ】
男の手から、複数の細い雷の糸が優に向かって放たれた。
さっき見た場所を焼いたのはこれなのだろうか。
優はとっさに、八咫を盾に変形させて雷を防ぐ。
雷の威力はすさまじく風の力も合わせて何とか攻撃は防いだが、かなり後ろまで吹き飛ばされしまう。
反撃をするために、素早く態勢を立て直し八尺瓊を左手で握り銃に変形させて銃口を男に向けるが…男はいつの間にかいなくなっていた。
蓮も先ほどの雷の光のせいで見失ってしまったようだ。
風で索敵するが…、近くにはいない。
男の戦う気が無いのは、真実のようだった。
「見逃してもらったようだね。
いやー見事にやられたよ。
蓮、椿の容態は?」
八尺瓊と八咫を鞘に戻した優は、蓮の元に向かいながらそう言った。
蓮が取り乱している様子がないから、おそらく死んではいないはず。
蓮は安堵した様子で優を見た。
「気を失っているが、それだけだ。
命に別状はないじゃろう。
しかし、情報はあまりえられなかったのう。」
「いいや、椿が多少なり持っているかもしれない。
それに…あの男の言っていた侍が女性をあからさまに軽視しているのが当たり前な場所はある程度は検討がつく。
まぁ、その話は護達と合流してからだね。」
戦意が感じられず、椿もまだ無事。
手の内もわからない、あの雷を落としたような攻撃はこの男がしたのか。
優は、状況を確認して整理する。
蓮の不意打ちも効果がなかたから、おそらく速さで攪乱はできなさそうだ。
「んで、てめえらはどうしたい?
ここで、俺と殺し合いをしてぇのか?
それとも、このまま引き下がりてぇのか?
俺としては、さっさと帰りてぇから今日は戦いたくねぇーんだが。」
男はそう言うと大きく欠伸をした。
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避けるか武器ではじかれるのがオチだ、動きなど制限できる見込みもない。
それに、椿を盾にされたら不味い。
男は視線が自分より、椿に行ってることに気が付くと閃いたように声を上げた。
「あー、このガキが気になってるのか。
侍は女を軽視する傾向があるから気がつかなかったぜ。
別に大した怪我なんてしてねーよ、ほら。」
男はそういうと、椿を力任せに蓮に向かって投げる。
椿が男の手から離れた瞬間、優は八咫を右手に握り男に向かって走り出した。
戦いは嫌いじゃない。
そんなことを思わせる笑みを一瞬だけ浮かべたが、何かを思い出したようで気怠そうな顔になる。
そして、左手を優に向けて光らせる。
【ブリッツ】
男の手から、複数の細い雷の糸が優に向かって放たれた。
さっき見た場所を焼いたのはこれなのだろうか。
優はとっさに、八咫を盾に変形させて雷を防ぐ。
雷の威力はすさまじく風の力も合わせて何とか攻撃は防いだが、かなり後ろまで吹き飛ばされしまう。
反撃をするために、素早く態勢を立て直し八尺瓊を左手で握り銃に変形させて銃口を男に向けるが…男はいつの間にかいなくなっていた。
蓮も先ほどの雷の光のせいで見失ってしまったようだ。
風で索敵するが…、近くにはいない。
男の戦う気が無いのは、真実のようだった。
「見逃してもらったようだね。
いやー見事にやられたよ。
蓮、椿の容態は?」
八尺瓊と八咫を鞘に戻した優は、蓮の元に向かいながらそう言った。
蓮が取り乱している様子がないから、おそらく死んではいないはず。
蓮は安堵した様子で優を見た。
「気を失っているが、それだけだ。
命に別状はないじゃろう。
しかし、情報はあまりえられなかったのう。」
「いいや、椿が多少なり持っているかもしれない。
それに…あの男の言っていた侍が女性をあからさまに軽視しているのが当たり前な場所はある程度は検討がつく。
まぁ、その話は護達と合流してからだね。」
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