コバナシ

鷹美

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外伝 東野

外伝 東野12

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まるで覇道だと言わんばかりのその態度に、東はクスッと笑った。


「それでは、貴様は領主になれないな。

高みを目指すのは結構。
しかし、理由が独りよがりすぎる。

領主は、民を束ねて導くものだ決して人としての力ではない。」


「なら、貴方はなれると?」


少し癇に障ったのか、苛立ち混じりに小次郎はそう聞いてきた。
東はゆっくりと立ち上がると、刀を構え直す。

腹部にダメージが大きいのか、それとも恐怖からか足腰は震えていた。


「それは、余が決める事じゃない。
決めるのは民だ。」


東がそう言うと、小次郎の側に側近の侍達が飛んできた。
ボロボロになりながらも、大介、左近、右京が手練れの侍達を撃破していたのだ。


流石の小次郎も驚きを隠せないようで、目を見開いて大介達を見た。


「馬鹿な…かろうじて、岬に守護者と認められた大介ならともかく、そこの雑魚二人に遅れをとるなど!」


「雑魚だと自覚あるのなら、鍛錬あるのみ。
強き者だと思い込み、鍛錬を怠るからこうなるのだ。」


左近は、ギロリと小次郎を睨みつけながらそう言った。

左近に内緒でサボっていた事もあり右京は、ドキッとしたが…チラリと右京を見た辺りバレているだろう。

…兄者の拳骨が飛んで来る前にちゃんと鍛錬をしよう。
うつ伏せに倒した侍を踏ん付け、槍を侍の首元の側に置いて拘束する右京は静かに反省していた。


「私達は、東様に救って貰った者だ。
だったら、今度は我々が東様を救う番だ。

…恐らく、他の者もそうだろう。」


大介がチラリと視線を移すと、大勢の足音が聞こえた。
非戦闘員の使用人達、小次郎に従わなかった侍、東野の民。

各々が、武器を片手にやってきたのだ。



「先代には、世話になった。
奥方は守りきれなかったが…せめて最愛の御子息だけは守りたい。」


「若様には、怪我して動けない所を手当してもらった。
具合が悪そうな時も直ぐに気がついて、医者の手配と休暇をくださった。

そんな優しい若様を見殺しにできない。」


「若様には、子供達の面倒も見てもらった。
家族同然の若様を我が身可愛さで見殺しにしたら、祖先に顔合わせできやしない。」


各々が、小次郎を見てそう言いながら武器や農具を構えながらそう言った。
そんな様子に気圧され、小次郎はジリジリと後ろに下がる。


「気に食わないなら斬ればいい。
それができないだろう?

民がいなくなれば、それは…領土でも国でもない。

後戻りはできないぞ、小次郎!」


東はそう言いながら、刀を振るった。

【三尺秋水】


当時は気がつかなかったから、小次郎からの攻撃で僅かに溜まった水が頭身に薄っすらと纏っており小次郎の浮遊する水の球と共に斬り裂いた。


小次郎は、岬の姿とダブって見えた東の姿に驚いた。
こんな小さな子供が自分の目指した境地まで行こうとしている。


「何処で間違えたのだろう…。」



小次郎はそれを最後に呟き、息を引き取った。
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