コバナシ

第二話

第二話 4

「初めまして、僕は空。
君と同じ守護者候補だよ。

同じ男の子が入ってきて嬉しいよ、よろしくね。」


気弱そうな雰囲気だったが、空は籐麻の目を見て手を差し出して挨拶した。
籐麻も宜しくと握手を交わしたが…空は何か割れ物を扱うかのように握り返す。

彼の肉体特性は握力や腕力なのだろう。

そんな事を考えているうちに、他のことの親が迎えにきていたこともあり楓は解散解散ーと集めていた子供達と分かれていた。



「挨拶は済んだことだし…このまま帰ろうか。
先にお土産。

空のお土産は…自由の時間があった護や蓮や剛が用意しているとは思うけど…。
僕から用意できるのは、東野で思いついた地獄の特訓献立ぐらいかな。」


優は、楓を肩車して東から貰った本を渡した。
楓は嬉しそうに目を輝かせて本を受け取って、父様大好きと言われていた。


そして、そのあとに獲物を狙う鷹のように目を光らせて空を見る。
ふぇえと、椿の影に隠れるように怯える空。

地獄の特訓献立…。
もしかして、自分もはいっているのかなぁ…。


そんな事を考えながら、まずは蓮の家がある鍛冶場に向かっていく。
順番がゴチャゴチャになったが、椿の無事の報告と新しい家族である籐麻の紹介を蓮の奥さんである桜に伝えるのだ。


「桜さんってどんな人？」

「んー、面倒見の良い優しい人かなぁ…。
父上が言うには、私は母上似なんだって。」


椿の一言にあっ…と察した籐麻。
嫌な予感がヒシヒシと感じたが、これは避けられないだろう。

色々と覚悟を決めて、椿に引っ張られるように籐麻は歩いた。


蓮の家は鍛冶屋。
護の屋敷から近い、商店街の端のほうにあった。

刀などの武器は勿論、農具や包丁なども売られており籐麻が想像していたものより庶民的なものだった。
主な客は、一般人な為に刀などは奥の方に農具や包丁などは店の手前の方に商品が並べられている。


そんな中、店の中心で切り盛りしている一人の女性がいた。

背の低い女性で、歳は蓮と同じ40代後半くらい。
花柄の割烹着を着ていて、黒い短髪と瞳をしている。
顔つきは、椿によく似ていた。



「母上、ただいま帰りました。」


椿は、大きな声で椿の母である〝桜〟にそう言った。
桜も椿の様子に気がついたようで、ニカッと歯を見せるように笑い大きく手を振って見せた。


「おかえり。
優様、ご苦労様です旦那と娘がお世話になりました。」


「様なんていらないよ、桜。
こちらこそ、僕が不在の間に楓と空の面倒を見てもらって助かったよ。」



椿におかえりと言った後に、優の顔を見てそう言う。

そして優も、楓を下ろして桜に話す。
東野での出来事、子供達の様子、世間話など情報を楽しげに交換していた。

そんなふうに和気藹々と話していると、上から蓮が降ってきた。