59 / 151
第二話
第二話 3
しおりを挟む「父様、椿姉さん、おかえりなさい。」
テテテーと軽やかな足取りで、洋服の子供は椿に向かってきた。
声の高さや声質で洋服の子供は、女の子なのが分かる。
優は、嬉しそうな笑みを浮かべて女の子の両脇を抱えて高く持ち上げた。
「ただいま、楓。
無事に留守番はできたかな?
予定より遅くなってごめんよ。」
「私なら大丈夫。
そこら辺の賊なら、簡単に撃退できるわ!」
キラキラと目を輝かせて、優にそう言う楓。
そう言う問題ではないんだけどなぁ。
優は、そんな様子を困った顔で見た。
そんな中、籐麻は呻き声を上げながら吹き飛んできた男の子と一緒は起き上がる。
「籐麻、紹介するよ。
この子が、僕の娘の楓。
そして、君にぶつかってきたのは空。
楓、空、そこにいる金髪の子は籐麻。
新しい守護者候補としてこの地にきたんだよ。
ほら、挨拶なさい。」
優に下された楓は、テコテコと籐麻の所まで歩くと手を差し出した。
差し出された手首からわずかに包帯のようなものが見える。
黒いブカッとした帽子に、タートルネックの灰色のシャツに暗めのジーパンとスニーカー。
完全に、戦の服ではないが黒髪と黒い瞳は紛れもなく戦の人間のものだ。
「私は、楓。
優父様の娘よ、よろしく。」
ハキハキとして堂々とした姿は、優の教育の賜物だろう。
しかし守護者候補とは言っていない。
なのに、なぜこんな訓練紛いの事をしていたのだろう…。
そんな事を考えながら、籐麻は差し出された手を握る。
「俺は、籐麻。
優様に声をかけてもらって守護者候補となったよろしく…お願いします。」
籐麻は、少し間を開けてお願いしますと言った。
こんな所で暴れていたとはいえ、優の娘。
護の義理の弟なので、あれば…彼女も高貴な身分のものなのでは?
うっかり失言を言ってないだろうかと思考を巡らせていると、楓はクスッと笑った。
「別に言葉遣いは気にしなくていいわよ。
別に私は、籐麻の上司でもなんでもないもの。
友人として、対等に接してくれると嬉しいわ。」
なるほど、この性格なら人が集まるわけだ。
そんな事を考えていると、楓はぐったりしている空を籐麻から引き離して立ち上がらせる。
ほら、シャキッとするの!
小声で、空にそう言いながら服の土を払う姿はまるで姉や母のようだった。
…これかなぁ、椿姉さんが自分にやたら構う理由は。
そんな事を考えながら二人を見ていると、空は籐麻に向かって歩いてきた。
着物の中に楓と同じタートルネックのシャツ、袴の代わりにズボンと、エルトリアと戦の服がミックスしたような姿をしていた。
髪は優と同様に髷を結っていない黒い短髪、瞳はわずかに赤みがかった黒をしている。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
【完結】奇跡のおくすり~追放された薬師、実は王家の隠し子でした~
いっぺいちゃん
ファンタジー
薬草と静かな生活をこよなく愛する少女、レイナ=リーフィア。
地味で目立たぬ薬師だった彼女は、ある日貴族の陰謀で“冤罪”を着せられ、王都の冒険者ギルドを追放されてしまう。
「――もう、草とだけ暮らせればいい」
絶望の果てにたどり着いた辺境の村で、レイナはひっそりと薬を作り始める。だが、彼女の薬はどんな難病さえ癒す“奇跡の薬”だった。
やがて重病の王子を治したことで、彼女の正体が王家の“隠し子”だと判明し、王都からの使者が訪れる――
「あなたの薬に、国を救ってほしい」
導かれるように再び王都へと向かうレイナ。
医療改革を志し、“薬師局”を創設して仲間たちと共に奔走する日々が始まる。
薬草にしか心を開けなかった少女が、やがて王国の未来を変える――
これは、一人の“草オタク”薬師が紡ぐ、やさしくてまっすぐな奇跡の物語。
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜
クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。
生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。
母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。
そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。
それから〜18年後
約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。
アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。
いざ〜龍国へ出発した。
あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね??
確か双子だったよね?
もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜!
物語に登場する人物達の視点です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる