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第3話
第3話 5
しおりを挟む大男を追った藤麻。
脚力に関しては蓮のお墨付き、見失わなければ必ず追えるだろう。
大男におびえて人々が道を開けているおかげで、難なく追いついてきた。
…無法者だ、怪我をさせるかもなどと気にすることはないか。
藤麻は、大男の襟の後ろを掴むと力任せに後ろに引っ張り男を転ばせた。
「何をしやがる、クソガキ!」
「何を寝ぼけたことをいている。
やましいことがあるから、他人を怪我させても逃げてるんだろ?」
藤麻は尻もちをついた男を見下ろしながら、冷たい口調で言った。
武器は見当たらい怪我人が…と言っていたが、刃物を怪我人に刺したままにして逃げてきたのだろうか。
男は藤麻が子供とわかると、勝てると思ったようで勢いよく立ち上がり殴りかかってきた。
弱肉強食の中で育ち、強者に訓練された藤麻にチンピラパンチが当たるわけもなく僅かな動きで男の拳を避けていく。
負けることは無いとはおもうが、暴れられても面倒だ。
慢心して、被害を出すわけにもいかないだろう。
藤麻は腰の小太刀の柄に手をかける。
「今の君がそれをここでつかうのは、まだ早いかな。」
その声が聞こえた藤麻は、とっさに動きを止める。
動きを止めたのは正解で話終わった頃には、男の動きはスーが抑えていた。
男をうつ伏せにさせて、その上に乗るようにスーは抑えている。
「いやぁ、お手柄だよ少年。
君が男の気を引いていたおかげで難なく拘束できたよ。
天晴れ。」
「くそっ…おりやがれクソガキ!」
男が大人しくしている訳もなく、スーのしたでジタバタと暴れながら叫ぶ。
随分とベタなことを言葉にするな…。
そんな事を考えていた藤麻は、呆れたように溜息をつく。
その様子に男はさらに声を張り上げた。
「あーもーうるさい。」
スーは、我慢できなかったよう首の後ろらへんを思い切りチョップする。
心得があるのか一発で男を沈黙させた。
静かになったなら、拘束して城の役人にでも引き渡すか。
藤麻がそう考えながら男を拘束できるものを探していると、上から人が降ってきた。
「なんじゃ、お主らだけで解決したのか。
怪我はないかの?」
上から降ってきたのは蓮だった。
どうやら、危険を知らせる狼煙を見てここまで朱雀で駆け付けたらしい。
因みにこの男はそこそこの子悪党らしく、こちらの手が空かない時を見計らって行動していたために捕まえられなくて手を焼いていたそうだ。
ワシらの体は一つだけだしのう…。
こんな小物早々に排除したいんじゃがなぁ…。
蓮はそんなことをぼやきながら、男を縛り上げて城の方に向かっていく。
「蓮のおんちゃん達も大変だねぇ。
さて、ほったらかしにした楓の所に戻ろうか。」
スーはそういうと、後ろから藤麻の両肩を掴み押していく。
そういえば、人手が足りないと言っていたな。
最初はこの相手を簡単に拘束できることを目標で訓練しよう。
藤麻は、そんな事を考えながらされるがままにスーに押されていった。
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