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第二章、〘飛び交う依頼〙
ギア14、獣VS武器&父親
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「前回、ナルヤ改めギアヒーローエヴォとナグラ改めギアヒーローダヌアは水中戦でジャアクヨゴレザメに見事勝利した。そして今回は、ナルヤとナオタ改めギアヒーロークイップとの話です。さて、今回の敵はどんな奴なのでしょうか。お楽しみに。」
「…なぁ、ここってどこ?」
「…そうですね。おそらく……」
辺りは低木がまじった丈の高い草原に、明らかな草食動物に明らかな猛獣などが生息していた。その風景は、初めて来たはずなのに既視感があった。エヌはダラダラと汗を流しつつ質問に答える。
「…サバンナ……ですね。」
そう。エヌの言う通りここはサバンナだった。その中で場違いな服装の男が二人。そして更に場違いな二台のバイク。肉食動物にとっては格好の的である。
「……やっぱサバンナかー!やっぱサバンナはあっちーなー!まさか、初めてのサバンナデビューがこうなるとはなー!ハハハ……ところでさ…」
唸り声が辺りに響く。ナルヤは流れていた汗が少し収まり、ナオタに問いかけながら正面を向く。
「グルルル……」
「……早速ピンチですけども!?」
二人は複数匹のライオンに囲まれていた。歯を見せつけ、涎がツー…と溢れている。エヌは冷静かつ慎重に獣共の様子を伺う。
「とにかく、この場をどうにかして打開しましょう!」
「つっても、こいつらって獲物をコンビネーションで待ち伏せするくらい頭が良いんだよ?!勝ち目無くね?!方法でもあんの?!」
「方法は無くは無いですが、撃ち殺すって話になりますけど?」
「うん却下だな。動物虐待はNG。」
実際にこの二人は圧倒的な力を持っている為、この程度の生物達は朝飯前であった。しかし、その生物達を殺したところで、依頼の進行度が進むなんてことが一切無いのである。(あと動物虐待はダメ)
「生物虐待反対ッ!って訳じゃないけど、無駄な殺生と体力削減は控えるべきだよな…」
「ですね。ところで父さん、ハイタカギアは持っていますね?」
背中合わせで周りを囲い様子見をするライオン達を警戒しつつ、エヌはトランスギアを取り出す。
「えっとな…うむ、持ってる。」
「なら、それを僕に貸してください。」
エヌはバトンを受け取るように、スッと左手を添える。マイナスはチラチラと見つつ、添えられた手にギアを置く。エヌはしっかりとギアを確認し、トランスギアの両サイドレバー間にある窪みにセットする。
「捕まってください!!」
両サイドレバーを立て、エヌは思いっきりジャンプする。
[GOOD!WEAPON UP!][ハイタカウィング!]
「え?!ちょ待て!!」
マイナスは慌ててエヌの足を掴む。
「行きますよ!」
ハイタカウィングは滑空し、追いかけるライオン達のスピードを超えて空を飛ぶ。マイナスは汗をダラダラかきつつも必死にエヌの足にしがみついていた。
「いや…俺まだマイナスだから…!エヴォじゃないからまだ…!このスピードは耐えられんから……ッ!あと寒いから……ッ!」
エヌの足は風呂上がりのタオルのようにびちゃびちゃであった。マイナスは空を飛びつつ汗をかいていたので、風にあおがれて体が冷えきってしまっていた。
「ちょっ!?汗……!?あーもう!だったらなれば良いじゃないですか!」
「片手で全体重を支えられる自信はありませんけど…ッ!?」
「だったら鍛えておけば良かったでしょ……ッ?!」
「まだ初戦闘デビューから1ヶ月経ってないくらいですけどッ!?」
「いや僕の頃はそんなに貧弱じゃありませんでしたからね?!」
「うわでたよ!!ボクノコロハーとか言う奴ッ!!」
「おちょくってるのですか?!なんなんですかホント…!」
「あ。ヤバい。汗で手が。あゴメン俺死ぬわ。」
マイナスの腕は汗に濡れ、体力も限界に達し、エヌの足をスッと手放してしまう。
「あああああぁぁぁ!!??」
「父さぁぁん!?」
マイナスはとんでもない高さから落ちてしまう。
「待て待て待てぇ!?いやあのなんか無いかなんか無いか!?!?あ、これなら!!」
マイナスはチョウゲンボウと書かれたギアとトランスギアを取り出す。しかし落ちている勢いで生まれた風圧によってギアを手放しそうになる。
「んんんあああぁぁッ!!根性ォーッ!!!」
それでも根性で力を振り絞り、思いっきりギアを起動する。
[チョウゲンボウ!]
右手で持っていたチョウゲンボウギアを左手に持ち替え、トランスギアにセットする。
「変身ッ!!」
[TRANS FROM.]
[加速が反則チョウゲンボウ!!ブワッと羽ばたき超閃光!!]
[EVO THE HENSHIN.[チョウゲンボウ!]]
「ぬうおおああっととととッ!!??」
エヴォは低木に当たる直前、体を片寄らせ紙一重で、
「ほがッー!?」ヅガンッ!!!
…避けるがその先の木には当たった。
「いや結局当たるんですか?!」
天からツッコミが舞い降りた。エヴォはぶつかった顔を押さえ、空に羽ばたく。
「まぁ…生身でぶち当たるよりはマシだし…いつつ…」
「ハァ…父さん、まだ依頼は1%も進んでませんよ。今回の依頼はサバンナで目撃されたジャアクギアらしき獣を倒すことです。こんな調子だと発見するのに時間がかかります。」
エヌはため息をつきつつ、ついで感覚でギアヒーロークイップに変身する。
「いや、なんか一方的に俺のせいにしてません?しゃーなくない?てか俺とお前の経験率は圧倒的に違うからそんな飽き飽きされても。」
[QUIP THE HENSHIN!][探知式アームを起動します。]
「とにかく「とにかくじゃないだろ。」、僕は向こう側を見てきます。何かあったらマスタフォンで。」
クイップは荒野を指す。そうしてその指を指した方向へと向かっていく。エヴォは振り回されているような気がしていたが、そんなことよりスーツに冷房機能があり、未来の最先端技術にとんでもなく感動していた。
「…ここで待っててもしゃーない。向こう見てこよーっと。」
[クイップと別方向を探索して30分後…]
「…見つからんッ!!」
怪しいヤツも怪しい場所すらも
「見つからんッ!!!」
痕跡の欠片も
「見つからんッ!!!!」
総合結果は
「見つからんッッ!!!!!」
そう、見つからなかった。30分間休まずチョウゲンボウギアの力を駆使し、辺りを迅速かつ確実に見渡していたが、見つからなかった。探知式アームでも発見できず、八方塞がりであった。
「やべぇな…よく考えたら、こーーんな広い大地から怪しいヤツ一匹を探し突き止めるなんて、でっかめのショッピングモールで動き回る迷子の子を探すくらい難しいだろ…」
適度に効いた冷房のおかげで汗はかいていないが、それでも疲労は蓄積していく一方である。
「あー…助けてー、マスタフォえもーん…」
疲れきった声でマスタフォンに話しかけると、マスタフォンは突如その声に反応し、起動する。
[はい。何かお困りですか?]
「…最先端技術やな。あーえっと、ジャアクギアを探してー。」
[分かりました。では、別ユーザーのネスト様に最適なギアを送るよう連絡します。]
「え?」
するとマスタフォンから一つ、新しいギアが飛び出してくる。
「…これって…」
[アフリカゾウ!]
「ゾウ?!」
ネストがこのアフリカゾウギアを選んだのは、アフリカゾウは犬の二倍の嗅覚の遺伝子を持つと言われており、それならその対象が見つかるかもしれないとネストは踏んだのである。
「…とりあえず!まずはフォームチェンジだな!!」
[アフリカゾウ!]
「フォームチェンジ!」
エヴォはいつも通りの手順で、ギアを右スロットにセットし、内側に持ち手を押し込む。
[TRANS FORM.]
[チョウゲンボウの翼ァ!アフリカゾウの力ァ!超パワフルプレイ!チョウゲンリカゾウ!]
[EVO THE HENSHIN.][チョウゲンリカゾウ!]
長い鼻、大きな翼、どうやって飛んでいるのか聞きたくなるような巨体で滞空する。エヴォは早速、辺りの匂いを嗅いでみる。すると、なにか様子の変な匂いが溢れていることに気がつく。
「…ギアの匂い……でもクイップじゃないな…あいついい香りしてるし…(あいつマジで女子力高い香り)…うぉぉ怪しいから出撃ッ!!」
エヴォはさっきまでの疲れが吹き飛び、その怪しい匂いがジャアクギアだと見込んで急行する。
「うぉぉぉーッ!!!」
[一時間後]
「うわー周りなんもねぇ…匂い的にここら辺なんだけど…」
辺りは一面砂漠であり、一面何も無かった。だが、ギアの匂いは確実にそこにあった。エヴォはその場に降り立ち、何も無い辺りを見渡す。
「んーやっぱ何もない。もう少し嗅いでみるか。」
その場を丁寧かつ慎重に嗅いでみる。すると地面から、ギアの匂いが溢れ出てることに気が付く。
「え、地面?!嘘っ!?」
その地点を掘り下げてみると、そこには謎の木の板があった。「なにこれ…?」とエヴォは恐る恐る板を退かすと…
「グルルルル……」「おわァッ!?」
そこには禍々しいチーターが、待っていましたと言わんばかりに身構えていた。
「グァォオオーッ!!!」
ジャアクギアを付けていたそのチーターは、エヴォに噛み付く勢いで飛びかかる。
「ヤベッ、フォームチェンジ!」
[TRANS FORM.][クロディンゴサイ!!]
全力で腕に噛み付くチーターだったが、クロサイの強固なアーマーによってエヴォは護られた。
「こいつ…なんかいつもと違う…?」
ふと彼が感じた違和感は、本能的に気づいたことであった。今までのジャアクギアと何かが違う。だがしかし、それを考えている暇は与えられず、チーターは強靭な爪をエヴォに振り落とす。
「あぶねっ!」
ディンゴの反射神経と迅速な速さで、エヴォは間一髪で攻撃を避ける。そしてそのまま距離を取ろうとバックステップをする。
「グゥルルル…ガォッ!!!」
だがそのスピードを超える速さで、奴は距離を詰めてくる。
「マジか…ッ?!」「ハァッ!」
するとチーターが走っていた所に、走るルートを防ぐように謎の爆発が起きる。
「…あ?あー…何が起こった?」
急な出来事に頭を傾げながら、ふと上を見るとそこには、黄色い鬣を持つ1匹の獣がロケットランチャーを担いでいた。
「間に合いました!」
[バクダンアリランチャー!]
「あ!クイップー!!」
クイップはちょうど近くを徘徊していた為、その場に出くわした彼は咄嗟に行動に出ていた。そして今に至る。
「あのジャアクカルマ…もしかして変身者はチーターそのもの?」
「おいクイップー!!あの怪人、なんかいつもと…」「違う…って言いたいのでしょう?」
エヴォは少し、「え?」という表情を仮面の中でする。
「もしかして、知ってんの?」「…おそらくアレは、前のヨシグチさんの様な崇拝とかによる自主的なのではなく、デスブレイドが強制的に変身させたパターンですね。僕のいた未来、そこにはこのような奴がいました。」
「…動物にも手をかけてるってことかよ……」
クイップはクワガタギアを起動する。
[クワガタ!]
「まずはこいつのギアを破壊します。怪人状態で傷付いても、本体には何も干渉しないのは知っていますよね?つまり、チーター本体は安全な状態で自然に帰そう、ということです。」
「あ、おう!了解!」
[クワガタツインソード!]
双剣を召喚したクイップは、刃先同士を擦り合わせ、シャキンシャキンと音を鳴らす。
「じゃあ俺も!」
[ギアシューター!]
「さぁ!最高の負けイベントを始めようか!!」
唸り声をあげるジャアクチーターにギアシューターを向け、決め台詞を吐くエヴォ。それを見てクイップは頷き「ふぅ…」と一息。
「…今から戦うのは、父さんだけじゃないんですよ。」
「…おー!かっけぇ!」
エヴォは複眼越しで目をキラキラさせる。少し照れくさくなったクイップだったがスイッチを切り替える。
「…それじゃあ!楽しみましょうか!!父さん!!」
「了解!」
「フフッ、では…It's SHOW TIME!正義の歴史に名を刻め!!」
クイップはさっきまで待ってくれていたチーターに容赦なくロケランをぶち込む(せっかく双剣出したのに)。しかしジャアクチーターは何度も喰らうかと言わんばかりに軽やかなステップでミサイルを避ける。
「ごめんこっちは保険持ちだ!!」
[ダイオウイカ!シュルシュルストライク!シュルシュルーン!]
しかし、その先でジャアクチーターはエヴォのギアシューターからダイオウイカの触手に絡まり、身動きが取れなくなる。
「グォッ?!」
「今だ!」
クイップは地面に刺しておいた双剣を抜き、ジャアクチーターに向かって走り、回転斬りを放つ。
「グゥゥギャオッ!!!」
しかしジャアクチーターはダイオウイカの触手を切り裂き、紙一重で攻撃を避ける。
「…父さん!任せました!!」「うぉぉぉーッ!重てぇええーッ!!」
エヴォはジャアクチーターと同じ高さまで飛び上がり、先程のバクダンアリをモチーフにしたロケランを担ぎ上げ、空中ではもう動けないその怪獣にその銃口を向ける。
「どぅりゃァァァ!!!!」
巨大な弾は放たれ、空中では身動きの取れないジャアクチーターは冷や汗を流す。
「グァァァーッ!!」
だが、それでも抵抗をしようとするジャアクチーター。その弾丸を弾こうと爪をしまい、猫パンチをして弾こうと構える。
「残念でしたッ!」「ここからでも入れる、二段重ねの保険だッ!」
その弾丸の裏から、日に重なった2つの影が飛翔するのを見た。
「ヴゥッ?!」
[クロサイ!ライトエヴォスマッシュ!]
[Great![クワガタ!]クイップフィニッシュ!]
「「ハァァァァーーッ!!!!」」
「グォォォォオオッ?!」
空で大爆発が起きる。その巨大な爆煙からチーターを抱えた獣1匹と緑の機械人が飛び出てくる。
「…っと。エヌ!」
「…はい?」
マイナスは拳を突き出し、微笑を見せる。エヌも同じくして微笑し、拳を突き出す。
「「任務・完了!!」」
二人で決めポーズを決める彼らだった。
「…グルルルル……!」
でも、まだ脅威は去っていなかった。
「あ。」「…逃げましょう。」
そう、助けた獣による命懸けの追いかけっこが彼らを待っていたのであった。
「ギャアアオォォォーッ!!!」
「「逃げろォォォーッ!!!」」
次回ギア15、おーい、依頼場所、おっばけやーしきぃー。
おまけ
「…とりあえず無事に帰ってきたけど、もうサバンナは懲り懲りだな。」
「ですね。」
「ってか、なんでレーダー反応しなかったんだろ。」
「おそらく、あの木の板のせいかもしれません。あの後の調べによると、あの板には電波を遮断する効果のある液体が塗られていたらしいです。それもアルミホイルやスチール、デスブレイドの持つ知識なのでしょう。」
「ほーほー。てかそこは最新じゃないのね。アルミでだめならビミョーな所で不便やなー。なんでチーターを隠す必要があったんだ?」
「考えられることは、生態系の破壊ですかね。ノーネームの考えることはよく分かりませんが…」
「なるほど…ま、各々頑張りますか。とりあえず腹減ったから焼肉行かね?」
「お、いいですね!では、カルビとロースの盛り合わせで!」
「食うねぇ。」
「…なぁ、ここってどこ?」
「…そうですね。おそらく……」
辺りは低木がまじった丈の高い草原に、明らかな草食動物に明らかな猛獣などが生息していた。その風景は、初めて来たはずなのに既視感があった。エヌはダラダラと汗を流しつつ質問に答える。
「…サバンナ……ですね。」
そう。エヌの言う通りここはサバンナだった。その中で場違いな服装の男が二人。そして更に場違いな二台のバイク。肉食動物にとっては格好の的である。
「……やっぱサバンナかー!やっぱサバンナはあっちーなー!まさか、初めてのサバンナデビューがこうなるとはなー!ハハハ……ところでさ…」
唸り声が辺りに響く。ナルヤは流れていた汗が少し収まり、ナオタに問いかけながら正面を向く。
「グルルル……」
「……早速ピンチですけども!?」
二人は複数匹のライオンに囲まれていた。歯を見せつけ、涎がツー…と溢れている。エヌは冷静かつ慎重に獣共の様子を伺う。
「とにかく、この場をどうにかして打開しましょう!」
「つっても、こいつらって獲物をコンビネーションで待ち伏せするくらい頭が良いんだよ?!勝ち目無くね?!方法でもあんの?!」
「方法は無くは無いですが、撃ち殺すって話になりますけど?」
「うん却下だな。動物虐待はNG。」
実際にこの二人は圧倒的な力を持っている為、この程度の生物達は朝飯前であった。しかし、その生物達を殺したところで、依頼の進行度が進むなんてことが一切無いのである。(あと動物虐待はダメ)
「生物虐待反対ッ!って訳じゃないけど、無駄な殺生と体力削減は控えるべきだよな…」
「ですね。ところで父さん、ハイタカギアは持っていますね?」
背中合わせで周りを囲い様子見をするライオン達を警戒しつつ、エヌはトランスギアを取り出す。
「えっとな…うむ、持ってる。」
「なら、それを僕に貸してください。」
エヌはバトンを受け取るように、スッと左手を添える。マイナスはチラチラと見つつ、添えられた手にギアを置く。エヌはしっかりとギアを確認し、トランスギアの両サイドレバー間にある窪みにセットする。
「捕まってください!!」
両サイドレバーを立て、エヌは思いっきりジャンプする。
[GOOD!WEAPON UP!][ハイタカウィング!]
「え?!ちょ待て!!」
マイナスは慌ててエヌの足を掴む。
「行きますよ!」
ハイタカウィングは滑空し、追いかけるライオン達のスピードを超えて空を飛ぶ。マイナスは汗をダラダラかきつつも必死にエヌの足にしがみついていた。
「いや…俺まだマイナスだから…!エヴォじゃないからまだ…!このスピードは耐えられんから……ッ!あと寒いから……ッ!」
エヌの足は風呂上がりのタオルのようにびちゃびちゃであった。マイナスは空を飛びつつ汗をかいていたので、風にあおがれて体が冷えきってしまっていた。
「ちょっ!?汗……!?あーもう!だったらなれば良いじゃないですか!」
「片手で全体重を支えられる自信はありませんけど…ッ!?」
「だったら鍛えておけば良かったでしょ……ッ?!」
「まだ初戦闘デビューから1ヶ月経ってないくらいですけどッ!?」
「いや僕の頃はそんなに貧弱じゃありませんでしたからね?!」
「うわでたよ!!ボクノコロハーとか言う奴ッ!!」
「おちょくってるのですか?!なんなんですかホント…!」
「あ。ヤバい。汗で手が。あゴメン俺死ぬわ。」
マイナスの腕は汗に濡れ、体力も限界に達し、エヌの足をスッと手放してしまう。
「あああああぁぁぁ!!??」
「父さぁぁん!?」
マイナスはとんでもない高さから落ちてしまう。
「待て待て待てぇ!?いやあのなんか無いかなんか無いか!?!?あ、これなら!!」
マイナスはチョウゲンボウと書かれたギアとトランスギアを取り出す。しかし落ちている勢いで生まれた風圧によってギアを手放しそうになる。
「んんんあああぁぁッ!!根性ォーッ!!!」
それでも根性で力を振り絞り、思いっきりギアを起動する。
[チョウゲンボウ!]
右手で持っていたチョウゲンボウギアを左手に持ち替え、トランスギアにセットする。
「変身ッ!!」
[TRANS FROM.]
[加速が反則チョウゲンボウ!!ブワッと羽ばたき超閃光!!]
[EVO THE HENSHIN.[チョウゲンボウ!]]
「ぬうおおああっととととッ!!??」
エヴォは低木に当たる直前、体を片寄らせ紙一重で、
「ほがッー!?」ヅガンッ!!!
…避けるがその先の木には当たった。
「いや結局当たるんですか?!」
天からツッコミが舞い降りた。エヴォはぶつかった顔を押さえ、空に羽ばたく。
「まぁ…生身でぶち当たるよりはマシだし…いつつ…」
「ハァ…父さん、まだ依頼は1%も進んでませんよ。今回の依頼はサバンナで目撃されたジャアクギアらしき獣を倒すことです。こんな調子だと発見するのに時間がかかります。」
エヌはため息をつきつつ、ついで感覚でギアヒーロークイップに変身する。
「いや、なんか一方的に俺のせいにしてません?しゃーなくない?てか俺とお前の経験率は圧倒的に違うからそんな飽き飽きされても。」
[QUIP THE HENSHIN!][探知式アームを起動します。]
「とにかく「とにかくじゃないだろ。」、僕は向こう側を見てきます。何かあったらマスタフォンで。」
クイップは荒野を指す。そうしてその指を指した方向へと向かっていく。エヴォは振り回されているような気がしていたが、そんなことよりスーツに冷房機能があり、未来の最先端技術にとんでもなく感動していた。
「…ここで待っててもしゃーない。向こう見てこよーっと。」
[クイップと別方向を探索して30分後…]
「…見つからんッ!!」
怪しいヤツも怪しい場所すらも
「見つからんッ!!!」
痕跡の欠片も
「見つからんッ!!!!」
総合結果は
「見つからんッッ!!!!!」
そう、見つからなかった。30分間休まずチョウゲンボウギアの力を駆使し、辺りを迅速かつ確実に見渡していたが、見つからなかった。探知式アームでも発見できず、八方塞がりであった。
「やべぇな…よく考えたら、こーーんな広い大地から怪しいヤツ一匹を探し突き止めるなんて、でっかめのショッピングモールで動き回る迷子の子を探すくらい難しいだろ…」
適度に効いた冷房のおかげで汗はかいていないが、それでも疲労は蓄積していく一方である。
「あー…助けてー、マスタフォえもーん…」
疲れきった声でマスタフォンに話しかけると、マスタフォンは突如その声に反応し、起動する。
[はい。何かお困りですか?]
「…最先端技術やな。あーえっと、ジャアクギアを探してー。」
[分かりました。では、別ユーザーのネスト様に最適なギアを送るよう連絡します。]
「え?」
するとマスタフォンから一つ、新しいギアが飛び出してくる。
「…これって…」
[アフリカゾウ!]
「ゾウ?!」
ネストがこのアフリカゾウギアを選んだのは、アフリカゾウは犬の二倍の嗅覚の遺伝子を持つと言われており、それならその対象が見つかるかもしれないとネストは踏んだのである。
「…とりあえず!まずはフォームチェンジだな!!」
[アフリカゾウ!]
「フォームチェンジ!」
エヴォはいつも通りの手順で、ギアを右スロットにセットし、内側に持ち手を押し込む。
[TRANS FORM.]
[チョウゲンボウの翼ァ!アフリカゾウの力ァ!超パワフルプレイ!チョウゲンリカゾウ!]
[EVO THE HENSHIN.][チョウゲンリカゾウ!]
長い鼻、大きな翼、どうやって飛んでいるのか聞きたくなるような巨体で滞空する。エヴォは早速、辺りの匂いを嗅いでみる。すると、なにか様子の変な匂いが溢れていることに気がつく。
「…ギアの匂い……でもクイップじゃないな…あいついい香りしてるし…(あいつマジで女子力高い香り)…うぉぉ怪しいから出撃ッ!!」
エヴォはさっきまでの疲れが吹き飛び、その怪しい匂いがジャアクギアだと見込んで急行する。
「うぉぉぉーッ!!!」
[一時間後]
「うわー周りなんもねぇ…匂い的にここら辺なんだけど…」
辺りは一面砂漠であり、一面何も無かった。だが、ギアの匂いは確実にそこにあった。エヴォはその場に降り立ち、何も無い辺りを見渡す。
「んーやっぱ何もない。もう少し嗅いでみるか。」
その場を丁寧かつ慎重に嗅いでみる。すると地面から、ギアの匂いが溢れ出てることに気が付く。
「え、地面?!嘘っ!?」
その地点を掘り下げてみると、そこには謎の木の板があった。「なにこれ…?」とエヴォは恐る恐る板を退かすと…
「グルルルル……」「おわァッ!?」
そこには禍々しいチーターが、待っていましたと言わんばかりに身構えていた。
「グァォオオーッ!!!」
ジャアクギアを付けていたそのチーターは、エヴォに噛み付く勢いで飛びかかる。
「ヤベッ、フォームチェンジ!」
[TRANS FORM.][クロディンゴサイ!!]
全力で腕に噛み付くチーターだったが、クロサイの強固なアーマーによってエヴォは護られた。
「こいつ…なんかいつもと違う…?」
ふと彼が感じた違和感は、本能的に気づいたことであった。今までのジャアクギアと何かが違う。だがしかし、それを考えている暇は与えられず、チーターは強靭な爪をエヴォに振り落とす。
「あぶねっ!」
ディンゴの反射神経と迅速な速さで、エヴォは間一髪で攻撃を避ける。そしてそのまま距離を取ろうとバックステップをする。
「グゥルルル…ガォッ!!!」
だがそのスピードを超える速さで、奴は距離を詰めてくる。
「マジか…ッ?!」「ハァッ!」
するとチーターが走っていた所に、走るルートを防ぐように謎の爆発が起きる。
「…あ?あー…何が起こった?」
急な出来事に頭を傾げながら、ふと上を見るとそこには、黄色い鬣を持つ1匹の獣がロケットランチャーを担いでいた。
「間に合いました!」
[バクダンアリランチャー!]
「あ!クイップー!!」
クイップはちょうど近くを徘徊していた為、その場に出くわした彼は咄嗟に行動に出ていた。そして今に至る。
「あのジャアクカルマ…もしかして変身者はチーターそのもの?」
「おいクイップー!!あの怪人、なんかいつもと…」「違う…って言いたいのでしょう?」
エヴォは少し、「え?」という表情を仮面の中でする。
「もしかして、知ってんの?」「…おそらくアレは、前のヨシグチさんの様な崇拝とかによる自主的なのではなく、デスブレイドが強制的に変身させたパターンですね。僕のいた未来、そこにはこのような奴がいました。」
「…動物にも手をかけてるってことかよ……」
クイップはクワガタギアを起動する。
[クワガタ!]
「まずはこいつのギアを破壊します。怪人状態で傷付いても、本体には何も干渉しないのは知っていますよね?つまり、チーター本体は安全な状態で自然に帰そう、ということです。」
「あ、おう!了解!」
[クワガタツインソード!]
双剣を召喚したクイップは、刃先同士を擦り合わせ、シャキンシャキンと音を鳴らす。
「じゃあ俺も!」
[ギアシューター!]
「さぁ!最高の負けイベントを始めようか!!」
唸り声をあげるジャアクチーターにギアシューターを向け、決め台詞を吐くエヴォ。それを見てクイップは頷き「ふぅ…」と一息。
「…今から戦うのは、父さんだけじゃないんですよ。」
「…おー!かっけぇ!」
エヴォは複眼越しで目をキラキラさせる。少し照れくさくなったクイップだったがスイッチを切り替える。
「…それじゃあ!楽しみましょうか!!父さん!!」
「了解!」
「フフッ、では…It's SHOW TIME!正義の歴史に名を刻め!!」
クイップはさっきまで待ってくれていたチーターに容赦なくロケランをぶち込む(せっかく双剣出したのに)。しかしジャアクチーターは何度も喰らうかと言わんばかりに軽やかなステップでミサイルを避ける。
「ごめんこっちは保険持ちだ!!」
[ダイオウイカ!シュルシュルストライク!シュルシュルーン!]
しかし、その先でジャアクチーターはエヴォのギアシューターからダイオウイカの触手に絡まり、身動きが取れなくなる。
「グォッ?!」
「今だ!」
クイップは地面に刺しておいた双剣を抜き、ジャアクチーターに向かって走り、回転斬りを放つ。
「グゥゥギャオッ!!!」
しかしジャアクチーターはダイオウイカの触手を切り裂き、紙一重で攻撃を避ける。
「…父さん!任せました!!」「うぉぉぉーッ!重てぇええーッ!!」
エヴォはジャアクチーターと同じ高さまで飛び上がり、先程のバクダンアリをモチーフにしたロケランを担ぎ上げ、空中ではもう動けないその怪獣にその銃口を向ける。
「どぅりゃァァァ!!!!」
巨大な弾は放たれ、空中では身動きの取れないジャアクチーターは冷や汗を流す。
「グァァァーッ!!」
だが、それでも抵抗をしようとするジャアクチーター。その弾丸を弾こうと爪をしまい、猫パンチをして弾こうと構える。
「残念でしたッ!」「ここからでも入れる、二段重ねの保険だッ!」
その弾丸の裏から、日に重なった2つの影が飛翔するのを見た。
「ヴゥッ?!」
[クロサイ!ライトエヴォスマッシュ!]
[Great![クワガタ!]クイップフィニッシュ!]
「「ハァァァァーーッ!!!!」」
「グォォォォオオッ?!」
空で大爆発が起きる。その巨大な爆煙からチーターを抱えた獣1匹と緑の機械人が飛び出てくる。
「…っと。エヌ!」
「…はい?」
マイナスは拳を突き出し、微笑を見せる。エヌも同じくして微笑し、拳を突き出す。
「「任務・完了!!」」
二人で決めポーズを決める彼らだった。
「…グルルルル……!」
でも、まだ脅威は去っていなかった。
「あ。」「…逃げましょう。」
そう、助けた獣による命懸けの追いかけっこが彼らを待っていたのであった。
「ギャアアオォォォーッ!!!」
「「逃げろォォォーッ!!!」」
次回ギア15、おーい、依頼場所、おっばけやーしきぃー。
おまけ
「…とりあえず無事に帰ってきたけど、もうサバンナは懲り懲りだな。」
「ですね。」
「ってか、なんでレーダー反応しなかったんだろ。」
「おそらく、あの木の板のせいかもしれません。あの後の調べによると、あの板には電波を遮断する効果のある液体が塗られていたらしいです。それもアルミホイルやスチール、デスブレイドの持つ知識なのでしょう。」
「ほーほー。てかそこは最新じゃないのね。アルミでだめならビミョーな所で不便やなー。なんでチーターを隠す必要があったんだ?」
「考えられることは、生態系の破壊ですかね。ノーネームの考えることはよく分かりませんが…」
「なるほど…ま、各々頑張りますか。とりあえず腹減ったから焼肉行かね?」
「お、いいですね!では、カルビとロースの盛り合わせで!」
「食うねぇ。」
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