グナーデ王子は一途過ぎ!

人生2929回血迷った人

文字の大きさ
20 / 25

辞めて

しおりを挟む

「この感じだと明日の賭けは俺の不戦勝だな。」

「そうだね……。仕方ないけど第一師団に入るよ、僕が第二師団から抜ければ噂も無くなるだろうしこれ以上団長に迷惑かけられない。」

第二師団にいたいっていうのは僕のワガママだしね……。それに団長を巻き込んじゃった。

「なんでですか?俺、明日闘いますけど。」

「団長っ、なんで………。」

「なんでってお前は第二師団の仲間だし欠けられたら困る。それにこの賭けだって俺のせいで始まったようなものだしそれに………俺がお前と一緒にいたいんだよ………。」

一緒にいたいんだよ……一緒にいたいんだよ………一緒にいたいんだよ………。

頭の中でエコーがかかる。

「団長、僕と居たいって思ってくれてるんだ………えへへへ。」

ヤバい、顔がにやけちゃう。
さっきの発言で顔を反対側に背けていた団長は僕が笑うと顔をじっと見つめてきた。

「僕の顔……何かついてますか?」

「いや…なんでもない。」

僕が問いかけるとすぐに顔を背けてしまった。言わなきゃ良かった……団長の顔もっと見ていたかったから。

「それよりもそろそろその体勢で喋るの辞めてくれないか?」

その体勢………はっ!ヒル兄様に抱っこされたままだ。

「ヒル兄様はーなーしーてー!」

僕はヒル兄様の胸を手で押して離れようとするが、抱っこする腕に力が入り抜け出せない。

「このままでいいじゃないか。それとも何か不都合なことでもあるのかい?」

ヒル兄様は何故か僕の方を向いて言うのではなく団長の方を向いていた。

「それは!…いえ、別に、ないですけど………。」

団長は何か言いたそうにしていたが結局何も言わなかった。

「僕が恥ずかしいからやーめーてー!」

「これくらいいつもやってることじゃないか、今更恥ずかしがらなくても。」

「人の目があるでしょー!っていつもはやってない!た!ま!に!たまにしかやってない!ってそうじゃない!そんなことはどうでもいい!」

「どうでもは良くないだろ。いつもやってるし恥ずかしがることは何もない。寧ろいつでもどこでもなーちゃんには触っていた───」

「ヒル兄様はうるさい、黙ってて!」

「分かったよ。」

ヒル兄様はシュンとして黙ってくれた。

「さっきの言葉が嬉しくてスルーしちゃいそうになりましたけど。」

「嬉しいって思ってくれたのか。」

団長が少しにっこりする。
はー、かっこいいー!ってそうじゃない!
頭を振って邪念を払う。

「嬉しいって思いますけど!そうじゃなくて明日の試合は中止です中止。」

「嫌だ。」

「嫌だって、頭打って血がドバドバ出たんですよ!無理して何かあったらどうするんですか!」

「ドバドバ出てたのか……いや、それでも俺は何がなんでも出る。」

団長は断固拒否の姿勢を崩さない。

「なんで…そんなに……。」

僕のこと好きな訳じゃないくせに。
メルツェスが好きなくせに。
なんでそんなに……優しいんですか………。

「僕だって第二師団にいたいですよ!」

団長といたいのもそうだけどやっと最近ユングっていう友達が出来てこれから楽しくなるかもなって思って、頑張ろうって……そう思って…………。

「ひっぐ……ゔうっ…あれ僕また………今日どんだけ泣いてるんだろ………。」

「グナーデ…だったら尚更俺が闘うしかないだろ?」

僕を宥めようと団長は頭を撫でてくるが僕はその手を払う。
ああ、団長を拒否したいわけじゃないのに……。
団長はショックを受けた顔をしている。

「だったらじゃないんです!第二師団にいたいけどそれでも団長に何かあったら意味が無い!もし明日試合をして…そのせいで団長が死んじゃったら……僕…自分のことが許せない……。素直にヒル兄様の言うこと聞いてれば良かったって、きっと後悔する。だから、やめて………。」

口から悲痛な声が零れた。ポタポタと涙が止まらない。

「死ぬってそれほど俺の怪我は酷いのか?」

「酷いですよ。」

バタンと扉を閉めて入ってきた人は先程の治癒術師の人だった。

「見つかった時はもうそれは血の海が広がっていて明日は血が足り足りなくて立ってるのもやっとっていう状態でしょうね。というかなんでこんなに早い目覚めなんですか?あの量結構やばかったですよ。今も普通に起き上がってますけど回復力どんだけですか。」

「君は?」

そう言えば団長は意識がなかったからこの人が誰だか分かってないんだ。

「ドラッヘン様の治癒を担当したしがない治癒術師でございます。どうぞお見知り置きを。」

「そうか……有難う。その驚きの俺の回復力を持ってしても明日は立ってるのがやっとなのか?」

「それはそうですよ。常人なら座るのも辛いかも知れませんね。栄養あるものを沢山食べて身体が血を作るのを待つしかないですから。それにしても頭以外でどこが痛いだとか違和感があったりだとかそんなことは無いですか?」

「少しクラクラしてる。」

「そりゃあ、血が少ないですからね。その様子なら大丈夫そうですね。まあ、異常があったとしても頭の中なんて見れないんで俺のせいにするのは勘弁してくださいね。頭打った人自身の責任なんで。」

この人フランクというかなんというか貴族に対してこんな言葉遣い出来るって度胸ありすぎるでしょ。面白い人だな。

「ああ、そんなことはしない。ただ明日の試合には出るからもし何かあったら頼む。」

「はいはい、分かりました。僕なんかにどうにか出来るとは思いませんがその時は一応診察しますよ、仕事ですからね。」

「ちょっと待ってー!なんで試合に出ることになってるんですか!もう…いいですからぁ。やめましょう、団長……。」

「いや、出る。」

団長は硬い表情で確固とした意志を伝えてくる。
あーあ、ダメなんだろうなぁ。
僕が何を言っても聞かないんだろうなぁ。
なんで僕なんかの為にこんなことを……。

「分かりました…。でももう、僕は知りません。勝手に死ぬなら死んでください。目の前で死なれると気分が悪いので試合も見に行きません。じゃあ、さようなら。」

こんなこと言う奴の為に無理をするなんて馬鹿らしいでしょ?だから、辞めてよ──────。

「うん、勝手に死ぬわ。」

自分勝手に部屋から去る僕の背中にはそんな言葉が投げかけられたのだった。



お願いだから、無理しないでよ。








しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

その首輪は、弟の牙でしか外せない。

ゆずまめ鯉
BL
養子ゆえに、王位継承権を持たないオメガで長男のレイン(24)は、国家騎士団として秘密裏に働き、ただ義弟たちを守るためだけに生きてきた。 第一継承権を持つアルファで次男のリオール(19)は、そんな兄に「ごく潰し」と陰口を叩く連中を許せなかった。自分を犠牲にしてまで守る価値はないと思っていた。なにかと怪我の多い国家騎士団を辞めさせたかった。 初めて訪れた発情期のとき。約束をすっぽかされたリオールが不審に思い、兄の部屋へ行くと、国家騎士団の同僚──グウェンソード(28)に押し倒されるところを目撃して激高する。 「今すぐ部屋から出ろ!」 独占欲をあらわにしたリオールは、グウェンソードを部屋から追い出し、兄であるレインを欲望のままに抱いた。 翌朝、差し出されたのは特注の首輪──外せるのはリオールのみ。 「俺以外に触らせるな」 そう囁かれたレインは、何年も首輪と弟の執着に縛られ続けてきた。 弟には婚約者がいるのに、こんな関係を続けてもいいのか。 本当にこのままでもいいのか。 ひたすら執着して独占したがる弟と、罪悪感に苛まれる兄。 その首輪は、いつか弟の牙で血に染まるのか──。 どうにかしてレインを落としたいリオールと、弟との関係に悩むレインのオメガバースです。 リオール・グランケット(19)×レイン・グランケット(24) ※この作品は2015年頃に本文を書き、2017年頃にオメガバースに改稿、さらに2026年に手直しした作品になります。読みにくいかもしれません。ご了承ください。 三人称ですが攻めだったり受けだったり視点がよくかわります。攻め視点多めです。

【完結済】王子を嵌めて国中に醜聞晒してやったので殺されると思ってたら溺愛された。

うらひと
BL
学園内で依頼をこなしていた魔術師のクリスは大物の公爵の娘からの依頼が入る……依頼内容は婚約者である王子からの婚約破棄!! 高い報酬に目が眩んで依頼を受けてしまうが……18Rには※がついています。 ムーン様にも投稿してます。

過保護な父の歪んだ愛着。旅立ちを控えた俺の身体は、夜ごとに父の形で塗り潰される

中山(ほ)
BL
「パックの中、僕の形になっちゃったね」 夢か現か。耳元で囁かれる甘い声と、内側を執拗に掻き回す熱。翌朝、自室で目覚めたパックに、昨夜の記憶はない。ただ、疼くような下腹部の熱だけが残っていた。 相談しようと向かった相手こそが、自分を侵食している張本人だとも知らずに、パックは父の部屋の扉を開く。 このお話はムーンライトでも投稿してます〜

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *本編完結しました

運命の番ってそんなに溺愛するもんなのぉーーー

白井由紀
BL
【BL作品】(20時30分毎日投稿) 金持ち‪社長・溺愛&執着 α‬ × 貧乏・平凡&不細工だと思い込んでいる、美形Ω 幼い頃から運命の番に憧れてきたΩのゆき。自覚はしていないが小柄で美形。 ある日、ゆきは夜の街を歩いていたら、ヤンキーに絡まれてしまう。だが、偶然通りかかった運命の番、怜央が助ける。 発情期中の怜央の優しさと溺愛で恋に落ちてしまうが、自己肯定感の低いゆきには、例え、運命の番でも身分差が大きすぎると離れてしまう 離れたあと、ゆきも怜央もお互いを思う気持ちは止められない……。 すれ違っていく2人は結ばれることができるのか…… 思い込みが激しいΩとΩを自分に依存させたいα‬の溺愛、身分差ストーリー ★ハッピーエンド作品です ※この作品は、BL作品です。苦手な方はそっと回れ右してください🙏 ※これは創作物です、都合がいいように解釈させていただくことがありますのでご了承くださいm(_ _)m ※フィクション作品です ※誤字脱字は見つけ次第訂正しますが、脳内変換、受け流してくれると幸いです

【Amazonベストセラー入りしました】僕の処刑はいつですか?欲しがり義弟に王位を追われ身代わりの花嫁になったら溺愛王が待っていました。

美咲アリス
BL
「国王陛下!僕は偽者の花嫁です!どうぞ、どうぞ僕を、処刑してください!!」「とりあえず、落ち着こうか?(笑)」意地悪な義母の策略で義弟の代わりに辺境国へ嫁いだオメガ王子のフウル。正直な性格のせいで嘘をつくことができずに命を捨てる覚悟で夫となる国王に真実を告げる。だが美貌の国王リオ・ナバはなぜかにっこりと微笑んだ。そしてフウルを甘々にもてなしてくれる。「きっとこれは処刑前の罠?」不幸生活が身についたフウルはビクビクしながら城で暮らすが、実は国王にはある考えがあって⋯⋯?(Amazonベストセラー入りしました。1位。1/24,2024)

完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました

美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

処理中です...