グナーデ王子は一途過ぎ!

人生2929回血迷った人

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涙が止まらない。

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団長が階段から落ちたという話を僕が聞いたのはお昼ご飯をシュティレと一緒に食べてる時だった。その時は自作のお弁当を食べる為に静かな場所に移動していた為中々団長が落ちたことを知ることが出来なかった。

ちなみにそのお弁当は明日の試合前に団長に差し入れで上げようと思っていたものの試作品だ。僕の為に団長が戦ってくれるのに何もしないなんて…というのももちろんだが元々団長に何かを上げるということをしたかった。
だが、なかなかそんなタイミングは来ず、今回は「僕の為に戦ってくれるのだからこれくらいはするべき」という名目で渡せると判断したのだ。 
まあもうそんな事言ってる場合でもなくなってしまったのだが。もうこうなってしまえば明日の試合なんてどうでもいい。僕が第二師団に残りたいっていうのはただのワガママだ。
団長のことを聞いた僕はすぐ様救護室に向かった。





辿り着いた先には団長が寝かされているベッドがあった。団長の頭は包帯をぐるぐる巻きにされている。意識は無く静かな呼吸の音だけを発していた。僕はベッドの隣にある椅子に座った。
すると、王国軍勤務の治癒術師の人がこちらに寄ってきた。きっと、団長を治癒した人だろう。
僕はどういった経緯で団長が階段から落ちたのかを聞いた。

「申し訳ございません、それは私共も存じ上げないのです。ただ、発見された時には強く頭を打ち付けられたのか床に赤い血溜まりを作り倒れていたらしく急いでその現場に私は連れていかれました。」

「そうなんですね………。団長の容態は?」

「傷を塞ぐことは出来たのですが動くと塞いだ傷が開くのでその為に包帯をしております。また、傷は治癒術でどうにかなりましたが、頭というデリケートな部分を打っておられるので何か症状が出てもおかしくありません。ドラッヘン様が起きられてからそこら辺の診察をしたいと思います。取り敢えず2週間は安静にしてもらい、1ヶ月くらいは様子を見てみる形になります。」

「団長はすぐ起きるんですか?」

「起きる……と言いたいところですが分かりません。頭を打った部分によってはこのまま起きないなんてことも考えられますので………。」

「そう…なんですね。分かりました、説明ありがとうございます。」

そ、そんな………団長が、団長が………。
僕はそのまま黙り込んでしまった。

治癒術師の人は試合中に怪我したであろう人の治癒に行った。




しばらくベッドの横で呆然としているとヒル兄様がやってきた。

「そんなに心配か?」

僕の顔を覗いて問いかけてくる。

「……うん。」

僕は頷く。

「顔が酷いことになってるぞ、そんな顔でも可愛いけど。」

視界がボヤける。すると、頬に何かが伝う感触があった。

ポタ……ポタ………

そして伝い、落ちたものが布団を濡らす。

「なーちゃん、泣かないで。」

静かに泣く僕をヒル兄様は抱きしめてくれる。
なんで団長じゃないんだろう。
僕が泣いた時、抱きしめて慰めてくれるのが団長だったら涙なんてすぐ引っ込んじゃうのに。
そんなふうに思うと悲しさと寂しさでより一層泣けてきた。

「……ううっ………だんちょー、ひっぐ………だんちょー………」

泣いて呼吸が大きくなる僕の背中をヒル兄様が撫でてくれる。静かに…優しく……。

「よしよし、ドラッヘンはきっとすぐ起きるし数日後にはピンピンしてるよ。だから、大丈夫、大丈夫。」

椅子から抱き上げられて子供の抱っこの状態になると、そのまま僕の座ってた椅子にヒル兄様が座り、僕は膝に下ろされた。簡潔に言うと対面座位のような体勢だ。ヒル兄様に抱きつき、背中と頭を撫でられると少しずつ落ち着いてくる。

ヒル兄様は団長を心配している僕に気遣ってか僕から団長が見えるように座ってくれていた。





だから、団長が目を覚ました時バッチリと目が合った。

「団長!!!」

団長に近づこうとするがヒル兄様に抱っこされている状態のため手と足が伸びただけで終わった。
また、団長は呼んだ声が頭に響いたのか顔を少し顰めた。

「ごめんなさい。」

罪悪感に駆られ謝りながらヒル兄様の肩に顔を埋めた。

「いや、大丈夫だ。それより俺は……ああ、階段から落ちたのか。」

少し逡巡した後すぐに一人で納得している。

「そうですよ。頭痛いですか?気持ち悪くないですか?クラクラしませんか?……僕のこと分かります?」

記憶喪失の可能性も考えて少し怖くなる。
僕はヒル兄様の服をも巻き込んで自分の拳をギリギリと握りしめた。
よく考えれば落ちる前の記憶があるのだから記憶喪失なんて可能性はないのだが……。

「だ、大丈夫だ。それにしてもグナーデはなんでここに?」

僕の質問攻めに団長は少し引いたのか狼狽えていた。

「団長のこと心配だったからに決まってるじゃないですか!」

語気を荒げた僕に団長は驚いたのか少し目を見張る。そして「ありがとう」と朗らかに笑った。

「…団長が……目を覚まして…ひっぐ………良かったぁ。」

安堵したら止まっていた涙がまた流れ出してしまった。ヒル兄様はまた背中を撫でてくれたが、それよりも団長が頭を撫でて「心配かけてごめんな。」と慰めてくれたから背中を撫でられていたことなんて分からなかった。

さっき願ってた事が数分越しに叶ってしまって今度は嬉し泣きが止まらなかった。

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