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第十四話
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「ファイアさ~ん、今日はほんっと~にありがとうございましたぁ~~~!」
「サリーさん、ファイアさんからもう少しでいいので離れてください。何かあったらどうするんですか」
「なんでアルバリオンさんはファイアさんのことをそんなに信用してないんですか~」
「それは……」
「…………」
なんだこの状況。
とある居酒屋。僕、サリー、そしてアルバリオンの三人で一つのテーブルを囲んでいる。
僕はあの逃走劇のあと、シオンに怪我を治してもらった。彼女はとても嫌がっていたのだが、サリーが冒険者ギルドに僕の治療の依頼を出してくると言い出したので渋々ながら了承してくれた。
その後サリーがお礼にと僕を家に誘い、アルバリオンがそれを止め、妥協案として出てきたのがご飯を奢らせてほしいという話だった。
アルバリオンは心配だから付き添うと言い、今現在サリーオススメの居酒屋にきている。
ちなみにその間に、サリーって呼び捨てにして欲しいというやり取りもあった。
店は小さく、空席もチラホラある。繁盛してるとは言い難い。
冒険者の酒場とは違い、静かな雰囲気だが、それとは違うピリピリとした緊張感が漂っている。
周りを見渡せば猫獣人が多い。
「ここは、猫獣人と一緒じゃないと入れないんです」
「へぇー、そーなんだぁ」
どうぞどうぞとサリーから勧められたお酒を煽る。
周りの客は僕たちのテーブルが気になるのか、ほとんどがこちらを観察している。
「なんだか注目されてますね~。なんでだろう?」
「まあー、原因は僕じゃないかなー」
「自覚してるんですね」
アルバリオンがビールの入ったジョッキを煽り、ため息を吐いた。
サリーはそれを見て首を傾げた。
「まあねー」
「ファイアさん、どういうことですか?」
「うーん、まあ、周りの猫ちゃんたちが僕のかっこよさにメロメロになってこっち見てるってこと」
「はわわわわ! なるほど! そういうことなんですね!」
「って、違います! サリーさんも本気にしないで下さい!」
アルバリオンはジョッキを勢いよく机に置き、立ち上がった。
彼に視線が集まる。
「……あっ、うるさくして、申し訳ございません」
周りにペコペコと頭を下げ、席に着いた。
「真面目だなぁ」
「普通です」
「そう? まあいいや」
僕はグラスの中身を飲み干し、立ち上がる。そして、座っているサリーの後ろに立つ。
うーん、ついでにいつものやつしとくか。
「僕さぁ、サリーみたいな子見ると首輪つけたくなっちゃうんだよねぇ」
彼女のストレート髪をすくい上げ、首を手の甲でさする。
「はわっ、はわわわわ!」
あれ? なんか、お酒のせいで楽しくなってきちゃった。
彼女の耳元に顔を近づける。
「ねぇ、僕のものになってよ」
「はっ、はひっ」
「あはは……ちゃんと言えてないー。ねぇ、ほんとぉ? ほんとに僕のものになってくれる?」
「はふっ…………」
「あれぇ? 何も言わなくなっちゃった」
どうしたのかとサリーの顔を覗き込めば、顔を真っ赤にして固まっていた。
「どうしたのぉ? おーい!」
サリーの肩を揺らしても返事がない。
なんで?
それに、何故か店の中自体が静かだ。
「あれぇ???」
周りを見渡せば唖然として口をパクパクしている獣人、顔を真っ赤にしている獣人、目を手で覆っている獣人、モジモジとトイレを我慢している獣人などなど、色んな反応をしてる客がいる。
トイレは我慢しない方がいいよ。
目の前のアルバリオンも微動だにしない。
「どうしたの?」
僕が首を傾げれば、アルバリオンはプルプルと震えだした。
「な! な! なんですか今の!!!」
「え? 僕、変なことした?」
「いや……変なこと……変なことでは……いや、駄目でしょう! 今のは!」
「はぁ?」
意味がわからない。
まあ、駄目っていう意味は分かるけど、今更そんな驚かれてもいつものことだし。
僕はとりあえず席に戻った。
なんなんだ今日は。ちっとも思った通りにならない。
サリーになんで僕に視線が集まっていたのか教えたかっただけなのに。まあ、僕も途中で調子に乗っちゃったけどさ。
「と、とにかく! ああいうことは辞めてくださいっ!」
「えー、やだ。今更何言ってんの?」
アルバリオンがため息をつく。
本日何回目だろうか?
「なんか、周り騒がしいね? なんで走って出ていくんだろ?」
静まり返っていた店内はアルバリオンが喋りだしたと同時に元に戻っていた。
内輪でコソコソと話し出す獣人や、急に店から出ていく獣人などがいる。
「あなたのせいですよ!」
「え? なんで? って、ああ」
怖がっちゃったのか。
悪名高い僕が、実際に猫獣人を奴隷しようとしてるところ見ちゃったんだもんね。
「この人絶対わかってない……」
アルバリオンがまたもため息をついた。
なんで?
「サリーさん、ファイアさんからもう少しでいいので離れてください。何かあったらどうするんですか」
「なんでアルバリオンさんはファイアさんのことをそんなに信用してないんですか~」
「それは……」
「…………」
なんだこの状況。
とある居酒屋。僕、サリー、そしてアルバリオンの三人で一つのテーブルを囲んでいる。
僕はあの逃走劇のあと、シオンに怪我を治してもらった。彼女はとても嫌がっていたのだが、サリーが冒険者ギルドに僕の治療の依頼を出してくると言い出したので渋々ながら了承してくれた。
その後サリーがお礼にと僕を家に誘い、アルバリオンがそれを止め、妥協案として出てきたのがご飯を奢らせてほしいという話だった。
アルバリオンは心配だから付き添うと言い、今現在サリーオススメの居酒屋にきている。
ちなみにその間に、サリーって呼び捨てにして欲しいというやり取りもあった。
店は小さく、空席もチラホラある。繁盛してるとは言い難い。
冒険者の酒場とは違い、静かな雰囲気だが、それとは違うピリピリとした緊張感が漂っている。
周りを見渡せば猫獣人が多い。
「ここは、猫獣人と一緒じゃないと入れないんです」
「へぇー、そーなんだぁ」
どうぞどうぞとサリーから勧められたお酒を煽る。
周りの客は僕たちのテーブルが気になるのか、ほとんどがこちらを観察している。
「なんだか注目されてますね~。なんでだろう?」
「まあー、原因は僕じゃないかなー」
「自覚してるんですね」
アルバリオンがビールの入ったジョッキを煽り、ため息を吐いた。
サリーはそれを見て首を傾げた。
「まあねー」
「ファイアさん、どういうことですか?」
「うーん、まあ、周りの猫ちゃんたちが僕のかっこよさにメロメロになってこっち見てるってこと」
「はわわわわ! なるほど! そういうことなんですね!」
「って、違います! サリーさんも本気にしないで下さい!」
アルバリオンはジョッキを勢いよく机に置き、立ち上がった。
彼に視線が集まる。
「……あっ、うるさくして、申し訳ございません」
周りにペコペコと頭を下げ、席に着いた。
「真面目だなぁ」
「普通です」
「そう? まあいいや」
僕はグラスの中身を飲み干し、立ち上がる。そして、座っているサリーの後ろに立つ。
うーん、ついでにいつものやつしとくか。
「僕さぁ、サリーみたいな子見ると首輪つけたくなっちゃうんだよねぇ」
彼女のストレート髪をすくい上げ、首を手の甲でさする。
「はわっ、はわわわわ!」
あれ? なんか、お酒のせいで楽しくなってきちゃった。
彼女の耳元に顔を近づける。
「ねぇ、僕のものになってよ」
「はっ、はひっ」
「あはは……ちゃんと言えてないー。ねぇ、ほんとぉ? ほんとに僕のものになってくれる?」
「はふっ…………」
「あれぇ? 何も言わなくなっちゃった」
どうしたのかとサリーの顔を覗き込めば、顔を真っ赤にして固まっていた。
「どうしたのぉ? おーい!」
サリーの肩を揺らしても返事がない。
なんで?
それに、何故か店の中自体が静かだ。
「あれぇ???」
周りを見渡せば唖然として口をパクパクしている獣人、顔を真っ赤にしている獣人、目を手で覆っている獣人、モジモジとトイレを我慢している獣人などなど、色んな反応をしてる客がいる。
トイレは我慢しない方がいいよ。
目の前のアルバリオンも微動だにしない。
「どうしたの?」
僕が首を傾げれば、アルバリオンはプルプルと震えだした。
「な! な! なんですか今の!!!」
「え? 僕、変なことした?」
「いや……変なこと……変なことでは……いや、駄目でしょう! 今のは!」
「はぁ?」
意味がわからない。
まあ、駄目っていう意味は分かるけど、今更そんな驚かれてもいつものことだし。
僕はとりあえず席に戻った。
なんなんだ今日は。ちっとも思った通りにならない。
サリーになんで僕に視線が集まっていたのか教えたかっただけなのに。まあ、僕も途中で調子に乗っちゃったけどさ。
「と、とにかく! ああいうことは辞めてくださいっ!」
「えー、やだ。今更何言ってんの?」
アルバリオンがため息をつく。
本日何回目だろうか?
「なんか、周り騒がしいね? なんで走って出ていくんだろ?」
静まり返っていた店内はアルバリオンが喋りだしたと同時に元に戻っていた。
内輪でコソコソと話し出す獣人や、急に店から出ていく獣人などがいる。
「あなたのせいですよ!」
「え? なんで? って、ああ」
怖がっちゃったのか。
悪名高い僕が、実際に猫獣人を奴隷しようとしてるところ見ちゃったんだもんね。
「この人絶対わかってない……」
アルバリオンがまたもため息をついた。
なんで?
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