猫獣人を守る為なら僕は、悪役になったって構わない

人生2929回血迷った人

文字の大きさ
23 / 26

第二十三話(盗賊のボス視点)

しおりを挟む
 ガンッッッ

 俺が拳で机を殴った音が洞窟の中を反響する。
 目の前にはでっぷりと太った男と筋骨隆々な身体に大剣を背負った男。後者は太った男の護衛だろう。

 俺は今、この目の前にいる太った男、奴隷商人と交渉をしていた。いや、この男にとある提案をして、断られたところだった。

「猫を買い取らねぇっていうならなんでこんな所までわざわざ来た?」

 こいつらは国に認められた奴隷商人だ。
 俺は最近、この洞窟に盗賊団の拠点を移した。そして、やたらと猫獣人を見掛けることから猫獣人の集団がここらへんにいると予想している。
 だから、その猫獣人を買い取らないか? と言う提案を、オルナの隣街に最近来たという奴隷商人に部下がしに行ったのだ。
 そして、その部下はいらない農作物まで持って帰って、奴隷商人から貰った手紙を俺にくれた。

 そこには俺の提案を呑むから話を詰めるために俺の拠点までいくという話が書いてあった。

 だから俺は彼らをここに招き入れたのだ。

 でっぷりと太った男が腹を抱えて笑い出す。

「ハハハッ! お前はノラ、と言いましたかな? ハーッ! 哀れ哀れ」

 男は半笑いでこっちを見下してきた。
 それを見た俺は、ついイラついて足にベルトで固定してある短剣に手を添えた。
 すると、隣に立つ護衛の男は剣の柄を掴み、睨みつけてくる。

 殺気が凄い。俺はそれだけで動けなくなってしまった。
 俺は両手を上げて降参の意を示してた。

「わッ、悪かった」

 そう、頭を下げれば男は剣から手を離した。そして、太った男の方が口を開く。

「分かればいいんですよ、分かれば。盗賊なんて低俗な輩がまともに会話出来るとは思ってませんから」
「ぐっ……」
「ああ、そうでした。ここに来た理由、、、はあとで分かります。それよりも」

 太った男はそこで言葉を区切ると護衛の男を「ガジリオン」と呼んで視線を送る。すると、その男。ガジリオンは、素早く俺の背後に回り、俺の肩に手を置くと、耳打ちをしてくる。

「嘘つくんじゃねぇぞ?」

 俺は、頷くことしか出来なかった。
 太った男はそれを見て話し出す。その顔は真剣で先程までのこちらをバカにした雰囲気はあまりない。

「お前は、シユって名前の男を知ってないか?」
「シユ……?」
「ああ、銀髪に青い瞳を持った片耳の猫獣人だ」

 シユ……聞いたことのない名前だった。そんな容姿の猫獣人なんて見たことない。しかも片耳がないなんて、会っていたら印象に残るだろう。

 俺は首を横に振った。

「そうか。まあ、期待はしていなかったがな。彼はかなりの魔術の使い手だ。名前なんていくらでも変えられるし、髪色や瞳の色なんてどうにでもなる」

 太った男はため息を吐く。期待はしていないと言いながら、だいぶ残念そうだ。
 いや、というより疲れている様子だ。

「もし見かけたら連絡をくれ。そいつの情報なら高額で買ってやる。お貴族様がそいつを随分と気に入ってらっしゃってな」

 そこまで男は話すと、急にまた表情を変える。

「こんな湿ったところに住み着いてる下賎な輩と随分と話してしまいましたな。じゃあ……」

 と、男が立ち上がろうとした時。

 この部屋に俺の部下が走って入ってきた。

「ボス! 敵襲です!」

 その言葉に、太った男が笑い出す。

「ハッハッハッハー! やっとですなー」

 俺はどういうことだと男の方をパッと見る。すると、男は更に顔をニヤニヤいや、ニチャニチャさせて笑う。

「彼らを殺してはいけませんよ? 私たちの大事な商品ですから。もし、殺したら……分かりますよね?」

 クソッ。
 襲撃はこいつらの差し金か。
 ガジリオンが剣を抜いて威圧してくる。

 それにしても誰が来たんだ?

 俺は、報告をくれた部下に質問する。

「敵は?」
「猫獣人が二十人前後です」
「他の奴らを集めて入口に来い!」

 俺はそれだけ部下に言うと、部屋を飛び出し、入り組んだ洞窟を走って入口に向かう。

 なんで猫獣人が?
 あのデブは何をしやがったんだ?
 ……そういえば、街に交渉しに行った部下とわざわざ別れてここに来たにしては来るのが早かったような……。

 まあ、今はそんなこと考えている暇はない。

 後ろを見れば、奴隷商人達は俺のその後ろを歩いて着いてきているようだ。そのさらに後ろを部下が走ってきているのが見える。

 入口にたどり着けば、五人の盗賊団のメンバーと猫獣人が戦っているところだった。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

小学生のゲーム攻略相談にのっていたつもりだったのに、小学生じゃなく異世界の王子さま(イケメン)でした(涙)

九重
BL
大学院修了の年になったが就職できない今どきの学生 坂上 由(ゆう) 男 24歳。 半引きこもり状態となりネットに逃げた彼が見つけたのは【よろず相談サイト】という相談サイトだった。 そこで出会ったアディという小学生? の相談に乗っている間に、由はとんでもない状態に引きずり込まれていく。 これは、知らない間に異世界の国家育成にかかわり、あげく異世界に召喚され、そこで様々な国家の問題に突っ込みたくない足を突っ込み、思いもよらぬ『好意』を得てしまった男の奮闘記である。 注:主人公は女の子が大好きです。それが苦手な方はバックしてください。 *ずいぶん前に、他サイトで公開していた作品の再掲載です。(当時のタイトル「よろず相談サイト」)

たとえば、俺が幸せになってもいいのなら

夜月るな
BL
全てを1人で抱え込む高校生の少年が、誰かに頼り甘えることを覚えていくまでの物語――― 父を目の前で亡くし、母に突き放され、たった一人寄り添ってくれた兄もいなくなっていまった。 弟を守り、罪悪感も自責の念もたった1人で抱える新谷 律の心が、少しずつほぐれていく。 助けてほしいと言葉にする権利すらないと笑う少年が、救われるまでのお話。

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

劣等アルファは最強王子から逃げられない

BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。 ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。

超絶美形な悪役として生まれ変わりました

みるきぃ
BL
転生したのは人気アニメの序盤で消える超絶美形の悪役でした。

完結·助けた犬は騎士団長でした

BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。 ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。 しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。 強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ…… ※完結まで毎日投稿します

学園ものに転生した悪役の男について

ひいきにみゐる
BL
タイトルの通りにございます。文才を褒められたことはないので、そういうつもりで見ていただけたらなと思います。

平凡な俺が完璧なお兄様に執着されてます

クズねこ
BL
いつもは目も合わせてくれないのにある時だけ異様に甘えてくるお兄様と義理の弟の話。 『次期公爵家当主』『皇太子様の右腕』そんなふうに言われているのは俺の義理のお兄様である。 何をするにも完璧で、なんでも片手間にやってしまうそんなお兄様に執着されるお話。 BLでヤンデレものです。 第13回BL大賞に応募中です。ぜひ、応援よろしくお願いします! 週一 更新予定  ときどきプラスで更新します!

処理中です...