性別多様性

夢遊 優

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#2 小学校中盤期(小学3~4年)

#2-4 3年1組の一時(ひととき)の平和

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月曜日の朝、また3人で家の近くに集合した。
「今日からも頑張れよ。2人とも」と、守(まもる)が言う。
「ああ。もうあいつらとは会いたくねーけど、私が休んだら、それこそ、すげー大事(おおごと)になるからな」「龍美(たつみ)…まだ戦うんだ…」「ああ」
それに、私はこう聞いた。
「あの男子(なんし)たちのこと、怖くないの?」
龍美はこう答えた。
「うちのクラスは、あの10人以外全員、私たちの味方。みんなでかかったら、あいつらなんか怖くねーし。それに…」「それに?」
龍美は間を置いて言った。
「一番(いちは)はいつでも、私のそばにいるだろ?それが私は、心強い!」「龍美…ありがとう」

いつも通り、学校に到着した。
でも…いつもとなんか違う。
「10人組が誰も来てねーな」「あいつら全員休みじゃね?」「だといいけどなー」

その日の授業は、普通の小学校の「いつも通り」の授業だった。そう…
10人組のメンバーが、誰も来ていないのだ。
1日がすごく暇に感じられた。

放課後、私は自分のドローンを、柚子花(ゆずか)の家に向けて飛ばした。手紙も一緒だ。

この時の私は、端末にメールアドレスを入れていたのを忘れていた。そのため、伝書鳩(でんしょばと)ならぬ、伝書ドローンを飛ばすことになった訳(わけ)だ。後ろでラバーが吹き出しそうになっているのを見て、その事に初めて気づいて、めちゃくちゃ恥ずかしかったのを覚えている。

手紙の内容により、翌日、柚子花は学校に来た。
そうしてしばらく、平和すぎる日々が過ぎて行った。

ある日、龍美(たつみ)と柚子花は、格闘ロボットをプログラムしていた。色違いの同じ物だけれど、柚子花のロボットの方が強く、ずっと勝負に勝っていた。
「なんで柚子花(ゆずか)のロボットは強いんだ?」「ううん。おんなじ物だよ。」「じゃあ、なんでだ?」「体の使い方だよ。相手が、腕を出したら、掴んだ後、こう引っ張るとか、詳しくプログラムしてるからね」「殴るだけじゃないんだな…」「殴るだけだったら、私は勝てない」「あっそうか。だから、そこまでプログラムを組むの?」「うん。頭を使わなきゃだよ」「なるほど…あっ!一番(いちは)、おはよ!」「おはよう。龍美、柚子花。話、聞いてたよ」

そんな日が、何日も続いた。
だけど、私もみんなも気がかりだった。
あの10人が、なぜ学校に来ていないのかということだ。

しばらくして、私たちが10人組の存在を忘れようとしていた、夏休みの前頃だった。
「皆さん…お知らせがあります。」
担任の海澤新芽(うみざわあらめ)先生だ。
「もう少しで、あの10人が学校に戻って来ます。あの子たちは、学校からの指示により、欠席になっていましたが、夏休み終わりから、登校できるようになります…それだけです。」
先生や他の児童の絶望が、とても強く感じられた瞬間だった。




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