クリノクロアの箱庭

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第六十八話 魔王と勇者と王女とクマと

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クリスが魔王化した、という事実は少数の人だけに知られるのみとなった。
先生方や他のクラスメイトには、クリスが最近ハマっている、大魔王が主人公の冒険物語に影響されているだけだ、と話している。少しクリスには悪いけど、皆んなもこれですんなり納得しているので、日頃のクリスの行いのせいというのもある。

結局、フリーデとリーカ、ベルシュだけが、魔王クリス王子の真実を知っている。
ベルシュはクロに乗っ取られて、女神からの説明を受けているから信じないわけにはいかなかった。

「さあて、クリス。僕は君に1つの提案を用意している。それに乗るかは君自由だけど、出来ればこの提案に賛同する事を推奨するよ」
「リーンハルトくん。その話し方は何なんですか。ちょっとキモいですよ?」
「そうですわね。少し偉そうですわね」

キモいとか言うなよ。
女子に言われると結構傷付くんだぞ。
カッコつけなきゃ良かった。

「わ、我は、良かったと思うぞ。魔族の幹部の話し方のようだった」
「うん、ありがと。味方は君だけだよ………」
「そんな事はありませんよ!私もその、、、えっと、リン様らしくて良かったと思います!」

僕らしいって、さっきキモいとか言われたばかりなんだけど。
キモい話し方が僕らしさなのか。

「話が進まないから、元に戻すけど。クリス。僕の考え、聞いてみる?」
「ふむ。まあ良い。聞くだけ聞いてみるとしよう。だが、魔王たる我に相応しくない内容なら、容赦無く却下にするぞ」
「うん。それでいいよ。じゃあ、まずは、、、僕の配下に入ってくれないか?」
「却下」

ええええ。何でだよ。
もうちょっと吟味というか、内容を咀嚼してから返事しようよ。

「ええっと、ちなみに何か気に入らない点でもあったかな?」
「逆に聞きたいが、気にいる点が今のにあると思うか?」
「そうかなぁ。あ、まだその先をいってなかったからね。だからだよ。もう、クリスったら、そそっかしいんだから」
「あまり釈然としないが、まあ、いいだろう。その先とやらを言ってみるがいい」
「魔王さんって、結構我慢強いですね」
「クリスですから。クリスは抵抗するより我慢した方が結果的に早く済むというのが生活の基本でしたから」

我慢し過ぎは良くないよ。
後で一気に爆発しちゃうからね。

「続きだけどさ。僕の配下に入ったら、ノルドとの戦争に参加して、僕と一緒にノルドと闘おう!」
「却下却下却下!!」
「ええ?!なんでさぁ」
「我の話を聞いてなかったのか?我はこの世に余った人々の」
「聞いた聞いた!それはもう何回も聞いたよ!だからさ!君の手助けもしながら、この国も助けて、後ついでにベルシュの問題も解決してしまおうって考えなんだよ!」
「おお!私もですか!ふひょおう!さすがリン様ぁ!」
「まあまあまあ、褒めるな褒めるな」
「やっぱ、今日のリーンハルトくんキモいですね」

うおう。どんなテンションでも言われるのか、、、。


人は反省をする事で一回り大きくなれる。
変なテンションで話すと女子にキモいと言われる。
これは二度としない。反省だ。
よし。僕もこれで人として大きくなれたんじゃないかな?
今日はもう落ち着いて話ができるはずだ。
もうキモいとか偉そうとか言わせないぜぇ!、、、、あ、いや、………ふっ、言わせないぜ……。

「さっきから変な顔してますね」
「おいっ!まだ何も言ってないのに!くっ。リーカ、後で覚えておけよ」
「あ、しまった、やり過ぎた。ああ、ごめんなさい、ごめんなさい、もうしませんから。リーンハルトくんをからかうのが思ってたより楽しかったなんて思ってませんから~」

そんな事思ってたのかよ。

「おほん!おほん!早く話を進めてくれないか。全く、何故この魔王が友のイチャイチャを見せられないといけないのだ」
「お、友って言ってくれた!」
「うるさい!早くしろ!」
「分かった分かった。この話はね。僕にとってもクリスにとっても利益があるんだ。クリス、君はこの世界の不正アバターを退去させたい。これはいいね?」
「うむ。続けろ」
「うん。そして、僕はこの国がノルドに攻められてしまうのは何としても阻止したい。ほら、もう分かるでしょ?」
「…………うむ。続けろ」
「ええええ。本当に聞いてるの?寝てるんじゃないの?まあ、いいや。不正アバターってさ。この国だけに居るわけじゃないんでしょ?だったら、クリスはノルド兵の中に居る不正アバターを皆んな退去させてよ」

どうだろう。
ダメかな?

「ほほう。さすがリーンハルトだな。父、、、この国の国王と口喧嘩をしただけある。ノルド兵が減れば貴様にとっては有利になる。我も不正アバターの数を思う存分減らす事ができる。そうだな、不正アバターは何もこの国だけに居る訳ではない。ノルドにもたくさん居るはずだ」
「おお、それならお互いいい事づくめですね。あ、でもベルシュちゃんの問題って言うのは何なのですか?」

まあ、ベルシュの方は意味があるのか分からないけどね。

「そっちはベルシュは分かってると思うけど、僕とベルシュとで一緒に悪い精霊と闘うって言うのがカル、、、女神カルサイトから貰った神託なんだ。不正アバターは大抵中身は精霊でしょ?だったら、ここで一緒にノルドと闘えば条件クリアかなって」
「なるほど。じゃあ、ノルドが攻めてきたら、このメンバーで闘えば良いんですね?」
「うん。ただ、念の為に皆んなを一つの部隊として登録しておきたいんだ。リーカとベルシュは登録したけど、それは生徒会のシャッハチームでしょ?こっちはこっちの事で話があったりするから、このメンバーで登録しておきたいんだ」
「その2人がしている事なのか。配下に入れと言うから何事かと思ったぞ」
「そうです!問題ないです!私達はリン様の下僕とか奴隷とかですけど、何の問題もないです!」
「問題大有りだ!」

その後なんとかフリーデが説得してくれて、クリスも部隊登録をしてくれた。
ふひゃあ、この部隊3はすごい面子だな。

魔王と勇者と王女とエルツ族がいるって、どんな部隊だよ。
部隊名何にしよう。
中の人の種類がバラバラ過ぎて名前が付けられないよ。

「ああ!しまった、リュリュさんの部隊に入れちゃったよ。、、、まあ、いいか。皆んな普通じゃない人ばかりだし」
「私、普通ですよね?リン様!魔王様とか勇者様とかとは違いますよね?」
「私はもう普通じゃなくなっちゃった………」
「わたくしは普通の王女ですから、一緒にしないでくださいまし」
「我はとても酷い言われような気がするのだが」

クリスは仕方ないよ?
フリーデは普通の王女って何さ。王女ってだけで既に普通じゃないよ?
リーカも、、、ああもうめんどくさい!

「もっと変な人?もいるから平気!今度紹介するよ。あ、そうか、これ入れちゃおう」

リュリュさんも含めて今回のメンバー全員にチャットスキルを配る。
リーカは何気に3回も部隊登録してるな。
経験値配ったら3倍入ったりして。

リン『リュリュさん。こんにちは。これ見えてますか?返事は声で出来るので、良ければ返信ください』

「これを使えば、皆で会話が出来るのですね?クリス何か話してみてください」
「この場にいるのだから、直接話せばよかろう」
「いいんです。直接だと話せない事もこれなら話せそうな気がしてきませんか?」
「むう、我は魔王であるから、言いたい事はその場で何でも言う」

クリスもやってみればいいのに。

リュリュ『リーンハルト。なんだか面白い事をしてくれるね』

おお、リュリュさんから返事が来た。

リン『こっちの学校の仲間を紹介するよ。魔王と勇者と王女と、、、これじゃあ、誰が誰だか分かんないか。皆んな自己紹介してよ」
フリーデ『ここに話せばよろしいんですのね?フォルクヴァルツ王国第一王女エルフリーデ・アーレルスマイアーと申しますわ』
リュリュ『お、王女、様?ですか。リュリュ・ハーララです。えっとリーンハルトの、、、、と、友達です』

リュリュさん照れてやんの。

ベルシュ『ベルシュ・ミューエです。リン様の下僕です!リン様の為なら何でもします!』
リュリュ『そ、そうですか。なるほど』

そんな事宣言されても困るよね。
リュリュさんもどう回答していいか分からなくなってるよ。

リーカ『ええと、昨日お伺いした、リーカです』
リュリュ『おお、リーカさんか。昨日はどうも』
リーカ『昨日はまだ、ただの人だったんですけど、今は勇者になっちゃいましたので、改めてよろしくお願いします』
リュリュ『勇者になった?ま、まあ、人生色々ありますよね………』

クリス『我は混沌の闇から生まれし悪夢と災厄の混沌、魔王オーニュクスだ!』
リュリュ『は、はあ。混沌二回出て来てましたね。魔王さん、、、ですか。あ、名前はクリスさんになってますね』

クリスの奴、毎回紹介文を自分で考えてるのかな。

リン『リュリュさん。最後のはクリスであってるから』
クリス『ちがーう。我が名は大魔王オーニュクスである!そこは間違えぬように』
リュリュ『リーンハルトの周りには変な人が集まる性質でもあるのかね』
リン『まあ、リュリュさんもその仲間だけどね』



ノルドが攻めて来たら、このメンバーとあとはシャッハのメンバー、そのどちらとも共に闘うというのは決まった。
闘いの準備も出来たし、魔王クリスも何だかんだ言っても手伝ってくれるみたいだから、根っこの部分はやっぱりクリスのままなんだ。
ただ、問題が残っている。

「今日ノルド軍が攻めてこなかったら、王子殿下は魔王子殿下として家に帰るんですかね~」

魔王子殿下って………。
でも、そうなんだよ。リーカの言う通り、何もなければ皆んな家に帰る。
このチームだって、学校に来ている間に攻めてこられた時のものだし、もし家にいる時に攻撃にあえば、個人として闘うなり逃げるなりする事になっている。
学生達はあくまでも学生であり、軍人ではない。
僕はまだ軍に籍が残ってるから、有事には何処にいても闘いに参加しないといけない。

「気が重いけど、あの人の所に行くしかないかな」

もうすぐ放課後だ。
今日はもう学校にいる間に戦闘になる事はないだろう。
そうなると、いや本当はそうならなくても、このクリスの状態は説明する必要があって、それは僕がとても怒られる事を表していた。
王子の安全を守るのが僕が頼まれた事だからね。

「あああああ、嫌だあああ。めんどくさい~」
「ダメですよ。ちゃんと報告しないと。リーンハルトくんのせいじゃ無いんですから大丈夫ですって」
「それでもさ、あなたの息子は魔王になっちった、てへ。とか言ったらその場で斬り捨てられてもおかしくないんだよ?あの人なら逆に笑うだけで終わりそうな気もするけど」

そうなんだ。クリスが魔王化してしまった事は流石に国王には説明する必要があるだろう。
誤魔化すのは無理だと思うし、いつかバレるなら早い方がいい。

「クリス。国王に説明に行くから今日は一緒に帰るよ?」
「王宮には帰らん!我はもう王子では無く魔王である!あの国王とはもう親子の関係では無い」
「そういう事は言わないの!魔王になってもお父さんなのは変わりっこないでしょ?それに帰らないなら今日の寝る所とかどうするの?食事だってお金持ってないでしょ?」

王子という身分からかフリーデもクリスも普段は殆どお金を持っていない。
買い物をするような時は王宮の人と出掛けて、支払いはその王宮の人が全てするらしい。
だから、学校帰りには買い食いとかは出来ないし、急にお金が必要になれば誰かに借りるしかない。
王宮もお金くらい持たせてあげればいいのに。

「リーンハルト。貴様の家に泊まる」
「いやいやいや、ウチは、、、ちょっとまずいかな。その、、、大魔王様を泊めるには狭いというか、汚いというか」
「貴様、、、そういう時は魔王呼びをするのだな。別に我は構わんぞ。魔王はその辺りは寛大なのだ」

クリスは単に家に帰りたくないだけでしょ?
僕もウチに魔王化した王子とか連れて行くのは困る。
フィアの機嫌が悪くなるのは目に見えているし、それに家にたくさん女子が住んでいるというのを知られるのは避けたい。
リーカとも一緒というのも内緒なのに。

「クリス。いけませんよ?あなたがした事なんですから、お父様にきちんとご報告をなさい!それとも、わたくしのいう事が聞けませんの?」
「う、うむ。フリーデがどうしてもと言うなら致し方無し!王宮に帰るとするか」

流石お姉さんだけあるな、魔王になったクリスをここまでビビらせるとは。
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