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第百三十五話 招待状
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「それなら、アズのパパもマスターって事です?ママはいないのです?」
ほらもう、変な話になってきたよ。
アズライトは僕の人格が元になってるから、この理論だと僕がママになっちゃうじゃないか。
もうアリアがママでいいか。
でもそれだと、中身が同じだって知ったらショックを受けそうだな。
「じゃあ、アズライトのママもフィアって事で」
「何故そうなるのかしら。わたしの人格を勝手に持っていったのではないわよね」
「そういう訳じゃないんだけど、、、ついで?みたいな」
「ついでで親にしないでくれないかしら」
「じゃあ、そう言うのを許してくれそうな人っていうと、レティとかリーカかな。ああでも、また変態さんとか言われるかな」
「別にわたしでも良いけど。ついで、、、なのでしょう?」
あれ?嫌じゃないのかな?
それなら僕は大歓迎だけど、良いのかな。
「じゃあ、フィアでよろしく」
「ママなのです!よろしくです!」
「うう。やっぱり無し」
「もう変えられないのです!」
「ううう、、、」
まだ、生まれたばかりの幼い人格だから、何か支えになるものが欲しいのだろう。
ママゴトみたいな事だけど、これくらいで心が落ち着くなら安いもんだ。
公の場では呼んで欲しくはないけどね。
3人とも好きな本を探しに散らばっていった。
僕はいいや。
自習コーナーがあったから、そこに座って待つことにする。
「ごきげんよう。図書館でお会いするなんて珍しい事もあるものですわね。今日はお一人?」
「うえっ?!あ、はい。あ、いえ、連れが、、、います」
誰だっけ。
いきなり話し掛けられたけど、何処かで見たような、、、見ないような。
「わたくしがあなたに話し掛けるなんて、驚きましたか?接点がありませんものね」
「ああ、いえ、あはは」
誰だ?見覚えはあるんだよ。
でも、会話した記憶が無いんだけど。
こういう時どう言う受け答えをしたらいいか分からなくなるよ。
「わたくしの事誰だったか思い出せないのでしょう?当然ですわ。お話しをした事がありませんもの。はじめまして、ゼルマ・ウルブルと申しますわ。窓無しの英雄さん?」
「な?!ゼ、、、ま、、、え、、、」
どう言う事だ?!
ゼルマ・ウルブルって言ったら、学園にいる女神候補じゃないか!
そうか、思い出せなかったのも当然だよ。
会話したこともない上に、何度かチラチラと見た事があっただけなんだから。
それに、僕の事を窓無しだと言った。
僕が窓無しなのを知っているのは、家族以外だとすると王族関係か?
確かこの人って、フリーデと知り合いだったよな。
そこから窓無しが伝わったのならまあいい。
別に口止めしていた訳じゃないし。
でも、この人がここで僕に声をかけてくる意味が分からない。
「そんなに、警戒しなくてもよろしくてよ。今はなにもしませんから。少しだけお話しがしたかったのです」
今は、ね。
あまり共通の話題が無い僕と何の話しをしようって言うんだ。
「最近、いろいろと活躍されているようですね。戦争を回避するだけでなく条約まで結ばせるなんて、なかなか出来ないですわ」
「別にあれは僕がやったわけじゃないから」
「謙遜なさらなくても、分かっていますわ。他にもお噂は聞いておりますのよ。例えば、神降ろしの儀式を成功されたとか」
な、何を、、、。どこまで知ってるんた?!
シリカの事が知られている?
いや、儀式とかしてないぞ。
あれは儀式みたいだとは冗談で言ったけど、実際には魔法で女神にしただけだし。
と、とにかく、顔に出ないようにしないと。
「そんな事を一学生が出来るわけないでしょう。変な噂がながれてるんだね。困ったな」
「学生でなければ実現出来るのが分かっている風ですわね」
「そんな筈ないでしょう?大人だろうと、神降ろしなんてお祭りでそれっぽいのを見るくらいじゃないの?」
「それなら質問を変えますわ。神をその目でご覧になられまして?」
「自称神が現れたとして、本当に神様なのかなんて分からないからね。逆に実は街のどこかで会ってた事がある、なんて言うのもあり得そうでしょう?」
「ふふ。そうですわね。もしかしたら、わたくしが女神かもしれなくてよ?」
「見た目は十分女神様なんじゃないの?」
「あら、口説かれてしまいましたわ」
「あ、いや、そういうつもりじゃなかったんだけど、、、」
「違ったのかしら、残念。今日はお話しできて良かったわ。また、学校でね」
「あ、うん。また」
…………何これ。
疲れた~。
何の駆け引きだったのさ。
でも、シリカの事を探られてた感じがしたし、バレないように必死だったよ~。
何か感づかれたかな?
「リン?どうしたのかしら?いやらしい顔をして」
「図書館でそんな顔してる人見た事ないよ。ちょっと疲れた事があってね。慣れない事をするもんじゃないね」
「誰かいたの?」
「うん。学校の人、なんだけど。敵、かな?どうだろう」
「敵と会ってたの?」
「どうだろうね。もうあんまり話したくない人なのは決まってるんだけど」
「そう、ならいいわ」
少しして、アズライトとシリカも目当ての本を見つけて戻ってきた。
「続きがあったよ。早く暖かい部屋で読みたい」
「アズは魔法辞典を見つけたです」
さあて帰ろうかな。
じゃなかったよ。
公園で皆んなが待ってるんだった。
「さあ、公園に行こう」
「「「ええー」」」
そりゃあそうだよな。読みたい本を手にしたんだもんね。
3人には先に帰ってもらって、僕だけでも公園に行くことにした。
「おまたせ~」
「あら、ご主人だけ?フィアちゃん達は帰っちゃったの?」
「うん。読書タイムに突入だね」
「あらま」
どうやら本当に公園でシャッハをやっていたようだ。
こんな見晴らしのいい所でやって楽しいのか?
マルモやブロンにとっては面白いらしく、今もリーカとアニカを相手にマナ弾を撃ち合って、きゃっきゃっと笑顔になっている。
その横でレリアが、その陣形ではダメだとか、構えがなっとらんとか、やや鬱陶しい存在になっていた。
ああ、でもこうやって公園に来て、笑いながら遊んでいられるなんて、夢みたいだな。
こんな当たり前の事が出来なかったなんて、歪んだ世の中だったんだよ。
でも、神の存在とその謀略を知った今なら分かる。
この世界は神の実験場なんだ。
神が天の世界で何かをしようとした時、先にこっちの世界で試してから、あちらで安全に事を運ぶのだ。
この箱庭に住まわされている僕達住人が天の人々の身代わりとなって、神に試されているんだ。
エルツが迫害されてきたのも、森に魔族が湧いてきたのもみんな神の試みの結果なんだろう。
でも、僕達、箱庭の住人は試されっぱなしという訳にはいかない。
自分達の世界は自分達で守るんだ。
っていうか、ここはクロの管轄なんだから、神だろうがなんだろうが、勝手にいじくり回すなって事だよ。
「ご主人?どうかしたの?何かあった?」
「ううん。何でもないよ。平気だよ」
「困ってるなら何でも言ってよね。一人で何とかしようとか考えるのはダメだからね」
「うん。分かってるよ」
家に帰って来ると、ソファにフィア、シリカ、アズライトが座って本を読んでいた。
僕達が帰って来たのにも気付かない集中っぷりだ。
アズライトもかよ。本好きだったっけ。
「あ、マスターおかえりーです。この魔道書は素晴らしいのです。知らない魔法がてんこ盛りなのです」
「うん。良かったね。欲しい魔法があったら言ってね。追加してあげるから」
「はいなのです!たくさんあるので、リストアップしておくです!」
ほ、ほどほどにお願いします。
「あ、マスター、さっき王宮の方がいらして、これをお渡しくださいって言ってたです。はいこれ」
なんだ?招待状?
まためんどくさそうな物が来たもんだ。
無視でいいかな。
ダメか。
「これリーカにじゃないのかな?」
「なんでですか!王宮から招待状だなんてリーンハルトくん宛以外にあるわけ無いじゃないですか!」
「ええ、分かんないよ?招待状なんて勿体ないから僕になんか送らないで、メモ書きでこの日に来いって書いて、玄関に貼っておくとかじゃない?あの国王ならやりかねない」
「そんな招待状、嫌ですね」
開けてみたら、やっぱり僕宛だった。
まあ、そりゃそうか。
日付は明日。早いよ。急過ぎだよ。
こういう嫌がらせをするんだよ、国王は。
場所は王宮、、、の鏡の間?
入った事は無いな。
鏡の間っていうくらいだから、全面鏡なんだろうな。
えっと、内容としては、王族や貴族とそれに商人とか王都で活躍している人を招待して、普段接点の少ない人達の交流の場として設けられたパーティーみたいだな。
第510回ってなっているから、結構定期的に行われているみたいだね。
「あ、何か間に挟まっていたのが落ちましたよ?えっと、『リーンハルトは必ずくる事、サボったらお前の家に毎日遊びに行ってやる。国王』ですって。仲良いですね」
「仲がいいように見えるの、その内容で」
あの人なら本気で毎日通って来そうで怖い。
仕方ない。そんな事やられたら嫌だから行ってやるとするか。
翌日、僕とリーカとシリカの3人は王宮に来ていた。
招待状には2人まで同行者を連れて来ていいと書いてあった。
行きたい人選手権が始まり、勝ち残ったのがその2人だった。
「シリカがこう言うの行きたがるとは思わなかったよ。面倒くさいのは嫌じゃないの?」
「普段食べれない豪華な食事がわたしを待ってるよ」
「あ、そう。食いしん坊シリカだったか」
「私も勝てて嬉しいです!王宮のパーティなんて、女の子ならみんな憧れちゃいますよ!」
そんなもんなのかね。
その「みんな」にはシリカは含まれないみたいだけどね。
あと、シリカがそうならフィアもだね。
僕は勲章を貰った時に仕立てた服があったから、それを着てこようと思ったら、背が伸びてしまってもう着れなかった、、、。
あれ一回だけしか着てないのに、もったいないなー。
リーカとシリカの分も必要だけど、昨日の今日で仕立てられる筈もなく、今日の衣装はすべてレンタルだ。
まあ、どうでもいいパーティだし、これくらいでいいでしょう。
「ようこそいらっしゃいました。招待状を拝見いたします」
「はい。これを」
「フォルトナー様とお連れの方でいらっしゃいますね。お待ちしておりました。どうぞお入りください」
鏡の間に入ると、中には既にたくさんの人がいて、食事やら歓談やらをしていた。
「凄い人数ですね。それに、政財界の凄そうな人達ばかりですよ。私達場違いじゃないでしょうか」
「大丈夫じゃない?ほら、あそこにいる人は商店街のパン屋さんの店主だし、あっちは、町内会の会長さんだよ」
「そう言われてみればそうですね。ちょっと気が楽になりました」
「パパ。早く豪華な食事食べたいよ」
「パパはやめなさい。もう勝手に食べていいんじゃないかな。行っておいで」
「うん、行ってくるよ」
リーカと一緒にシリカは食べ物のある方へ突進していった。
「なんだ、フォストナーではないか。貴様もこのパーティに出れるとは、またコネを使ったのか」
どちらさん?
ああ、隣に居る秘書さんで思い出した。
確かシュトライト公爵とか言う、僕の支援者になると言ってきた人だ。
「どうも。こんにちは」
「あれから連絡の一つも寄こさないが、どうだ、そろそろ俺の庇護下に入る覚悟は出来たか?」
連絡って、そっちからまた連絡するみたいな事を言ってなかったっけ?
どっちにしても、支援を受ける気は無いんだから、覚悟も何も無いよ。
「その件に関しましては、先日と同様、お断りさせていただきます」
「まだ、そんな事を言っておるのか!貴様のような平民がシュトライトの施しを受けずに、この国でやっていけるとでも思っているのか?」
ああ、また絡まれたよ~。
めんどくさい~。
「よし、ちょうど良い。ここであれば、公の場としてお披露目した事になる。この国を動かしている連中がここに集まっているのだ。そんな中で、俺がここにいる者たちに貴様を披露するのだ」
だから、嫌だって。
ちょっと、何しようとしてるのさ。
もしかして、勝手に僕の事を紹介しようとしてないか?
「ああ、おほん。皆さま、少しよろしいかな?」
ぎゃああ、本当に始めたよ。
に、逃げなきゃ。
ほらもう、変な話になってきたよ。
アズライトは僕の人格が元になってるから、この理論だと僕がママになっちゃうじゃないか。
もうアリアがママでいいか。
でもそれだと、中身が同じだって知ったらショックを受けそうだな。
「じゃあ、アズライトのママもフィアって事で」
「何故そうなるのかしら。わたしの人格を勝手に持っていったのではないわよね」
「そういう訳じゃないんだけど、、、ついで?みたいな」
「ついでで親にしないでくれないかしら」
「じゃあ、そう言うのを許してくれそうな人っていうと、レティとかリーカかな。ああでも、また変態さんとか言われるかな」
「別にわたしでも良いけど。ついで、、、なのでしょう?」
あれ?嫌じゃないのかな?
それなら僕は大歓迎だけど、良いのかな。
「じゃあ、フィアでよろしく」
「ママなのです!よろしくです!」
「うう。やっぱり無し」
「もう変えられないのです!」
「ううう、、、」
まだ、生まれたばかりの幼い人格だから、何か支えになるものが欲しいのだろう。
ママゴトみたいな事だけど、これくらいで心が落ち着くなら安いもんだ。
公の場では呼んで欲しくはないけどね。
3人とも好きな本を探しに散らばっていった。
僕はいいや。
自習コーナーがあったから、そこに座って待つことにする。
「ごきげんよう。図書館でお会いするなんて珍しい事もあるものですわね。今日はお一人?」
「うえっ?!あ、はい。あ、いえ、連れが、、、います」
誰だっけ。
いきなり話し掛けられたけど、何処かで見たような、、、見ないような。
「わたくしがあなたに話し掛けるなんて、驚きましたか?接点がありませんものね」
「ああ、いえ、あはは」
誰だ?見覚えはあるんだよ。
でも、会話した記憶が無いんだけど。
こういう時どう言う受け答えをしたらいいか分からなくなるよ。
「わたくしの事誰だったか思い出せないのでしょう?当然ですわ。お話しをした事がありませんもの。はじめまして、ゼルマ・ウルブルと申しますわ。窓無しの英雄さん?」
「な?!ゼ、、、ま、、、え、、、」
どう言う事だ?!
ゼルマ・ウルブルって言ったら、学園にいる女神候補じゃないか!
そうか、思い出せなかったのも当然だよ。
会話したこともない上に、何度かチラチラと見た事があっただけなんだから。
それに、僕の事を窓無しだと言った。
僕が窓無しなのを知っているのは、家族以外だとすると王族関係か?
確かこの人って、フリーデと知り合いだったよな。
そこから窓無しが伝わったのならまあいい。
別に口止めしていた訳じゃないし。
でも、この人がここで僕に声をかけてくる意味が分からない。
「そんなに、警戒しなくてもよろしくてよ。今はなにもしませんから。少しだけお話しがしたかったのです」
今は、ね。
あまり共通の話題が無い僕と何の話しをしようって言うんだ。
「最近、いろいろと活躍されているようですね。戦争を回避するだけでなく条約まで結ばせるなんて、なかなか出来ないですわ」
「別にあれは僕がやったわけじゃないから」
「謙遜なさらなくても、分かっていますわ。他にもお噂は聞いておりますのよ。例えば、神降ろしの儀式を成功されたとか」
な、何を、、、。どこまで知ってるんた?!
シリカの事が知られている?
いや、儀式とかしてないぞ。
あれは儀式みたいだとは冗談で言ったけど、実際には魔法で女神にしただけだし。
と、とにかく、顔に出ないようにしないと。
「そんな事を一学生が出来るわけないでしょう。変な噂がながれてるんだね。困ったな」
「学生でなければ実現出来るのが分かっている風ですわね」
「そんな筈ないでしょう?大人だろうと、神降ろしなんてお祭りでそれっぽいのを見るくらいじゃないの?」
「それなら質問を変えますわ。神をその目でご覧になられまして?」
「自称神が現れたとして、本当に神様なのかなんて分からないからね。逆に実は街のどこかで会ってた事がある、なんて言うのもあり得そうでしょう?」
「ふふ。そうですわね。もしかしたら、わたくしが女神かもしれなくてよ?」
「見た目は十分女神様なんじゃないの?」
「あら、口説かれてしまいましたわ」
「あ、いや、そういうつもりじゃなかったんだけど、、、」
「違ったのかしら、残念。今日はお話しできて良かったわ。また、学校でね」
「あ、うん。また」
…………何これ。
疲れた~。
何の駆け引きだったのさ。
でも、シリカの事を探られてた感じがしたし、バレないように必死だったよ~。
何か感づかれたかな?
「リン?どうしたのかしら?いやらしい顔をして」
「図書館でそんな顔してる人見た事ないよ。ちょっと疲れた事があってね。慣れない事をするもんじゃないね」
「誰かいたの?」
「うん。学校の人、なんだけど。敵、かな?どうだろう」
「敵と会ってたの?」
「どうだろうね。もうあんまり話したくない人なのは決まってるんだけど」
「そう、ならいいわ」
少しして、アズライトとシリカも目当ての本を見つけて戻ってきた。
「続きがあったよ。早く暖かい部屋で読みたい」
「アズは魔法辞典を見つけたです」
さあて帰ろうかな。
じゃなかったよ。
公園で皆んなが待ってるんだった。
「さあ、公園に行こう」
「「「ええー」」」
そりゃあそうだよな。読みたい本を手にしたんだもんね。
3人には先に帰ってもらって、僕だけでも公園に行くことにした。
「おまたせ~」
「あら、ご主人だけ?フィアちゃん達は帰っちゃったの?」
「うん。読書タイムに突入だね」
「あらま」
どうやら本当に公園でシャッハをやっていたようだ。
こんな見晴らしのいい所でやって楽しいのか?
マルモやブロンにとっては面白いらしく、今もリーカとアニカを相手にマナ弾を撃ち合って、きゃっきゃっと笑顔になっている。
その横でレリアが、その陣形ではダメだとか、構えがなっとらんとか、やや鬱陶しい存在になっていた。
ああ、でもこうやって公園に来て、笑いながら遊んでいられるなんて、夢みたいだな。
こんな当たり前の事が出来なかったなんて、歪んだ世の中だったんだよ。
でも、神の存在とその謀略を知った今なら分かる。
この世界は神の実験場なんだ。
神が天の世界で何かをしようとした時、先にこっちの世界で試してから、あちらで安全に事を運ぶのだ。
この箱庭に住まわされている僕達住人が天の人々の身代わりとなって、神に試されているんだ。
エルツが迫害されてきたのも、森に魔族が湧いてきたのもみんな神の試みの結果なんだろう。
でも、僕達、箱庭の住人は試されっぱなしという訳にはいかない。
自分達の世界は自分達で守るんだ。
っていうか、ここはクロの管轄なんだから、神だろうがなんだろうが、勝手にいじくり回すなって事だよ。
「ご主人?どうかしたの?何かあった?」
「ううん。何でもないよ。平気だよ」
「困ってるなら何でも言ってよね。一人で何とかしようとか考えるのはダメだからね」
「うん。分かってるよ」
家に帰って来ると、ソファにフィア、シリカ、アズライトが座って本を読んでいた。
僕達が帰って来たのにも気付かない集中っぷりだ。
アズライトもかよ。本好きだったっけ。
「あ、マスターおかえりーです。この魔道書は素晴らしいのです。知らない魔法がてんこ盛りなのです」
「うん。良かったね。欲しい魔法があったら言ってね。追加してあげるから」
「はいなのです!たくさんあるので、リストアップしておくです!」
ほ、ほどほどにお願いします。
「あ、マスター、さっき王宮の方がいらして、これをお渡しくださいって言ってたです。はいこれ」
なんだ?招待状?
まためんどくさそうな物が来たもんだ。
無視でいいかな。
ダメか。
「これリーカにじゃないのかな?」
「なんでですか!王宮から招待状だなんてリーンハルトくん宛以外にあるわけ無いじゃないですか!」
「ええ、分かんないよ?招待状なんて勿体ないから僕になんか送らないで、メモ書きでこの日に来いって書いて、玄関に貼っておくとかじゃない?あの国王ならやりかねない」
「そんな招待状、嫌ですね」
開けてみたら、やっぱり僕宛だった。
まあ、そりゃそうか。
日付は明日。早いよ。急過ぎだよ。
こういう嫌がらせをするんだよ、国王は。
場所は王宮、、、の鏡の間?
入った事は無いな。
鏡の間っていうくらいだから、全面鏡なんだろうな。
えっと、内容としては、王族や貴族とそれに商人とか王都で活躍している人を招待して、普段接点の少ない人達の交流の場として設けられたパーティーみたいだな。
第510回ってなっているから、結構定期的に行われているみたいだね。
「あ、何か間に挟まっていたのが落ちましたよ?えっと、『リーンハルトは必ずくる事、サボったらお前の家に毎日遊びに行ってやる。国王』ですって。仲良いですね」
「仲がいいように見えるの、その内容で」
あの人なら本気で毎日通って来そうで怖い。
仕方ない。そんな事やられたら嫌だから行ってやるとするか。
翌日、僕とリーカとシリカの3人は王宮に来ていた。
招待状には2人まで同行者を連れて来ていいと書いてあった。
行きたい人選手権が始まり、勝ち残ったのがその2人だった。
「シリカがこう言うの行きたがるとは思わなかったよ。面倒くさいのは嫌じゃないの?」
「普段食べれない豪華な食事がわたしを待ってるよ」
「あ、そう。食いしん坊シリカだったか」
「私も勝てて嬉しいです!王宮のパーティなんて、女の子ならみんな憧れちゃいますよ!」
そんなもんなのかね。
その「みんな」にはシリカは含まれないみたいだけどね。
あと、シリカがそうならフィアもだね。
僕は勲章を貰った時に仕立てた服があったから、それを着てこようと思ったら、背が伸びてしまってもう着れなかった、、、。
あれ一回だけしか着てないのに、もったいないなー。
リーカとシリカの分も必要だけど、昨日の今日で仕立てられる筈もなく、今日の衣装はすべてレンタルだ。
まあ、どうでもいいパーティだし、これくらいでいいでしょう。
「ようこそいらっしゃいました。招待状を拝見いたします」
「はい。これを」
「フォルトナー様とお連れの方でいらっしゃいますね。お待ちしておりました。どうぞお入りください」
鏡の間に入ると、中には既にたくさんの人がいて、食事やら歓談やらをしていた。
「凄い人数ですね。それに、政財界の凄そうな人達ばかりですよ。私達場違いじゃないでしょうか」
「大丈夫じゃない?ほら、あそこにいる人は商店街のパン屋さんの店主だし、あっちは、町内会の会長さんだよ」
「そう言われてみればそうですね。ちょっと気が楽になりました」
「パパ。早く豪華な食事食べたいよ」
「パパはやめなさい。もう勝手に食べていいんじゃないかな。行っておいで」
「うん、行ってくるよ」
リーカと一緒にシリカは食べ物のある方へ突進していった。
「なんだ、フォストナーではないか。貴様もこのパーティに出れるとは、またコネを使ったのか」
どちらさん?
ああ、隣に居る秘書さんで思い出した。
確かシュトライト公爵とか言う、僕の支援者になると言ってきた人だ。
「どうも。こんにちは」
「あれから連絡の一つも寄こさないが、どうだ、そろそろ俺の庇護下に入る覚悟は出来たか?」
連絡って、そっちからまた連絡するみたいな事を言ってなかったっけ?
どっちにしても、支援を受ける気は無いんだから、覚悟も何も無いよ。
「その件に関しましては、先日と同様、お断りさせていただきます」
「まだ、そんな事を言っておるのか!貴様のような平民がシュトライトの施しを受けずに、この国でやっていけるとでも思っているのか?」
ああ、また絡まれたよ~。
めんどくさい~。
「よし、ちょうど良い。ここであれば、公の場としてお披露目した事になる。この国を動かしている連中がここに集まっているのだ。そんな中で、俺がここにいる者たちに貴様を披露するのだ」
だから、嫌だって。
ちょっと、何しようとしてるのさ。
もしかして、勝手に僕の事を紹介しようとしてないか?
「ああ、おほん。皆さま、少しよろしいかな?」
ぎゃああ、本当に始めたよ。
に、逃げなきゃ。
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