クリノクロアの箱庭

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第百四十六話 障害復旧

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シルヴルから降りて、建物の前に立つ。

「これかあ。普通の建物、、、にしては、壁の材質がよくわかんない物で出来ているね。石、、、じゃないし、触ると柔らかくて暖かい。え?もしかして、これも、実は鳥なんじゃ、、」
「いやそれは、ただの建物だよ。寒さとか雨風とかに耐えられるようにそう言う素材にしているんじゃないかな」

ええー。本当に~?
だって、この感触、ギベオンベアーよりよっぽど生き物らしいよ?

今度は入り口がちゃんとあった。
良かった。本当に建物だった。

「鍵、掛かってないね。大丈夫なのかな、こんなんで」
「この扉はマナロックみたいだね。マナ切れになったんじゃない?最近精霊が暴走した事件とかあったから、精霊がする筈のこういう管理が行き届いていないんじゃないかな」

こんな所にもスファレラトの影響が出てるのか。あ、いや、精霊の暴走はベニトアイトか?まあ、どっちでもいいや。とにかく、一部の神のせいでこっちに迷惑がかかっているのは確かだ。

シルヴルは当然入れないので、僕だけ建物の中に入る。

「お邪魔しますよ~」

中に入ると明かりが勝手に付いた。
誰かが居る、、、訳じゃないよね。
前に魔法円クラフトで作ったような、人感用の仕掛けがあるんだろう。

入った部屋には椅子とテーブルがあるだけだった。
部屋の奥には扉があり、

制御室

と書かれている。
今居る部屋は休憩室で、あの扉の向こうに通信設備があるのだろう。

扉を開け、制御室に入ってみると、また自動で明かりが付く。
便利だな。
今度ウチにも付けてみようかな。

制御室の中にはクロの部屋にあったような機械がいくつか並んでいて、その横にはボタンがいくつか並んでいる机があった。

ボタンには知らない文字で何かが書いてあったけど、当然読めない。
その下に、ヴォルガ語らしき文字で書き足していた。
これが恐らくヴォルガの人が色々押して調べた通信先なのだろう。
つまり、この一つだけ点灯しているボタンがヴォルガ向けのボタンなんだと思う。
こいつを消してやれ。
そして、他の地域はどれがどれだか分からないから、全部押して点灯させる。
ヴォルガ語も少しは学んでおけば良かったな。

これで、通信が出来るようになったけど、それに気付いたヴォルガの人がここに来てボタンを押したら、また同じように通信障害になってしまうな。

外に出ると、シルヴルが心配そうな顔をして待っていた。
いや、鷲の表情は分かんないけどさ。
仕草で何となくそんな気がした。

「終わった?上手くいった?」
「うん。これで通信は出来るようになったと思うよ」

このままだと、いつまた通信障害になるか分からないから、守りを固めようと思う。
ストレージにしまってあったシルフを取り出す。
以前、家族を守る為に魔法円クラフトで作ったこのシルフだけど、この予備にとっておいたシルフに基地局を守ってもらおう。

「ハイ!シルフ!」

シルフに薄ピンクの羽根が生え、フワッと浮かび上がる。

「なにそれ。かわいいね」
「僕の家族が作った手製の妖精だよ」
「へぇ。いいね。今度ボクも作ってみようかな」

シルフにこの基地局を守ってもらうことにする。
命令としては、僕とシルヴルを味方として登録して、それ以外の人が来たら、追い払うように設定をしておいた。
これで、この基地局に誰か来ても中は守れるでしょう。

「あ、でもマナ切れになったらまたここに登らないといけないのか」
「それなら、ボクがたまにマナを補充しておこうか?」
「え?いいの?」
「食事のついでだよ。本当にたまにでいいんでしょう?」
「そうだね。1ヶ月に1回くらいで平気だとおもうよ。じゃあ、お願いしようかな。助かるよ」
「ボクもせっかく通信出来るようになったからね。邪魔されるのは嫌だし。ボクも変な奴がここに来たのを見つけたら追い払うのを手伝うよ」
「おお、それはありがたい。魔鳥が守ってくれるなら安心だ」

それが噂になって、ここに来るのを諦めてくれれば良いんだけどな。

「あ、ねぇ。部隊登録してもいいかな。そうすれば、僕ともチャットが出来ると思うんだ」
「あ、いいねぇ。でも、部隊登録なんてしなくても、赤外線、、、は人族アバターには無いんだっけ。じゃあ、部隊登録でいっか」

他にもチャットの登録方法があるみたいだけど、僕は部隊登録の方が仲間になった感じがして好きなんだよな。

シルヴルは神なんだから、クロとかの部隊って感じもするけど、やっぱり魔王と勇者と王女とエルツ族とクマがいるあの部隊に入れた。
あの姿でこっちの世界に居ると、神というよりは、魔物っていう方がしっくりくる。
なので、神チームじゃなくて、面白、、、変わり種、、、特別チームとして加わってもらおう。

リン『テステス。届いたかな?』
シルヴル『うん。届いたよ。通信もばっちりだね』

チャットもできたし、通信もちゃんと回復できたみたいだ。

「そろそろ、僕は帰るとするよ。だいぶ家を空けちゃったから、皆んな心配してるだろうし」
「そっかあ。仕方ないよね。あのさ、チャット、、、するね」
「うん。いつでもしてよ。すぐ返せるか分かんないけど」

後で大魔王とかも紹介してあげよう。

「嬉しいな。ボクは友達って言えるような神は居なかったし、こっちの世界でもデスゲームのせいで、いつ誰に襲われるか分からなかったから、仲のいい人って居なかったんだよね」

絶対皆んなを紹介してあげよう。
もう一人じゃないよ!

「え?なんでリーンハルトくんは泣いてるの、、、」
「ううん。なんでもないよ。もう大丈夫だからね!」
「う、うん?」



さて、フォルクヴァルツに帰ろう。
ここからならもう南側を降りた方が早いかな。
そうすれば、いきなりフォルクヴァルツの土地に降りられそうだ。
こっち側は雪も少ないし、距離も圧倒的に短いしね。

この辺から降りたらヴォルガとの国境に近い村に出るかな。

「ねぇ。ここから降りるの?」
「うん。近そうだし、魔物が出ても何とかなると思うしね」
「それならさ。ボクが送って行ってあげようか?」
「へ?あ!もしかして、さっきみたいに?」
「うん。と、友達、だからね!これくらい友達なら当然じゃないかな?」

いや、友達だから背中に乗せて家まで送るとか、無いと思うよ?
でも、せっかくだし、送ってもらっちゃおうかな。
どうしようかな。



「うおおおお!やっぱり空を飛ぶってすごいなあ!」
「でしょ?これがあるからこのアバターはやめられないんだよ!」

結局、空便で送ってもらうことにした。
早く帰って家族を安心させたかったのもあるけど、やっぱり空を飛んださっきの感覚は忘れられなかった。

たまに落ちそうになるけど、羽根をむしらない程度に掴んで踏ん張った。
馬に付けるような、鞍とかハミがあればもう少し安定して乗れるんだろうけど、友達に馬具を付けるとか、どんな仲なんだよ。
おかしな関係になるのは避けたいから、シルヴルに乗せてもらう時は羽根を掴んで頑張るしかない。

「すごいな、あっという間に王都まで来ちゃったよ」
「降りる時は滑空でいいからね。一気に来れるよ」

物凄いスピードだったけど、本当に1時間もせずにここまで着いた。

「ああ、でも、ここじゃあ、降りる所が無いね。流石に街中じゃあ大騒ぎになるかな?どうする、リーンハルトくん?」
「そうだなあ。王宮、、、だと後で国王がうるさそうだし、家の前、、、は近所迷惑か。学校の校庭でいいか。あっちの高い塔がある方に行ってくれる?」
「あれだね。分かった」

空に突き抜けるような図書館塔の4分の1を囲むように中等部棟が建っている。
その弧を描く建物の内側に校庭がある。
そこなら広いし、街の住人の迷惑にもならないだろう。
シルヴルにその校庭に降りてもらう。

バサッバサッバサッ

校庭に着陸すると、シルヴルの背中から飛び降りる。

「いやあ、早かったよ。空の旅も楽しかったし、ありがとね」
「どういたしまして。また、空を飛びたくなったらいつでもチャットしてよ!その、と、と、、、友達!だからね!」
「うん。また遊ぼう!」

どことなく照れ臭そうな表情、、、は分からないけど、多分照れているシルヴルを見て、僕も照れてしまう。
こう言う感じになるから、クラスの女子におかしな噂を立てられるんだよ。

今も見られて噂されてたりして。
いやいや流石に種族が違いすぎるでしょ。
シルヴルが例え女子だったとしても、鷲と恋の噂になんてならないよね?
そう言うのもあるのか?
最近の女子の趣味は理解力が追いつかない時があるからな。

「おい!お前はそこで何をしている?!その魔物は何だ!」

ああ、先生が出てきちゃったよ。
やっぱり、学校もダメだったか。

校舎を見ると窓から大勢の人がこっちを見ていた。
うわあ、流石にこの魔鳥が降りてくれば目立つか。

「ああ、いや、あの、すぐに撤収します」
「そう言う問題では無い!、、、ん?お前フォルトナーか!学校に全然来ないと思ったら、こんな派手な乗り物で校庭に乗り付けるなんて!お前グレたのか!?」

ぐれたって、なんだ?
最近、知らない単語ばかり聞くなあ。

「えっと、、、そう!軍の機密なんで!あまり詳しくは話せないんですけど、重要なミッションの途中なんで、えっと、この事は内密にお願いしますね」
「お、おお、そうか、お国の為なら仕方ないな!だが、あまり目立つ事をすると、ああやって授業に集中できなくなるから、もっと端の方でやってくれよな!」
「あ、はい。すみませんでした」
「あと、お国の仕事が忙しいからといって、あまり学校をサボるんじゃ無いぞ!学校に来るのも大事なお前の仕事だからな!」
「は、はい。検討します」

先生は、窓からこっちを覗いている生徒達に、早く授業に戻れ、と言いながら、校舎に戻っていった。
ふぃ~。なんとかなったかな。

「ねぇ、ボク、別に人族の軍に飼われてるわけじゃ無いんだけど」
「ああ、うん。あれは、先生を騙、、、誤魔化す為に適当な事を言ったんだよ」
「今、だます、って言おうとしたよね?」
「さあ、そろそろ帰らないと。皆んな見てるからね」
「………まあ、いいけど。じゃあ、ボクは少しこの辺りの上空を散歩してからまたあの山に戻るよ」
「うん。またね」

バサバサと羽ばたき、シルヴルは飛び去っていった。
あっという間にはるか上空へと上がり、よく見ないとどんな姿が分からないくらいになってしまう。
なるほど。あれなら普通の鳥と見分けが付かないな。

大魔王『我が友よ。久し振りに学校へ来たと思えば、怪鳥に乗って登場とは、、、。我もあれやってみたい!空から登場!』

ああ、通信が回復したのには、もう気付いたんだな。
あれ?クリスの名前欄はクリスって書いてなかったっけ?
まあ、大魔王でも間違っては無いけど。

リン『クリス、久し振り。紹介するよ。魔鳥の格好してるけど、中身は神のシルヴルだよ。シルヴル?こっちは大魔王だけど、この国の王子のクリスね』
シルヴル『ど、どうも。フレスベルグっていう鳥をやってます。シルヴルです。どうぞご贔屓に』
大魔王『うむ。大魔王オーニュクスである』
シルヴル『リーンハルトくん。大魔王様の名前が違うみたいなんだけど』
リン『本名がクリスで愛称がオーニュクスって思ってくれたらいいよ』
フリーデ『クリスの本名はクリストフォルスで愛称がクリスですわ。オーなんとかはクリスが勝手に名乗ってるだけで、誰も呼んでません』

フリーデや他のチャット仲間も参加してきて、チャット欄は自己紹介だらけになる。

リーカ『リーンハルトくん!帰ってこれたんですね!皆んな心配してたんですよ!』

ああ、そうだった。
リーカとシリカは無事に帰れたみたいだね。

リン『今、学校に着いたから、すぐ帰るよ』
リーカ『早く帰ってきた方がいいですよ?先にウチに帰らずに学校に行った事がバレてますから、一部の家族にお怒りマークが浮かんでます』

ひえええ。
降りやすいって理由で、ここにしただけなんだから誤解だよ。

リン『クリス。学校は早退するから先生に言っておいてね。皆んなもまたね。シルヴルもまた連絡するね。じゃあね』
大魔王『まだ登校もしてないと思うが』
シルヴル『またね~』

さて、急いでおウチに帰って、誤解を解こう。
なんだろう。結構、活躍したつもりだったけど、この後、懺悔室に行かされる予感しかないな。
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