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第百四十七話 枢機院
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結論から言うと、懺悔室は免れた。
学校へ先に行ったのは魔鳥で空から降りてきたからであって、降りる場所があそこしかなかったからだし、その辺を必死に説明したら許してくれた。
最近、どうにもこう、家族に心配をかける事が多くていかんな。
とは言っても、通信も復旧したし、これで、遠くに行ったとしても、連絡は取れるから安心かな。
でも、家族から怒られる事は回避できたけど、この後、国王から怒られるらしい。
なんでだよ。
人質を取られて抵抗できなかったんだし、そもそも、魔法で開けた穴を埋めろって命令したのも国王なんだし、文句を言われる事じゃないと思うんだよね。
結果的には通信が回復したのも僕がやらないといつまでも治んなかったんだし。
それなのに、これから僕は怒られに出向いている。
しかも、今日は国王だけじゃなくて、枢機院に怒られるらしい。
会ったことは無いけど、枢機院というのは、国王とは別にこの国の政治とか法律とかを決めたり、場合によっては国王より発言力があったりもする機関の人達だ。
ああ、、、憂鬱だなあ。
もう帰ってもいいかなあ。
枢機院の場所は王宮の中にはなく、通りを挟んで隣の大きな建物になる。
王宮とは地下で繋がっていて、いざとなったら王族はそこを通って枢機院から逃げられるようになっている、とか、実は国庫として、国有財産の半分はこの建物のどこかに隠されている、とか色々な噂がここにはあったりする。
今はその枢機院の建物の中をクラウゼンさんに案内されている。
「今回は覚悟しておいた方が良いですよ?なにせ、あと少しでフォルトナーさんを取り返す為に全面戦争に入るところだったのですから」
「うええ。でも、それ僕のせいじゃ無いですよね」
「ヴォルガが一番の原因と言うのは分かってるのですが、フォルトナーさんならいつでも逃げだせたはず、というのが枢機院の見解ですので、叱られるのは必至ですね」
「うう、そう、、ですよね」
僕もあれは油断というか、いつでも逃げ出せると思って、先延ばしにしたら逃げられなくなっちゃったから、僕にも非はある、という自覚はある。
でも、僕のような一般市民が他国に拘束されただけで、戦争が始まりそうになるとか、ちょっとやり過ぎなんじゃないかな。
「はあ。そう言うのも通用しなくなって来てるのかなあ」
「え?ああ。国王候補ですか?もう、国王も枢機院もその気でいますからね。そろそろ、強行策に出てくるかれませんよ?」
「なんで、国王だけじゃなくて、会ったことも無いのに枢機院の人は僕をそんなに国王にしたがってるんですか?」
「まあ、それは、多数決というのが一番の原因ですね。枢機院には12人の顧問官がいるのですが、7人の方がフォルトナーさんを気に入っているのです」
その7人もなんで僕を気に入ったんだか。
「推薦の理由としては、女神の加護がある事、レアスキルを保有している事などが挙げられていますね」
「え?僕のスキルがどんなものかって知られているんですか?」
「ああ、いえ。たくさんの魔法やスキルをお使いになっているのは把握しているのですが、どのようなスキルなのかまでは誰も理解してませんのでご安心ください。出来れば教えて頂きたいところですけど、、、教えては頂けないですよね?」
「まあ、秘密ですよね、普通」
「ええ、それで構わないですよ。ただ、それだけの能力でレアスキルではない訳がないので、レアスキル、、、いえ、特一級レアスキルと枢機院としても認定していますので、国王候補としては逃すわけにはいかないという思惑があるわけです」
特一級とか、レアスキルにもグレードがあるのか。
「ちなみに今のあの国王は準二級レアスキルで、前国王が一級でした。これまでの歴代国王はすべてレアスキルホルダーでしたが、最高は一級まででしたので、推測とは言え特一級の判定が付いたフォルトナーさんは、マナから手が出るほど欲しがる人材というのは分かっていただけましたか?」
マナから手が出るって、最近聞かなくなったなあ。
クラウゼンさんって意外と古臭い言い回しが好きなんだろうか。
「あ、でも、後の5人は僕が相応しくないと思っているんですよね?」
「嬉しそうに言わないでくださいよ。普通は逆ですからね?その5人のうち3人は保留、と言いますか、中立の立場を取られています。フォルトナーさんの年齢のこともあるので、悩まれているのでしょうね。あとの2人は、かなり反対されているようでして、枢機院会議では、強烈な暴言を使ってまで拒否されているようです」
ええええ、、、そこまで言われると逆に不安になるんだけど。
会ったことも無い人にそこまで嫌われるなんてあるの?
ああ、でも、エルツ族に対しての感情もあったから、そういうのもあり得るか。
でも、その2人には是非頑張って貰って、国王候補の話は無かったことにして頂きたいものだ。
「失礼します。リーンハルト・フォルトナーさんをお連れしました」
クラウゼンさんと一緒に部屋に入ると、中央が凹んでいて、その周りを円状に12の席が囲む円筒のような場所だった。
入った扉からはその凹んだ部屋の真ん中に階段が伸びていて、ここからだとその場所にしか行けないようになっている。
やっぱり分かっていたけど、クラウゼンさんはここからは付いて来てくれなかった。
ゆるい階段を降りて部屋の中央に進む。
真ん中には円形に手摺のような物があって、その中に入って立つようだ。
そこに立つと、上から12人の視線が集まっているのが分かる。
ちらっと、その人達を見ると、皆んな真っ白なフードを深くかぶっていて、顔が分からなかった。
うわなにこれ、怖いんですけど。
「………」
「………」
いや誰か何か喋ってよ。
とりあえず挨拶でもしておこうかな。
「えっと、こんにちは」
「リーンハルト・フォルトナーよ。お前は、自分の価値を理解しておるのか」
うおっ。
何だよ。急に喋り始めたよ。
こっちが話すのを待ってたの?
自分から話し始めたら負け、みたいな勝負でもしてたの?
真正面にいる人が話している、と思う。
口も見えないから声の方向でしか分からないけど。
「あ、はい。あ、いえ。分かってないです、、、かね?」
「質問しているのはこちらだ。お前はこの王国の長になるという自覚はあるのか?」
「ど、どうでしょうかね、、、あんまり無いかなあ、とか」
ざわざわざわざわ
他の11人が騒ぎ始める。
「これはどういうことか!」とか「報告と違うでは無いか」とか聞こえてくる。
「お前は国王になる気は無いというのか?」
「あ、はい。かなり初期の頃から嫌だって国王には言い続けているんですけど」
ざわざわざわざわざわざわ
いちいちリアクションしてくれる人達だ。
ちょっと面白いかも。
もしかして、この人達に僕は国王になりたく無いって訴えかけたら、この話は無しになるんじゃないの?
「やる気が無いものを無理にやらせて務まるほど国王は簡単なものではない。速やかに、別の候補を選別すべきではないか?」
「その通りだ。だから、私は反対だった。ただの平民の子が国王になるのには無理がある」
よし、いいぞ。
2時と5時の方角の人が反対派のようだな。
「いや、しかし、女神からの加護を授かっておるし、特一級のレアスキルホルダーは貴重だ。世代交代としてもいいタイミングである」
「正に、神の導きと言える巡り合わせだ」
「天使を使役していると言う話もある。先の魔族襲来事件はその天使の力でねじ伏せている。国を守る力は必要だ」
今度は僕を国王にしたい派だな。
結局、この人達は僕が必要なんじゃなくて、僕のスキルが欲しいだけなんだよな。
僕の中身は見てくれていないって感じがする。
「しかし、此度のヴォルガ公国に捕虜となってしまった件は、擁護しようがない。国王候補の自覚も無く、自らの身よりも他の者を逃し、果てにはノルドとの戦に巻き込まれておる」
「国王の放任が過ぎるのだ。自分が国王になる際に不自由を感じたからといって、甘くなっている」
「その時と同じようにすれば良い」
「その通りだ。王宮でのみ暮らし、国王として必要な事を学ばせておけば良い」
色々好き放題に言っているな~。
こっちはやる気が無いって言ってるのに。
「あの~。僕は国王はやりたく無いので、他の人を見つけてもらった方が良いのかと思いますよ?」
「枢機院で決まった事を覆す事は出来ない。反対の者も中にはおるが、決を取り、公にも示している。今更、それを変える事は枢機院の威信にかかわる」
「その通りだ」
「致し方あるまい」
「………」
ああもう、反対派も黙っちゃったよ。
この枢機院の威厳というのはそんなに大事なんだろうか。
「これ以上、国王候補に危険が及ばぬようにする事と、本人が余計な事をしないように、王宮内にて暮らす事とし、王宮の外に出る事はこれを禁ずる。また、世話役を置き、生活に不自由が無いようにする」
ちょいちょい!これってこんな急に決まるの?
真正面の人がいきなり宣言しちゃったよ。
え?これで、決定なの?
話し合いとか無しなの?
「国王候補は24時間以内に王宮内での暮らしが出来るように支度をするのだ。家族がいれば連れて来るが良い。生活費用はすべて賄ってやろう」
「皆の者、異議はないな。では、これにて閉会とする」
12人の枢機院の人達は椅子から立ち上がり、その後ろにある扉から出て行ってしまった。
あんなに扉を作らなくても、一箇所から出ればいいじゃん。仲悪いのかな。
いや、そうじゃない!
そんなのはどうでもいいんだ!
何?何?
これもう、僕は王宮で暮らさないといけないの?
家族を連れて来ていいって、その家族も王宮で暮らさないといけないんでしょ?
僕はあの屋敷でのんびりと家族と暮らしたいんであって、あんなところに押し込められて、出る事も許されなくなるなんて嫌だ。
もう、我慢の限界だ。
色々、この国でやらされてきて、まあ、好き勝手もやったけど、僕の気持ちを無視したこのやり方には付いていけない。
「あ、クラウゼンさん。待っていてくれてたんですね」
「ええ。ちょっと心配だったものですから。あのような結論になってしまって、大丈夫ですか?」
「はい。問題ないです」
この人だけは、王宮の良心だよな。
クラウゼンさんが国王だったら良かったのに。
「あの。この国の地図って見る事が出来ますか?出来るだけ詳しい物がいいんですけど」
「地図ですか。私がよく軍の会議などで見ている物でよろしければ、お見せできますけど。持ち出しは出来ませんよ?」
「ああ、ちょっと確認したかった事があったので、その場で見られればいいです。今から見る事は出来ます?」
「ええ。もちろん構いませんよ」
クラウゼンさんの執務室に連れてきてもらった。
部屋は狭いけど、本はたくさんあるし、机の上は整理が行き届いていて、出来る男の部屋といった感じだ。
「ええと、これですね。フォルクヴァルツが中心にあって、近隣諸国との国境が分かる範囲ですけど書かれています。あとは、この青い点が大都市で赤が町、黄色が村を示しています」
「おお、かなり詳しく書いてありますよ。そうすると、ここの大きな円が王都ですね?」
「はい、、、よくわかりましたね。これをパッと見てどれがどの位置関係なのかなんて、上からでも見ない限り理解しづらいと思うのですけど」
まあ、実際、上から見たからね。
大体の場所はあの時把握出来たかな。
国境を示す線を辿っていく。
「あれ?ここから国境が無くなってるんですけど」
「ああ、そこはノルドとの国境ですけど、そこから北は魔物が強力になって来るので、ウチもノルドも手出しできないエリアなんですよ。お互い土地に困っている訳では無いですし。まあ、重要な資源が眠っている可能性も無くはないですが、無理をしてまで攻略するような場所でもないですからね」
「へぇ。じゃあ、フォルクヴァルツの北側って、、、ああ、この点線がその魔物のエリアとの境界って事ですか」
「そうですね。その点線の辺りまでは強い魔物があまり出ないので、そこまでがフォルクヴァルツの領土と言えるでしょう。以前は、せっかくどの国からも攻める事が出来ない土地なんだからと、領土拡大を計画した事もあったのですが、その点線から少し奥に入った場所に出る魔物一匹に騎士団一つが潰されてしまいましたから」
なるほどね。
さらに北はあのアルマース山脈がある。
東西はノルドとヴォルガだけど、ほとんどフォルクヴァルツとの国境と山脈と繋がっていて、あまり接していない。
土地としては、目のような形をしているな。
ふむ。ここが丁度いいか。
学校へ先に行ったのは魔鳥で空から降りてきたからであって、降りる場所があそこしかなかったからだし、その辺を必死に説明したら許してくれた。
最近、どうにもこう、家族に心配をかける事が多くていかんな。
とは言っても、通信も復旧したし、これで、遠くに行ったとしても、連絡は取れるから安心かな。
でも、家族から怒られる事は回避できたけど、この後、国王から怒られるらしい。
なんでだよ。
人質を取られて抵抗できなかったんだし、そもそも、魔法で開けた穴を埋めろって命令したのも国王なんだし、文句を言われる事じゃないと思うんだよね。
結果的には通信が回復したのも僕がやらないといつまでも治んなかったんだし。
それなのに、これから僕は怒られに出向いている。
しかも、今日は国王だけじゃなくて、枢機院に怒られるらしい。
会ったことは無いけど、枢機院というのは、国王とは別にこの国の政治とか法律とかを決めたり、場合によっては国王より発言力があったりもする機関の人達だ。
ああ、、、憂鬱だなあ。
もう帰ってもいいかなあ。
枢機院の場所は王宮の中にはなく、通りを挟んで隣の大きな建物になる。
王宮とは地下で繋がっていて、いざとなったら王族はそこを通って枢機院から逃げられるようになっている、とか、実は国庫として、国有財産の半分はこの建物のどこかに隠されている、とか色々な噂がここにはあったりする。
今はその枢機院の建物の中をクラウゼンさんに案内されている。
「今回は覚悟しておいた方が良いですよ?なにせ、あと少しでフォルトナーさんを取り返す為に全面戦争に入るところだったのですから」
「うええ。でも、それ僕のせいじゃ無いですよね」
「ヴォルガが一番の原因と言うのは分かってるのですが、フォルトナーさんならいつでも逃げだせたはず、というのが枢機院の見解ですので、叱られるのは必至ですね」
「うう、そう、、ですよね」
僕もあれは油断というか、いつでも逃げ出せると思って、先延ばしにしたら逃げられなくなっちゃったから、僕にも非はある、という自覚はある。
でも、僕のような一般市民が他国に拘束されただけで、戦争が始まりそうになるとか、ちょっとやり過ぎなんじゃないかな。
「はあ。そう言うのも通用しなくなって来てるのかなあ」
「え?ああ。国王候補ですか?もう、国王も枢機院もその気でいますからね。そろそろ、強行策に出てくるかれませんよ?」
「なんで、国王だけじゃなくて、会ったことも無いのに枢機院の人は僕をそんなに国王にしたがってるんですか?」
「まあ、それは、多数決というのが一番の原因ですね。枢機院には12人の顧問官がいるのですが、7人の方がフォルトナーさんを気に入っているのです」
その7人もなんで僕を気に入ったんだか。
「推薦の理由としては、女神の加護がある事、レアスキルを保有している事などが挙げられていますね」
「え?僕のスキルがどんなものかって知られているんですか?」
「ああ、いえ。たくさんの魔法やスキルをお使いになっているのは把握しているのですが、どのようなスキルなのかまでは誰も理解してませんのでご安心ください。出来れば教えて頂きたいところですけど、、、教えては頂けないですよね?」
「まあ、秘密ですよね、普通」
「ええ、それで構わないですよ。ただ、それだけの能力でレアスキルではない訳がないので、レアスキル、、、いえ、特一級レアスキルと枢機院としても認定していますので、国王候補としては逃すわけにはいかないという思惑があるわけです」
特一級とか、レアスキルにもグレードがあるのか。
「ちなみに今のあの国王は準二級レアスキルで、前国王が一級でした。これまでの歴代国王はすべてレアスキルホルダーでしたが、最高は一級まででしたので、推測とは言え特一級の判定が付いたフォルトナーさんは、マナから手が出るほど欲しがる人材というのは分かっていただけましたか?」
マナから手が出るって、最近聞かなくなったなあ。
クラウゼンさんって意外と古臭い言い回しが好きなんだろうか。
「あ、でも、後の5人は僕が相応しくないと思っているんですよね?」
「嬉しそうに言わないでくださいよ。普通は逆ですからね?その5人のうち3人は保留、と言いますか、中立の立場を取られています。フォルトナーさんの年齢のこともあるので、悩まれているのでしょうね。あとの2人は、かなり反対されているようでして、枢機院会議では、強烈な暴言を使ってまで拒否されているようです」
ええええ、、、そこまで言われると逆に不安になるんだけど。
会ったことも無い人にそこまで嫌われるなんてあるの?
ああ、でも、エルツ族に対しての感情もあったから、そういうのもあり得るか。
でも、その2人には是非頑張って貰って、国王候補の話は無かったことにして頂きたいものだ。
「失礼します。リーンハルト・フォルトナーさんをお連れしました」
クラウゼンさんと一緒に部屋に入ると、中央が凹んでいて、その周りを円状に12の席が囲む円筒のような場所だった。
入った扉からはその凹んだ部屋の真ん中に階段が伸びていて、ここからだとその場所にしか行けないようになっている。
やっぱり分かっていたけど、クラウゼンさんはここからは付いて来てくれなかった。
ゆるい階段を降りて部屋の中央に進む。
真ん中には円形に手摺のような物があって、その中に入って立つようだ。
そこに立つと、上から12人の視線が集まっているのが分かる。
ちらっと、その人達を見ると、皆んな真っ白なフードを深くかぶっていて、顔が分からなかった。
うわなにこれ、怖いんですけど。
「………」
「………」
いや誰か何か喋ってよ。
とりあえず挨拶でもしておこうかな。
「えっと、こんにちは」
「リーンハルト・フォルトナーよ。お前は、自分の価値を理解しておるのか」
うおっ。
何だよ。急に喋り始めたよ。
こっちが話すのを待ってたの?
自分から話し始めたら負け、みたいな勝負でもしてたの?
真正面にいる人が話している、と思う。
口も見えないから声の方向でしか分からないけど。
「あ、はい。あ、いえ。分かってないです、、、かね?」
「質問しているのはこちらだ。お前はこの王国の長になるという自覚はあるのか?」
「ど、どうでしょうかね、、、あんまり無いかなあ、とか」
ざわざわざわざわ
他の11人が騒ぎ始める。
「これはどういうことか!」とか「報告と違うでは無いか」とか聞こえてくる。
「お前は国王になる気は無いというのか?」
「あ、はい。かなり初期の頃から嫌だって国王には言い続けているんですけど」
ざわざわざわざわざわざわ
いちいちリアクションしてくれる人達だ。
ちょっと面白いかも。
もしかして、この人達に僕は国王になりたく無いって訴えかけたら、この話は無しになるんじゃないの?
「やる気が無いものを無理にやらせて務まるほど国王は簡単なものではない。速やかに、別の候補を選別すべきではないか?」
「その通りだ。だから、私は反対だった。ただの平民の子が国王になるのには無理がある」
よし、いいぞ。
2時と5時の方角の人が反対派のようだな。
「いや、しかし、女神からの加護を授かっておるし、特一級のレアスキルホルダーは貴重だ。世代交代としてもいいタイミングである」
「正に、神の導きと言える巡り合わせだ」
「天使を使役していると言う話もある。先の魔族襲来事件はその天使の力でねじ伏せている。国を守る力は必要だ」
今度は僕を国王にしたい派だな。
結局、この人達は僕が必要なんじゃなくて、僕のスキルが欲しいだけなんだよな。
僕の中身は見てくれていないって感じがする。
「しかし、此度のヴォルガ公国に捕虜となってしまった件は、擁護しようがない。国王候補の自覚も無く、自らの身よりも他の者を逃し、果てにはノルドとの戦に巻き込まれておる」
「国王の放任が過ぎるのだ。自分が国王になる際に不自由を感じたからといって、甘くなっている」
「その時と同じようにすれば良い」
「その通りだ。王宮でのみ暮らし、国王として必要な事を学ばせておけば良い」
色々好き放題に言っているな~。
こっちはやる気が無いって言ってるのに。
「あの~。僕は国王はやりたく無いので、他の人を見つけてもらった方が良いのかと思いますよ?」
「枢機院で決まった事を覆す事は出来ない。反対の者も中にはおるが、決を取り、公にも示している。今更、それを変える事は枢機院の威信にかかわる」
「その通りだ」
「致し方あるまい」
「………」
ああもう、反対派も黙っちゃったよ。
この枢機院の威厳というのはそんなに大事なんだろうか。
「これ以上、国王候補に危険が及ばぬようにする事と、本人が余計な事をしないように、王宮内にて暮らす事とし、王宮の外に出る事はこれを禁ずる。また、世話役を置き、生活に不自由が無いようにする」
ちょいちょい!これってこんな急に決まるの?
真正面の人がいきなり宣言しちゃったよ。
え?これで、決定なの?
話し合いとか無しなの?
「国王候補は24時間以内に王宮内での暮らしが出来るように支度をするのだ。家族がいれば連れて来るが良い。生活費用はすべて賄ってやろう」
「皆の者、異議はないな。では、これにて閉会とする」
12人の枢機院の人達は椅子から立ち上がり、その後ろにある扉から出て行ってしまった。
あんなに扉を作らなくても、一箇所から出ればいいじゃん。仲悪いのかな。
いや、そうじゃない!
そんなのはどうでもいいんだ!
何?何?
これもう、僕は王宮で暮らさないといけないの?
家族を連れて来ていいって、その家族も王宮で暮らさないといけないんでしょ?
僕はあの屋敷でのんびりと家族と暮らしたいんであって、あんなところに押し込められて、出る事も許されなくなるなんて嫌だ。
もう、我慢の限界だ。
色々、この国でやらされてきて、まあ、好き勝手もやったけど、僕の気持ちを無視したこのやり方には付いていけない。
「あ、クラウゼンさん。待っていてくれてたんですね」
「ええ。ちょっと心配だったものですから。あのような結論になってしまって、大丈夫ですか?」
「はい。問題ないです」
この人だけは、王宮の良心だよな。
クラウゼンさんが国王だったら良かったのに。
「あの。この国の地図って見る事が出来ますか?出来るだけ詳しい物がいいんですけど」
「地図ですか。私がよく軍の会議などで見ている物でよろしければ、お見せできますけど。持ち出しは出来ませんよ?」
「ああ、ちょっと確認したかった事があったので、その場で見られればいいです。今から見る事は出来ます?」
「ええ。もちろん構いませんよ」
クラウゼンさんの執務室に連れてきてもらった。
部屋は狭いけど、本はたくさんあるし、机の上は整理が行き届いていて、出来る男の部屋といった感じだ。
「ええと、これですね。フォルクヴァルツが中心にあって、近隣諸国との国境が分かる範囲ですけど書かれています。あとは、この青い点が大都市で赤が町、黄色が村を示しています」
「おお、かなり詳しく書いてありますよ。そうすると、ここの大きな円が王都ですね?」
「はい、、、よくわかりましたね。これをパッと見てどれがどの位置関係なのかなんて、上からでも見ない限り理解しづらいと思うのですけど」
まあ、実際、上から見たからね。
大体の場所はあの時把握出来たかな。
国境を示す線を辿っていく。
「あれ?ここから国境が無くなってるんですけど」
「ああ、そこはノルドとの国境ですけど、そこから北は魔物が強力になって来るので、ウチもノルドも手出しできないエリアなんですよ。お互い土地に困っている訳では無いですし。まあ、重要な資源が眠っている可能性も無くはないですが、無理をしてまで攻略するような場所でもないですからね」
「へぇ。じゃあ、フォルクヴァルツの北側って、、、ああ、この点線がその魔物のエリアとの境界って事ですか」
「そうですね。その点線の辺りまでは強い魔物があまり出ないので、そこまでがフォルクヴァルツの領土と言えるでしょう。以前は、せっかくどの国からも攻める事が出来ない土地なんだからと、領土拡大を計画した事もあったのですが、その点線から少し奥に入った場所に出る魔物一匹に騎士団一つが潰されてしまいましたから」
なるほどね。
さらに北はあのアルマース山脈がある。
東西はノルドとヴォルガだけど、ほとんどフォルクヴァルツとの国境と山脈と繋がっていて、あまり接していない。
土地としては、目のような形をしているな。
ふむ。ここが丁度いいか。
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