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第百五十五話 困り事
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「なるほど。お姉さんとして好きになったんだね」
「違うし。どちらかと言うと、お姉様としてだよ」
「どう違うんだよ。え?本気で言ってる?ミーシャは女の子だよね?」
「むかっ。どう見ても女子でしょう!ねぇ、それよりどうなの?フィアお姉様は彼氏彼女はいるの?」
本気なのか……。
まあ、そう言う人達も居るのは学校の女子達の僕とクリスを見る反応で知ってはいたけど、女子同士もやっぱり居るんだね。
だけど、フィアはダメだよ。
ここは、多少の脚色を入れてでも釘を刺しておかないと。
「残念だったね。実は、フィアの彼氏は、その、僕なんだよ。だから、早めに諦めた方が良いと思うよ?」
「そういうすぐ分かる嘘は要らないから」
すぐ分かるの?そんなに分かりやすい嘘だったかな……。
「でも、という事は、今は誰とも付き合ってないんだね。良かった」
「え?何で分かったのさ」
「本当に付き合っている人が居るなら、その人の名前を出せばいいのに、あなたが付き合っている、なんて完全にあり得ない嘘までつく意味がないからね」
そっかあ。完全にあり得ないかあ。
だよね………。
「あ、ごめん。つい、うっかり、本当の事を言っちゃった」
「ううん。いいんだ。慣れてるから」
「フィアお姉様。その本はどんなお話なんですか?何か面白い本があったら、ボクも読んでみたいです」
「こ、これは、推理物よ。本ならそこのを読んでいいから、もう少し離れてくれないかしら」
「あ、でも、お姉様と一緒に読むのもステキですよね!ここでこうして、同じ話を読むんです」
「そ、そういう読み方はしないと思うのだけど……。ねぇ、リン、この子をどうにかして欲しいのだけど」
困りフィアはレアだなあ。
ああ!こういう時に映像を保存する魔法円を開発しておけば良かった………。
「いいの?ご主人。フィアちゃんを取られちゃうわよ?」
「ええ?そんな訳でないでしょ。まあ、最初はちょっと焦ったけどね。フィアの方が、その気がないんだから、問題ないよ」
「あれで、押しに弱いタイプですよ?フィアさんって。女子同士だからって甘くみてると、いつの間にか付き合ってたとかあり得ますよ。あ、その時は私が受け止めてあげますから。弱っている所につけ込んで大逆転です!」
最後のは僕に言ったらダメなんじゃないのかな。
ああ、でも、言われてみれば、離れろと言っておきながら、今もあの距離を許してしまっている。
これ、ほっといたらどんどん攻め込まれてしまうんじゃないのか?
そうはさせない!
「フ、フィア?僕もその本、読んでみたいなあ……なんて」
「ウソつきリンはあっちで1人懺悔でもしてなさい」
「は、はい」
僕の方から距離を開けるような事を言ってどうする。
おかしい。
ミーシャと同じアプローチの筈なのに。
家から少し離れた所で、木を切り倒しまくっている。
別にフィアにあっちに行けと言われたから、グレて暴れている訳でも、普段の心労をここで発散している訳でもない。
いや、少しはあるか?
とにかく、目的があってやっている。
家のある場所を中心に、半径1/2ハロンくらいの範囲の木をすべて伐採して、そこに外壁を作ろうと思っている。
防衛システムのシルフ隊はここでも稼働中だけど、壁があれば不用意に近づく魔物も減らせるだろうし、何より安心感が違うと思う。
切った大木は寝かせたまま、家を作った時のように周りを切り落として太い角材を作る。
一本だけでも僕の胸元くらいまでの高さはある。
それを、5本くらい積み上げていく。
とは言っても、この木材はかなり重いから、アリアを出してきて、2人……いや1人か?とにかく2体1人で、持ち上げて乗せていった。
上の方は当然高さが届かないから、石で階段状のものを作って、上に持っていき、接着して崩れないようにした。
ただ、材木を積んだだけなんだけど、これでも充分外壁の機能が果たせる筈だ。
東西南北の4箇所には、壁の隙間を開けて出入り口にする。
ここには門扉をつけよう。
分厚い板を何枚も貼り合わせて、大きな扉を作る。
回転する軸部分を付けて丸く削る。
この扉を取り付ける、受けの部分も必要だな。
下は地面を掘り下げて角材を埋める。
そこに軸を入れる穴を左右に掘っておく。
上は長めの角材を左右の外壁に渡して屋根のようにする。
上にも穴を開けておく事で扉の軸が入るようになる。
扉を軸穴に取り付けて、門扉の完成だ。
左右の扉を閉めてみる。
あれ?閉まらない……。
おかしいな。サイズは測ってピッタリのはずなのに。
ああ、扉の幅があるから、角が引っかかっているのか。
ギベオンソードで少しずつ角を削って、閉まるように調整する。
ああ、そうか、これだけだと、誰でも開けられちゃうのか。
閂を取り付けよう。
リュリュさんの毛から作ったギベオン板を四角の輪に加工して、扉につけて角材を通せば閂になる。
よし、今度こそ完成かな?
これを、あと3対6枚か………。
以前使った、魔法円の複製と貼り付けみたいなスキルがないだろうか。
シリカとアズライトなら何か知ってるかも。
「物を複製するスキルなのですか。それは、フェルミーニヒフルディヒングならできるのですけど、手の中に収まるものだけなのですよ?」
そう言えば、じいちゃんのスキルがそれだった。
手のひらに収まるものなら何でも複製できる、という超レアなスキルだけど、流石に門扉は手のひらには収まらないよなあ。
「物を何もないところから、生み出すのは出来なくても、材料はあるのだから、作り方だけ複写出来ればいい?」
「そ、それでもいいよ!そんなのあるの?」
シリカに教えてもらったスキルは「マクロの記録と再生」という名前だった。
マグロ漁の記録ではない。
検索をしてみたら確かにそのスキルがあった。
これで、門扉作りが楽になるかな。
「でも、そんなレアスキルを持っている人なんていなと思うよ」
「ああ、それはダイジョブダイジョブ。そう言えば、2人にはまだ教えてなかったっけ」
「マクロの記録と再生」スキルを作成してみる。
完成まで1時間か。
最近にしては長めの作成時間だな。
今までに無かった機能が多いスキルなんだろう。
「あ、ちょっと待っててね。1時間くらいしたら、僕があっと驚かせる事をしてあげるから」
「そんなに待てないよ。それに、そんなに興味ないし」
「アズも忙しいので、マスターには付き合ってられないのです。アリアマスターにでも見せるといいのです」
自分で自分に自慢してどうする。
結局、あっさり、2人とも行ってしまった。
最近、我が娘達は僕に冷たい。
反抗期なんだろうか。
スキルが出来るまで、残った根っこでも焼いていよう……。
「ええい!燃え尽きろっ!ファッケルの火!ファッケルの火!!ファッケルの火ぃ!!ふはははははっ!消し炭になるがいい!」
ふう。
大魔王になったつもりで、やってみたら結構スッキリしたぞ。
いや、別にクリスはそんな事はしなさそうだけど、物語に出てくる大魔王はこんなイメージだからね。
「何をしてるの?闇のサイドに落ちそうなの?」
「あ、レリア。こ、これは、なんというか、その」
「それはどうでもいいわ。そんなことより、ちょっと話がしたいの。今、いい?」
「あ、うん。皆んな最近冷たくない?」
「え?そんな事は無いと思うけど」
そうかな。
今のレリアも自分で聞いておいてあれだからね。
前は僕と婚約だの結婚だの言っていたのに、もう愛想を尽かされたんだろうか。
「ねぇ、聞いてる?」
「あ、ごめん。なんだっけ」
「もう。ノルドの事よ。あのミーシャって子が言っていた話と、あなたが実際に見てきた街から逃がさない体制が気になるの」
「ああ、あれはちょっと異様な光景だったな。たった一人が街から出ただけで、何十人の兵士が血眼になって追いかけてくるんだもん。それに、逃げ出す人が出るのが当たり前って言う感じもおかしい話だしね」
「少しミーシャに話を聞いたんだけど、どうやらあの国は階級社会がひどくなっていて、上層民、中間層民、下層民、奴隷の4つに分かれているんですって。ミーシャは下層民だったそうだけど、その扱いが奴隷並みにひどかったようよ」
フォルクヴァルツも王族、貴族、平民、奴隷といくつかの階級に分かれているけど、奴隷以外は自由人として、ある程度自分の好きな生き方を選べる。
ノルドでは下層民という階級は自由が無かったのだろうか。
「仕事は国によって、勝手に決められてしまうし、収入の9割は税として取られてしまうのですって。その上、最近は国家プロジェクトとして、人の身でありながら、天使や神の力を宿すという実験をしていて、下層民がその実験体にされているらしいの。ミーシャの家族もその実験が失敗して亡くなったって」
ひどい話だ!
そうか、そういう事から逃げる下層民が頻発して、ああいった逃がさない対策がされていたのだな。
ミーシャは上手く逃げる事が出来て、あの湖まで来れたのか。
でも、ミーシャは僕にここまで連れてこられたから助かっているけど、他の下層民の人達は追っ手に捕まるか、逃げられたとしても、あの森の中でずっと生活するのは厳しそうだよな。
「それでね。無理な事だとは思うのよ。無謀だし、下手をすると家族に迷惑を掛けるとも思うの。でもね」
「助けたいって考えてるの?」
「う………うん。変よね。敵国だったんだし、私もノルドの兵士達を何人も倒して来ているのに、今更、何を言ってるのって感じなんだけど………」
「戦争とはこの話は別だよ。それに、今はもうフォルクヴァルツ人でも無いし、軍人でも無いんだから。レリアはそういう考えなんでしょ?それは、おかしくもなんともないよ」
「ありがとう。やっぱり、リンはわたしの事を理解してくれるわ。あのね、もうわたしはアウグステンブルクの家を捨ててしまったし、リンとの婚約も無くなっちゃったけど、まだわたしはあなたと結婚したいって思っているわ」
な、な、何?
今、告白されてる?
レリアって僕の事を本気で想ってくれてるの?
「あ、あの、その」
「あ、話が逸れちゃったわね。そんな事よりノルドの下層民の事よ。どうにかしてあげたいの」
やっぱり、冷たくない?
最近の子って、「そんな事」扱いは普通の事なのかな。
「ねぇ、聞いてる?」
「聞いてる聞いてる。まずは、ミーシャのように逃げ出した人達を助けるのが、今出来ることかな?」
「そうね!それが今やれそうであって、一番困っている人を助ける事になるわよね!」
レリアは正義感が人一倍強いんだな。
貴族の血が困っている民を助けようと考えさせているんだろうね。
それが別の国の民だろうと関係ないんだね、レリアにとっては。
「分かった。やってみよう。でも、大変になってくるよ?受け入れる場所もまだ無いし、例え建物が用意できたとしても、それだけじゃダメだ。食料や生活に必要な物は僕達家族だけの場合とは格段に違ってくるんだよ?」
「わ、分かってる、つもり………。ごめん、やっぱり、そこまでは考えていなかったわ。わたしはただ助ければ、それで解決って思ってた………」
まずは、受け入れる箱物からだな。
さっき作り始めたマグロ、じゃなくて、マクロの記録と再生が役立ちそうだ。
門扉だけじゃなくて、家ももっと作って、受け入れられる状態にはしておかないといけないな。
逃げ出して森に隠れている人達を探したり、その人達を連れ帰ってくる方法を考える必要もある。
あとは、一番大事なのは………。
「家族の皆んなに相談しないとだね」
「そうだったわ。はあ、わたし、何かやらなきゃって思ったらそれしか考えられなくなってしまうの。お父様にも、思い込みが激しすぎるってよく言われていたわ」
お父様もだけどね。
さて、今度は増えるって言っても、だいぶ話が違うからね。
嫌がる子も居るかもしれないし、受け入れた後も問題が出るかもしれない。
しっかりと、皆んなと話し合って、家族全員が納得出来るようにしないといけないと思う。
でも、何となく、皆んな受け入れてくれる気がするんだ。
ここまで付いて来てくれた皆んなだから、そう思えるようになって来たのかもしれないね。
「違うし。どちらかと言うと、お姉様としてだよ」
「どう違うんだよ。え?本気で言ってる?ミーシャは女の子だよね?」
「むかっ。どう見ても女子でしょう!ねぇ、それよりどうなの?フィアお姉様は彼氏彼女はいるの?」
本気なのか……。
まあ、そう言う人達も居るのは学校の女子達の僕とクリスを見る反応で知ってはいたけど、女子同士もやっぱり居るんだね。
だけど、フィアはダメだよ。
ここは、多少の脚色を入れてでも釘を刺しておかないと。
「残念だったね。実は、フィアの彼氏は、その、僕なんだよ。だから、早めに諦めた方が良いと思うよ?」
「そういうすぐ分かる嘘は要らないから」
すぐ分かるの?そんなに分かりやすい嘘だったかな……。
「でも、という事は、今は誰とも付き合ってないんだね。良かった」
「え?何で分かったのさ」
「本当に付き合っている人が居るなら、その人の名前を出せばいいのに、あなたが付き合っている、なんて完全にあり得ない嘘までつく意味がないからね」
そっかあ。完全にあり得ないかあ。
だよね………。
「あ、ごめん。つい、うっかり、本当の事を言っちゃった」
「ううん。いいんだ。慣れてるから」
「フィアお姉様。その本はどんなお話なんですか?何か面白い本があったら、ボクも読んでみたいです」
「こ、これは、推理物よ。本ならそこのを読んでいいから、もう少し離れてくれないかしら」
「あ、でも、お姉様と一緒に読むのもステキですよね!ここでこうして、同じ話を読むんです」
「そ、そういう読み方はしないと思うのだけど……。ねぇ、リン、この子をどうにかして欲しいのだけど」
困りフィアはレアだなあ。
ああ!こういう時に映像を保存する魔法円を開発しておけば良かった………。
「いいの?ご主人。フィアちゃんを取られちゃうわよ?」
「ええ?そんな訳でないでしょ。まあ、最初はちょっと焦ったけどね。フィアの方が、その気がないんだから、問題ないよ」
「あれで、押しに弱いタイプですよ?フィアさんって。女子同士だからって甘くみてると、いつの間にか付き合ってたとかあり得ますよ。あ、その時は私が受け止めてあげますから。弱っている所につけ込んで大逆転です!」
最後のは僕に言ったらダメなんじゃないのかな。
ああ、でも、言われてみれば、離れろと言っておきながら、今もあの距離を許してしまっている。
これ、ほっといたらどんどん攻め込まれてしまうんじゃないのか?
そうはさせない!
「フ、フィア?僕もその本、読んでみたいなあ……なんて」
「ウソつきリンはあっちで1人懺悔でもしてなさい」
「は、はい」
僕の方から距離を開けるような事を言ってどうする。
おかしい。
ミーシャと同じアプローチの筈なのに。
家から少し離れた所で、木を切り倒しまくっている。
別にフィアにあっちに行けと言われたから、グレて暴れている訳でも、普段の心労をここで発散している訳でもない。
いや、少しはあるか?
とにかく、目的があってやっている。
家のある場所を中心に、半径1/2ハロンくらいの範囲の木をすべて伐採して、そこに外壁を作ろうと思っている。
防衛システムのシルフ隊はここでも稼働中だけど、壁があれば不用意に近づく魔物も減らせるだろうし、何より安心感が違うと思う。
切った大木は寝かせたまま、家を作った時のように周りを切り落として太い角材を作る。
一本だけでも僕の胸元くらいまでの高さはある。
それを、5本くらい積み上げていく。
とは言っても、この木材はかなり重いから、アリアを出してきて、2人……いや1人か?とにかく2体1人で、持ち上げて乗せていった。
上の方は当然高さが届かないから、石で階段状のものを作って、上に持っていき、接着して崩れないようにした。
ただ、材木を積んだだけなんだけど、これでも充分外壁の機能が果たせる筈だ。
東西南北の4箇所には、壁の隙間を開けて出入り口にする。
ここには門扉をつけよう。
分厚い板を何枚も貼り合わせて、大きな扉を作る。
回転する軸部分を付けて丸く削る。
この扉を取り付ける、受けの部分も必要だな。
下は地面を掘り下げて角材を埋める。
そこに軸を入れる穴を左右に掘っておく。
上は長めの角材を左右の外壁に渡して屋根のようにする。
上にも穴を開けておく事で扉の軸が入るようになる。
扉を軸穴に取り付けて、門扉の完成だ。
左右の扉を閉めてみる。
あれ?閉まらない……。
おかしいな。サイズは測ってピッタリのはずなのに。
ああ、扉の幅があるから、角が引っかかっているのか。
ギベオンソードで少しずつ角を削って、閉まるように調整する。
ああ、そうか、これだけだと、誰でも開けられちゃうのか。
閂を取り付けよう。
リュリュさんの毛から作ったギベオン板を四角の輪に加工して、扉につけて角材を通せば閂になる。
よし、今度こそ完成かな?
これを、あと3対6枚か………。
以前使った、魔法円の複製と貼り付けみたいなスキルがないだろうか。
シリカとアズライトなら何か知ってるかも。
「物を複製するスキルなのですか。それは、フェルミーニヒフルディヒングならできるのですけど、手の中に収まるものだけなのですよ?」
そう言えば、じいちゃんのスキルがそれだった。
手のひらに収まるものなら何でも複製できる、という超レアなスキルだけど、流石に門扉は手のひらには収まらないよなあ。
「物を何もないところから、生み出すのは出来なくても、材料はあるのだから、作り方だけ複写出来ればいい?」
「そ、それでもいいよ!そんなのあるの?」
シリカに教えてもらったスキルは「マクロの記録と再生」という名前だった。
マグロ漁の記録ではない。
検索をしてみたら確かにそのスキルがあった。
これで、門扉作りが楽になるかな。
「でも、そんなレアスキルを持っている人なんていなと思うよ」
「ああ、それはダイジョブダイジョブ。そう言えば、2人にはまだ教えてなかったっけ」
「マクロの記録と再生」スキルを作成してみる。
完成まで1時間か。
最近にしては長めの作成時間だな。
今までに無かった機能が多いスキルなんだろう。
「あ、ちょっと待っててね。1時間くらいしたら、僕があっと驚かせる事をしてあげるから」
「そんなに待てないよ。それに、そんなに興味ないし」
「アズも忙しいので、マスターには付き合ってられないのです。アリアマスターにでも見せるといいのです」
自分で自分に自慢してどうする。
結局、あっさり、2人とも行ってしまった。
最近、我が娘達は僕に冷たい。
反抗期なんだろうか。
スキルが出来るまで、残った根っこでも焼いていよう……。
「ええい!燃え尽きろっ!ファッケルの火!ファッケルの火!!ファッケルの火ぃ!!ふはははははっ!消し炭になるがいい!」
ふう。
大魔王になったつもりで、やってみたら結構スッキリしたぞ。
いや、別にクリスはそんな事はしなさそうだけど、物語に出てくる大魔王はこんなイメージだからね。
「何をしてるの?闇のサイドに落ちそうなの?」
「あ、レリア。こ、これは、なんというか、その」
「それはどうでもいいわ。そんなことより、ちょっと話がしたいの。今、いい?」
「あ、うん。皆んな最近冷たくない?」
「え?そんな事は無いと思うけど」
そうかな。
今のレリアも自分で聞いておいてあれだからね。
前は僕と婚約だの結婚だの言っていたのに、もう愛想を尽かされたんだろうか。
「ねぇ、聞いてる?」
「あ、ごめん。なんだっけ」
「もう。ノルドの事よ。あのミーシャって子が言っていた話と、あなたが実際に見てきた街から逃がさない体制が気になるの」
「ああ、あれはちょっと異様な光景だったな。たった一人が街から出ただけで、何十人の兵士が血眼になって追いかけてくるんだもん。それに、逃げ出す人が出るのが当たり前って言う感じもおかしい話だしね」
「少しミーシャに話を聞いたんだけど、どうやらあの国は階級社会がひどくなっていて、上層民、中間層民、下層民、奴隷の4つに分かれているんですって。ミーシャは下層民だったそうだけど、その扱いが奴隷並みにひどかったようよ」
フォルクヴァルツも王族、貴族、平民、奴隷といくつかの階級に分かれているけど、奴隷以外は自由人として、ある程度自分の好きな生き方を選べる。
ノルドでは下層民という階級は自由が無かったのだろうか。
「仕事は国によって、勝手に決められてしまうし、収入の9割は税として取られてしまうのですって。その上、最近は国家プロジェクトとして、人の身でありながら、天使や神の力を宿すという実験をしていて、下層民がその実験体にされているらしいの。ミーシャの家族もその実験が失敗して亡くなったって」
ひどい話だ!
そうか、そういう事から逃げる下層民が頻発して、ああいった逃がさない対策がされていたのだな。
ミーシャは上手く逃げる事が出来て、あの湖まで来れたのか。
でも、ミーシャは僕にここまで連れてこられたから助かっているけど、他の下層民の人達は追っ手に捕まるか、逃げられたとしても、あの森の中でずっと生活するのは厳しそうだよな。
「それでね。無理な事だとは思うのよ。無謀だし、下手をすると家族に迷惑を掛けるとも思うの。でもね」
「助けたいって考えてるの?」
「う………うん。変よね。敵国だったんだし、私もノルドの兵士達を何人も倒して来ているのに、今更、何を言ってるのって感じなんだけど………」
「戦争とはこの話は別だよ。それに、今はもうフォルクヴァルツ人でも無いし、軍人でも無いんだから。レリアはそういう考えなんでしょ?それは、おかしくもなんともないよ」
「ありがとう。やっぱり、リンはわたしの事を理解してくれるわ。あのね、もうわたしはアウグステンブルクの家を捨ててしまったし、リンとの婚約も無くなっちゃったけど、まだわたしはあなたと結婚したいって思っているわ」
な、な、何?
今、告白されてる?
レリアって僕の事を本気で想ってくれてるの?
「あ、あの、その」
「あ、話が逸れちゃったわね。そんな事よりノルドの下層民の事よ。どうにかしてあげたいの」
やっぱり、冷たくない?
最近の子って、「そんな事」扱いは普通の事なのかな。
「ねぇ、聞いてる?」
「聞いてる聞いてる。まずは、ミーシャのように逃げ出した人達を助けるのが、今出来ることかな?」
「そうね!それが今やれそうであって、一番困っている人を助ける事になるわよね!」
レリアは正義感が人一倍強いんだな。
貴族の血が困っている民を助けようと考えさせているんだろうね。
それが別の国の民だろうと関係ないんだね、レリアにとっては。
「分かった。やってみよう。でも、大変になってくるよ?受け入れる場所もまだ無いし、例え建物が用意できたとしても、それだけじゃダメだ。食料や生活に必要な物は僕達家族だけの場合とは格段に違ってくるんだよ?」
「わ、分かってる、つもり………。ごめん、やっぱり、そこまでは考えていなかったわ。わたしはただ助ければ、それで解決って思ってた………」
まずは、受け入れる箱物からだな。
さっき作り始めたマグロ、じゃなくて、マクロの記録と再生が役立ちそうだ。
門扉だけじゃなくて、家ももっと作って、受け入れられる状態にはしておかないといけないな。
逃げ出して森に隠れている人達を探したり、その人達を連れ帰ってくる方法を考える必要もある。
あとは、一番大事なのは………。
「家族の皆んなに相談しないとだね」
「そうだったわ。はあ、わたし、何かやらなきゃって思ったらそれしか考えられなくなってしまうの。お父様にも、思い込みが激しすぎるってよく言われていたわ」
お父様もだけどね。
さて、今度は増えるって言っても、だいぶ話が違うからね。
嫌がる子も居るかもしれないし、受け入れた後も問題が出るかもしれない。
しっかりと、皆んなと話し合って、家族全員が納得出来るようにしないといけないと思う。
でも、何となく、皆んな受け入れてくれる気がするんだ。
ここまで付いて来てくれた皆んなだから、そう思えるようになって来たのかもしれないね。
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