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第百五十四話 脱国
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皆んなの分の服もようやく買えたけど、よくよく考えたらフォルクヴァルツの家から服は全部持って来ていたんだから、わざわざ買い足さなくても良かったんだよ。
まだ、ストレージにクローゼットごとしまってあったから、すっかり忘れてたけど、そこそこの数の服があったような気がする。
でも、それを皆んなに言ったら、「冬服は全然無いんだから、もっと必要」と言うことになって、今度全員を連れてノルドに買い物に来ることになってしまった。
まあ、喜んでくれるみたいだからいいんだけど。
帰りは、路地裏に入って、また認識阻害を掛けてから、外壁を飛び越えて外に出よう………としたら、警報が鳴った。
うえっ?!
ノルドって外壁を超えて侵入するような奴がいるのかよ。
認識阻害も物理的に踏んだら鳴る!みたいな装置だと阻害できないんだよ。
警報がなった事で認識阻害自体も解けてしまっていることだろう。
「あそこにいたぞ!捕らえろ!」
すぐに見つかってしまった。
外に飛び降りようとしたけど、外壁の上にも鉄条網がグルングルン巻きに付いていた。
どんだけ入ってくるのが居るんだよ。
いや、出られないようにしてるのか?
とにかく、これを抜けないと外に出られない。
ギベオンソードを出して、鉄条網を切り裂く。
「観念して大人しく捕まれ!」
外壁の上にもノルド兵士が上がって来た。
今、顔を見られるのはまずいな。
リボン剣用リボンを顔にグルグル巻いて、人相が分からないようにする。
「な、何だその格好は!?へ、変態か?」
「ち、違う!僕は変態じゃない!!」
思わず返事をしてしまった……。
「さ、さらばだ!とうっ!」
切り開いた鉄条網の隙間から、外へと飛び降りる。
「なに!この高さから飛び降りただと!?」
「怪人かっ?!」
「変態怪人だ!」
やめてよ。
せめて、怪人だけにして欲しい。
というか、怪人っていうのも何なんだよ。
ノルドでは流行ってるのか?
リン『シルヴル。出てくる時に見つかっちゃったから、少し走って逃げるよ。うまくまけたら合流しよう』
シルヴル『う、うん。大丈夫?先に奥の方に行ってるね』
上空を見ると、ゴマ粒のようにしか見えないシルヴルらしき影が東の森に向かって飛んでいくのが見えた。
シルヴルはまだ誰にも気づかれていないけど、僕が乗るところを見られたらシルヴルも危険にさらされてしまう。
出来るだけ遠くに行ってから、落ち合うのがいいだろう。
「いたぞ!あそこだ!脱走者を逃がすな!」
うえええっ!
なんだか凄い人数で追いかけて来た。
脱走者って………。
やっぱり、ノルドって、逃げ出す国民が多いの?
街の中はそんな雰囲気じゃなかったんだけどな。
とにかく、あの追っ手をまきたいけど、下手に攻撃をして、あまり怪我をさせたくないしな。
「えーっと、セラフの翼!」
バサササササッ
走りながら翼を出すと風の抵抗が凄いな。
木も邪魔で翼の端が当たって結構痛い。
「第四の翼 擬グングニル!目標は後ろから追いかけてくるノルドの人!」
手の上に現れた雷の槍を後ろに向かって放り投げる。
狙いを定めなくても当たるから、手から離れれば後は自動で目標に向かって飛んで行ってくれる。
うぎゃああ、という声がして何人かのノルド兵士が倒れる音がする。
この魔法なら致命傷にはならずにただ気絶させるだけだし、足止めになるだろう。
どうか、倒れる時に頭をぶつけたりしませんように。
「あの変態怪人は奇妙な魔法を使うぞ!」
「さすが変態だ!魔法も変態級だ!」
「さすが変態!」
「なるほど変態!」
なんだよそれは!
人の事、変態変態って、とうとう怪人要素が無くなってるし。
そりゃこの女子用のリボンを顔中に巻きつけてる格好はちょっと家族には見せられないけど、そんなに連呼しなくてもいいじゃないかよ。
追いかけて来たノルド兵士は雷の槍で皆んな気絶させた。
これで、もう追いかけて来る人はいないでしょう。
ようやく、シルヴルと合流できるよ。
今度は街からの脱出方法をよく考えておかないとだな。
ちょっとでも空に浮かんで移動できる魔法か何かを探してみようかな。
どこかあの大きな鷲が降りて来られる場所を探していると、湖のほとりに出て来てしまった。
うわああ。
キレイな湖だなあ。
左を見るとちょっと離れたところには、鹿が水を飲んでいる。
そして、反対側を見ると、人が水を飲んでいる。
え?人?
青いショートカットの女の子が、しゃがんで直接、湖の水を飲んでいた。
いやいや、手を使って飲もうよ。
それにしても、青い髪。
もしかして、エルツ族?
でも、エルツ族って蒼い髪って感じで、緑がかっているけど、この子は空の色に近い青だ。
人族にもこういう色の髪の子がいるんだろうか。
あ、そんな事を考えていたら、女の子が立ち上がってこっちに気付いたみたいだ。
近づいて声をかけてみるか。
「こんにちは」
共通語で話しかけてみる。
「………」
あれ?ダメか。
それなら、ノルド語かな?
「こんにちは」
「こ、こんにちは」
良かった、ノルド語なら通じた。
「こんな所で何してるのかな?」
「捕まえに来たの?ボクを殺しに来たの?」
おお、ボクっ娘だ。
天然で居るもんなんだ。
ちょっと待った、それよりもっと不穏な言葉が出ていたぞ。
「キミを捕まえに来たのでも、ましてや殺しに来たのでもないよ?ここで会ったのはたまたまだし、向こうに帰るところなんだから」
「向こう……。ねぇ、あなた、ノルドから来たの?ノルドの人ではないの?」
「いろいろ混乱してるのかな。僕はノルド人じゃないよ?元フォルクヴァルツ人で今は……何でもない人だね。どの国にも所属してないんだ」
「ねぇ!ボクも連れて行って!お願い!ボクを助けて!」
やっぱり、ノルドから逃げて来た人なんだろうか。
さっきも、街の警備が異様な程厳重なのも、外部から侵入されないようにしていると言うよりは、内部の人間を外に出さないようにしているように見えた。
僕を追いかけて来た兵士達も、街の人間が不正に外に出たとしても、あの人数が投入されるのはおかしいと思う。
この子も、何かの理由があって、ノルドから逃げ出して来たとみて良さそうだ。
「分かったよ。それじゃあ、僕の家まで行くけど、ちょっと遠いから移動は変わった方法になるからね」
「変わった?」
お、シルヴルが来てくれた。
さっき、チャットでこの湖の所に居ると伝えておいた。
バッサバッサと風を起こしながら、少しひらけている所に降り立つ。
「ま、魔物?!」
「ああ、あれは大丈夫だよ。僕の友人のシルヴルだ。一応あれでも神なんだよ?」
「え?友人?神?」
そりゃあ、混乱するか。
「その女子はどうしたんだい?も、もしかして、奴隷を買ってきたの?」
「待った。違うよ。ここでたまたま出会ったんだよ」
「喋った?!魔物の神様の友人が?!」
「この娘も一緒に連れて行きたいんだ。乗せて行ってくれるかな」
「それは、いいけど、連れて行くって、やっぱり買ったんじゃ………」
「奴隷?!ボク買われた?!売られる?!」
全方向に誤解されてるな。
そんなに僕は奴隷好きに見えるのか?
そりゃあ、2人も主従契約してる人が居たりすれけど、あれは仕方なくだし。
「もうその辺の話は良いから、はやく家に帰りたい。シルヴルお願いね」
「う、うん。ねぇ、ホントは買ってきたんでしょう?大人の階段登るんでしょ?」
「ボク、襲われるの?!そして、捨てられるの?!」
「もう!いいから、キミも早く乗って!置いてっちゃうよ?」
ノルドの女の子をシルヴルに乗せて、僕もその後ろに乗り、一路僕の家へと向かってもらった。
「と、飛んでる………」
「そりゃあ、鳥だから」
「凄いでしょ?気持ちいいでしょ?ほらこんな高さまで上がれるんだよ?」
「ちょっと、シルヴル。高さは良いから、方角がズレてるよ?もう少し左だよ」
「ええ?良いじゃないかよ。こんなに空が青いんだから」
「よくわからない理由だね。そうだ。僕はリーンハルト・フォルトナーって言うんだ。キミは?」
「ミーシャ。ミーシャ・ノーヴァ」
「ミーシャか。これからよろしくね」
「………」
あれ?黙っちゃった?
名前聞いたらダメだったかな。
1時間程飛んで、僕の家に着いた。
庭に降りてもらうと、僕とミーシャを降ろして、シルヴルはまた山脈の上へと帰って行った。
「修羅場に巻き込まれるのはゴメンだからね」
と言う捨てゼリフはやめて欲しかった。
そう言われて気付いたけど、これやっぱり、誰がどう見ても、「また増やした」案件だよね。
しまったな。
でも、ああ言われてあの湖に置いてきぼりにする訳にもいかないしなあ。
「た、ただいま~」
「おかえり………。フィアちゃん。やっぱり、この家にも懺悔室は必要って言うフィアちゃんの意見は正しかったわ」
「とうとう……。リーンハルトくんが自発的に奴隷を買ってきてしまいました……。服を買ってくれるなんて、おかしいと思ったんです。あれは、この為のご機嫌取りだったんですね」
「ち、違うよ!この子は帰って来る途中で会ったんだよ!奴隷でも無くて、ノルドから逃げてきたみたいなんだ。だから、増えたわけじゃ無くて、保護しただけなの!」
今回は、、、いや、今回も僕は悪くないと思うんだ。
街から逃げた者を執拗に追いかけて来る兵士達の話や、ミーシャが何かの理由があってノルドから逃げていた時に僕と偶然湖で出会って、助けを求められたから連れてきた、と言う言い訳………じゃなくて、説明をちゃんとしたら、ひとまずは皆んな落ち着いてくれた。
「事情は分かったけど、なんでこう毎度可愛い子に出会っちゃうのかって事よ。たまにはおじさんでも拾ってきなさいよ」
「嫌だよ。そんなの拾いたくないよ。あ、でも、歳上の男の神様は友達になったよ?ほら、別に毎回、かわいい女の子ばかりに出会ってるって訳じゃないでしょ?」
「神様と友達になったって………普通なら信じにくい事をさらっと言ってきますよね。私達じゃなければ、ウソつきリーンハルトくんって呼ばれますよ?」
「微妙に呼ばれてそうなあだ名を付けないでよ。自分でも変な知り合いばかりだなって思ってるんだから」
ここにいる家族も含むんだけど、と言ったら怒られるから言えない。
ミーシャはこの家の居候という事でここで暮らせる事になった。
でも、代わりに僕には色々制限が付いた。
まず、2階の左奥のレティの部屋にミーシャが加わり、僕は階段を上がって左側は立ち入り禁止となった。
それから、ミーシャがお風呂に入る時間は僕は自室待機となる。
部屋の扉の前にはアズライトが立番をして、僕が下に行かないようにするらしい。
そんなに信用がないのか……。
と思ったけど、そうではなく、それだけの事をすればミーシャが安心するという配慮だろう。多分そうだ。きっとそうに違いない。
「ご主人にその気がなくても、いつの間にか懐かれてしまうのがご主人なんだから、信用は無いわよ」
「そうですよ!これ以上は増えないよう、全力で予防させていただきます」
くっ。
前例があるし、仕方ないから。
「皆さん。ありがとう。助けてもらった上に、住まわせてもらえるなんて………」
なんだ、共通語、喋れるんじゃないか。
最初に会った時はなんだったんだか。
「いいのいいの。ご主人なら、こういう時に放っておくなんてできる訳ないんだから」
「でも、その前に、あなたに一言言っておきたいのだけど。いいかしら」
「は、はい?!」
な、なんだ?
フィアがミーシャに何を言うんだ?
2人だけで話すと言うので、庭に出て行った。
「こ、これは、『リンはわたしのなのだから、手を出さないでくれないかしら』とか言うのよ!」
「おお!先手を打っておくのですね!フィアさん、やるようになりましたね!」
「そんな感じじゃなかったと思うんだけど」
でも、何を話してるか気になる。
窓際に行って庭の会話が聴けないかな。
「リンは何してるの?」
「うえあ?!フィア、早かったね」
「この家で住む上での注意点を話しただけ」
「それで何で庭に出たの?」
「女子の話に首を突っ込むのかしら」
「い、いえ、滅相もございません………」
気になるけど、これ以上は無理か……。
後ろからミーシャも入ってくる。
ん?何か様子が変だな。
「えっと、ミーシャ?どうかしたの?」
「え?い、いえ。その、聞きたいことがあるんだけど」
「何々?僕の事?歳は10歳、あ、あともう少しで11歳になるよ」
「別にあなたの事は興味ないし」
「そ、そう………。それじゃあ何を聞きたいの?」
「あの、フィアさんって方、恋人はいるの……かな?」
な、なんの話だ?
「そ、その、ステキな方だよね?さっき話しただけで、ボク好きになっちゃったかも」
ホントになんの話だよ!
まだ、ストレージにクローゼットごとしまってあったから、すっかり忘れてたけど、そこそこの数の服があったような気がする。
でも、それを皆んなに言ったら、「冬服は全然無いんだから、もっと必要」と言うことになって、今度全員を連れてノルドに買い物に来ることになってしまった。
まあ、喜んでくれるみたいだからいいんだけど。
帰りは、路地裏に入って、また認識阻害を掛けてから、外壁を飛び越えて外に出よう………としたら、警報が鳴った。
うえっ?!
ノルドって外壁を超えて侵入するような奴がいるのかよ。
認識阻害も物理的に踏んだら鳴る!みたいな装置だと阻害できないんだよ。
警報がなった事で認識阻害自体も解けてしまっていることだろう。
「あそこにいたぞ!捕らえろ!」
すぐに見つかってしまった。
外に飛び降りようとしたけど、外壁の上にも鉄条網がグルングルン巻きに付いていた。
どんだけ入ってくるのが居るんだよ。
いや、出られないようにしてるのか?
とにかく、これを抜けないと外に出られない。
ギベオンソードを出して、鉄条網を切り裂く。
「観念して大人しく捕まれ!」
外壁の上にもノルド兵士が上がって来た。
今、顔を見られるのはまずいな。
リボン剣用リボンを顔にグルグル巻いて、人相が分からないようにする。
「な、何だその格好は!?へ、変態か?」
「ち、違う!僕は変態じゃない!!」
思わず返事をしてしまった……。
「さ、さらばだ!とうっ!」
切り開いた鉄条網の隙間から、外へと飛び降りる。
「なに!この高さから飛び降りただと!?」
「怪人かっ?!」
「変態怪人だ!」
やめてよ。
せめて、怪人だけにして欲しい。
というか、怪人っていうのも何なんだよ。
ノルドでは流行ってるのか?
リン『シルヴル。出てくる時に見つかっちゃったから、少し走って逃げるよ。うまくまけたら合流しよう』
シルヴル『う、うん。大丈夫?先に奥の方に行ってるね』
上空を見ると、ゴマ粒のようにしか見えないシルヴルらしき影が東の森に向かって飛んでいくのが見えた。
シルヴルはまだ誰にも気づかれていないけど、僕が乗るところを見られたらシルヴルも危険にさらされてしまう。
出来るだけ遠くに行ってから、落ち合うのがいいだろう。
「いたぞ!あそこだ!脱走者を逃がすな!」
うえええっ!
なんだか凄い人数で追いかけて来た。
脱走者って………。
やっぱり、ノルドって、逃げ出す国民が多いの?
街の中はそんな雰囲気じゃなかったんだけどな。
とにかく、あの追っ手をまきたいけど、下手に攻撃をして、あまり怪我をさせたくないしな。
「えーっと、セラフの翼!」
バサササササッ
走りながら翼を出すと風の抵抗が凄いな。
木も邪魔で翼の端が当たって結構痛い。
「第四の翼 擬グングニル!目標は後ろから追いかけてくるノルドの人!」
手の上に現れた雷の槍を後ろに向かって放り投げる。
狙いを定めなくても当たるから、手から離れれば後は自動で目標に向かって飛んで行ってくれる。
うぎゃああ、という声がして何人かのノルド兵士が倒れる音がする。
この魔法なら致命傷にはならずにただ気絶させるだけだし、足止めになるだろう。
どうか、倒れる時に頭をぶつけたりしませんように。
「あの変態怪人は奇妙な魔法を使うぞ!」
「さすが変態だ!魔法も変態級だ!」
「さすが変態!」
「なるほど変態!」
なんだよそれは!
人の事、変態変態って、とうとう怪人要素が無くなってるし。
そりゃこの女子用のリボンを顔中に巻きつけてる格好はちょっと家族には見せられないけど、そんなに連呼しなくてもいいじゃないかよ。
追いかけて来たノルド兵士は雷の槍で皆んな気絶させた。
これで、もう追いかけて来る人はいないでしょう。
ようやく、シルヴルと合流できるよ。
今度は街からの脱出方法をよく考えておかないとだな。
ちょっとでも空に浮かんで移動できる魔法か何かを探してみようかな。
どこかあの大きな鷲が降りて来られる場所を探していると、湖のほとりに出て来てしまった。
うわああ。
キレイな湖だなあ。
左を見るとちょっと離れたところには、鹿が水を飲んでいる。
そして、反対側を見ると、人が水を飲んでいる。
え?人?
青いショートカットの女の子が、しゃがんで直接、湖の水を飲んでいた。
いやいや、手を使って飲もうよ。
それにしても、青い髪。
もしかして、エルツ族?
でも、エルツ族って蒼い髪って感じで、緑がかっているけど、この子は空の色に近い青だ。
人族にもこういう色の髪の子がいるんだろうか。
あ、そんな事を考えていたら、女の子が立ち上がってこっちに気付いたみたいだ。
近づいて声をかけてみるか。
「こんにちは」
共通語で話しかけてみる。
「………」
あれ?ダメか。
それなら、ノルド語かな?
「こんにちは」
「こ、こんにちは」
良かった、ノルド語なら通じた。
「こんな所で何してるのかな?」
「捕まえに来たの?ボクを殺しに来たの?」
おお、ボクっ娘だ。
天然で居るもんなんだ。
ちょっと待った、それよりもっと不穏な言葉が出ていたぞ。
「キミを捕まえに来たのでも、ましてや殺しに来たのでもないよ?ここで会ったのはたまたまだし、向こうに帰るところなんだから」
「向こう……。ねぇ、あなた、ノルドから来たの?ノルドの人ではないの?」
「いろいろ混乱してるのかな。僕はノルド人じゃないよ?元フォルクヴァルツ人で今は……何でもない人だね。どの国にも所属してないんだ」
「ねぇ!ボクも連れて行って!お願い!ボクを助けて!」
やっぱり、ノルドから逃げて来た人なんだろうか。
さっきも、街の警備が異様な程厳重なのも、外部から侵入されないようにしていると言うよりは、内部の人間を外に出さないようにしているように見えた。
僕を追いかけて来た兵士達も、街の人間が不正に外に出たとしても、あの人数が投入されるのはおかしいと思う。
この子も、何かの理由があって、ノルドから逃げ出して来たとみて良さそうだ。
「分かったよ。それじゃあ、僕の家まで行くけど、ちょっと遠いから移動は変わった方法になるからね」
「変わった?」
お、シルヴルが来てくれた。
さっき、チャットでこの湖の所に居ると伝えておいた。
バッサバッサと風を起こしながら、少しひらけている所に降り立つ。
「ま、魔物?!」
「ああ、あれは大丈夫だよ。僕の友人のシルヴルだ。一応あれでも神なんだよ?」
「え?友人?神?」
そりゃあ、混乱するか。
「その女子はどうしたんだい?も、もしかして、奴隷を買ってきたの?」
「待った。違うよ。ここでたまたま出会ったんだよ」
「喋った?!魔物の神様の友人が?!」
「この娘も一緒に連れて行きたいんだ。乗せて行ってくれるかな」
「それは、いいけど、連れて行くって、やっぱり買ったんじゃ………」
「奴隷?!ボク買われた?!売られる?!」
全方向に誤解されてるな。
そんなに僕は奴隷好きに見えるのか?
そりゃあ、2人も主従契約してる人が居たりすれけど、あれは仕方なくだし。
「もうその辺の話は良いから、はやく家に帰りたい。シルヴルお願いね」
「う、うん。ねぇ、ホントは買ってきたんでしょう?大人の階段登るんでしょ?」
「ボク、襲われるの?!そして、捨てられるの?!」
「もう!いいから、キミも早く乗って!置いてっちゃうよ?」
ノルドの女の子をシルヴルに乗せて、僕もその後ろに乗り、一路僕の家へと向かってもらった。
「と、飛んでる………」
「そりゃあ、鳥だから」
「凄いでしょ?気持ちいいでしょ?ほらこんな高さまで上がれるんだよ?」
「ちょっと、シルヴル。高さは良いから、方角がズレてるよ?もう少し左だよ」
「ええ?良いじゃないかよ。こんなに空が青いんだから」
「よくわからない理由だね。そうだ。僕はリーンハルト・フォルトナーって言うんだ。キミは?」
「ミーシャ。ミーシャ・ノーヴァ」
「ミーシャか。これからよろしくね」
「………」
あれ?黙っちゃった?
名前聞いたらダメだったかな。
1時間程飛んで、僕の家に着いた。
庭に降りてもらうと、僕とミーシャを降ろして、シルヴルはまた山脈の上へと帰って行った。
「修羅場に巻き込まれるのはゴメンだからね」
と言う捨てゼリフはやめて欲しかった。
そう言われて気付いたけど、これやっぱり、誰がどう見ても、「また増やした」案件だよね。
しまったな。
でも、ああ言われてあの湖に置いてきぼりにする訳にもいかないしなあ。
「た、ただいま~」
「おかえり………。フィアちゃん。やっぱり、この家にも懺悔室は必要って言うフィアちゃんの意見は正しかったわ」
「とうとう……。リーンハルトくんが自発的に奴隷を買ってきてしまいました……。服を買ってくれるなんて、おかしいと思ったんです。あれは、この為のご機嫌取りだったんですね」
「ち、違うよ!この子は帰って来る途中で会ったんだよ!奴隷でも無くて、ノルドから逃げてきたみたいなんだ。だから、増えたわけじゃ無くて、保護しただけなの!」
今回は、、、いや、今回も僕は悪くないと思うんだ。
街から逃げた者を執拗に追いかけて来る兵士達の話や、ミーシャが何かの理由があってノルドから逃げていた時に僕と偶然湖で出会って、助けを求められたから連れてきた、と言う言い訳………じゃなくて、説明をちゃんとしたら、ひとまずは皆んな落ち着いてくれた。
「事情は分かったけど、なんでこう毎度可愛い子に出会っちゃうのかって事よ。たまにはおじさんでも拾ってきなさいよ」
「嫌だよ。そんなの拾いたくないよ。あ、でも、歳上の男の神様は友達になったよ?ほら、別に毎回、かわいい女の子ばかりに出会ってるって訳じゃないでしょ?」
「神様と友達になったって………普通なら信じにくい事をさらっと言ってきますよね。私達じゃなければ、ウソつきリーンハルトくんって呼ばれますよ?」
「微妙に呼ばれてそうなあだ名を付けないでよ。自分でも変な知り合いばかりだなって思ってるんだから」
ここにいる家族も含むんだけど、と言ったら怒られるから言えない。
ミーシャはこの家の居候という事でここで暮らせる事になった。
でも、代わりに僕には色々制限が付いた。
まず、2階の左奥のレティの部屋にミーシャが加わり、僕は階段を上がって左側は立ち入り禁止となった。
それから、ミーシャがお風呂に入る時間は僕は自室待機となる。
部屋の扉の前にはアズライトが立番をして、僕が下に行かないようにするらしい。
そんなに信用がないのか……。
と思ったけど、そうではなく、それだけの事をすればミーシャが安心するという配慮だろう。多分そうだ。きっとそうに違いない。
「ご主人にその気がなくても、いつの間にか懐かれてしまうのがご主人なんだから、信用は無いわよ」
「そうですよ!これ以上は増えないよう、全力で予防させていただきます」
くっ。
前例があるし、仕方ないから。
「皆さん。ありがとう。助けてもらった上に、住まわせてもらえるなんて………」
なんだ、共通語、喋れるんじゃないか。
最初に会った時はなんだったんだか。
「いいのいいの。ご主人なら、こういう時に放っておくなんてできる訳ないんだから」
「でも、その前に、あなたに一言言っておきたいのだけど。いいかしら」
「は、はい?!」
な、なんだ?
フィアがミーシャに何を言うんだ?
2人だけで話すと言うので、庭に出て行った。
「こ、これは、『リンはわたしのなのだから、手を出さないでくれないかしら』とか言うのよ!」
「おお!先手を打っておくのですね!フィアさん、やるようになりましたね!」
「そんな感じじゃなかったと思うんだけど」
でも、何を話してるか気になる。
窓際に行って庭の会話が聴けないかな。
「リンは何してるの?」
「うえあ?!フィア、早かったね」
「この家で住む上での注意点を話しただけ」
「それで何で庭に出たの?」
「女子の話に首を突っ込むのかしら」
「い、いえ、滅相もございません………」
気になるけど、これ以上は無理か……。
後ろからミーシャも入ってくる。
ん?何か様子が変だな。
「えっと、ミーシャ?どうかしたの?」
「え?い、いえ。その、聞きたいことがあるんだけど」
「何々?僕の事?歳は10歳、あ、あともう少しで11歳になるよ」
「別にあなたの事は興味ないし」
「そ、そう………。それじゃあ何を聞きたいの?」
「あの、フィアさんって方、恋人はいるの……かな?」
な、なんの話だ?
「そ、その、ステキな方だよね?さっき話しただけで、ボク好きになっちゃったかも」
ホントになんの話だよ!
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[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。
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