魔力無しグルコ25歳の備忘録

イイズナそまり

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第ニ話

グルコ25歳の断髪式

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【新月が全ての生命を眠らせる 黒く美しい夜だった
ロカン王国の魔塔は、深い闇に包まれていた

ひとりの聡明な賢者との惜別
ある者は嘆き、ある者は哀しみ、またある者は】

「室長、備忘録にファンタジー書くのやめてください。」

「ハイハイ」
俺はポケットからチョコレートを出して口に入れた 無詠唱で続きを書くことにした
ちなみにチョコレートは噛まずになめるのが俺流の味わい方だ
「前にも忠告しましたよね?」
まだ続くのか 
「備忘録は重要な情報を記録するものです。」
ジョッキン ゴトン バサッ

え?
顔をあげると部屋の隅にある観葉植物の横に 剪定バサミを両手で握った副室長が立っている
その足元にわりと太目の枝が切り落とされていた
ね それあとで俺が庶務課に返すやつだよ?
さっきリネン類返しに行った時 魔蟲避け臭が酷いって嘆かれたばかりなんだけど 
その試し切り必要かしら?

「ファンタジーとか。」
ジョキン バサッ
「日記とか。」
ジョキン バサッ
「買い出しメモとか。」
ジョキン バサッ
「上司の悪口とか。」
ジョキン バサッ
「書いちゃダメなんです。」
ジョキン バサッ
「まあ部下の褒め言葉は大目に見ましょう。」
ジョキン バサッ
「それと気軽に使ってる契約魔法ペン。」
ジョキン バサッ
「それだってスゴイんですよっ エイッ!」

ガッキン ガタンッ

ゴックン
チョコレート飲み込んじゃった
真ん中の太いの切っちゃったよ 枝じゃないよ幹だよ 植物の背骨だよ 本体そのものだよ

ふぅーっ「お値段、国宝級らしいじゃないですか。」
振り向いた副室長の顔はスッキリしていた
試し切りされた観葉植物もスッキリしていた
うん 俺が後で庶務課にスッキリ怒られるよ
最後の仕事は謝罪で締め括るよ

契約魔法ペンを上着の内ポケットに差し込み 備忘録をパタリと閉じ尻に敷いた
「ああ、また、そんな扱いして。」
かつて観葉植物の一部だった太目の枝を箒の代わりにして小枝を寄せ集めてる
「だいじょーぶ だいじょーぶ 形状なんちゃら魔法で煮ても焼いても澄まし顔だよ」
「煮たり焼いたりしたんですか?」
「俺じゃないよ? 
魔塔主が焚き火でこの本焼いてるとこに出くわしてさ 
ダメだ煮ても焼いてもダメだ君欲しいならあげるよ ってね」
「魔塔主がですか⋯⋯まあ、貴重な魔道具には変わりないんですから、これからは大事にお使いください。」
副室長が剪定バサミを手に俺の背後に立った
「ハイハイ」
俺は行儀よく椅子に座る 就職の面接以来の行儀良さ

〈キーンコーンカーンコーン キーンコーンカーンコーン〉

仄暗い薬品管理室に終業の鐘が鳴り響いた

どこをどう見ても剪定バサミ 髪を切る為に造られたハサミではない でも切れ味は観葉植物のお墨付き 予め切る所を麻紐で縛っておいて正解だったね
「それでは、断髪式を始めます。」
「ハイハイよろしくお願いします」


俺は 25歳の誕生日 魔塔を退職する

「切ります。」

ジョッッキンッッ

ボトッ

「切りました。」
「ハイハイありがとうございました」

尻に敷いた備忘録を回転盤にしてくるっと90度方向転換した
装丁に蜜蝋で防水加工スルスルよく滑る仕様だね
いや これもなんちゃら魔法なのか?わからん
椅子の背もたれに寄りかかり横目で床を見下ろす 自分の髪の毛が黒い沼みたいで面白い
それにしてもスゴイ量 切り口エグいなぁ ボトッて音がしたの納得したよ そんな重そうなもんが俺についてたのか
確かにすこぶる頭が軽くなった 首も肩も憑き物が取れたように軽くなった 俺もスッキリしたよ

「このペンと俺の髪の毛どっちがお高いのかな?」
「知りませんよ、魔塔主に聞いてください。」
剪定バサミを床に下ろし 肩や腕をさすってる
試し切りハシャギ過ぎちゃったね

俺の次にガリガリひょろりとした副室長は 俺と同じ魔力微量者だ 魔塔から魔道具購入補助金を貰っている

通称 魔力無し

俺たちは魔道具こそ使えるが 魔法付与の無い道具に対しては己の物理的筋力を酷使する
薬品倉庫の室長と副室長は 史上最弱の魔力無しコンビなのだ

「すいません、30分休憩します。片付けといてくださいね。」
倒れ込むように長椅子に横たわってしまった
マジかそこまで疲れたのか?
やっぱり働き過ぎか?
もしかして病気か?
「言っときますが病気じゃないですよ。」
深い呼吸をひとつすると スースーと寝息を立て始めた
目の下どころか 瞼にまでクマがある

ふと考える
コイツの断髪式は誰がするんだろうか
俺が颯爽と駆けつけてあげようか
つか コイツも退職する時 断髪式するのかな?
「ありがとうな たくさん」
おっと サッサと片付けるか 立つ鳥跡を濁さずだよ

床に広がる黒い沼の淵に鳥籠を置いた
役職持ちは退職後10年間 魔塔の監視員が張り付く
冗談じゃない 
魔塔主が俺に出した退職クエスト
この鳥籠に俺の髪の毛を満タンに詰めて魔塔主に提出すれば無条件で魔塔を退職させてもらえる 自由な暮らしが待っている

まったく何の嫌がらせだか 髪は女の命ですって俺は男だよ 退職の為ならこんな髪いくらでも切るぞ 
床にヒンヤリと寝かされた剪定バサミを拾いあげ壁に立てかけた
庭師のおじいちゃんに借りに行ったついでに 鎖骨あたりにカットポイントの上下二か所を麻紐でキツく縛って貰った 
なんなら三つ編みしてあげるよ?って言われたけど それはちょっと恥ずかしいから丁重にお断りした

そして今 
鳥籠の扉が小さい事に気付いた俺はお断りしたのを後悔している 
ブワッッサーッて床に解放された髪の毛を見て非常に後悔している
退職クエストのラスボスは鳥籠の小さい扉だったのだ
やはり俺一人でこのめんどくさいクエストは無理なのか 
副室長 眉間に深いシワを寄せ寝てる 髪の毛切って貰った上に鳥籠詰めまで手伝って貰うとかダメかな嫌かな つか副室長の疲れの原因 もしかして俺か?

「あなた、辞めるんですね。おめでとうございます。」

窓に腰掛けぼんやりと副室長が起きるのを待っていると副魔塔主が現れた
転移魔法を使える人たちっていつもパッと突然こんなふうに部屋の中に出るんだよね 部屋にはちゃんとドアがあるのに ピンポン鳴らせば狭い部屋だからすぐ開けるしお待たせしないのに まあもう慣れたけどね この部屋プライベートなんて皆無だから魔法的なバリアフリーだから

「お別れになんかください」
ダメもとでオネダリしちゃえ お金あるんでしょ?
「そうですね。」
澄ました顔して何もない空間にピンポーン って何度みても収納魔法は面白い 何故それをドアの外でやらないんですかね
〈コトッ〉
床に落ちた平たい箱
ちょっとちょっと手のひらに出すとかさ せめて受け止めなさいよ 大人でしょ?
「あ。すいません。」
「いえいえ、大丈夫です」
ギャップ燃え狙いのうっかりさんかよ
そして拾う気なさそうなんで俺が拾ったよ
平たい箱は中身も平たかった
「なんですコレ?」

銀細工の蝶々 目に赤い石がはめ込んでありかなり精巧
今 王都でこんな精巧な商品を造る銀細工職人はひとりしか知らない

「もしかしてコレは」
「髪飾りです。」
ですよね ですよね ですよね~
王妃さま御用達 髪飾りの巨匠の逸品ですよね~
「からかってます?」
「いえ、特には。」
「賢者の贈り物って、ご存知です?」
「どこの賢者ですか?」
「いえ、知らないならそれはそれで安心しました」
「何を言っているのか分かりません。」
「いえもう大丈夫です。ありがとうございます」

空き箱は丁重にお返しして髪飾りだけ上着の左ポケットに突っ込んだ
お金に困ったら売ってしまおう
「あなたが気に入らなくても、ご夫人は気にいると思います。」
また突拍子もないことを
「ご夫人って、俺、独身ですよ?」
「魔塔主にあなたは寿退職すると聞きました。ついでにキングサイズベッドも差し上げます。ご自宅に配送します。」
サラサラ[速達便・グルコ自宅行き]
管理者専用宅配伝票 魔力無しの俺は使えないやつだ
「配送しました。」
「いやいやいやいや、ちょっと待ってください!俺、結婚なんて爪の先ほどの予定も無いですよ?」
「寿退職ではない?」

「違いますよっ!」
そうそれ違いますよって副室長起きてたんだね30分経ってたんだね
我慢しきれずツッコミ入れちゃったんだね
「違うんですか?」
「違います」
うっかりさんがうなだれた そんな姿もアラステキ
副室長は両手で口を押さえ肩が揺れる揺れる 笑いすぎ
普通なら上司の会話にいきなり割り込みツッコミした時点でもう不敬罪だからね この人がうっかりさんだから許されてるんだからね
「また、魔塔主の虚言ですか⋯」
「アノ人から虚言をとったら何も残りません」
あ なんかいまフラグが立つ音がした

「ボクを呼んだ?」
悪口言えば出てくる仕様
「フラグ回収ありがとうございます」
「旗を回収した覚えはないよ?」
あらま お茶目なオトボケさん フラグ回収についてこないだ教えてあげたでしょ
「いえ、聞き流してください」
「そんなことより魔塔主、私を騙しましたね。」
「そんなことより、フラグ回収って何の話し?」
「私も知りませんよ。そんなことよりなぜ私を騙すのか教えてください。」
「そんなことより魔塔主、鳥籠の扉、魔法で広げてくださいよ」
これは割り込みではない 多分
〈ぶはーっっ あっひゃひゃひゃ〉
あーー副室長ついに笑いのツボがK点越えしちゃったよ 大丈夫かね
〈ヒー ヒー ヒー 〉
「副室長は病気なのですか?」
「えー知らないの?あれはね笑い上戸っていうんだよ。ねグルコ」

〈カハッ カハッ    カハッ〉

「なるほど、笑い上戸という病気があるんですね。私にも詳しく教えてくださいグルコ。」
「フラグ回収も教えてよグルコ」
グルコグルコうるさいなぁもう
俺はうっかりさんとオトボケさんを無視して
既に過呼吸を起こしている副室長の手当てをする
「いいか、口閉じて、鼻で吸う、口で吐く、ゆっくり、鼻で吸って~、すぅ~~~、背中のチカラぬいてごらん、口で吐いて~、ふうぅ~~~、そうできてるよ、だいじょーぶ、肩のチカラぬいてごらん、だいじょーぶ、ほら、ね?」

苦しかったね 

過呼吸の主たる原因は過度のストレスと聞いたことがある 笑い上戸はあくまでトリガーだったと思う
俺は背中と心臓の辺りを挟むように添えた手を離した 副室長の身体は薄かった 俺と同じだ
こんなガリガリひょろりな二人が管理職だなんて
過労死しろと強制労働に就かせるようなもんだよな
「病気は治ったんでしょうか?」
「みたいだね」

俺達は魔力無しだけどアンタ達の奴隷じゃない

副室長を長椅子に横たわらせ机に向かった
引き出しに黒い紙が一枚だけ入っている
机上に置く
「お二人とも、5分黙ってお待ちください」
「あ。あの紙から魔塔主の魔力が⋯」
「シッ、黙って見てて」
内ポケットから契約魔法ペンを取り出し黒い紙にペン先を走らせる 書いてる俺にも文字は見えない
インクを足さずにスラスラと最後まで滑らかに書ける
ペン先を小指の第一関節の腹に刺す チクッ 
顔が歪む 浅く刺したつもりが骨まで響く痛みだった

指先から黒い紙へ ポタリと血を落とす

瞬間、黒い紙が閃光、おさまると、白い紙になっている、黒い文字が現れた 俺の字だ

「魔塔主、コレ面白い魔法です。
記入者の血液を媒介にして色素が白黒反転する魔法ですね」

「ご明答」
魔塔主が俺の横に立ち白い紙を手にした
その内容を読むとニヤリと笑った
「困ったら使えと言われたので、今使いました」
「なるほどね」
紙の上中央を両手で持ち 腕を伸ばし掲げ ビリッと縦にふたつに割いた

瞬間、白い紙が閃光、おさまると、黒い紙になっている、俺の書いた文字はまた見えなくなった
「ボクからの餞別だよ」
割いてふたつになった黒い紙の半分を俺に手渡す 思わず受けとっちゃったけど
「庶務課にゴミ箱返しちゃったので、お返しします」
「ゴミじゃないよ」
えー思い出の紙くずとか要らないんだけど
「グルコ、10年後、またボクと会おうね」
それはできない口約束だね

魔塔主がもう半分をクシャッと丸め右ポケットに入れた
おや思い出の紙くずそんな扱いで良いのか だったら
俺も真似してクシャッと丸めて右ポケットに入れた

「魔塔主、お話し失礼します。もしかして、割かれた紙を合わせると元の一枚の紙に戻るのではないですか?」
「ご明答」
「やはり、そうでしたか。ふたつに割かれても一向に魔力が減っていませんので。」
「さすが副魔塔主だね」
えっそうなの?思い出の紙くずは単なる紙くずじゃないの?
副室長がジーッと俺の右ポケットを見つめてる あげないよ?お金に困ったらどっかの物好きな研究機関にお高く売りつけるんだから

「白黒反転の発想といい、なんて精巧な魔法なのでしょう。」
「スゴイでしょ~」
「はい。すばらしい新魔法です。」
俺が室長になったとき 人事に困ったら使ってねって何の説明も無くポイッて机に投げたよね

「グルコがいるから成功したんだよ」

ん?この新魔法のキーパーソンは俺?魔力無しが関与してるってどういう事だ?
おっと大事なこと忘れちゃいけない 思い出の紙くずの入った右ポケットをペンペンと叩く
魔塔主が振り向いた 俺と目が合う 上着を開いて内ポケットの契約魔法ペンをチラつかせた
「あ、そうだった。副室長、大事なことを言うね」
「は、はいっ。」
副室長が長椅子の前にピシッと立ち上がる
ドーン「ズバリ!君、今日でクビね!」
人を指差すなって
「クビ?ですか?」
「そう。クビ。で、来月から地元の商業ギルド、そこの薬品管理部の部長に天下りしちゃいな」
「あ、あ、あ、天下り?ですか?」
「ボクね、あのギルドの太客だから、人事関与なんて朝飯前のチョチョイのチョイなんだ」
あのね 魔塔主はクビとか天下りとか言ってるけど実質これは大栄転だよ 副室長わかってるかな
「そんな⋯⋯急⋯ですね⋯」
急じゃない
俺が退職して室長に昇格するのホントは嫌なの伝わってた
前に凄い酔っぱらって 魔塔辞めて地元に帰りたいって泣いてたよね

「ちなみにさっきグルコが契約魔法ペンで書いちゃったから抗えないよ」
「先ほど室長が黒い紙に書いていたのは、私の人事異動だったのですか?」
「うん。そう。グルコの権限で発令されたよ」
抗えないってこのペンそんなに凄いの?飽きたからもう要らないって机にポイッて投げたよね

「そしてっ なによりもっ このボクのっ 人事魔法っ 何人たりとも抗えないっ!」

全身真っ黒なのに堂々とキラキラ光ってるよ 言ってることパワハラなのに パワハラ人事魔法なのに
ああ 副室長が片膝着いて俺に向かってお祈り始めちゃったよ 泣いてる?泣いてるの?嬉し泣きしてるの?

「魔塔主、お話し失礼します。先ほどから気になって仕方ないのですが、部屋の隅に山積みされた大量の黒い髪の毛は何ですか?」
俺の髪の毛です
退職クエストの為に切り落とした かつての俺の身体の一部です 
「副魔塔主は何だと思う?」
いや だから俺の髪の毛ですってば
上司の会話に割り込めなくてイライラするわ
「そちらの新魔法の黒い紙と同じ波長を感じるんですが、私の気のせいでしょうか?」
波長ってなんだ?魔力無しだよ?

「これだね」
魔塔主が右のポケットからクシャッと丸めた思い出の紙くずを出し副魔塔主に手渡した
「ああ、そうです。そうです。この感じです。」
手のひらに乗せたまま 床に膝を着き 黒い髪の毛にそっと手を触れた
すると 聞き取れないほどの小さい声でゴニョゴニョ呟き出した
ジューゲムジュゲム ゴコーノスリキレ⋯⋯
初めて聞く発音 リズム どこの国の言葉だろう
目を凝らすと黒い髪の毛がぼんやり黄色い光を纏っている
蠢いてるようにも見えてきた 黒い蛇の集まり? 

「あれが副魔塔主の詠唱だよ」
「詠唱っ!?」
かつての俺の身体の一部で何やってんのさ!
キモイからやめて ゾワゾワしてきた ゾワキモだよ 髪の毛蛇にする魔法とかやめてよ ダレトクだよ
「ウェッ」
ちょっとちょっとまさかそれ俺を呪い殺す儀式とか!?
やめてくれーーーーーーーーー!

俺の悲痛な心の叫びが届いたのか 副魔塔主は儀式を止め スクッと立ち上がった

「魔塔主、私、わかりました。」何がわかったのっ!?
「何だった?」何だったのっ!?
「媒体です。」媒体って何っ!?
「ご明答」何がっ!?
もおーー我慢ならんっっ不敬罪なんてどーでもいいっ

涙目「いったい俺の髪の毛が何なのさっっ!」

俺の割り込みに魔塔主がビックリしてる
副魔塔主がシレッと澄ました顔で答えた


「この黒い紙の原料に、この黒い髪の毛が使われています。」


落雷。


「ボク、さっき言ったでしょ?
グルコがいるから成功したんだよって」
「お手柄ですねグルコ。」
「この魔法の研究、最高機密だからさ
グルコの抜け毛を集めるの大変だったよ!」


落雷2発目。


「なるほど、魔力無しの髪の毛は、術者の魔力属性に干渉しないので、媒体に使いやすいんですね。」
「ご明答。副魔塔主は理解が速い」
「この落ちてる黒い髪の毛は、一旦、私の収納魔法にお預かり致しましょうか。」
「うん、そうして」


落雷3発目。
退職クエスト 本人一切何もせず完了


俺への祈りをとうにやめて 青ざめた顔で身震いしながら 二人の会話を聞いていた副室長が恐る恐る手を挙げた
「あの⋯魔塔主⋯お話し失礼致します⋯
まさかとは思うのですが⋯10年後またボクと会おうね、と仰ったのは、ようするに⋯⋯」
「うん。髪の毛切りに来てねって事だね」
「先程、10年分を確保したんですね。」
「そそ」

「だれが来るかっ!俺は山奥で面白い事に囲まれてのんびり暮らすんだっ!」
思い出の紙くずを床に叩き付けた

「ああ。それでしたら魔塔主、私がグルコの所へ伺います。先ほどの鑑定で追跡魔法を使い記録に残りましたから、地の果てまで追跡できます。」
「うん、ならそうして」
「グルコ、それまで髪の毛は切らずにお待ちくださいね。」


落雷4発目。
なんの挨拶も無しに二人は消えた



「あの⋯室長⋯⋯お世話になりました⋯⋯」


それ
お気の毒さまでしたにしか聞こえないからね





~グルコ25歳の断髪式 完~
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