24 / 24
第二十三話
グルコとシルクロード・後編
しおりを挟む《我ら八岐の大蛇!ブンブンブブブン!夜露視操~!》
時代遅れの防具を身に着けた にわか冒険者が二人並ぶ
「ギルマス、カッコ悪さが懐かしいです。」
商業ギルド窓口 受付職員達が固まった
「ふざけないで真面目にやってください。」
〈ゴツッ〉
「痛くなぁーい」
「ヘルメット魔法ね?」
「ご明答!」
〈バチン〉
「ギャッ」
「わあー。デコピン攻撃久しぶりに見ました。懐かしいです。」
ガハハハ「懐かしいよなぁ~」
「忙しいのに変なの連れて来てごめんね。地下5階に入るから、承認魔法をお願いするわ」
「地下倉庫から戻ったんですよね?」
「今から行くのよ?」
《ザワザワザワザワ》
「皆んな何?どーしたの?」
「30分程前、ギルマスは地下倉庫に行きました。」
「何を言ってるの?その頃は冒険者ギルドにいたわ。」
「うちに居ましたよ。」
《ザワザワザワザワ》
「ギルマスの承認魔法陣です。」
カウンターに出された書類
「ダンゴムシの絵ですね。」
《 ! 》
「チマリ代表が来たのね。」
「す、す、すいませんっ」
「気にしないで。あの人の隠蔽魔法は私でも騙されます。」
「すいませんっ」
「地下4階も封鎖して、誰も近付けないでね。」
《はいっ!》
商業ギルドの地下への階段は使う人がいない為手入れが全くされていない
壁にある灯りは魔法の期限がとっくに切れて真っ暗
元八岐の大蛇一行はランタンを手にソロリソロリと湿った階段を下る
「ギルマス、嫌な予感しかしません。」
「オレもだ」
「チョロい蜘蛛退治だから引き受けたのに、何でチマリ代表が来てるんですか?」
「私に聞かれても。」
階を下るにつれて空気孔の送風音が静かになっていく
ヒンヤリとした静寂の世界 まるで洞窟探検をしている様だ
「おい、地下5階に出るぞ。魔力を抑えて静かに進め」
コソリ「やっと着いたわ。」
コソリ「足が疲れました。」
3人が廊下に足を置いた瞬間
〈ドッカーーーーーン〉
〈グラグラ⋯〉
〈パラパラ⋯〉
廊下の先 倉庫の鉄扉がひしゃげ膨らんだ
騒ぐ事なく四つん這いになり辺りを警戒する
元A級冒険者パーティはこんな時 地面から情報を得る
3人が顔を見合わせ頷いた
ほふく全身で廊下を進む
〈ドッカーーーーン〉
〈ゴトンッ〉
〈ブワーーーッ〉
鉄扉が廊下に吹き飛び倉庫から土埃が湧き出す
口元を袖ぐりで抑える 今は警戒態勢 魔法は使わない
3人は顔を合わせ頷いた
「落とし物?」
《ヒイイイイィィィーーーーーーーーー》
「おやおや。」
「何落としたの?手伝うよ?」
天井スレスレの大きい山神蜘蛛
暗闇に光り輝く真っ白でもふもふの蜘蛛の目はルビーの様に美しい
蜘蛛の顔の下に少女
「チッチッチッチマリ代表?」
「マジかよ」
「落とし物じゃないです。」
詠唱「空気清浄機」
〈ブオオオオオオーーーー〉
土埃が魔法陣に吸引される
〈ブオオオォォォォーーー〉
「山神蜘蛛の討伐に来ました。」
「ふーん」
「私は討伐されるんですか?」
《 !? 》
「みたいだね」
「何故ですか?」
「知らない」
のそりのそりと近付いてくる
「何故ですか?」
「それは、あなたが厄災だからです。」
コソリ「サブマス強えー。しゃべる蜘蛛とかマジ無理」
コソリ「現役時代より頼もしいです。」
「そうですか。それでは、私が良い行いをしたらどうしますか?」
「変わりません。人族や家畜を食べたら害獣です。討伐します。」
「私は何を食べたら良いですか?」
「自然の生き物や、人族に与えられた餌です。」
「そうですか」
「それが出来たら討伐しません。」
「わかりました。私は人族や家畜を食べません。討伐しないでください」
「わかりました。私達は討伐しません。」
「他の人族は私を討伐しますか?」
「わかりません。」
「うち来る?そしたら討伐されないよ?」
「何故ですか?」
「ワタシが強いから」
「それは賛成ですね。チマリ代表の南の森にはデカイ生き物が沢山います。」
「南の森は暑いです」
「その毛皮刈れば?」
「刈ってください」
「うん。あ、ここで刈ると寒いから南の森に帰ったらね」
「はい。わかりました」
〈ギャアーーーーーーーーー〉
「わあ」
階段下にギルド職員
「ギ、ギ、ギルマス!町長から緊急要請が入りました!」
床に書類を置いて階段を逃げ上がって行った
「大きな声です。驚きました」
「あなたに驚いたんです。」
「何故ですか?」
「大きな厄災だと思ったからです。」
「そうですか。悪くなくても厄災ですか」
「そうですね。小さくなれますか?」
「満腹なので出来ません」
「他の蜘蛛と卵を全部食べたからね~」
ハッ「そうよ!30匹仕入れたのよ!」
「阿呆か⋯」
「2匹は私とアスリートが討伐したわ!」
「では、27匹共食いしたんですね。倒すの大変でしたね。」
「はい。大変でした」
「ワタシも倒すの手伝ったの」
うふふ「チマリ強かった。ありがとう」
「共食いの習性があったんだな」
「蠱毒みたいな環境なら仕方ありません。」
《こどく?》
「忘れてください。」
「あなた、蠱毒を知っています。何故ですか?」
「祖母から秘密の昔話しを聞きました。詳しくは知りません。」
「蠱毒は秘密ですか?」
「大切な秘密です。」
「そうですか」
「あの、皆さん。悪い知らせです。」
東の森 商業ギルド所有の養蚕場
建物周辺に張られたパンデミック防衛線は強固な球体結界
地上には半球体 半透明な黄緑色の壁が顔を出している
中心街を丸呑みする程の大きな結界の中は荒野と化していた
「コドク」
「うん。まるで蠱毒だね」
「あれが最後の一匹ですね。胸騒ぎはこれだったのか」
荒野の真ん中
はち切れそうな腹を空に向け寝転ぶ巨大なシロアリ
「やっぱり気味が悪い」
「人為的に亜種を作ったせいですね。魔力が歪です」
「カミサマ」
「そうだね。神さまのお仕事だよね」
「ワルイヤツ」
「うん」
「博士、応援を呼びます。ここから一旦出ます」
町の外れのナナフシ薬局/我が家
「ばっちゃん、沢山作って来たよ」
「おう」
〈ガシャン〉
背負いカゴに放り込まれたお高い上級ポーションの山
「皆さん、配りますねー」
〈ガチャガチャガチャ〉
「洞窟風古民家BARナナフシ薬局。只今より上級ポーション飲み放題でーす」
《待ってましたー》
「グルコ、頭の虫」
「うん。気にしないで」
「わかった」
素直
「そーいえば、妹さん一人にしてもう大丈夫なの?」
「アムチに来てもらった」
「そっか」
まだ心配な状況なんだな
「グルコも飲む?」
「飲まない。この通り俺には影響ゼロなんだ」
「一番弱いグルコが今日は一番強いね」
「だね」
薬局の庭 楢の木にとりもちが2ヶ所ベッタリくっついている
支えていた蛹の殻は羽化した本人が平らげた
最初の栄養は全て殻に含まれているそうだ
厩舎の馬用水桶から延々と湧き出るミネラルウォーターをガブガブ飲みながら パリパリと殻を食べる姿がまだ目に焼き付いている
ボリルとシルンさんは風魔法で殻を剥がす手伝いを楽しんでいた
二人のはしゃぎ声は皆んなにも聞こえてる
〈コンコン〉
振り向くと黒い引き戸がソーッと開く 拳ひとつ分の隙間
「グルコ君、どんなだ?」
「まだ食事中です」
「そーか」
「ダメだ。眩しくて頭が痛い」
「隠蔽魔法の一種だな」
「この強い光源の維持、神業ですね。」
「山神さまの恩恵があるのかもな」
「カウンターで待ちましょ」
「グルコさん、地べた、腰痛いでしょ。使ってください。」
引き戸の隙間から愛用の腰痛クッション
「マクさん、ありがとうございます」
『ふぅ~美味しかった~』
「完食~」
「かんしょく~」
ふぅ~「疲れたぁ~」
「疲れたぁ」
『ありがとう~ごちそうさまぁ~』
〈シュルシュルシュルシュル〉
デカイ体が手のひらサイズに縮む
白い光がおさまった
《終わった!?》
ドタドタドタドタドタドタ
〈ガンッ〉
引き戸が凄い音を立てて開け放たれた
「蛹の殻、無くなってます!」
「全部喰ったのか」
「蝶はどこだ?」
「あれかしら?」
木の根元 水桶の縁に白い虫がとまっている
「なんじゃアリャ?」
「小さい蝶?」
「あれが普通サイズです。」
「魔法で縮んだんだ」
〈パタパタパタパタパタパタパタ〉
《こっち来た!》
〈パタパタ〉
ピタ
「お」
頭のてっぺんにとまった
《えぇーーーーーーーーー》
「なんでグルコに?」
「他にも頭はいっぱいあるのに!」
「ズルいです。」
「羨ましいです。」
「シン坊、臭うか?」
店長が頭のてっぺんをシンさんに差し出す
クンクン「いや。私は?」
クンクン「いや」
「わたしは?」
クンクン「バラの香り。私は?」
クンクン「葡萄かな?」
「私は?」
頭のてっぺんを嗅ぎ合う変態集団
『あなたの波長、面白いわ』
頭の上から聞こえた
「魔力無しです」
『弱いけど魔力はあるわ』
「それは良かった」
『ここはまだ冬なのかしら?』
「寒いですか?」
『そうね。暖房魔法を使ってるわ』
それで頭がぽかぽかするのか のぼせそうだ
「しゃべってるのか?」
「そのようですね。」
「魔力無しがどうとか」
「ことごとく羨ましいわ」
「きっと魔力無しの臭いが好きなんですよ。」
「ああ、なるほど」
テコテコ「グルコもおしゃべり?」
トコトコ「おしゃべり?」
「うん。聞こえるようになったよ」
うふふ「良かったね」
うふふ「良かったね」
うふふ『なんて可愛らしい子供達でしょう』
「おう、もう1本よこしな!」
なんて小憎たらしい子供でしょう
「ばっちゃん、5本目だよ?」
「アンタのポーションはいくら飲んでも副作用が無い」グビグビ
「そーね。胸焼けしないわ」グビグビ
「消化吸収が早いです。」グビグビ
「胃に優しいです。」グビグビ
「領主の奢りだ。どんどん飲め飲め」グビグビ
フンッ「魔力が戻ったらサッサとシロアリ駆除してこい」
《領主も行くんだよ!》
「空き瓶回収しまーす」
「グルコ君、ボリルたんは?」
「まだ寝てますよ。疲れたみたいですね」
あの後二人はフラフラになって寝てしまった
「ボリルはポーション飲まないのか?」
「んー。欲しがらないから分かりません」
「馬用のは試したか?」
「シンさんは馬に飲ませてるんですか?」
「うちのは普通に飲むぞ。ボリルも馬用なら飲むかもな」
「話しが拗れるからやめてください。マジ泣きしちゃいます」
「そーかそーか」
《ごちそうさまでした!》
「ヨッシャ~!魔力満タンだ!ドロイありがとよ!」
『ワタシも行く』
え?
『ワタシもシロアリ討伐行く』
「いや、この人達かなり強いから大丈夫ですよ?」
『足りないと思うわ』
「え?そうなの?」
「なんだって?」
「あ、この子が討伐に行くって言ってます」
「どーする?連れて行ってあげるか?」
「いーんじゃない?ワルイ虫、一緒にやっつけましょ」
『うん!ワルイ虫やっつけたい!』
「それじゃあ、お願いしますね。ハイどーぞ」
頭のてっぺんをシンさんに向ける
「グルコ君も行くだろ?」
「何ですって?」
「アンタは通訳だ」
「嫌です」
〈ペンッ〉
「尻か」
「お蚕さまを叩けるかバカタレ」
〈ペンッ〉
「蚕に変身したトクダイアゲハ蝶かもしれませんよ?」
『ワタシはシルククィーンよ。アゲハじゃないわ』
「シルククィーン?」
《シルククィーン!?》
「絹の女王?」
〈ペンッ〉
「古代シルクロードを作ったお蚕さまだ!」
『それは先祖』
「それは先祖だそうです」
《子孫!》
「何代目だい?」
『わからないわ』
「わからないわ」
通訳めんどくさいかも
「店長、何かいい感じの魔法で皆んなにも声が聞こえる様にしてくださいよ?」
「ああ、そーか魔力戻ってた」
「うっかりさんハイどーぞ」
しゃがんで頭のてっぺんを向ける
店長が手をかざした
ゴニョゴニョゴニョゴニョゴニョゴニョ
白く仄めいた
「これでよし。しゃべってごらん」
「皆さんお元気ですか~?」
《おおおおおお~~~~~~》
《パチパチパチパチパチパチ》
「名前、名前が必要だわ」
「お蚕さまじゃ可哀想ですよね。」
「キヌヨ」
「シルキー」
「キヌコ」
「クィーン」
「とりもち」
〈ペンッ〉
だよね
「ご本人の希望はありますか?」
「んーそうねぇ。前はティオキアだったから似たのが良いわね。ティオ。オキア。アキオ。そうね、アキオがいいわ」
《シーーーーーーーーーーーーン》
コソリ「魔塔主のご近所さんの男児の名前です」
コソリ「どうするのよ」
コソリ「本人が決めたからな」
コソリ「女の子ですよね?」
「ワタシに性別はないわ」
あら地獄耳
「それじゃあ、アキオさんに決定ですね」
「そーだな」
「アキオさん、お気を付けて行ってらっしゃい」
「は~い」
〈パタパタパタパタパタ〉
ソワソワと頭のてっぺんを差し出す面々の珍百景
〈パタパタ〉
ピタ
「お」
「えー何でドロイーー」
「この子の魔力、爽やかで好きよ」
「えーーーーー」
うふふ「ドロイ、よろしくね」
うふふ「アキオ、よろしくね」
うふふ「ファンタジー」
〈ペンッ〉
「すかさず頭」
ケッ「ニヤニヤだらしない」
「俺に八つ当たりですか?」
〈ペンッペンッペンッペンッ〉
滞空時間長いわ 魔力の無駄使いだね
「シロアリ、強いそうなので、頑張ってくださいね」
「ああ」
厳しい顔
冒険者ギルド5階 大会議室
「初めまして。アキオです」
「初めまして。名前はまだありません」
《シーーーーーーーーーーーーン》
巨大なお蚕さまと巨大な山神蜘蛛さまの初顔合わせ
捕食する虫と捕食される虫 なんだかなぁ
「ねえ、名前が無いと現場で困るわよ」
「それもそーだな」
「よし、皆んなで考えよう」
「本人に決めさせな」
「それもそうね」
「何かご希望がありますか?」
「ミンクにします」
「即答」
《シーーーーーーーーーーーーン》
コソリ「ミンクは黒い獣だよな?」
コソリ「ですね。」
コソリ「他にもいるのかしら?」
コソリ「いるかもですね。」
「えーと、では、ミンクさん。共に戦いましょう」
「はい。共に戦いましょう」
《パチパチパチパチパチパチ》
「モルヒさんの名前は東さんが付けたんですか?」
「グルコさん、結局来たんですね。」
「歴史的瞬間に立ち会いに来ました」
ボリルとシルンさんが虫を見たがったから仕方なくだけどね
「単なる野次馬ですね。」
「グルコ馬なの?」
「ボリルさん。戦闘はしないけど見に来るだけの人を例えて言ってるんですよ。」
「ふーん」
「しゅごい。白い。デカイ。2匹。しゅごい」
「町長さん、蟻をくっつけた子、誰の子供さんですか?」
元魔塔主と似ている バグり方も似ている
「帝都の自然科学研究所からお見えの昆虫博士ですよ」
帝都
「博士さんでしたか」
「こう見えて博士の昆虫論文は大陸一だそうです」
「へえー」
新種シロアリの案件に帝都が食い込んできてるのか かなりキナ臭い
「クロウマ」
おおー 蟻がしゃべった 硬い口 噛まれたら痛そ
「うん。ラッシーと同じ黒だね」
馬 蚕 蜘蛛
しゃべる生き物シリーズに蟻も加わった
「ボリルだよ。よろしくねラッシー」
モゾモゾ
「くすぐったいよラッシー」
モゾモゾ
「どうしたんです?」
「初めて黒い獣に会ったから恥ずかしいのかも」
「ノリタイ」
「ボリルに乗りたいの?」
マジか 馬に乗りたがる蟻とか
「ふーん。乗っていいよ?」
「イイノ?」
「うん」
「ヤッタ!」
ピョ~~ンッ
「ヴッ」
「町長さん?」
ボソボソ「腹⋯足⋯腹⋯足⋯」
ツンツン
脇腹を副町長さんにつつかれた
コソリ「足の多い生き物が苦手なんです。特に虫の腹。」
コソリ「ああ。見えちゃったんですね」
コソリ「ほら、うなじ」
うわぁー 寒イボすげぇ 俺まで鳥肌たったよ
コソリ「昆虫バトル、大丈夫ですかね」
コソリ「それは慣れですね。対虫戦では焦点を合わせないそうです。」
急所の攻撃ムリでしょ
コソリ「それはまた原始的ですね」
コソリ「基本、昔々の人間ですから」
〈ゴホンッ〉
あ 地獄耳
「それでは。対シロアリ戦の作戦会議を始めます」
「はい!」
蚕が挙手しちゃった
「えーと、アキオさん、どうぞ」
ほんとだ焦点合ってない 遠くの山を見てるみたいだ
「まずワタシが行きます」
「はい」
わあ~ 蜘蛛の挙手 足の付け根ヤバいな
「ミンクさんどうぞ」
ああ もうコレ天井見てるね
「次に私が行きます」
「ハイ!」
蟻は胸に引っ付いたまま セーフだな
「ラッシーと私が行きます」
「はい!ボリルも行きます!」
え?
「はい!ワタシも行きます!」
何で
「はい!ワタシ!」
ちょっと
「えーーーーと」
まだ何も始まっていないのに虫と子供が名乗り出ちゃったよ
ハッハッハッ「作戦なんか役に立たないよ」
フンッ「そーだな」
「博士、シロアリはしゃべるのかい?」
「さあ?」
「町長、情報が無いなら現場で試行錯誤しよう。賛成は挙手」
《サッ》
皆んな挙げた 俺も挙げとこ 参戦しないけど
「元八岐の大蛇がこれだけ揃ってる。何とかなるさ」
「まあ、それもそうですね。現場、行っちゃいましょう」
東の森 商業ギルド所有の養蚕場
パンデミック防衛線の中は見渡す限りの荒野だった
「巨大なシロアリ、居ませんね」
「肉眼でも巨大に見える大きさでした」
「魔力は感じます」
「居る。気味が悪い」
「フタツ」
「うん。ひとつはシロアリ。もうひとつは⋯」
〈ポンッ〉
ストンッ
「遅かったね」
「お兄さん」
やっぱり兄弟か
「元魔塔主。ここで何をしてるんだ?」
シンさん 全身が白い塊だ 赤い目
「この子を助けに来た」
博士のラッシーと同じ大きさのシロアリ
羽根がブルブルと震えてる
ギュッと抱きしめる
『ソレは遺伝子組換えで作られた亜種だな?』
《遺伝子組換え!?》
「お前がやったのか?」
店長の髪の毛が真っ白になった
風もないのに乱れ動く
「ボクじゃない」
「お前がやったのか?」
「違う」
「お前が」
「店長っ!」
目が赤い
「嫌いな奴の声は聞こえない魔法!解除して!」
細い手首を掴む
〈チッ〉
ゴニョゴニョゴニョゴニョ
小さい耳が白く仄めく
「お前がやったのか?」
「違う!」
昆虫博士に詰め寄る
「お前がやったのか?」
「な、な、なんのこと」
「お前がやったのか!?」
〈ペンッ〉
「ギャッ」
「店長!よその子叩いちゃダメです!」
博士を抱き庇う
〈ペンッ〉
「イテッ!スリッパが硬い!」
「お前がやったのか!?」
〈ペンッ〉
「イテッ!」
ポソ「ち、ちがう⋯」
ガタガタと震えてる
「店長!この子はやってません!」
「やめなさいっ!」
東さんが店長を後ろから抱き上げた
「クッ!」
顔が歪む 白い魔力が絡みつく
「堪えなさいっ!」
「私はどうしますか?」
乱れ動く白い髪の毛 頭のてっぺんに白い蜘蛛
「ミンクさんっ!?」
「私はどうしますか?」
「あなたも堪えてっ!」
「わかりました」
〈プシューーーーーーーー〉
髪の毛から白い魔力が霧散する
〈ドスッ〉
領主さんがシンさんの腹に拳をぶち込んだ
クッ「ジジイ!堪えろっ!」
〈ドスッ〉
「作った奴はここに居ない!」
〈ドスッ〉
パンデミック防衛線にドス黒いミミズ腫れが浮き出ては消える
「早く鎮めて!補修魔法が保たない!」
町長さんが地面に手をつき叫ぶ
ギルマス達が町長さんの背中に手を当て白い魔力を流している
「領主っ!頭よ!」
人の形の真っ白な塊 頭のてっぺんに小さな白い羽根が生えている
ハッ「アキオッ!ジジイから離れろっ!」
「あら、シロアリは殺さなくていいの?」
「今じゃないっ!」
「そう。わかったわ」
〈ピョン〉
領主さんの頭に飛び移った
「ジジイッ!」
〈プシューーーーーーーーーーーー〉
白い魔力が霧散
白い塊から浮き出るようにシンさんが現れる
〈プシューーーーーーーーーーーー〉
「しっかりしろっ!」
胸ぐらを掴む
〈プシューーーーーーーーーーーー〉
『皆んな外に出ろ』
領主さんの手を軽く振り払う
「ジジイ⋯」
ギラギラとした赤い眼球
『この土地を焼却する』
「わ、わかった」
「このまま転移します!集まってください!」
町長さんの首筋にドス黒い血管が浮き出ている
「壁が硬い!チカラを合わせて!」
「皆んな集まって!」
「早く!」
『お前もソレを連れて出ろ』
「ゎゎゎゎ」
元魔塔主が足元を掬うように浮かされた
「シンさん!こっち!」
「お兄さん!」
〈ポスッ〉
受け止めた 凄く軽い 風魔法か?
「⋯グルコォ⋯」
ガタガタと震えている 血の気のない顔 唇まで白い
「泣かないで。もう大丈夫」
「⋯グルコォ⋯」
元魔塔主に抱きしめられたシロアリの羽根は小さく萎んでいる
「早くして!ヤバい!」
地面にしゃがんだ町長さんを取り囲み
全員が体を寄せ合い一塊になる
「皆んな行くわよ!せーのっ!」
《パッチン》
壁の外に転移した瞬間
パンデミック防衛線が茶色く濁った
「初代の豪火だ」
《豪火!》
「皆さん、ここから離れましょう。嫌な胸騒ぎがします」
「そうですね。」
町長さんもマクさんも厳しい顔
「魔塔が感知したわ」
諜報員が派遣されたのか
ギョッ「もう一度集まってください!」
「おい、冒険者ギルドはダメだ」
「近いけどわたしの屋敷もダメ」
《え?》
「元魔塔主、監視員を振り切ってここに来ただろ?」
「オチビ君、一人で来ちゃったのね?」
「⋯うん」
あちゃー 重犯罪だよ
「何てことを⋯」
町長さんから血の気がひいた
〈チッ〉
「バカなのか?」
「信じられません。」
「ありえません。」
「公的機関は無理です」
「しかも得体の知れない虫を持ってます。ヤバ過ぎます。」
「初代が殺さなかったから守るけどよ」
シロアリをギュッと抱きしめる ガタガタ震えてる
ドロイに抱かれた昆虫博士もガタガタ震えている
「出かけるときは監視員を同行しなくちゃダメよ?もしも行き先が国外だったら体が千切れて死ぬのよ?」
頭を撫でる 優しい声 死の警告
「⋯うん⋯」
大きな瞳から涙がポロポロポロポロ
参ったなぁ
「どこか匿う所はないかしら?」
ズイと迫る
「強い魔力持ちを隠蔽できる所だな」
ギルマスと目が合った
「最強の結界がある所はないかしら?」
更にズズイと
もぉー
「だったら、うちに行きましょう!」
だって他に行くとこないもんね
「店長、お願いしますね」
〈チッ〉
ニヤリ「よし。そうしよう」
「そうね。薬局に行きましょう」
〈チッ〉
町の外れのナナフシ薬局/我が家
普段は全く使うことのない広い空間
天井は2階建て吹き抜けくらいの高さがある
デカイ虫達に合わせてここを待機部屋にした
大きなテーブル 座り心地サイコーの椅子 寛ぎスペース キッチンスペース
「機織り機?」
「気にしないでください」
内職しようと中古品を買ったがめんどくさくて放置
「へぇ~、こんな部屋があったのね」
「この家、崖続きで奥の方にもまだまだ部屋があるそうです」
「ここ、薄っすらと溝がある。扉かな」
ドロイがググッと体重をかけて押す
「動かない」
「やめときな。開かずの扉魔法だ」
「壁から魔力を感じませんが?」
「西の隠蔽魔法の特徴よ」
「素晴らしいです。」
「クソガキに負けたがな」
《シーーーーーーーーーーーーン》
「まあ、過去の話ですから、今なら店長の方が強いでしょ?」
ニヤリ「まあな」
「グルコさ~ん。」
通り口からマクさん
「薬局から転送ポスト持ってきましたけど、どこに置きますかー?」
「あ、店長、長テーブルを入口の壁際に出してください」
「おう」
〈ガタンッ〉
雑だなぁ
「そこにお願いしま~す」
テコテコ「マク待ってー」テコテコ
詠唱「キレイキレ~イ」
ホコリや燻りが取れピカピカになった
「ありがとうボリルさん。」
「ご遠慮なく」テコテコ
「まあ、ご遠慮なくですってよ」
「大人の言葉を真似します」
うふふ「可愛らしい」
閉じ立てていた大きな羽根をゆっくり広げ下ろした 風圧は無い
まるで白い天幕だ
柔らかい光源を放っているので影は作らない
「アキオさん、やっぱり元の大きさが楽ですか?」
ふわりと羽根を閉じた
「そうね。小さくなると窮屈なのよ」
「私もです」
「ありのままが一番楽よねー」
「ですよね」
デカイ蚕とデカイ蜘蛛が意気投合してる
「壁とか天井の角とかで過ごさないんですか?」
「今は特に?」
「寝る時は蜘蛛の巣を張ります」
「こうして皆んなといる方が楽しいわ」
「皆さん親切です」
長椅子に腕?前足?をのせて寛いでる
シロアリもこんな風に皆んなと仲良くなれたら良いのになぁ
〈ガチャン〉
「上級ポーション買って来ましたぁ~。」
「モルヒおかえり~」
「ありがとうございます。」
「ドロイさんのは売り切れでしたよ。」
「やっぱりね~」
「素材があれば作るよ」
褒められてデレデレしてる
「領主さん達は北側の客間でしたっけ?どうしますか?」
ケッ「シンケー領首脳会議中だ」
店長は閉め出された 役職が西の森代表では低いのだ
チッ「アタシを除け者にしやがって」
「まあまあ、ご機嫌直して。上級ポーションどうぞ。」
「一般人は参席しただけで魔塔の監視員が付いちゃうわよ?」
「遺伝子組換えについては国際法が絡みますからね。重い秘匿魔法です。」
「面倒くさいだけよねー」
「元魔塔主と昆虫博士から情報の提供と今後の対策。難しい会議ですし。」
「長引きますよ?途中離席は出来ない会議ですよ?」
「むうぅー」
仲間はずれにされて拗ねる子供だな
ボソッ「欲しいのに」
おや?
「ねえ、まだかかるのかしら?お腹が空いてきたわ」
「ワタシも」
「ワタシも」
可愛いちびっ子二人が足をぶらぶらさせて催促
「そうですね。出前を取りましょう。」
ポンッ〈ドサドサドサドサドサッ〉
「国内のデリバリー店舗全て揃ってます。」
「注文した人の前に発現するから楽チンよ」
「魔塔主が主導で開発した魔法です。」
「エッヘン!」
ハァ「マクさん。母ちゃんにちゃんと魔塔の仕事させてください。」
ニコニコ「すいません。」
「食べたい物の写真を指で時計回りに丸を書くとオーダー確定です。反時計回りは取り消しです。」
《ガヤガヤガヤガヤ》
「支払いをすると店舗に発注されます。」
「支払いはどなたです?」
「東のアカウントか?」
店長が高級黒毛和牛ステーキを小さい指でグルグルグルグル 何個食べる気なんだか
「私です。副魔塔主の接待交際費で処理されるのでご遠慮なく。」
「ご遠慮なく」
ボリルまで
クスクス「ありがとう。ご馳走になりますね。」
《ガヤガヤガヤガヤ》
「グルコ、これ、美味そうだよ」
生前の姿を微妙に残したステーキ
「俺はこれ」
生ハムメロンに3回指で丸をした 魔塔の予算だから遠慮はしない
「ドロイも高いのにしなよ。妹さんとアムチさんのお土産も選びな」
「うん!」
素直~
「チマリ、ほらお子様ランチがあるわよ」
「ワタシ甘い玉子焼きが食べたいの」
「贅沢バージョン」
「えっ?また食べるの?」
《うん》
〈パラパラ〉
「オムライスとかはありますけど。」
〈パラパラ〉
「あ、パンケーキがありますよ?」
「いや」
「いや」
〈パラパラ〉
「フルーツパフェは?」
「ダメよ。ちゃんと栄養のある食事を摂らせなさい」
〈パラパラ〉
「んー、これは、グルコさんですかね。」
〈パラパラ〉
「そーねー」
「甘い玉子焼きって何ですか?」
あ やな予感
「贅沢バージョンって何かしら?」
うわー
「甘くて美味しいの。食べてみて」
勝手にすすめてるし
「あら、私も食べて良いのかしら?」
「うん。沢山作るよ」
俺がね
「私も食べます。人族と家畜は食べません」
《シーーーーーーーーーーーーン》
「グルコ!死ぬほど作りなさい!」
「ダチョウの卵あげますっ!」
パッチン〈ゴトンッ〉
《キャッ》
「危ないでしょ」
キャッキャッ「ダチョウ~」
「ボリル」
「グルコ!育てていい?」
言うと思った
「生き物はダーメ」
「むうぅー。ケチンボ」
「これはアキオさん達のでしょ?」
「あら、そんなにいらないわよ?」
「食べる時は小さくなります」
《ホッ》
常識的な虫さん達で良かった
「ボリルが貰っていい?」
「無精卵だから孵りませんよ?」
「むせーらん?」
「雛が生まれる卵は特別なんだよ」
「ふーん」
納得してないな
「それじゃ、台所で焼いてきますのでお待ちください」
〈ガタン〉
「あら、ここにもキッチンあるわよ?」
「俺、魔道具が無いと料理作れませんから」
「ふーん」
魔塔主は魔道具があっても作れないもんね
「発注は玉子焼きが出来てからにしますね。」
《は~い》
気楽そうにしてるけど ここは大厄災の最前線なんだよなぁ
テコテコ「グルコ、カマドの火起こし手伝うよ」
「うん、よろしくね」
「ご遠慮なく」
うふふ「ハイハイ」
〈コンッコンッパカッ コンッコンッパカッ〉
「ボリル、皆んなボロボロで驚いたでしょ」
「うん」
卵を割るのをジッと観察してる
〈コンッコンッ パカッ〉
「魔力、沢山、ありがとうね」
「うん」
〈コンッコンッ パカッ〉
お留守番組 チマリさんとシルンさん 3人で討伐隊に魔力の補給をしてくれた
〈コンッコンッ パカッ〉
太くて濃い白い魔力をボロボロの大人に向けてゴゴォーとぶつけて凄いパワーだった
〈コンッコンッ パカッ〉
「チマリ。治癒魔法上手」
町長さんのダメージが大きかったのだ
「羨ましい?」
店長はボリルには治癒魔法を教えない
「ナナフシ薬局あるから」
「そーだね」
負担やら責任やらで治癒魔法師が命を削る姿を魔塔で嫌というほど見てきた
ボリルにほ教えないでくれと頼んだ時 そのつもりは無いと断言した
〈コンッコンッパカッ コンッコンッパカッ〉
「あのね、ボリルが良ければシロアリはここで預かろうと思うんだ。どうかな?」
〈コンッコンッ パカッ〉
「いいよ」
アッサリ
「ありがとう」
「ご遠慮なく」
ん このセリフが言いたいだけか?
「あのね、同じお部屋で寝たり、ご飯もここで一緒に食べたりするけど大丈夫?」
〈コンッコンッ パカッ〉
「大丈夫」
「そっか。大丈夫か。うん。良かった」
〈シャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカ〉
うふふ「お名前何にしよ」
尻尾をブンブン振っている
「まず、領主さんにシロアリ預かるって言わなきゃね」
「領主。チョロイ」
え?
「すぐ萌え~ってする」
「そーだね」
〈ジュジューーーーーーー〉
店長はなんだかんだ面倒見が良い
好奇心が強いから遺伝子組換え亜種の研究にしばらく没頭するかもね
〈ジュジューーーーーーー〉
国際政治的な何かとか元魔塔主の関与とか気になるけどね
俺達一般人に明かされる事の無い何かがあるんだろうな
〈ジュジューーーーーーー〉
甘い玉子焼きとバターの香りが台所に広がる
〈グゥーー〉
「グルコ?」
「お腹なっちゃった」
うふふ「ご遠慮なく」
「ハイハイ」
〈ジュジューーーーーーー〉
「よ~し。焼けた。蓋したまま持って行こう」
「うん」
カマドの炭 メラメラと赤い炎に灰を被せる
「シンさん、まだ豪火やってるのかなぁ」
「見てみるね」
ボリルが目を閉じた
「んーーーーー」
探索魔法かな
「燃やしてる」
「そっか。大魔法使いは大変だねぇ」
「大変だねぇ」
〈ググゥーーーー〉
「腹減った」
~グルコとシルクロード・後編 完~
10
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―
ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」
前世、15歳で人生を終えたぼく。
目が覚めたら異世界の、5歳の王子様!
けど、人質として大国に送られた危ない身分。
そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。
「ぼく、このお話知ってる!!」
生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!?
このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!!
「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」
生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。
とにかく周りに気を使いまくって!
王子様たちは全力尊重!
侍女さんたちには迷惑かけない!
ひたすら頑張れ、ぼく!
――猶予は後10年。
原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない!
お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。
それでも、ぼくは諦めない。
だって、絶対の絶対に死にたくないからっ!
原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。
健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。
どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。
(全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)
無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……
タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。
神スキル【絶対育成】で追放令嬢を餌付けしたら国ができた
黒崎隼人
ファンタジー
過労死した植物研究者が転生したのは、貧しい開拓村の少年アランだった。彼に与えられたのは、あらゆる植物を意のままに操る神スキル【絶対育成】だった。
そんな彼の元に、ある日、王都から追放されてきた「悪役令嬢」セラフィーナがやってくる。
「私があなたの知識となり、盾となりましょう。その代わり、この村を豊かにする力を貸してください」
前世の知識とチートスキルを持つ少年と、気高く理知的な元公爵令嬢。
二人が手を取り合った時、飢えた辺境の村は、やがて世界が羨む豊かで平和な楽園へと姿を変えていく。
辺境から始まる、農業革命ファンタジー&国家創成譚が、ここに開幕する。
幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない
しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。
掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく
タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。
最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。
【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。
猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。
復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。
やがてヴァルミエール国王の王命により結成された勇者パーティは、
勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。
過去の恋、未来の恋、政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。
魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に歩む勇者パーティは、
四人の魔将との邂逅、秘められた真実、そしてそれぞれの試練を迎え――。
輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私。
けれど魔王討伐の旅路の中で、“仲間を支えるとは何か”に気付き、
やがて――“本当の自分”を見つけていく――。
そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして私の成長の物語です。
※本作の章構成:
第一章:アカデミー&聖女覚醒編
第二章:勇者パーティ結成&魔王討伐軍北上編
第三章:帰郷&魔将・魔王決戦編
※「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位)
※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。
置き去りにされた聖女様
青の雀
恋愛
置き去り作品第5弾
孤児のミカエルは、教会に下男として雇われているうちに、子供のいない公爵夫妻に引き取られてしまう
公爵がミカエルの美しい姿に心を奪われ、ミカエルなら良き婿殿を迎えることができるかもしれないという一縷の望みを託したからだ
ある日、お屋敷見物をしているとき、公爵夫人と庭師が乳くりあっているところに偶然、通りがかってしまう
ミカエルは、二人に気づかなかったが、二人は違う!見られたと勘違いしてしまい、ミカエルを連れ去り、どこかの廃屋に置き去りにする
最近、体調が悪くて、インフルの予防注射もまだ予約だけで……
それで昔、書いた作品を手直しして、短編を書いています。
「お前みたいな卑しい闇属性の魔女など側室でもごめんだ」と言われましたが、私も殿下に嫁ぐ気はありません!
野生のイエネコ
恋愛
闇の精霊の加護を受けている私は、闇属性を差別する国で迫害されていた。いつか私を受け入れてくれる人を探そうと夢に見ていたデビュタントの舞踏会で、闇属性を差別する王太子に罵倒されて心が折れてしまう。
私が国を出奔すると、闇精霊の森という場所に住まう、不思議な男性と出会った。なぜかその男性が私の事情を聞くと、国に与えられた闇精霊の加護が消滅して、国は大混乱に。
そんな中、闇精霊の森での生活は穏やかに進んでいく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる