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第三十話
グルコと山神蜘蛛の糸
しおりを挟む「南の森に商業ギルドの施設を建てさせてくださいっ!」
町の外れのナナフシ薬局/我が家の台所
「え?あの、ちょっと」
商業ギルドのギルマスが南の森代表チマリさんと南の森自然環境保全団体代表シルンさんに突然土下座した
「ミンクさんの糸を紡がせてくださいっ!」
可愛い二人のちびっこが商業さんからいただいたマスカットを頬張ったまま静止画像状態
「あの、何事ですか?」
「お願い致しますっ!」
「とりあえず、お顔を上げてください。お席へどうぞ」
椅子を引いて土下座する商業さんに立ち上がりを促す
「いえいえ!私のような愚か者はこの硬く冷たい床で十分でございます!」
〈ゴン〉
床に額を打ち付けた 常に防御魔法を纏ってるから痛くはないんだろうけど ちょっとこれは
「これ、わいろ?」
うん 処世術とか無縁のチマリさんでも気付くよね
お土産のお高そうなマスカットを食べ始めた途端に土下座でお願いごとだからね
「そ、そ、そのようなことは⋯ゴニョゴニョ」
面と向かって ハイそうです とは言えない
「とりあえず、お話を聞いてみようか?」
「わかった」
「ありがとうございます!」
「グルコ聞いて」
あ 俺に丸投げした
「ハイハイ」
台所は床暖房魔法が効いて冷たくはないんだけど硬い 腰痛クッションを2枚重ね敷き尻を乗せ胡座をかいた
「こんな格好で失礼しますね」
普段の商業さんなら俺に気を使って椅子に座るはずだが全く立ち上がる様子を見せない
「どうぞお聞かせください」
「はい。
実は今、洋裁部門の従業員5人に禁断症状が発現しております。先日、権威ある治癒師の診療で、何でも良いので糸を紡がせなさいと指導を受けました。」
商業ギルド直轄の施設である東の森の養蚕場が厄災被害で閉鎖され
そこで働く従業員の受入れ先として洋裁部門を新たに立ち上げ継続雇用した
その中の5人が禁断症状を発現したのか
「ここだけのお話にしていただきたいのですが、その5人はギルドの地下室で山神蜘蛛の糸を後処理した従業員なんです。
また触りたい、またあの糸を紡ぎたいと。最近は職場に入るだけで手がブルブル震え出して洋裁どころじゃないんです。顔も怖くて⋯。」
「それはまた深刻ですね」
雇用保険の規定に従い 今後の治療費をギルドが負担すると契約を交わし 速やかに解雇するべきところだがそれをしない
「ひとまず5人を休職させてはいかがですか?」
「提案しましたが望んでいません。皆さん養蚕場の設立当時から働くベテランばかりなので強く言えずに、こうして恥を忍んでお願いに上がりました。」
商業さんが下した決断に水を差すつもりは毛頭ない 話を進めよう
「つまるところ、南の森に施設を建て山神蜘蛛のミンクさんに糸を提供して欲しいんですね?」
「はい。北の森で山神蜘蛛の糸を採取するには危険が伴います。冒険者ギルドに依頼すると赤字経営真っしぐらなんです。」
「それは分かりますが、なぜ施設を南の森に建てる必要があるんですか?」
「それが、南の森に住みたいと、自然に囲まれた環境で働きたいとゴネまくっていて⋯⋯怖い顔で⋯。」
なんだなんだ?特別扱いにもほどがあるぞ 王都の貴族筋か?
「ご家族は?」
「皆さん独り身です。東の森で5人で共同生活をしています。」
ああ なるほど 訳ありなんだな
養蚕場の再建が見込めない現状を知り移動先で慣れない仕事をしている
ギルド内の部門移動とは体質が違う
東の森に住み東の森で蚕の世話と糸紡ぎをしていた人が 町中のギルドに通勤し望まない職場に就いた
ストレスからくる禁断症状で顔が怖いのはかなり拗らせてるんだろう
「チマリさん、どうしますか?」
「ワタシはどうでもいい」
だよね 代表だけど運営の仕事は副代表のオリザさんがワンオペしてる 魔法関係以外には全く興味がない
「シルンさんはどうですか?」
「わかんない」
だよね マスカットを食べるのに夢中で全く聞いてないよね
「まず確認しますが、森の建造物は領主さんが主導の案件ですよね?なぜ商業さんが動いてるんですか?」
「費用は持つから全て任せると。5人の為に責任を持って取り組めと言われました。」
「いつもの丸投げですね」
「⋯ハイ⋯。」
声ちっさ もうなんか泣きそう 酷いこと言われたのかな
お気の毒としか思えない
商業さんの立場ではこうして南の森代表に懇願するしかない
領主権限で簡単に処理できる案件なのにいらない苦労をさせてる
商業ギルドが山神蜘蛛を大量に仕入れたことを反省させる為なら今更感しかない
いつもの めんどくせぇ とかなのか?
どちらにしても これは完全に悪手だ 完全にパワハラだ
「お話わかりました。
ミンクさんが糸の提供を了承するなら建てましょう。
チマリさん、シルンさん、それで良いですね?」
《うん》
「俺も加勢します。現場監督やりますよ?」
「よ、宜しくお願い致します!」
俺にまで土下座
「共に頑張りましょう」
どっこいしょと立ち上がる
「はい。」
俺につられて立ち上がろうとした瞬間
「うっ!」
〈ガタタッ〉
椅子の背を掴み共に倒れる
「だ、大丈夫ですか!?」
起立性の立ちくらみか
「さ、さ、触らないでください。自分で立ちます。」
あらま 足が痺れたのね
《クスクスクスクス》
可愛い二人のちびっ子が口に手を当てて笑う
シンケー領 北の森 標高が高い北側は一年中雪に覆われている
ワイルドボアの毛皮のコートを着込んだ3人の冒険者がそれぞれ3本の大木の上に身を潜めている
警戒心の強い獲物を刺激しないよう会話は全て念話
(ドロイさん、まだですか?本当にここで合ってます?)
(合ってる。はぐれ個体の目撃情報はこの辺りだった)
(また冬眠したんじゃないですか?)
(どうかな)
(寒いんですけど?暖房魔法したいんですけど?)
(今発動すると警戒されるからダメ)
(よお、もう少し待って来なかったら下山するぞ。カエル釣り飽きた。繁殖地に移動だ)
(はあっ?ちょっと待ってギルマス!そこって集団でいますよね!?そんなの私は反対です!寒くてもここで粘るべきです!)
(お前なぁ)
ふぅ(グルコがあのカエルコートを着てくれたら、すぐに寄って来るのになぁ)
(それな。オレ達に大事なカエルコートは貸せないって何なんだよ)
(絶対汚すからダメって言われた)
(囮用じゃねーのかよ)
(そーみたい)
(グルコさん薬局の方は暇でしょ?囮の報酬が安くて断ったんですかね?)
(雪山は苦手だからだよ。しもやけ体質だしね)
(しもやけって何だっけ?)
(警察犬には縁のないものですよ。)
太い幹の上で犬座りでカエル釣りをする冒険者ギルドのギルマス
(あっそ)
部下に軽くあしらわれても気にしない
(囮、もう少し上げて)
配下の冒険者に軽く扱われても
(おお、すまん)
気にしない
大木の上から垂らされた細い縄
その先に商業ギルドで提供されたゴライアスというカエルの亜種の皮が結んである
グルコ用のカエルコートを作る時に余った端切れだ
繁殖臭が残るこの皮を囮にしてゴライアスを生け捕りにするのが今回のクエスト
数日前から冒険者ギルドに 繁殖地から離れた高地でゴライアスを目撃したと数件の情報が入っていた
ギルマスとサブマスの二人は現場へ臨場したのだ
(ドロイさん、そんな小さな端切れで本当に釣れるんですか?)
(うん。あ、来たかな?)
(え?)
(ギルマス、囮をゆっくり上下させて)
(お?おう)
(繁殖臭の他に魔法を使っても興奮するから気をつけて)
(見極めは?)
(さあ?魔法が効かなかったら興奮してるってことかな)
(なるほど。)
(は?ドロイ?それ、物理的な投網漁か?)
(うん。魔法は使わないよ)
大木の上でドロイが投網を構える
(漁師みたいだな)
(通行人を狙う悪党みたいですね。)
(そこまで来てる。近いよ)
クンクン(囮が臭くてわからん)クンクン
〈サクッ サクッ サクッ〉
(見えた)
(うっわあーーー!動いてるっ!キッショ!)
(サブマス、生きてんの初めてか?)
(そうなの!何これキッショ!)
(ギルマス、囮を地面スレスレまで下ろして)
(おう)
(ほら、もう狙って来てる)
〈サクッ サクッ サクッ サクッ サクッ サクッ〉
(やだやだ来た来たっ)
(ドロイ!どーすんだ!?)
(二人とも動かないで。繁殖臭に興奮してるみたい)
〈サクッ サクッ サクッ サクッ〉
(やだやだやだやだやだやだ)
(サブマスうるせーぞ)
(網を掛けたら皆んなで飛び乗るよ)
(抑え込みだな)
(うん。とにかく体重かけないとね)
(やだやだやだやだムリーー)
(僕の上に乗っても良いから)
(注意事項は?)
(尻から内臓が出るから潰さないでね)
(やだやだやだやだやだやだやだやだやだあーーー)
南の森のリゾート地にはお菓子の家がある
森の小道から庭先にはクイニーアマンが敷き詰めてあり
屋根は大きなフィナンシェ 壁はビスケット
玄関はチョコレート 窓は透明な飴菓子
柱は紅白ねじねじのキャンディ
「ここがチマリ代表のご自宅ですか。住んでるだけで糖尿病になりそうですね。」
同意
〈ピンポーン〉
「こんにちはー、グルコでーす」
「はーい」
あれ?
〈ギギギー〉
「いらっしゃい」
やっぱり
ふふっ「驚いたでしょ」
町の薬品工房の三女さんだ
「旦那とねチマリ代表に赤ん坊を見せに寄ったのよ。どーぞ入って」
「お邪魔します」
「商業さんも、ほら、入って入って」
「し、失礼します。」
応接間に通されるとチマリさんがベビーカーを覗き込んでいた
〈ピョーン〉
ベビーカーからりんごサイズに縮んだ山神蜘蛛の亜種ミンクさんが飛び出し べっこう飴でできたテーブルに着地した
ふわふわの白い毛皮が日差しを浴びてキラキラと美しく煌めく
もしも蜘蛛の神さまが存在するのなら きっとこんな姿だろう
「ご無沙汰を致しております。その節は大変ご迷惑をおかけ致しました。大厄災に心奪われ謝罪のないまま今に至り、本当に申し訳ありませんでした。」
商業さんが土下座した
クスクス「商業。そればっかりだね」
「真面目な方なんですよ」
ミンクさん 以前より声色が凛としている
「もう、過ぎたことです。巡り合わせの過程です。お気になさらず」
「痛み入ります。」
「さ、どうぞ」
三女さんに促され立ち上がる
「生け捕りしたゴライアスをお持ち致しました。表に置いてますのでお納めください。」
「そうですか。お心遣いありがとう」
「ほんとにあんなのを食べるのかな?」
「食べます」
あ 声に出てた
「ゴライアスおいしーよね」
チマリさん?
「新鮮なうちに捌きますか?」
三女さん?
「そうしてください」
町の外れのナナフシ薬局は突き出た崖の先にある
長く連なる崖に面した一番広い部屋
2階程ある高い天井
はめ殺しの丸い窓が岩壁に無造作に配置され日差しを満遍なく取り入れている
部屋の一角に作業スペース
古びた機織り機に人族の成人男性くらい大きなシロアリ亜種と高齢の女性が並んで座っている
〈ギギギギィー〉
広い部屋に不快な音が響き渡った
「先生、ズナが壊しちゃったのかな?」
シロアリが泣きそうな声で女性に問いかけた
ふふっ「違うわね。もう古いからあちこち傷みが出てるのよ」
深く刻まれたほうれい線が更に深くなる
「でも、昨日、急にだよ?」
「この工具はね、ずぅっとお休みしていたの。ズナちゃんが使ってくれて嬉しかったのね。今まで良くがんばったわ」
不快な音の原因である踏み板の交換時期はとうに過ぎていた
ほかの部品も既に限界を超えている
現役で使えるのが不思議な状態なのだ
「ねえ、痛いの治る?」
「そうねぇ⋯」
機織り機の元の持ち主は修理できない事を知っている
これは千年楢の木と称されるオーク材を使用した貴重なアンティーク手工具だ
百歳以上の楢の木の伐採は今は国際法で禁止されている
「いよいよ寿命かしらね。私とお」
「まだ使える」
シロアリに先生と呼ばれる女性の言葉を遮ったのはナナフシ薬局の子供店長だった
「西さん?」
「修理すればまだ使える」
女の子の容姿の中身はおばあちゃん魔女 言葉遣いがなかなか渋い
〈ゴトンッゴトンッ〉
収納魔法から二脚のロッキングチェアを出現させた
「千年楢の木だ。バラして使う」
「こんな立派な物を⋯」
「構わん。年代が同じならよく馴染むはずだ。ズナ」
「うん。調べる」
シロアリが長い2本の触覚でロッキングチェアを撫で回す
「んーーーーー」
次に機織り機を撫で回す
「そっくり」
「味見しなくてもわかるのね?」
エヘン「ズナは亜種だからね」
「そーかそーか。あとはアタシがなんとかするよ」
たとえ相性は良くても踏み板と同じ一枚板のサイズには至らない 腕利きの職人に加工して貰う必要がある
「直せる?」
「ああ、直させるよ」
うふ「先生、良かったね」
うふ「ズナちゃん、良かったね」
「あ、そうだ!」
「ん?」
「先生にね、プレゼントがあるの」
「あら、何かしら?」
女性の膝元に向けて収納魔法を発現
〈ポンッ〉
「まあ」
「チマリにマダムソワ蚕の絹糸もらったの」
「ズナちゃんが織ったの?」
「うん。先生にあげたかったの。キレイでしょ?」
「とってもキレイね」
「先生は洋裁も得意なんでしょ?欲しい物作ってね」
反物を静かに撫でる撫でる その表情は悲しげだった
「いやだった?」
「ううん。嬉しいわ。ありがとうね」
「あんた、それ裸眼だろ?」
「えっ?ああ、そうね。老眼鏡魔法が抜けてしまって、そのままなのよ」
加齢と共に魔力耐性は低くなる 身体に施す魔法は心臓に負担をかけるので使用を控えている
「そんなんじゃ洋裁は無理だね。アタシが最新式の老眼鏡魔法を掛けてやるよ」
「え、でも」
「副作用は出ない。安心しなさい」
女性の後ろに立ち両目に小さな手を当て目隠しをした
詠唱「ゴニョゴニョゴニョゴニョゴニョゴニョゴニョ」
〈パァーーーーーーーーーーーーーーッ〉
白い閃光
「どうだい?反物の織り目は見えるかい?」
「あ、あ、あーーーーー!すごい!」
「頭痛は?」
「ないわ!すごい!キレイな織り目!ズナちゃんすごいわ!本当にすごいわ!」
「えへへへ」
「西さん、ズナちゃん、ありがとうございます!」
「先生、泣いてる」
「嬉しくて!幸せで!わけわかんなくなっちゃいそうよ!」
「引退するにはまだ早い」
洞窟風古民家BARナナフシ薬局
南の森から帰宅したのは夜9時を過ぎていた
町馬車西の森入口停留所まで商業さんに転移魔法で送ってもらった
いつもの涼し気な明るい表情を取り戻していた
「ただいま~」
薬局の黒い引き戸を静かにそっと開ける
「グルコおかえり」
「おかえりなさ~い」
「遅かったね」
ボリルとズナと店長がカウンターに座って俺の帰りを待っていた
「ということがあったの」
ズナから機織り機を修理に出した報告を受けた
「そっかぁ、良かったね」
「うん!」
「ボリルはお勉強会どうだったの?」
「つまんなかった」
「そっかぁ、つまんなかったかぁ」
冒険者ギルドが開講している読み書き勉強会の中級クラスに参加した
ちびっこが多い初級クラスの内容は俺と店長が教えた
中級クラスにチャレンジしたいと言うので受講の手配をした
「これ、お土産」
〈ポンッ〉
収納魔法からカウンターに中級クラスと書かれた教科書を出した
手に取りペラペラとページをめくる
「クエスト関係だね」
掲示板の貼り出しが読めてクエストの報告書を自筆できるようになる
「上級では契約書関係を教えてる」
「そうなんですね」
店長が講師を務める初級クラスは賑やかで気軽で楽しい雰囲気だ
読み書き勉強初心者の導入に向いている
ひとつ上のクラスとの差がこんなにも開いているのはどうなんだろう
ボリルのように挫折する生徒が多いのではなかろうか?
「ボリルには合わない」
確かに単独でクエストを受けることはないし報告書を書くこともない
「書くの疲れる」
風魔法でペンを操作して文字を書くのは慣れてきたけど 今までは短い単語だけだったからなぁ
「もう行かない」
失敗したな
俺が教えればよかった 人に任せるべきじゃなかったんだ
この先 ボリルの読み書きレベルを上げるのが難しくなったな
「俺から二人にお土産。カエルの燻製」
クンクン「おいしそー」
「桜チップだね」
「当たり」
「今食べていい?」
「半分ね」
《やったぁ~》
子供たちに夜食は与えない主義だけど今夜は特別だ
ボリルには嬉しい気分で眠りについて欲しい
《おいしー!》
(あんた、ボリルを一人前の社会人にしたいんだろ?)
店長の念話だ
おでこの真ん中をそっと押し直通念話魔法を稼働する
初期型はオデキのように出っ張り長押しで念話を維持していた
今はフラットタイプで稼働するとほんわり熱を感じる 稼働はオン・オフ機能に改良されて周囲に気づかれない
(勉強嫌いになると困りますよね)
(アタシもボリルには魔塔公式の魔法陣を覚えさせたい。どーするんだい?)
(んー。まずは副店長を任命しますかね。勉強=仕事です。お仕事大好きですから、やる気を起こしてくれるかと)
(なるほどな。商品名の読み書きなら実践的で良いかもな)
(俺が教えますね。いずれ経理ができるように育成します)
(帳簿を書かせるのか?)
(店の跡継ぎはボリルなので)
(ズナはどうする?)
(副店長補佐、ですかね)
(なるほどな)
「グルコ?」
ボリルが不思議そうな顔
ズナもこちらを見た
(内緒話、バレましたね)
〈ペンッ〉
俺のおでこをスリッパで軽く叩いた 念話終了
「無理強いはするなよ」
「ハイハイ」
「ペンされた」
「どうしたの?」
「ん。なんでもないよ。それより、もう遅いからね、二人は歯磨きして寝ようか」
「うん。おやすみ」テコテコ
「おやすみなさい」サワサワ
カウンターの奥 通り口から二人が出て行く
薬局には防臭防音魔法を掛け居住スペースと環境分離をしている
酔っぱらいが深夜早朝に騒いでも音は漏れないし 酒や干物を炙る臭いも通り口でシャットアウトされる
ズナの大事なお客さまを迎えるので敷地内への転移進入禁止魔法を掛けた
今もまだ解除していない
いつもの酔っぱらい常連客はシャットアウトされている
店長と俺は密談を始めた
「それで。ミンクの様子はどうだった?」
低い声 機嫌が悪い
「とても穏やかでした。糸の提供は快く承諾されました。価格はオリザさんと商業さんが話し合いで決めます」
「そうかい」
ほっとした表情
「元養蚕場の5人、亡命者なんですか?」
ズバリ聞いてみた
「さあな」
否定しない 当たりか
「商業ギルドが山神蜘蛛の糸を扱うようになったら、ズナに買ってあげたいんですけど難しい素材ですかね?」
魔力無しの俺には 素材に魔力を込める作業の良し悪しはわからない
それも希少な山神蜘蛛の糸ともなれば尚更だ
「問題ない。ズナなら扱えるだろ」
お墨付きが出たよ
「そうですか。楽しみです」
「内職増やしな」
「ですよね」
「施設は森林組合のある集落に建てるのかい?」
「ハイ。空き地がまだまだ余ってますし、町馬車終点の停留所がありますからね」
「設計図は?」
「完成しました。5人の意見も反映済みです」
リュックに差し込んだ長い円筒状のケースから設計図を出し広げる
[山神シルク工房 完成予定図]
「1階が作業場で2階が居住スペースです」
「デカイな」
「10人まで住める間取りにしました」
「金が掛かる。領主はなんて?」
「完成して引っ越しを終えたら報告します。各業者、支払いはその時に一括で請求するように依頼します。引っ越し費用も組み込みます。完成まで内緒にしてくださいね」
「日数は?」
「1週間くらいだそうです」
「遅い。アタシも手伝うよ。3日で終わらせる」
頼もしい援軍
「お給料、奮発しますね」
ニヤリ「領主が泣くな」
ニヤリ「泣いてもらいます」
ナナフシ薬局は開業準備からずっと商業ギルドにお世話になっている
領主さんが商業さんを苦しめた案件を店長も俺も許しはしないのだ
詠唱「ゴニョゴニョゴニョゴニョゴニョゴニョ」
〈パァーーーーー〉
店内に白い閃光が走った
「なんです?」
「領主は建設費を払うまで出禁だ」
「素晴らしい」
《ふふふふふふふふふふふふふふふ》
~グルコと山神蜘蛛の糸 完~
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