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第20話 行動パターンを推理
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しかし、よく考えてみると理科室やら家庭科室といった、生活できそうな場所があるなと気づく。とはいえ、そこに住んでみようとする人の気持ちは解らないままだ。
今日は旧駅には寄らないので、真っ直ぐに廃校へと進んだ。すると、すでに校門の前に軽トラックが停まっている。宮本哲太はすでに来ているようだ。昨日は学校から離れた場所に停めた車だが、今日はその軽トラックの横に停めることにした。
「よう、まさかそれってお前のじゃないよな」
軽トラックの運転席で待っていた哲太は、薄ピンク色の軽自動車を指差して笑う。随分と前からいたのか、缶コーヒーを飲んでいた。
「当たり前だ。母さんのだよ」
「ああ、そう言えばそうか。何度か見たことあるな」
「ちっ」
面倒くさそうに答えた和臣に対し、からからと笑う哲太。何だか正反対の二人に悠人はどう反応していいのか解らない。
「あの、何か解りましたか」
しかし、和臣と違って校舎に住む謎の人物に興味のある悠人は、まず質問してみることにした。
「おっ、そうだった。じいさんに問い質しておいたぜ」
「問い質すって、そこまで強く訊ねなくても」
「まあまあ。それによるとだ。何だか夜中に妙な音がするっていうんだよね。出入りしているのは若い男だってことらしい。で、それに色んな情報がくっ付いているみたいで、内臓云々もそこで出来上がったみたいだな。それと新情報。近所の中島さんが雑草の中でごそごそ動く音を聞いたっていう。人間の姿はなかったのに、何かが動いていたんだってさ。それも大きいものが動く音だったってよ。取り敢えず、ここをねぐらに夜、ごそごそとやっている奴がいるのは確かだ」
哲太はざっと説明し、誰だろうねえと首を捻った。どうやらどこの誰という情報は出て来ないらしい。しかし、昨日とは違って具体的な目撃情報がくっ付いていた。
「昨日叔母さんがそれっぽい人を見たって言ってたよ」
ということで、こちらは昨日、沙希が見たという人物について教えた。こちらも若い男だったようだし、情報としては一致する。ただ汚かったという部分をどう伝えるか、ここで悩んでしまったくらいだ。
「ふうん。掃除したままふらっと普通にそこのスーパーで買い物してるのか。じゃ、犯罪者ではなさそうだよな。金にも困っていないようだし」
「それはそうだろう。というか、さっきも悠人に行ったけど、犯罪者がねぐらにする校舎を掃除するわけないだろ。ここを使っていますと知らせているようなものじゃないか。利用している人は明らかに何らかの目的があって使っている。しかも掃除をしているんだから、許可を取っているはずだ」
「ああ、そうか。こっそりするつもりはないんだな」
「物音を聞かれている時点でそうだ。問題は夜に何かしているってことか。雑草の中を動く音というのは、その男が移動する時に立てた音かもしれないし。あれだけ雑草が生えているんだ。姿を確認できなかったというのは屈んでいただけかもしれない。それに、どうやら昼間は無人みたいだしな」
「そうだな。さっきからここで見張ってるけど、物音ひとつしないね。寝てるのかもしれないぞ」
早めに来て情報が掴めないかと、堂々と正門から見張っていたという。しかし、まったく何も動きはなかったらしい。
「その可能性は高いですね。昼ご飯は買いに行ってるんだから」
「いや、そうではなく、昼に買い物をしてここに来ているのかもしれないぞ。そして夜、用事を済ませて帰っているんだろう」
「ああ、そうか。住んでいるとは限らない」
「そういうことだ。さすがに何かに再利用しやすくても、住居として適しているとは思えないからな」
悠人の疑問は和臣によって論破されることになった。なるほど、ずっとここにいると思い込んでいたが、通っている可能性もあった。というより、工場にしろ何か別のことに利用するにしろ、居住空間があると考えるのは無理があった。
「にしても、使うんだったら校庭もちゃんとしてほしいよな。すげえ草だぜ。草むしりくらいしろよな。邪魔だし、何かあった時に困るだろうに」
哲太はここも綺麗にしてくれと、青々と茂る雑草を指差した。たしかに、毎回出入りするのも嫌になるほど草が生えている。ここは片付ける気がないらしい。校舎の中はピカピカだったというのに、随分と外は無視している。
「目撃されているのは一人だよな」
「そうだな。買い物しているのと同一人物とすれば一人だろう」
ううん、一体誰がと三人揃って木造の校舎を睨みつけてしまう。しかも目的が解らない。というか、今のところ物音が夜限定というのも不思議だ。
「準備中は昼間、ここで寝ているだけだったりして。それで夜にあれこれやっている可能性もあるよね」
夜型の人という可能性はないか。ふと、悠人は和臣を見ていて思った。和臣もまあまあ夜型で、朝はなかなか起きて来ない。しかも低血圧なのか、朝ご飯はあまり食べないし、午前中は全体的にやる気がなかった。
今日は旧駅には寄らないので、真っ直ぐに廃校へと進んだ。すると、すでに校門の前に軽トラックが停まっている。宮本哲太はすでに来ているようだ。昨日は学校から離れた場所に停めた車だが、今日はその軽トラックの横に停めることにした。
「よう、まさかそれってお前のじゃないよな」
軽トラックの運転席で待っていた哲太は、薄ピンク色の軽自動車を指差して笑う。随分と前からいたのか、缶コーヒーを飲んでいた。
「当たり前だ。母さんのだよ」
「ああ、そう言えばそうか。何度か見たことあるな」
「ちっ」
面倒くさそうに答えた和臣に対し、からからと笑う哲太。何だか正反対の二人に悠人はどう反応していいのか解らない。
「あの、何か解りましたか」
しかし、和臣と違って校舎に住む謎の人物に興味のある悠人は、まず質問してみることにした。
「おっ、そうだった。じいさんに問い質しておいたぜ」
「問い質すって、そこまで強く訊ねなくても」
「まあまあ。それによるとだ。何だか夜中に妙な音がするっていうんだよね。出入りしているのは若い男だってことらしい。で、それに色んな情報がくっ付いているみたいで、内臓云々もそこで出来上がったみたいだな。それと新情報。近所の中島さんが雑草の中でごそごそ動く音を聞いたっていう。人間の姿はなかったのに、何かが動いていたんだってさ。それも大きいものが動く音だったってよ。取り敢えず、ここをねぐらに夜、ごそごそとやっている奴がいるのは確かだ」
哲太はざっと説明し、誰だろうねえと首を捻った。どうやらどこの誰という情報は出て来ないらしい。しかし、昨日とは違って具体的な目撃情報がくっ付いていた。
「昨日叔母さんがそれっぽい人を見たって言ってたよ」
ということで、こちらは昨日、沙希が見たという人物について教えた。こちらも若い男だったようだし、情報としては一致する。ただ汚かったという部分をどう伝えるか、ここで悩んでしまったくらいだ。
「ふうん。掃除したままふらっと普通にそこのスーパーで買い物してるのか。じゃ、犯罪者ではなさそうだよな。金にも困っていないようだし」
「それはそうだろう。というか、さっきも悠人に行ったけど、犯罪者がねぐらにする校舎を掃除するわけないだろ。ここを使っていますと知らせているようなものじゃないか。利用している人は明らかに何らかの目的があって使っている。しかも掃除をしているんだから、許可を取っているはずだ」
「ああ、そうか。こっそりするつもりはないんだな」
「物音を聞かれている時点でそうだ。問題は夜に何かしているってことか。雑草の中を動く音というのは、その男が移動する時に立てた音かもしれないし。あれだけ雑草が生えているんだ。姿を確認できなかったというのは屈んでいただけかもしれない。それに、どうやら昼間は無人みたいだしな」
「そうだな。さっきからここで見張ってるけど、物音ひとつしないね。寝てるのかもしれないぞ」
早めに来て情報が掴めないかと、堂々と正門から見張っていたという。しかし、まったく何も動きはなかったらしい。
「その可能性は高いですね。昼ご飯は買いに行ってるんだから」
「いや、そうではなく、昼に買い物をしてここに来ているのかもしれないぞ。そして夜、用事を済ませて帰っているんだろう」
「ああ、そうか。住んでいるとは限らない」
「そういうことだ。さすがに何かに再利用しやすくても、住居として適しているとは思えないからな」
悠人の疑問は和臣によって論破されることになった。なるほど、ずっとここにいると思い込んでいたが、通っている可能性もあった。というより、工場にしろ何か別のことに利用するにしろ、居住空間があると考えるのは無理があった。
「にしても、使うんだったら校庭もちゃんとしてほしいよな。すげえ草だぜ。草むしりくらいしろよな。邪魔だし、何かあった時に困るだろうに」
哲太はここも綺麗にしてくれと、青々と茂る雑草を指差した。たしかに、毎回出入りするのも嫌になるほど草が生えている。ここは片付ける気がないらしい。校舎の中はピカピカだったというのに、随分と外は無視している。
「目撃されているのは一人だよな」
「そうだな。買い物しているのと同一人物とすれば一人だろう」
ううん、一体誰がと三人揃って木造の校舎を睨みつけてしまう。しかも目的が解らない。というか、今のところ物音が夜限定というのも不思議だ。
「準備中は昼間、ここで寝ているだけだったりして。それで夜にあれこれやっている可能性もあるよね」
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