悩みの夏は小さな謎とともに

渋川宙

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第19話 目的はなんだろう?

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「凄いだろ。この色分けを考えたのはうちの教授なんだ」
「へえ」
「ついでに勉強にもなる」
「それはもう気づいてた」
 これって完全に受験勉強の一環だよなと、悠人は苦笑してしまう。が、これならばしばらく手伝っていられそうだ。勉強になってしかも手伝いになるなんて、ラッキーなものもあったものだ。
「じゃ、頑張ってくれ」
「ほうい」
 軽く返事をして、次の文章題に取り掛かった。いやはや、それにしてもこんな形で勉強できるとは意外だが、入試問題をコンピュータプログラミングに打ち直すなんて、よく考えるよなと感心してしまう。研究って何でもありなんだろうか。
「研究テーマって何でもいいわけ」
 疑問に思ったことは今のうちに解消しておこうと質問。和臣は少し首を傾げたが
「まあ、何でもありといえば何でもありだな。知りたいを追求することが研究だし」
 と軽い答えを返した。
「ああ、そうか。どの学科に行くかってだけで、やりたいことは自分で見つけていくんだね」
「そうそう。大筋は教授が示してくれることもあるが、どういうものを選ぶかは自分の興味次第だよ。それに、がちがちに決めて学部を選んだとしても、興味が大学に行っている間に変わることもある。そうなれば、別に後から変更も出来るしね」
「またそういう難しいことをさらっと言う」
 そう簡単に変われるんだったら、最初の入試でこんなに悩まないでしょと、悠人は呆れてしまった。すると和臣は少し考えるように顎を擦って、それもそうかと頷く。
「まあね。それなりのリスクがあるのは確かだ。学部によっては単位をそのままスライドできない場合もあるからな」
「だよね。それってやっぱり卒業に影響するんじゃないの」
「だろうね」
「おいおい」
 そういうところは適当なんだと、悠人は肝心なところが当てにならないなと和臣を睨む。アドバイスする気はあるのか。それとも一般論として言っているのか。それとも和臣は研究者になることを前提にしか喋っていないのだろうか。
「まあ、どういうことも無駄ではないってことさ」
「無理やりまとめたな」
 そこで互いに苦笑してしまう。こうやって夕方まで、無駄な議論をしつつ和臣の作業を手伝うことになるのだった。





 翌日。朝は昨日と同じように信明の手伝いをして、朝食を終えるとあの廃校へと向かうことになった。しかし、和臣はぎりぎりまで寝ていて、今日もぼさぼさの頭で部屋から出てきた。しかもあの約束を忘れていたのだ。
「ああ、そうか。なんで朝早く起きなきゃって考えたのかと思えば、宮本と待ち合わせてるんだっけ。じゃ、行くか」
 という調子で、すでに興味が薄くなっている。しかし哲太との約束があるために、和臣も渋々ながら出掛けることになった。それにしても、あまり廃校に出入りしている謎の人物に興味がないらしい。志津の目論見はこの時点で外れている。
「まあね。怪しいことは怪しいけど、別に悪いことをしているわけじゃないだろ。ただなぜおばあちゃんが不審者に仕立てたのかという謎があるだけで」
「それを確認しに行くんじゃないのか。ひょっとしたら本当に悪巧みをしている人かもしれないじゃん。志津さんは何かを察知したのかもよ」
「まさか。悪用するつもりだったら掃除はしないだろうよ。むしろ出入りしていることがばれないように、掃除はしないさ」
「ううん、まあね」
 そんな会話を、まだしゃきっと起きていない和臣の運転する車の中で交わした。寝惚けているのではと不安だったが、昨日運転しているからか、今日はスムーズに家から出ることが出来た。ついでに言えば廃校の謎の人物も、昨日ほど謎ではなくなっているからか、気楽なものだった。
「でも、再利用するんだったら周辺住民に知らせるもんなんだろ。なんでこそこそとやっているんだろう」
「まだ準備段階だから必要ないと思っているんだろう。別に怪しいことをしているわけじゃないから、事後報告でも問題ないと判断しているのだろうね」
「ううん。でも、こうやって怪しがられてるってのは、どうなのかな」
 のちのち問題にならないのかなと、悠人は首を捻ってしまう。あそこを工場にするにしろカフェとかレストランにするにしろ、早めに知らせておいて損はない気がする。
「そうだな。営利目的ならばな」
「えっ、違うの」
「昨日の不審者とされる人物の目撃情報から、ちょっと気になることがあってね。もしかしたらという可能性が浮かんでいる」
「ええっ」
 一人で理解している和臣に、教えてくれと悠人は文句を言うが、まだはっきりしているわけではないからとはぐらかされた。
「でも、その人は校舎で何がしたいんだよ」
「さあ。そこまでは解らないね。ただすでに工場利用という以外にも仮説が立てられるくらいに、怪しさはないってことぐらいだよ。他に丁度いい場所がなかったんだろうとしか言えないな」
「ふうん。学校って丁度いいかなあ」
 高校生としてまだまだ学校にお世話になる身としては、休みの日には絶対に近づきたくない場所だ。色々と利用されているのはいいとして、学校が便利だというのは解らなかった。
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