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第18話 人工知能ってどんなもの?
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「そうだな。今やっているのは深層学習の次のステップの模索というところだ。少ないデータ数でも学習が可能かってところだな。つまり、人工知能に試行錯誤させるんだよ。人間の脳に近づける研究とも言われている。今までの深層学習には膨大な量のデータが必要だったが、分野によってはそれほどデータが集まらないこともある。その解決策だな。自分で必要な情報を考えて次の資料を探せるようになれば、最初に多くのデータを用意してやる必要がなくなるってわけだ」
「ああ。名人に勝ったっていう囲碁でも何万って棋譜が必要だって言ってたね」
「そう。既存の深層学習では網羅的に学習させる必要があるからだ。しかし、それは非常に効率が悪いし、データを集めるという作業が必要不可欠だ。これを何とか省略できないかというところだな。今では敵対学習なんていう、人工知能を複数用いて学習させるなんて方法もあるが、こちらもまだまだ問題はある。人工知能そのものが試行錯誤できるようになれば、もっと効率が上がるはずなんだ」
「へ、へえ」
いきなり難しい内容になったなと、悠人は曖昧な返事をしてしまった。大学や大学院で学ぶってこういうことなのかと、一気に圧倒されてしまう。高校までとは全く違うのだと聞いてはいるが、それを実感したのは初めてだった。
「まあ、詳しい内容については後ほどにしよう。夜にでもゆっくり説明するよ。手伝ってほしいのはこれ。データとして入力する前のものなんだが、チェックしてもらいたいんだよ。どうやってコンピュータに教え込むかという段階だな」
「それ、高校生でも出来ることなの?」
「もちろん。やることとしては品詞分解みたいなもんだよ。コンピュータの原理は解るよな。指示は一つ一つ的確に紐づけしないことには動かない。曖昧さが残っていたら駄目だ。そのために、どこをどう区切っていくかが重要になる。その手伝いさ」
「す、すでに難しそうなんだけど」
説明だけでは全然具体的に想像できないと、悠人は無理だと手を横に振った。何をどう間違えば、それが高校生の、それも特にコンピュータに詳しくない奴に手伝えるのか。
「そう言うなって。見てもらえば解るさ」
しかし和臣はそこで諦めることなく、部屋に無造作に散らかった紙を一枚拾い上げると、悠人に渡した。そこに書かれていたのは、意外にも大学の入試問題だった。しかも見慣れた英語の問題だ。
「えっと、なんで英語の問題なの?」
「以前、AIがT大に入れるかというプロジェクトがあったのは知っているか」
「ああ、何か聞いたことがある」
たしかTロボ君プロジェクトというのではなかったか。人工知能を使ってT大に合格できるだけの知能を持つことが出来るのか。そういう実験だった。たしか数学や世界史では偏差値が六十を超え、かなり話題になったものである。ただし、国語や英語などの文章を読解する問題は苦戦していた。そしてT大合格は今のところ不可能だという結論で終了している。
「そう。つまり人間の思考形態をAIで再現するのはまだまだ難しいというわけだ。しかし、あのプロジェクトがもたらした成果というのがある。あれによって見つかった課題も多い。それをクリアしていくこともまた、俺の研究の一つというわけ。試行錯誤するには人間が解ける問題を解きこなすというのも含まれるからね」
「へえ。って、和臣さん、そんな幾つも同時に研究してるの。それって他の大学院生もそんなことをしているの?」
「一般的な方法ではないが、俺はそうだな。教授の許可ももらってある。時間が勿体ないからね。AIに学習させている間はやることがないし」
いや、普通はそれでもやらないのではと、悠人はあっさり言い放つ和臣に呆れてしまう。この人、昔からそういうところがあったなと、遠い目をしてしまった。要するに天才なのだ。おかげで考えるレベルがおかしい。
「で、これを分解するってどうするわけ」
「ああ。ここに対応表があるから、それを使ってチェックしてくれ。終わったやつから入力していくから」
「了解」
これはついでに勉強にもなるなと、悠人は自分に声が掛かった理由に気づいた。おそらく、ごろごろして勉強なんてしないだろうと見抜かれたのだ。
対応表にはすでにやり方が全部載っているので、それを見ながらマーカーで色分けすればよかった。悠人はそれをやりつつ、渡された入試問題が出来るかもチェックすることにした。どうやらこれは東京の有名私立大の問題らしい。やたらと文章題が長いのが特徴だから、見ただけで解る。
「ここは絶対に志望しないな」
理系の問題はこれほど長くなかったが、非常に厄介だったのを覚えている。和臣が東京にいるから、東京の大学でもいいなとは思うものの、志望校選びは難問だった。そもそも、何をするべきか。これがまだはっきりとしない。そんな中、ネームバリューだけで選択するのは危険だろう。
ちらっと横にいる和臣を見ると、胡坐を掻いてそこにノートパソコンを置き、一心不乱に何かを打ち込んでいる。その華麗な指捌きにちょっと見惚れてしまう。
「どうした、もうできたか」
「いや。もうちょっと」
そうだ。手伝いの途中だったと作業に集中し直す。しかし、これを一つ一つ分解していくというのは厄介な作業だ。いくらコンピュータに覚え込ませるためとはいえ、確かに誰かに任せたくなる。しばらく集中してやっていたら、ようやく終わった。
「あれ」
しかし、そのカラフルになった英文を見ていると、解りやすいなと納得してしまう。英文ってこうやって出来ているのかと、一発で解るようになった。
「ああ。名人に勝ったっていう囲碁でも何万って棋譜が必要だって言ってたね」
「そう。既存の深層学習では網羅的に学習させる必要があるからだ。しかし、それは非常に効率が悪いし、データを集めるという作業が必要不可欠だ。これを何とか省略できないかというところだな。今では敵対学習なんていう、人工知能を複数用いて学習させるなんて方法もあるが、こちらもまだまだ問題はある。人工知能そのものが試行錯誤できるようになれば、もっと効率が上がるはずなんだ」
「へ、へえ」
いきなり難しい内容になったなと、悠人は曖昧な返事をしてしまった。大学や大学院で学ぶってこういうことなのかと、一気に圧倒されてしまう。高校までとは全く違うのだと聞いてはいるが、それを実感したのは初めてだった。
「まあ、詳しい内容については後ほどにしよう。夜にでもゆっくり説明するよ。手伝ってほしいのはこれ。データとして入力する前のものなんだが、チェックしてもらいたいんだよ。どうやってコンピュータに教え込むかという段階だな」
「それ、高校生でも出来ることなの?」
「もちろん。やることとしては品詞分解みたいなもんだよ。コンピュータの原理は解るよな。指示は一つ一つ的確に紐づけしないことには動かない。曖昧さが残っていたら駄目だ。そのために、どこをどう区切っていくかが重要になる。その手伝いさ」
「す、すでに難しそうなんだけど」
説明だけでは全然具体的に想像できないと、悠人は無理だと手を横に振った。何をどう間違えば、それが高校生の、それも特にコンピュータに詳しくない奴に手伝えるのか。
「そう言うなって。見てもらえば解るさ」
しかし和臣はそこで諦めることなく、部屋に無造作に散らかった紙を一枚拾い上げると、悠人に渡した。そこに書かれていたのは、意外にも大学の入試問題だった。しかも見慣れた英語の問題だ。
「えっと、なんで英語の問題なの?」
「以前、AIがT大に入れるかというプロジェクトがあったのは知っているか」
「ああ、何か聞いたことがある」
たしかTロボ君プロジェクトというのではなかったか。人工知能を使ってT大に合格できるだけの知能を持つことが出来るのか。そういう実験だった。たしか数学や世界史では偏差値が六十を超え、かなり話題になったものである。ただし、国語や英語などの文章を読解する問題は苦戦していた。そしてT大合格は今のところ不可能だという結論で終了している。
「そう。つまり人間の思考形態をAIで再現するのはまだまだ難しいというわけだ。しかし、あのプロジェクトがもたらした成果というのがある。あれによって見つかった課題も多い。それをクリアしていくこともまた、俺の研究の一つというわけ。試行錯誤するには人間が解ける問題を解きこなすというのも含まれるからね」
「へえ。って、和臣さん、そんな幾つも同時に研究してるの。それって他の大学院生もそんなことをしているの?」
「一般的な方法ではないが、俺はそうだな。教授の許可ももらってある。時間が勿体ないからね。AIに学習させている間はやることがないし」
いや、普通はそれでもやらないのではと、悠人はあっさり言い放つ和臣に呆れてしまう。この人、昔からそういうところがあったなと、遠い目をしてしまった。要するに天才なのだ。おかげで考えるレベルがおかしい。
「で、これを分解するってどうするわけ」
「ああ。ここに対応表があるから、それを使ってチェックしてくれ。終わったやつから入力していくから」
「了解」
これはついでに勉強にもなるなと、悠人は自分に声が掛かった理由に気づいた。おそらく、ごろごろして勉強なんてしないだろうと見抜かれたのだ。
対応表にはすでにやり方が全部載っているので、それを見ながらマーカーで色分けすればよかった。悠人はそれをやりつつ、渡された入試問題が出来るかもチェックすることにした。どうやらこれは東京の有名私立大の問題らしい。やたらと文章題が長いのが特徴だから、見ただけで解る。
「ここは絶対に志望しないな」
理系の問題はこれほど長くなかったが、非常に厄介だったのを覚えている。和臣が東京にいるから、東京の大学でもいいなとは思うものの、志望校選びは難問だった。そもそも、何をするべきか。これがまだはっきりとしない。そんな中、ネームバリューだけで選択するのは危険だろう。
ちらっと横にいる和臣を見ると、胡坐を掻いてそこにノートパソコンを置き、一心不乱に何かを打ち込んでいる。その華麗な指捌きにちょっと見惚れてしまう。
「どうした、もうできたか」
「いや。もうちょっと」
そうだ。手伝いの途中だったと作業に集中し直す。しかし、これを一つ一つ分解していくというのは厄介な作業だ。いくらコンピュータに覚え込ませるためとはいえ、確かに誰かに任せたくなる。しばらく集中してやっていたら、ようやく終わった。
「あれ」
しかし、そのカラフルになった英文を見ていると、解りやすいなと納得してしまう。英文ってこうやって出来ているのかと、一発で解るようになった。
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