悩みの夏は小さな謎とともに

渋川宙

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第23話 役所で調べろ

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「生きていくのに必要な授業と言ってほしいね。そのまま仕事に直結することを学んでいるんだからさ。にしても、今の問題はあの廃校の奴だよ。おかげで丁度よく親父に仕事を押し付けられたのはいいけどな」
「なるほど。サボりか」
「まあね。この暑さだ。サボりたくもなる。って、違うんだよ。変な奴だったら困るだろ。一応俺、青年団のリーダーだしさ。変な奴だと噂されているんだったら、ちゃんと真相を突き止めておくべきだと思うんだよ」
「ほう、青年団か。それもリーダー。そいつはご愁傷様」
「いやいや、何でだよ。憐れまれる要素は何一つ存在しないから。それに楽しいぜ、青年団」
「嘘吐け。面倒な、そしてどうでもいい会合ばっかりやってるんだろ」
「なんだとう。バーベキュー大会だってあるんだぞ。たまに花火もやってるぞ」
「あのう」
 二人に会話をさせていると延々漫才のようなやり取りが続いてしまう。仕方なく、一番年下の悠人が止めに入る。
「ああ、悪い悪い。久々だからついね。楽しくなっちゃって。それにこいつの偏見がひどいからな。青年団を舐めるなよ。でだ、変な奴だったら困るって話だよ。それに町の小学校なんだから、何をしているのか。ちゃんと知らせてもらわないとね」
「ということは、許可は取っていないのか。そんなことはないだろう」
「ううん。そこは確認していなかったな。でもさ、行政には許可を取ってるのかもしれないけど、挨拶に来ないかね、普通」
「都会の人なのかもね。そういう挨拶が必要ないと思っているのかもしれないよ」
 青年団に挨拶なんて、悠人も思いつかない。ということは、利用している人も大都会から来たのならば挨拶には行かないだろう。
「そこは、解らんかなあ。というか、指導しないんだろうか。許可した奴。挨拶回りはしなさいよって常識だろ」
「郷に入っては郷に従えと言うが、挨拶をどこにすべきか悩んでいるのかもしれないだろ。田舎の人間関係なんて、外から見たら全く解らないものだ。それより、まずは役所に行って調べるべきだな。利用申請が出ているのかどうか。出ていなければ怪しい奴だろうけど、おそらくそういう手続きはちゃんと済ませているはずだ。水道や電気を使用するにも、手続きを踏んでいないとどうしようもないからな。掃除が出来たということは、それらがすでに使用できる状態になっているということだろう」
「なるほど、さすがはT大学院生。頭の出来が違うぜ。そうだな。よし、昼にでも行ってくるか。役所に親戚が勤めているから、すぐに解るはずだ」
 ようやく具体的になってきたなと、悠人もそれでほっとする。しかし、一体何をやっているのやら。しばらくイートインスペースで見張っていたが、沙希が言っていた特徴に合致する人はやって来なかった。
「今日は来ないのかもな」
「まあ、確かに毎日いるとは限らねえか。というか、活動しているのは夜らしいし。いや、夕方なのかな。どっちにしろ、昼飯が毎日必要かどうかは不明だよな」
 目当ての人物は現れず、お昼時になるにつれて混んで来たこともあり、三人は一応買い物していないかと店内を一周して、それでも見つからずに撤退することに決めたのだった。



「お昼は冷麺よ」
「あっ、はい。いただきます」
 家に戻ると、沙希が昼食に冷麺を用意して待っていた。さっきラーメンを食べたばかりだが、悠人はちゃっかり食べる。だが、選択をミスしたなとは思った。中華麺が連続する。それでも、味も食べ方も全く違うから苦にはならない。でも、うどんにしておけばよかったと後悔してしまう。
 しかも高校生だからと思ってか、麺が大盛だった。横に座った和臣はようやく食べることが出来るようになったのか、冷麺はずずっと一気に食べていた。それでも、和臣の皿に載っていた量は悠人の半分ほどだったが。ひょっとすると、和臣の分の半人前が悠人の皿に移動していたのかもしれない。困ったものだ。
「で、どうだい。調査は。進んだのか」
 麦茶を美味そうに飲みながら、信明がにやにやと訊いてきた。和臣が積極的に動いているとあって、面白くなってきたらしい。悠人としても、これほど和臣が協力してくれるとは思っていなかったから、意外な気はしていた。
「今日の昼に、宮本が役所に利用許可が出ているか確認に行ってくれる。そうすれば誰がどういう目的で利用をしようとしているのか、一気に解るよ」
 しかし、和臣の答えは素っ気ない。すぐに解決するだろうと、もう興味を失くしてしまったかのようだ。まあ、朝もすっかり忘れていたから、ずっとこの問題を考えているわけではない。志津が絡んでいたから気になっただけなのだ。しかし、それも頭を悩ませるほどのことでもないと考えているのだろう。
「なあんだ。最終的にはお役所で確認か。こう、金田一耕助とか明智小五郎みたいに解決するのかと思ったのに」
「馬鹿馬鹿しい。それほど謎でもないし、大騒ぎるするほどのことでもない」
「おっ、そうなのか」
「仮説としては三つある。まあ、使用者が解れば解決だよ」
 どういうことだと食いつく信明に、和臣は待っていれば解ると教えてくれない。そう言えば、朝の段階でも解っていた感じだったし、何なのだろう。でも、雑草が生えっ放しなのはおかしいと感じているようだったけど。なぜそんなに簡単に納得する答えが見つかったのか。悠人も思わず和臣を見るが、和臣はずずっと麦茶を飲んで相手にしてくれない。
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