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第28話 漫才みたい
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「年末年始とか、夏とか。短期集中でバイトしたもんだよ。特に宴会場でのバイトだったから手際は命みたいなところがあったからね」
「へえ。宴会場でのバイトか。でも、確かにその期間ならば理系でもバイトできますもんね」
「そうそう。一二年の間しか出来ないけど、いい経験になるからやっておくべきだよね。まあ、単位を落とさなければだけどな」
和哉は何事もやりようだよと笑う。こうして、二人の客を迎えての夕食がスタートした。
「それでは、こうやって揃っての食事もなかなかないってことで、乾杯」
信明がそう音頭を取り、
「乾杯」
他はそれぞれに注いだ飲み物の入ったコップを掲げて乾杯した。悠人は買ってもらったコーラを飲む。
「くう、夏だね」
「やっぱりビールがいい」
和哉と哲太がビールを飲みほして、それぞれ美味しいと感想を言い合っている。ちなみに哲太も手土産として酒を持参していたから、飲み物はそこらの居酒屋並みに充実していた。あれこれ並んだ酒の瓶を見て、大人っていいなと悠人はちょっと羨ましくなる。あと三年は我慢だ。
「で、そう言えばどうして谷原さんがここに。何か用事があったんですか」
「酷いな。後輩が帰省しているっていうから、わざわざ会いに来たのにさ」
「こいつがここにいるのって珍しいですもんね。ここに戻ってくるのなんて何年ぶりだよ」
和哉の意見にそうだぞと哲太が頷く。初対面だというのに哲太はもう和哉と息がぴったりのようだ。それに対し、和臣は鬱陶しいなあと顔を顰めた。
「お盆はも年始も帰って来てるよ」
「そうなのか」
意外だと哲太は大袈裟に仰け反る。そして卒業以来、昨日再会するまで会っていなかったと、なんで今まで連絡をくれなかったなんて酷いと怒鳴った。いつの間に飲んだのか、すでに瓶ビールが一つ空になっているから、ちょっと酔っているのだろう。
「なぜいちいち連絡する必要があるんだ。面倒臭い。それに帰ってきても一日か二日だ。こうやって長くいるのは久々だよ」
「かあ、東京の方がいいってか。そりゃあ都会の方が便利だろうよ。でも、故郷のことを忘れちゃ駄目だ」
「いや、忘れていないから。それに忙しいだけだ」
酒が入ってより絡む哲太に、それほど飲んでいない和臣は軽くあしらう。いつも通りのやり取りだ。餃子を堪能しつつそれを見ていた悠人は、漫才みたいだなと笑ってしまう。息がぴったりというか、ああ言えばこう言うというか。お互いに遠慮なく言い合っているのが解って面白い。
「いやあ、和臣にも友達がいてよかったなあ、母さん。宮本君とは寄り合いでよく会うが、こんなに和臣と仲がいいなんて知らなかったぞ」
「ええ、本当ね。宮本君、いつでもいらしてね」
「もちろんです」
でもって、両親二人はそんな感想を漏らしている。哲太は任せてくださいと胸を叩いているが、一体どれだけ自分のことを語らないのやら。悠人はこの夏で和臣の認識が大きく変わってしまうのに驚きを隠せない。
従弟には普通に接しているくせに、他の人の前では偏屈キャラであるらしい。しかもそれは両親にまで同じとなると、年下の悠人にだけ接し方を変えているということか。それはそれで何だか複雑な気分になる。一体どちらが素なのだろうか。
「宮本がここに来るなら、ついでに畑を手伝ってもらえばいい」
和臣は和臣でそんなことを言い出す。一応は畑のことを心配していたのか。しかし、自分は手伝うつもりはないらしい。
「そのくらいはお安い御用。草むしりぐらいならば手伝いますよ。って、そういやお前、昔から畑や田んぼを手伝ってないんだって。そんな怠惰なことじゃ駄目だぞ。だから筋肉がないんだな」
「筋力は関係ないだろ。それに日差しが苦手なんだ」
「女子かよ。日焼けしたくないってか。だからそんな生白い肌をしているんだな」
「日焼けは男女ともに良くないんだよ。それに、そうやってすぐに男女差別するのは良くないぞ」
「話をすり替えようとするなよ。そうやって屁理屈ばっかりこねて手伝わないんだな」
「屁理屈じゃない。正論だ」
とまあ、こんな感じでしばらく騒がしかった。しかし、志津がそろそろ休むと自室に戻ったところで、馬鹿騒ぎをしていられなくなる。お腹も大分膨れ、酒もほどよく回っていることから、ここからは話し合いだなと声を落として喋ることになった。
「それで、和臣が珍しく出掛けていた理由が、廃校に出入りしている奴を探るためだって。なかなか興味深いね。面倒臭がりなのに。そういう行動力はあったんだ」
和哉がハイボールを片手に、あの廃校のことを話題にする。車の中でざっくりと聞いただけだが、どうして探る気になったのかが解らない。
「ああ、あれですか。ばあちゃんが何か企んでいるからですよ。そういう時は必ず理由があって、面倒なことになるんです。それで宮本、確認に行ったのか」
「おう。役所のおっさんは親戚だからな。行ったらすぐに教えてくれたぜ」
こういう時、田舎のネットワークって凄いなと思わされる。都会ではそんなひょいひょいと情報を教えてくれることはない。
「おっちゃんによると、どうやら関西のK大学が使うって申請を出しているらしいぜ。ただ、何に使うかまでは教えてくれなかったな。まだ準備中みたいだし、これから詳しくは詰めていくって感じらしいよ。ってなわけで、役所を巻き込んでやっているのは間違いなし。つまりはまあ、不審な奴の身元は確かなわけだ。ついでに危ないことをやっているわけでもないのも間違いない」
「やはり、大学関係者か」
哲太の報告に、ふむふむと和臣は頷いた。そう言えば、大学でもベンチャー企業があるとか、和臣は言っていなかったか。悠人はなるほどねと思うと同時に、何をやる気なんだろうと疑問になる。
「へえ。宴会場でのバイトか。でも、確かにその期間ならば理系でもバイトできますもんね」
「そうそう。一二年の間しか出来ないけど、いい経験になるからやっておくべきだよね。まあ、単位を落とさなければだけどな」
和哉は何事もやりようだよと笑う。こうして、二人の客を迎えての夕食がスタートした。
「それでは、こうやって揃っての食事もなかなかないってことで、乾杯」
信明がそう音頭を取り、
「乾杯」
他はそれぞれに注いだ飲み物の入ったコップを掲げて乾杯した。悠人は買ってもらったコーラを飲む。
「くう、夏だね」
「やっぱりビールがいい」
和哉と哲太がビールを飲みほして、それぞれ美味しいと感想を言い合っている。ちなみに哲太も手土産として酒を持参していたから、飲み物はそこらの居酒屋並みに充実していた。あれこれ並んだ酒の瓶を見て、大人っていいなと悠人はちょっと羨ましくなる。あと三年は我慢だ。
「で、そう言えばどうして谷原さんがここに。何か用事があったんですか」
「酷いな。後輩が帰省しているっていうから、わざわざ会いに来たのにさ」
「こいつがここにいるのって珍しいですもんね。ここに戻ってくるのなんて何年ぶりだよ」
和哉の意見にそうだぞと哲太が頷く。初対面だというのに哲太はもう和哉と息がぴったりのようだ。それに対し、和臣は鬱陶しいなあと顔を顰めた。
「お盆はも年始も帰って来てるよ」
「そうなのか」
意外だと哲太は大袈裟に仰け反る。そして卒業以来、昨日再会するまで会っていなかったと、なんで今まで連絡をくれなかったなんて酷いと怒鳴った。いつの間に飲んだのか、すでに瓶ビールが一つ空になっているから、ちょっと酔っているのだろう。
「なぜいちいち連絡する必要があるんだ。面倒臭い。それに帰ってきても一日か二日だ。こうやって長くいるのは久々だよ」
「かあ、東京の方がいいってか。そりゃあ都会の方が便利だろうよ。でも、故郷のことを忘れちゃ駄目だ」
「いや、忘れていないから。それに忙しいだけだ」
酒が入ってより絡む哲太に、それほど飲んでいない和臣は軽くあしらう。いつも通りのやり取りだ。餃子を堪能しつつそれを見ていた悠人は、漫才みたいだなと笑ってしまう。息がぴったりというか、ああ言えばこう言うというか。お互いに遠慮なく言い合っているのが解って面白い。
「いやあ、和臣にも友達がいてよかったなあ、母さん。宮本君とは寄り合いでよく会うが、こんなに和臣と仲がいいなんて知らなかったぞ」
「ええ、本当ね。宮本君、いつでもいらしてね」
「もちろんです」
でもって、両親二人はそんな感想を漏らしている。哲太は任せてくださいと胸を叩いているが、一体どれだけ自分のことを語らないのやら。悠人はこの夏で和臣の認識が大きく変わってしまうのに驚きを隠せない。
従弟には普通に接しているくせに、他の人の前では偏屈キャラであるらしい。しかもそれは両親にまで同じとなると、年下の悠人にだけ接し方を変えているということか。それはそれで何だか複雑な気分になる。一体どちらが素なのだろうか。
「宮本がここに来るなら、ついでに畑を手伝ってもらえばいい」
和臣は和臣でそんなことを言い出す。一応は畑のことを心配していたのか。しかし、自分は手伝うつもりはないらしい。
「そのくらいはお安い御用。草むしりぐらいならば手伝いますよ。って、そういやお前、昔から畑や田んぼを手伝ってないんだって。そんな怠惰なことじゃ駄目だぞ。だから筋肉がないんだな」
「筋力は関係ないだろ。それに日差しが苦手なんだ」
「女子かよ。日焼けしたくないってか。だからそんな生白い肌をしているんだな」
「日焼けは男女ともに良くないんだよ。それに、そうやってすぐに男女差別するのは良くないぞ」
「話をすり替えようとするなよ。そうやって屁理屈ばっかりこねて手伝わないんだな」
「屁理屈じゃない。正論だ」
とまあ、こんな感じでしばらく騒がしかった。しかし、志津がそろそろ休むと自室に戻ったところで、馬鹿騒ぎをしていられなくなる。お腹も大分膨れ、酒もほどよく回っていることから、ここからは話し合いだなと声を落として喋ることになった。
「それで、和臣が珍しく出掛けていた理由が、廃校に出入りしている奴を探るためだって。なかなか興味深いね。面倒臭がりなのに。そういう行動力はあったんだ」
和哉がハイボールを片手に、あの廃校のことを話題にする。車の中でざっくりと聞いただけだが、どうして探る気になったのかが解らない。
「ああ、あれですか。ばあちゃんが何か企んでいるからですよ。そういう時は必ず理由があって、面倒なことになるんです。それで宮本、確認に行ったのか」
「おう。役所のおっさんは親戚だからな。行ったらすぐに教えてくれたぜ」
こういう時、田舎のネットワークって凄いなと思わされる。都会ではそんなひょいひょいと情報を教えてくれることはない。
「おっちゃんによると、どうやら関西のK大学が使うって申請を出しているらしいぜ。ただ、何に使うかまでは教えてくれなかったな。まだ準備中みたいだし、これから詳しくは詰めていくって感じらしいよ。ってなわけで、役所を巻き込んでやっているのは間違いなし。つまりはまあ、不審な奴の身元は確かなわけだ。ついでに危ないことをやっているわけでもないのも間違いない」
「やはり、大学関係者か」
哲太の報告に、ふむふむと和臣は頷いた。そう言えば、大学でもベンチャー企業があるとか、和臣は言っていなかったか。悠人はなるほどねと思うと同時に、何をやる気なんだろうと疑問になる。
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