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第35話 草刈りだ!
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「それに俺ってさ、ここに友達がいないんだよねえ。生まれ育った町なんだけど、浮いていたからなあ。それで志津さんがあれこれ面倒を見てくれたんだけど」
しかし、理由はそれだけではなかった。久遠は長髪を弄りながら、ここは故郷だから選んだものの、失敗したかなとまで言っている。全く知らない土地の方が割り切って色々とできたかもしれないとぼやいている。
「えっ、あの高見さんって何歳なんですか。というか、どうしてばあちゃんが関わってくるのかと謎だったんですけど、ここの出身だったんですね」
「ああ。そこの和臣君のお父さんと同い年だよ」
「マジか」
再び、悠人は固まることになった。全然見えない。もっと若く見える。長髪のせいもあるのだろうが、とても四十代半ばには見えなかった。それなのにあの信明と同い年。いやはや、信明が年相応の相貌をしているだけなのか。日焼けしている健康的な信明の顔を思い出し、比べても無意味かなとも思う。
「大学関係者って若く見られがちだよなあ。久遠さんも例外ではないわけだ」
悠人の言いたいことが解った和哉が苦笑する。因みにこの人もまったく二十八に見えなかった。世の中、見た目で年齢は推測できないものらしい。それとも、好きなことをやってるってアンチエイジング効果でもあるのだろうか。いや、それを言ってしまうと信明が農業を嫌々やっているようになってしまう。ううむ、大人の見た目って難しい問題だ。
「まあ、そういうわけで、ここには知り合いもいるんだよ。でもね、浮いた子だったからさ、友達と呼べる人はいないし。そんなんだったから、昔から志津さんに気に掛けてもらってたんだよね。志津さんが何かと取り持ってくれて、子供会とか夏祭りで困っていると助けてくれてさ。無理に輪に入らなくても楽しめるようにしてくれてたんだ」
「なるほど」
解りやすいと、悠人は苦笑しつつ和臣を見てしまった。和臣もそういう場では困るタイプだろうと思ったからだ。
「俺はそもそも参加しなかった」
視線に気づき、和臣が憮然と答える。なるほど、そもそも参加しないタイプだったか。それは大いに納得できる。だって、和臣が金魚すくいをしたり和菓子を買ってもらって楽しんでいる図が想像できない。それに二十年ほど前と和臣が子供の頃では対応も違っただろうから、昔は絶対に参加だったのだろう。それで久遠は困ったわけか。
「それならばますます、周辺住民と一緒に草刈りしましょう。顔を知ってもらっておけば、何か困った時にすぐに助けてもらえますよ。こういう田舎だと特に互いに話し掛けるタイミングが大事ですし、不審がられたままでは実験も上手くいきません。俺が何とかしますよ」
しかし、志津が話題を提供してくれ、青年団も寄り合いの大人たちも久遠のことを知っている。これこそチャンスと社長である和哉は立ち上がると、任せてくれと胸を叩いた。こうして、悠人たちは何故か次は草刈り大作戦へと巻き込まれるのだった。
草刈りは早速翌日の朝に行われることになった。和哉は二十八で社長をやるくらいだから本当に機動力のある人で、さっさと哲太を捕まえると、酒を酌み交わした仲だろと協力を持ちかけた。そして哲太はもともとがお節介好きなものだから、あっさりと承諾。すぐに青年団へと連絡を入れ、人手を簡単に集めてしまった。それぞれが自宅から草刈り機を持ってきてくれて、さくさくと仕事を分担して取り掛かってくれる。
「いやあ、まさかこの町でロボット研究が行われようとしてたなんて、びっくりだよな」
「そうだよな。そういうハイテクとは無縁な町だとばかり思っていたのに。ここに誰か出入りしているらしいってのは知ってたけどさ」
そんな会話をしつつ、青年団十名によって草は綺麗に刈り取られることになった。悠人も手伝いに参加し、大八車を使って刈り取られた草を運ぶ役目をこなした。久遠や和臣ももちろん協力したが、あまり戦力にはならなかったようだ。普段から日光の下にいないせいか、すぐに暑さにへばってしまった。三十分もしないうちに日陰に避難している。
一方、この草刈りをプロデュースした和哉は、みんなにお茶やジュース、軽食をふるまって労いをする係だった。ついでに昨日のうちに久遠から聞き出したロボットの概略を、簡単に説明することまでやっている。
青年団が草刈りをやるとあって周辺からも人がやって来ていたので、これはいいアピールになっただろう。ノートパソコンに映し出されたロボットの完成予想図を見て、あれこれと話が盛り上がっている。
「凄いよね、谷原さん」
「ああ。だから巻き込みたくないんだよな。宮本も面倒な奴だが、あいつは勝手に一人で動くだけだからな。でも、谷原さんは何かと周囲を巻き込んで大きな動きをするから。まったく、あの日家に泊めるんじゃなかった」
「あのさ、昔、何かあったの」
日陰で休憩していた和臣に話しかけると、面倒なことになった、苦々しいとの回答があった。しかも以前に似たようなことがあったらしいが、詳しく語るのも嫌なほどの思い出らしい。
しかし、理由はそれだけではなかった。久遠は長髪を弄りながら、ここは故郷だから選んだものの、失敗したかなとまで言っている。全く知らない土地の方が割り切って色々とできたかもしれないとぼやいている。
「えっ、あの高見さんって何歳なんですか。というか、どうしてばあちゃんが関わってくるのかと謎だったんですけど、ここの出身だったんですね」
「ああ。そこの和臣君のお父さんと同い年だよ」
「マジか」
再び、悠人は固まることになった。全然見えない。もっと若く見える。長髪のせいもあるのだろうが、とても四十代半ばには見えなかった。それなのにあの信明と同い年。いやはや、信明が年相応の相貌をしているだけなのか。日焼けしている健康的な信明の顔を思い出し、比べても無意味かなとも思う。
「大学関係者って若く見られがちだよなあ。久遠さんも例外ではないわけだ」
悠人の言いたいことが解った和哉が苦笑する。因みにこの人もまったく二十八に見えなかった。世の中、見た目で年齢は推測できないものらしい。それとも、好きなことをやってるってアンチエイジング効果でもあるのだろうか。いや、それを言ってしまうと信明が農業を嫌々やっているようになってしまう。ううむ、大人の見た目って難しい問題だ。
「まあ、そういうわけで、ここには知り合いもいるんだよ。でもね、浮いた子だったからさ、友達と呼べる人はいないし。そんなんだったから、昔から志津さんに気に掛けてもらってたんだよね。志津さんが何かと取り持ってくれて、子供会とか夏祭りで困っていると助けてくれてさ。無理に輪に入らなくても楽しめるようにしてくれてたんだ」
「なるほど」
解りやすいと、悠人は苦笑しつつ和臣を見てしまった。和臣もそういう場では困るタイプだろうと思ったからだ。
「俺はそもそも参加しなかった」
視線に気づき、和臣が憮然と答える。なるほど、そもそも参加しないタイプだったか。それは大いに納得できる。だって、和臣が金魚すくいをしたり和菓子を買ってもらって楽しんでいる図が想像できない。それに二十年ほど前と和臣が子供の頃では対応も違っただろうから、昔は絶対に参加だったのだろう。それで久遠は困ったわけか。
「それならばますます、周辺住民と一緒に草刈りしましょう。顔を知ってもらっておけば、何か困った時にすぐに助けてもらえますよ。こういう田舎だと特に互いに話し掛けるタイミングが大事ですし、不審がられたままでは実験も上手くいきません。俺が何とかしますよ」
しかし、志津が話題を提供してくれ、青年団も寄り合いの大人たちも久遠のことを知っている。これこそチャンスと社長である和哉は立ち上がると、任せてくれと胸を叩いた。こうして、悠人たちは何故か次は草刈り大作戦へと巻き込まれるのだった。
草刈りは早速翌日の朝に行われることになった。和哉は二十八で社長をやるくらいだから本当に機動力のある人で、さっさと哲太を捕まえると、酒を酌み交わした仲だろと協力を持ちかけた。そして哲太はもともとがお節介好きなものだから、あっさりと承諾。すぐに青年団へと連絡を入れ、人手を簡単に集めてしまった。それぞれが自宅から草刈り機を持ってきてくれて、さくさくと仕事を分担して取り掛かってくれる。
「いやあ、まさかこの町でロボット研究が行われようとしてたなんて、びっくりだよな」
「そうだよな。そういうハイテクとは無縁な町だとばかり思っていたのに。ここに誰か出入りしているらしいってのは知ってたけどさ」
そんな会話をしつつ、青年団十名によって草は綺麗に刈り取られることになった。悠人も手伝いに参加し、大八車を使って刈り取られた草を運ぶ役目をこなした。久遠や和臣ももちろん協力したが、あまり戦力にはならなかったようだ。普段から日光の下にいないせいか、すぐに暑さにへばってしまった。三十分もしないうちに日陰に避難している。
一方、この草刈りをプロデュースした和哉は、みんなにお茶やジュース、軽食をふるまって労いをする係だった。ついでに昨日のうちに久遠から聞き出したロボットの概略を、簡単に説明することまでやっている。
青年団が草刈りをやるとあって周辺からも人がやって来ていたので、これはいいアピールになっただろう。ノートパソコンに映し出されたロボットの完成予想図を見て、あれこれと話が盛り上がっている。
「凄いよね、谷原さん」
「ああ。だから巻き込みたくないんだよな。宮本も面倒な奴だが、あいつは勝手に一人で動くだけだからな。でも、谷原さんは何かと周囲を巻き込んで大きな動きをするから。まったく、あの日家に泊めるんじゃなかった」
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