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第34話 もっさりでビックリ
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「それで、人工知能を利用したいということですが、一体何の研究をされているんですか。お見受けしたところ機械関係のようですけど」
「ああ、そうそう。専門家の意見を聞きたいから説明しよう。俺はロボットの研究をしているんだよね。それもこういう過疎の町や村で役立てられるような、身近な存在であり生活のサポートをしてくれるロボットというのを目指しているんだ。将来的には農作業の手伝いや介護現場での活躍を見込んでいる。そこでここを借りて、具体的にどういうものが必要なのか実地で調査しつつ試す予定にしているんだよね。組み立てるのは主に大学でやるけど、ここで微調整や修理を出来るようにしようと思って、あれこれと準備していたんだ」
「ああ、なるほど。旋盤などの機械を動かしていたために、それで悲鳴のような音がしたってことですね」
「噂の元になっているのはそうだね。今はまだ大学でメインの部分をやっている段階だから、どうしてもここに来るのが夜になるんだよ。荷物は持って来たいから、夜でも移動しないとって思うんだけど、移動時間もそれなりに掛かるからね。それに旋盤を使ったりするとどうしても、大きな音が出てしまうからなあ」
「なるほど、色々と大変そうですね」
「着想段階では考えていなかったことだったよ。それに騒音問題という点を考えても、学校はいいんだよ。まさか聞かれていたというのは予想外だったけど、ちょっと中心地から離れているだろ。大きな音が出ても、さほど近隣に迷惑が掛からないんだよね。あと、中島さんが聞いたモーター音はドローンのものだね。ドローンを試しに飛ばすにも、人がいなくて広いところが便利だ。校庭って丁度いいんだよね。あの時はどのくらいの暗さまで対応できるか実験していてね。だから音しか聞こえなかったんだろうね。ラジコンの音だと思われても仕方ないかも」
「へえ」
すごく考え抜かれた上での学校利用だったんだと、悠人は感心してしまった。蓋を開けてみればなんてことはない。謎はどこにもなかったわけか。どれもこれも、久遠がやっていたことで間違いない。
「でも、それなら表の草刈りはした方が」
しかしふと、この噂を信じる原因となった校庭を思い出し、久遠に提案する。すると、まだ学生たちが来ていなくて手が回らないとのことだった。必要な場所から片づけているものだから、どうしても後回しになっているという。
「もちろん、校庭側が使えると楽なんだけどね。いやあ、昔はグラウンドだったから草なんて生えないんじゃないかと期待しててさ。来てみてびっくりだよ。もっさり生えてるんだもん。それも背丈の大きな草ばっかりだろ。これは一人では無理だと諦めたんだ。学生が来ないことには手を付けられないなって思っちゃって」
「そうですよね。普通、あんまり生えていないイメージがあります」
だって、砂漠みたいなもんだしと悠人も同意してしまう。実際にあの雑草だらけの状態を見ていなければ、生えていても芝生くらいにしか想像できないかもしれない。
「グラウンドに草が生えていないのは生徒たちが毎日のように踏むからだ。もともと砂漠のようにとはいかないだろうね。知ってるか、隣の県にある砂丘だって草が生えるんだよ。だから、観光地として維持するために草むしりをしているんだ。この辺は周囲が田んぼや畑ですからね。ますます他の砂地の場所より草は生えやすかったんでしょう。湿度は適度にありますし、種も飛んできやすいんでしょうね」
和臣が悠人と久遠に向けて、それは環境条件上仕方ないのではと冷静に説明してくれた。まあ、何にせよ、雑草がもっさり生えていて困った久遠は、一先ず放置することにしたわけだ。しばらくはそのままでも困らないし、いずれは学生たちがやってくれる。そう見込んでの放置だった。
「それならば、哲太君に頼んで刈ってもらえばいいんだよ、青年団のリーダーだから、人手を集めるのもお手の物だろう。時間もそれほど掛からないだろうから、すぐにやってくれますよ。それに早い段階で周辺住民と知り合いになっておけば、調査や試験に簡単に協力してもらえますし、お裾分けももらえますよ」
いいことを思いついたと和哉がそう提案する。すると、久遠は頼んでも大丈夫かなと不安そうだ。この人、同じ理系の人とは喋るのに問題がないが、その他の人たちと喋るのが苦手らしい。
「そう言えば、老人ホームには挨拶に行ったのに、他には挨拶していないそうですね。それはまたどうしてですか」
「ああ、それは顔馴染みもいるというからというのもあるし、うちの母親が介護士してるし、挨拶しないわけにはいかなかったというか。老人ホームに関しては無視できなかったんだよ」
「ああ、そういうことか」
知り合いがいるのに挨拶に行かないのは不自然だ。しかし、それならばますます近所に声を掛けやすいような気もするが。まあ、遠慮があるのかもしれない。草刈りは何かと大変な作業だ。普段は農作業に追われている町の人たちに迷惑を掛けられないと考えていたのだろう。
「ああ、そうそう。専門家の意見を聞きたいから説明しよう。俺はロボットの研究をしているんだよね。それもこういう過疎の町や村で役立てられるような、身近な存在であり生活のサポートをしてくれるロボットというのを目指しているんだ。将来的には農作業の手伝いや介護現場での活躍を見込んでいる。そこでここを借りて、具体的にどういうものが必要なのか実地で調査しつつ試す予定にしているんだよね。組み立てるのは主に大学でやるけど、ここで微調整や修理を出来るようにしようと思って、あれこれと準備していたんだ」
「ああ、なるほど。旋盤などの機械を動かしていたために、それで悲鳴のような音がしたってことですね」
「噂の元になっているのはそうだね。今はまだ大学でメインの部分をやっている段階だから、どうしてもここに来るのが夜になるんだよ。荷物は持って来たいから、夜でも移動しないとって思うんだけど、移動時間もそれなりに掛かるからね。それに旋盤を使ったりするとどうしても、大きな音が出てしまうからなあ」
「なるほど、色々と大変そうですね」
「着想段階では考えていなかったことだったよ。それに騒音問題という点を考えても、学校はいいんだよ。まさか聞かれていたというのは予想外だったけど、ちょっと中心地から離れているだろ。大きな音が出ても、さほど近隣に迷惑が掛からないんだよね。あと、中島さんが聞いたモーター音はドローンのものだね。ドローンを試しに飛ばすにも、人がいなくて広いところが便利だ。校庭って丁度いいんだよね。あの時はどのくらいの暗さまで対応できるか実験していてね。だから音しか聞こえなかったんだろうね。ラジコンの音だと思われても仕方ないかも」
「へえ」
すごく考え抜かれた上での学校利用だったんだと、悠人は感心してしまった。蓋を開けてみればなんてことはない。謎はどこにもなかったわけか。どれもこれも、久遠がやっていたことで間違いない。
「でも、それなら表の草刈りはした方が」
しかしふと、この噂を信じる原因となった校庭を思い出し、久遠に提案する。すると、まだ学生たちが来ていなくて手が回らないとのことだった。必要な場所から片づけているものだから、どうしても後回しになっているという。
「もちろん、校庭側が使えると楽なんだけどね。いやあ、昔はグラウンドだったから草なんて生えないんじゃないかと期待しててさ。来てみてびっくりだよ。もっさり生えてるんだもん。それも背丈の大きな草ばっかりだろ。これは一人では無理だと諦めたんだ。学生が来ないことには手を付けられないなって思っちゃって」
「そうですよね。普通、あんまり生えていないイメージがあります」
だって、砂漠みたいなもんだしと悠人も同意してしまう。実際にあの雑草だらけの状態を見ていなければ、生えていても芝生くらいにしか想像できないかもしれない。
「グラウンドに草が生えていないのは生徒たちが毎日のように踏むからだ。もともと砂漠のようにとはいかないだろうね。知ってるか、隣の県にある砂丘だって草が生えるんだよ。だから、観光地として維持するために草むしりをしているんだ。この辺は周囲が田んぼや畑ですからね。ますます他の砂地の場所より草は生えやすかったんでしょう。湿度は適度にありますし、種も飛んできやすいんでしょうね」
和臣が悠人と久遠に向けて、それは環境条件上仕方ないのではと冷静に説明してくれた。まあ、何にせよ、雑草がもっさり生えていて困った久遠は、一先ず放置することにしたわけだ。しばらくはそのままでも困らないし、いずれは学生たちがやってくれる。そう見込んでの放置だった。
「それならば、哲太君に頼んで刈ってもらえばいいんだよ、青年団のリーダーだから、人手を集めるのもお手の物だろう。時間もそれほど掛からないだろうから、すぐにやってくれますよ。それに早い段階で周辺住民と知り合いになっておけば、調査や試験に簡単に協力してもらえますし、お裾分けももらえますよ」
いいことを思いついたと和哉がそう提案する。すると、久遠は頼んでも大丈夫かなと不安そうだ。この人、同じ理系の人とは喋るのに問題がないが、その他の人たちと喋るのが苦手らしい。
「そう言えば、老人ホームには挨拶に行ったのに、他には挨拶していないそうですね。それはまたどうしてですか」
「ああ、それは顔馴染みもいるというからというのもあるし、うちの母親が介護士してるし、挨拶しないわけにはいかなかったというか。老人ホームに関しては無視できなかったんだよ」
「ああ、そういうことか」
知り合いがいるのに挨拶に行かないのは不自然だ。しかし、それならばますます近所に声を掛けやすいような気もするが。まあ、遠慮があるのかもしれない。草刈りは何かと大変な作業だ。普段は農作業に追われている町の人たちに迷惑を掛けられないと考えていたのだろう。
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