22 / 56
第22話 怪しい
しおりを挟む
「今度こそ厄介事か」
隠さないと判断した法明に対し、弓弦は無遠慮に問い掛ける。その素早さに思わず桂花は弓弦の足を踏んでいた。
「いてっ」
「もう少し間合いを考えなさいよ」
「うるせえなあ。間合いもくそもないだろ。厄介事が舞い込もうとしているんだぞ。緊急かつ早急に止めなきゃ駄目だろ」
「あの、お二人ともそんな心配するような案件ではありませんから、どうぞ落ち着いてください」
「本当ですか」
「本当か」
桂花と弓弦のケンカを止めようとした法明だが、その二人から同じタイミングで嘘を吐くなと睨まれる羽目になる。法明は困ったような顔をしたが、心配かけているのは自分かと溜め息を吐く。
「詳しくは後で篠原さんが来た時にお話ししますよ。ともかく、危険なことではありません」
「ふうん」
一先ず隠し事はしないという言質が取れたことに安心したのか、弓弦はそれ以上の追及はしなかった。そして、入って来た患者の処方箋を受け取るために、調剤室を出て行ってしまう。しかし、残された桂花は納得できず法明を見てしまう。すると法明も困った顔をしたままだった。
「あの、本当に大丈夫ですか。変なことを頼まれているようでしたら、ガツンと言わないと駄目ですよ。優しい態度を見せるとつけあがる人っているんですから。善意のつもりが悪事に手を貸しているってこともあるんですからね」
「え、ええ。それは大丈夫ですし、篠原さんはそんな人じゃないですよ。それよりその、緒方さん。篠原さんのお話はかなり突飛な内容も出てくるかと思いますが、驚かないでくださいね。緒方さんはここの一員ですし、僕としても隠し事はあまりしたくありませんから」
「は、はい」
隠し事はしたくない。そう言われただけでも、この幼馴染みだけでやっていた薬局の一員になれたようで嬉しい。
しかし、薬局で一体どんな突飛な話題を繰り広げようというのか。いや、そもそも篠原陽明自体が怪しいのだが、この点についても教えてくれるのだろうか。職業だって神主兼陰陽師というのも怪しいし、そんな人が薬剤師の法明を頼っているというのも怪しい。
まさか、合法ぎりぎりの薬でも調剤させようとしているのか。漢方薬には使い方を間違えれば毒になるものが数多くある。そういう点で利用されているのかもしれない。あくまで薬剤師が調合したとあれば、合法性は担保される。篠原はそれを狙っているのか。
「あの、本当に大丈夫ですからね」
どんどん険しい顔をする桂花に、法明は思わずそう念押しするのだった。
お昼時であることを気遣ってか、それとも今から怪しい依頼をするからか、陽明は和菓子を手土産に持ってやって来た。それは色とりどりのおはぎで、思わず四人は声を揃えて綺麗と感嘆を漏らしたほどだ。
「凄いだろ」
「ええ」
「なんか、意外ですね。おはぎなんて小豆ときなこと青のりがあればいいって感じなのかと思っていたのに」
「けっ、気障だな。格好つけたいだけだろ」
「篠原さんってインスタ映えとか気にするタイプですか」
そして感嘆の先に続いた法明、円、弓弦に桂花の感想が個性的で、陽明は思い切り苦笑している。そして、インスタはやっていないと、桂花の質問にだけ答えた。
「見た目が綺麗なものは大好きだけどね。わざわざ誰かにシェアしようとは思わないかな。SNSって面倒だし自分が満足できればそれでいいよ」
「へえ」
「何を格好つけてやがる。理由はただ一つ、陰陽師だもんな。不特定多数に見られるような写真なんて上げられないだろ。どんな呪いを仕掛けられるか解ったもんじゃない」
感心する桂花に向けて、嘘を吐かれているんだぞと念押ししてくる弓弦だ。本気で陽明のことが嫌いらしい。ついでに邪推した理由が恐ろしいんですけど。何、呪いって。
「まあまあ、人それぞれですよ。お茶を淹れますね」
ふとすると険悪な雰囲気になりそうな休憩室に、法明は今日のお茶を全員に振舞った。今日のお茶は僅かに苦みのある味わいで、甘いおはぎに合いそうな味だった。
隠さないと判断した法明に対し、弓弦は無遠慮に問い掛ける。その素早さに思わず桂花は弓弦の足を踏んでいた。
「いてっ」
「もう少し間合いを考えなさいよ」
「うるせえなあ。間合いもくそもないだろ。厄介事が舞い込もうとしているんだぞ。緊急かつ早急に止めなきゃ駄目だろ」
「あの、お二人ともそんな心配するような案件ではありませんから、どうぞ落ち着いてください」
「本当ですか」
「本当か」
桂花と弓弦のケンカを止めようとした法明だが、その二人から同じタイミングで嘘を吐くなと睨まれる羽目になる。法明は困ったような顔をしたが、心配かけているのは自分かと溜め息を吐く。
「詳しくは後で篠原さんが来た時にお話ししますよ。ともかく、危険なことではありません」
「ふうん」
一先ず隠し事はしないという言質が取れたことに安心したのか、弓弦はそれ以上の追及はしなかった。そして、入って来た患者の処方箋を受け取るために、調剤室を出て行ってしまう。しかし、残された桂花は納得できず法明を見てしまう。すると法明も困った顔をしたままだった。
「あの、本当に大丈夫ですか。変なことを頼まれているようでしたら、ガツンと言わないと駄目ですよ。優しい態度を見せるとつけあがる人っているんですから。善意のつもりが悪事に手を貸しているってこともあるんですからね」
「え、ええ。それは大丈夫ですし、篠原さんはそんな人じゃないですよ。それよりその、緒方さん。篠原さんのお話はかなり突飛な内容も出てくるかと思いますが、驚かないでくださいね。緒方さんはここの一員ですし、僕としても隠し事はあまりしたくありませんから」
「は、はい」
隠し事はしたくない。そう言われただけでも、この幼馴染みだけでやっていた薬局の一員になれたようで嬉しい。
しかし、薬局で一体どんな突飛な話題を繰り広げようというのか。いや、そもそも篠原陽明自体が怪しいのだが、この点についても教えてくれるのだろうか。職業だって神主兼陰陽師というのも怪しいし、そんな人が薬剤師の法明を頼っているというのも怪しい。
まさか、合法ぎりぎりの薬でも調剤させようとしているのか。漢方薬には使い方を間違えれば毒になるものが数多くある。そういう点で利用されているのかもしれない。あくまで薬剤師が調合したとあれば、合法性は担保される。篠原はそれを狙っているのか。
「あの、本当に大丈夫ですからね」
どんどん険しい顔をする桂花に、法明は思わずそう念押しするのだった。
お昼時であることを気遣ってか、それとも今から怪しい依頼をするからか、陽明は和菓子を手土産に持ってやって来た。それは色とりどりのおはぎで、思わず四人は声を揃えて綺麗と感嘆を漏らしたほどだ。
「凄いだろ」
「ええ」
「なんか、意外ですね。おはぎなんて小豆ときなこと青のりがあればいいって感じなのかと思っていたのに」
「けっ、気障だな。格好つけたいだけだろ」
「篠原さんってインスタ映えとか気にするタイプですか」
そして感嘆の先に続いた法明、円、弓弦に桂花の感想が個性的で、陽明は思い切り苦笑している。そして、インスタはやっていないと、桂花の質問にだけ答えた。
「見た目が綺麗なものは大好きだけどね。わざわざ誰かにシェアしようとは思わないかな。SNSって面倒だし自分が満足できればそれでいいよ」
「へえ」
「何を格好つけてやがる。理由はただ一つ、陰陽師だもんな。不特定多数に見られるような写真なんて上げられないだろ。どんな呪いを仕掛けられるか解ったもんじゃない」
感心する桂花に向けて、嘘を吐かれているんだぞと念押ししてくる弓弦だ。本気で陽明のことが嫌いらしい。ついでに邪推した理由が恐ろしいんですけど。何、呪いって。
「まあまあ、人それぞれですよ。お茶を淹れますね」
ふとすると険悪な雰囲気になりそうな休憩室に、法明は今日のお茶を全員に振舞った。今日のお茶は僅かに苦みのある味わいで、甘いおはぎに合いそうな味だった。
0
あなたにおすすめの小説
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
婚約破棄の代償
nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」
ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。
エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる