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第24話 結婚観論争勃発!?
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「ははっ。これは傑作だ」
固まる男たちを放置し、穂波はそう言うと大爆笑し始めた。その爆発的な笑い声で、全員のフリーズが解かれる。
「えっ? 傑作?」
「だってそうだろ? 路人、お前、一目惚れを論破できるか?」
どうしてと訊く暁良に、穂波はそんなことを路人に投げかける。
たしかに、論破は無理だ。一目惚れが科学的に証明されたなんて話は聞いたことがない。
「ふん。勘違いから来る妄想だ。それで結婚なんて、どうかしている」
「おい!」
あまりの言い分に、思わず止めに入ったのは暁良ではなく礼詞だった。これはこれで意外だ。
「どうしてだ? そんなもの、忘れてしまえばいいだろ? 丁度良く、結婚しなきゃとか思っていた。そういうことだろ? ますます俺である必要はない。改めて吟味すべきことだ。それに、結婚というのは他者を巻き込むものだぞ? 冷静な判断を求めるね」
「この偏屈者」
「お前には言われたくない」
路人の言い分も解らなくないが、にしても、絶対にこの妙に曲がった結婚観は穂波のせいだ。暁良はじどっと穂波を見たが、穂波は笑って楽しんでいるだけ。反省する様子は一切ない。
「じゃあ、お前は一目惚れを容認すると?」
「当たり前だろ。一般的な感覚だ」
そして当事者である穂乃花を放置して続く、一目惚れ論争。この二人、どこまで行っても意見が平行線になるタイプらしい。
「一般的? それがどうして解る。では訊くが、結婚の理由の第一位として、一目惚れの相手がいいなんて話があるのか?」
「ない。というか、そんな統計データ、誰が集めるんだ?」
「どこかやっているだろ? 結婚式場とか?」
「そう思うならば、自分で調べろ」
いや、何の言い争いだよ。
結局のところ、証拠を出せだの、データを示せだのいうのが科学者だ。数字になっていないものを信用させるのが難しい。
「大体な。今の世の中、結婚して子供を産むのにどれだけの時間、労力、そして金が掛かるか。それを算出して考えるべきだ。単にロボットの発達や人工知能で解決しない問題だろ? そういうのを、いつも政府との会議でやっているはずだが?」
路人が完全に論争モードに入ってしまった。これが路人の別の一面、いわゆる外面だ。相手を徹底的に理論でねじ伏せる。これが出来るから、大学側のフロントマンが彼なのである。と、暁良はつい最近知った。
「その一つの例として、お前と穂乃花さんでやればいいだろ? 実験だと思って付き合え」
「ああ? だったら尚更、誰でもよくなるだろ? お前がやれ」
あ、あれ? これってまさか。
暁良は二人のヒートアップするやり取りに、どきっとした。そして再び穂波の顔を見ると、にやりと笑い返される。ヤバい。ここもまた作戦だ。
「そ、それはお嬢様に失礼だろ? 彼女にも選ぶ権利がある」
「俺にもある」
しどろもどろの礼詞に対し、路人はどこまでも冷たい。こうなってくると、守ってやるつもりはゼロなのだ。反論するならば覚悟しろとなってくる。
「じゃあ、お前は穂乃花さんを一切好きにならないと?」
「ならないね。間違ってもならない。というか、付き合うだの何だの面倒だしね。さっきも言ったように、人生の時間はどう足掻いても有限だ。その間にどうして子作りなんてしなきゃならないんだ? 無駄だ。そんなもの、やりたい奴にやらせておけばいい。お前だって子どもが苦手だろ? 将来、欲しいのか?」
礼詞のちょっとした問いに対して、路人は畳み掛けるように訊く。
そこまで言いますか。そしてそこ、訊いちゃいますか、という状態だ。
「こ、子どもは、嫌いなわけじゃない。ただ、距離感が難しいというか」
「そうなのか?」
これは意外と、暁良は思わず横から口を出してしまった。てっきり、路人は子どもが好きで、礼詞は苦手なのだと思っていた。が、現実は逆らしい。
「う、うん。そうだ。非常に興味深いだろ? 子どもって。こちらが予測しない解答を、出すこともあったり。うん」
その辺は上手く説明できないけどと、礼詞は真面目に答える。どこまでも真面目な男なのだ。
「ああ。ひょっとしてその突飛な発想を真剣に考えるから、難しい顔になっているのか? 本当は向き合っているのか。だったらちゃんと、あの二人にも言ってやれよな。だから相手してほしくて、あんな事件を起こすんだぞ」
礼詞の顔が怖いせいだと、暁良はそこさえクリアすれば何の問題もないのだと知った。まったく、何かと人騒がせな奴である。
「それはそうだ。じゃなければ、山名先生が赤松に子どもの面倒を見させるわけない。同時に、俺に振らない理由も一緒。同じように遊んで、研究どころではなくなると、ちゃんと理解しているんだよ。すでに答えは提示されているようなもんだね」
路人は偉そうに、威張れないことを言ってくれる。
しかし、どちらが家庭的か、という問いに対する答えということだろう。なるほど、子育てという面から見れば、礼詞の方が適任となるわけだ。
「う、む。ん」
その言葉に、礼詞からは妙な呟きが漏れる。照れているらしい。しかしそれを表に出せないのも礼詞だ。常に能面。恥ずかしがりやなのかもしれない。
「だったら、赤松先生は私と付き合うことも可能ですか?」
「――」
そして、誰もが望んでいた(礼詞は除く)という展開に突入してしまった。いや、礼詞も最終的には納得していたのか。
「あの、その。色々と不器用ですが」
「ああ。赤松先生ならば心配ないですね。一色先生のライバルであり、しかも協力してこの国のテクノロジー社会の基礎を築かれた方だ。うん」
もじもじする礼詞に、路人が予想以上の変人と理解した尚春が畳み掛けて娘を説得しようとする。親も大変だ。
「そうですねえ。でも、私としては」
しかし、穂乃花はそれでも路人に未練があるらしい。
どうしてこの変人がモテるのか。大いなる謎だ。女性から見て、路人って魅力的なのだろうか。暁良には解らない。
「赤松と付き合って、本当に駄目だといならば、もう一度会ってやってもいい」
「――」
予想外の提案を、路人がした。それってどういう意味だと、暁良は頭の中がはてなマークで埋まる。それは他の男たちも同じようだ。しかし、女性二人は違ったらしい。
「なるほど。いい提案だ」
「解りました。赤松先生。まずはお付き合いいただけますか?」
「は、はい」
何だか解らないものの、一先ずすぐに結婚は回避されたらしい。ともかくその場は、路人の機転によって収束したのだった。
固まる男たちを放置し、穂波はそう言うと大爆笑し始めた。その爆発的な笑い声で、全員のフリーズが解かれる。
「えっ? 傑作?」
「だってそうだろ? 路人、お前、一目惚れを論破できるか?」
どうしてと訊く暁良に、穂波はそんなことを路人に投げかける。
たしかに、論破は無理だ。一目惚れが科学的に証明されたなんて話は聞いたことがない。
「ふん。勘違いから来る妄想だ。それで結婚なんて、どうかしている」
「おい!」
あまりの言い分に、思わず止めに入ったのは暁良ではなく礼詞だった。これはこれで意外だ。
「どうしてだ? そんなもの、忘れてしまえばいいだろ? 丁度良く、結婚しなきゃとか思っていた。そういうことだろ? ますます俺である必要はない。改めて吟味すべきことだ。それに、結婚というのは他者を巻き込むものだぞ? 冷静な判断を求めるね」
「この偏屈者」
「お前には言われたくない」
路人の言い分も解らなくないが、にしても、絶対にこの妙に曲がった結婚観は穂波のせいだ。暁良はじどっと穂波を見たが、穂波は笑って楽しんでいるだけ。反省する様子は一切ない。
「じゃあ、お前は一目惚れを容認すると?」
「当たり前だろ。一般的な感覚だ」
そして当事者である穂乃花を放置して続く、一目惚れ論争。この二人、どこまで行っても意見が平行線になるタイプらしい。
「一般的? それがどうして解る。では訊くが、結婚の理由の第一位として、一目惚れの相手がいいなんて話があるのか?」
「ない。というか、そんな統計データ、誰が集めるんだ?」
「どこかやっているだろ? 結婚式場とか?」
「そう思うならば、自分で調べろ」
いや、何の言い争いだよ。
結局のところ、証拠を出せだの、データを示せだのいうのが科学者だ。数字になっていないものを信用させるのが難しい。
「大体な。今の世の中、結婚して子供を産むのにどれだけの時間、労力、そして金が掛かるか。それを算出して考えるべきだ。単にロボットの発達や人工知能で解決しない問題だろ? そういうのを、いつも政府との会議でやっているはずだが?」
路人が完全に論争モードに入ってしまった。これが路人の別の一面、いわゆる外面だ。相手を徹底的に理論でねじ伏せる。これが出来るから、大学側のフロントマンが彼なのである。と、暁良はつい最近知った。
「その一つの例として、お前と穂乃花さんでやればいいだろ? 実験だと思って付き合え」
「ああ? だったら尚更、誰でもよくなるだろ? お前がやれ」
あ、あれ? これってまさか。
暁良は二人のヒートアップするやり取りに、どきっとした。そして再び穂波の顔を見ると、にやりと笑い返される。ヤバい。ここもまた作戦だ。
「そ、それはお嬢様に失礼だろ? 彼女にも選ぶ権利がある」
「俺にもある」
しどろもどろの礼詞に対し、路人はどこまでも冷たい。こうなってくると、守ってやるつもりはゼロなのだ。反論するならば覚悟しろとなってくる。
「じゃあ、お前は穂乃花さんを一切好きにならないと?」
「ならないね。間違ってもならない。というか、付き合うだの何だの面倒だしね。さっきも言ったように、人生の時間はどう足掻いても有限だ。その間にどうして子作りなんてしなきゃならないんだ? 無駄だ。そんなもの、やりたい奴にやらせておけばいい。お前だって子どもが苦手だろ? 将来、欲しいのか?」
礼詞のちょっとした問いに対して、路人は畳み掛けるように訊く。
そこまで言いますか。そしてそこ、訊いちゃいますか、という状態だ。
「こ、子どもは、嫌いなわけじゃない。ただ、距離感が難しいというか」
「そうなのか?」
これは意外と、暁良は思わず横から口を出してしまった。てっきり、路人は子どもが好きで、礼詞は苦手なのだと思っていた。が、現実は逆らしい。
「う、うん。そうだ。非常に興味深いだろ? 子どもって。こちらが予測しない解答を、出すこともあったり。うん」
その辺は上手く説明できないけどと、礼詞は真面目に答える。どこまでも真面目な男なのだ。
「ああ。ひょっとしてその突飛な発想を真剣に考えるから、難しい顔になっているのか? 本当は向き合っているのか。だったらちゃんと、あの二人にも言ってやれよな。だから相手してほしくて、あんな事件を起こすんだぞ」
礼詞の顔が怖いせいだと、暁良はそこさえクリアすれば何の問題もないのだと知った。まったく、何かと人騒がせな奴である。
「それはそうだ。じゃなければ、山名先生が赤松に子どもの面倒を見させるわけない。同時に、俺に振らない理由も一緒。同じように遊んで、研究どころではなくなると、ちゃんと理解しているんだよ。すでに答えは提示されているようなもんだね」
路人は偉そうに、威張れないことを言ってくれる。
しかし、どちらが家庭的か、という問いに対する答えということだろう。なるほど、子育てという面から見れば、礼詞の方が適任となるわけだ。
「う、む。ん」
その言葉に、礼詞からは妙な呟きが漏れる。照れているらしい。しかしそれを表に出せないのも礼詞だ。常に能面。恥ずかしがりやなのかもしれない。
「だったら、赤松先生は私と付き合うことも可能ですか?」
「――」
そして、誰もが望んでいた(礼詞は除く)という展開に突入してしまった。いや、礼詞も最終的には納得していたのか。
「あの、その。色々と不器用ですが」
「ああ。赤松先生ならば心配ないですね。一色先生のライバルであり、しかも協力してこの国のテクノロジー社会の基礎を築かれた方だ。うん」
もじもじする礼詞に、路人が予想以上の変人と理解した尚春が畳み掛けて娘を説得しようとする。親も大変だ。
「そうですねえ。でも、私としては」
しかし、穂乃花はそれでも路人に未練があるらしい。
どうしてこの変人がモテるのか。大いなる謎だ。女性から見て、路人って魅力的なのだろうか。暁良には解らない。
「赤松と付き合って、本当に駄目だといならば、もう一度会ってやってもいい」
「――」
予想外の提案を、路人がした。それってどういう意味だと、暁良は頭の中がはてなマークで埋まる。それは他の男たちも同じようだ。しかし、女性二人は違ったらしい。
「なるほど。いい提案だ」
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