僕と変人の交遊録―赤松礼詞は超偏屈科学者―

渋川宙

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第29話 犯人には特大パフェを奢らせよう

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「何か変だよな」
「そんなの、最初から解ってるよ」
 腕を組んで悩む暁良に対し、路人は何を解りきったことをと言う。いつものようにクマさんぬいぐるみを撫でながら、馬鹿だねと酷い。
「何が最初から解ってんだよ?」
「見合いが変だってことでしょ? 解りやすいよ」
「うぐっ」
 あっさりと言い当てられ、暁良は変な声を上げた。悔しい。
「そもそも、どうして俺? ってところからだよ。話が断れない山名先生のところに言ってるのも変。さらに赤松で手を打てってのにオッケーだし」
「いや、最後はお前のせいだから」
 お嬢様的にはお前がいいんだぞと、暁良は論点をずらそうとする路人を注意する。
「ううん。でも、どうして科学者と結婚なんだろうな」
「そりゃあ、政策を進めるのにちょうどいいからさ。つまり、科学者たちをどうにか手懐けたいんだよ」
 悩む暁良に、だから解り切ったことをと路人は酷い。
「え? どういうこと?」
「政治は面倒ってこと」
「――」
 それ、答えになってねえよと暁良は睨んだ。
 礼詞の懐石料理デートが成功して三日。
 路人と暁良はいつものように研究室の中だ。そこでコーヒーを飲みつつ休憩中である。
「でもさ。手懐けるならば尚の事、赤松の方がいいんじゃねえの」
「駄目。あいつは対外的な交渉に出て来ないから。でもまあ、俺とコンビを組んでいることは解っているから、まあいいかってなってきているんだよ。人間的にも、あっちの方がマシに見えるからね」
「自分で言うか」
 あまりにあっさりと自分よりマシと言う路人に、それでいいのかと思う暁良だ。事実だけど。
「ということで、そろそろ裏側を片付けないとなと思い始めている」
「はい?」
 急に裏側と言われてもと、暁良は呆れた。どうしてこう話がぽんぽんと飛ぶのだろう。
「解らないか? おかしいということは、イコールで裏側があるものだ」
「ほう」
 そういうものなのかと、暁良は首を傾げる。大体、大きなクマさんぬいぐるみを抱きしめる男の言うことだ。説得力が乏しい。
「まず、あのお嬢様、名前は何だったっけ?」
「覚えろよ、それくらい。吉岡穂乃花だよ」
 どうして俺が暗記していて、見合い相手だったお前が覚えていないんだと、暁良は絶叫する。
「まあまあ。その吉岡女史。彼女が結婚する気があるのは、まあ本物だろう」
「まあな。お前にあれこれ言われても引かず、しかも赤松とデートしているし」
 穂乃花に関して疑うところはないだろうと暁良も思う。何かと必死だしと、前回のデートを思い出して頷く。必死に礼詞の気を引き、フォローし、楽しく会話をしようと奮闘する。それは本気でなければ出来ないことだ。
「ということは、嗾けた人がいるわけだ。出来れば結婚してくれってね。科学者たちが力を付けると、あれこれ煩い。しかもこっちが理解できないのに色々と言ってくる。でも、社会的には科学者の作ったものがあると便利になって嬉しいって状況だからさ」
「ああ、うん」
 言っていることは正しいのだが、せめてこういう場面ではぬいぐるみを手放せないものか。暁良は頭が痛くなる。
「となると、怪しいのは吉岡パパだね。政治家でしょ」
「パパって。他の呼び方にしなさい」
「何で?」
「エンコ―っぽいからだよ」
 きょとんとした顔で訊くなと、暁良は脱力。本当にこの変人の相手は疲れる。
「エンコ―って何?」
 そして、やっぱりそれを知らないのなと、暁良は常識力のなさにも疲れてくる。ずっと大学で過ごす男には、そんな言葉、無縁だろう。
「援助交際の略だよ。女子高生とか女の子が金持っているオッサンをカモにしてあれこれするんだ。まっ、オッサンがいい思いをしているだけって説もある」
「ほう。犯罪だね」
「まあね」
 一体何の話をしているのやら。完全に脱線している。
「で、政治家の吉岡尚春に問題があるってか。どうして?」
「それを探るんじゃないか。お嬢様は赤松に任せるとして、向こうの人員も借りるか」
「はあ」
 一体何がどうなっているんだと、暁良は首を傾げる。が、路人はにやりと笑い、人の悪い顔をしていた。珍しい。
「本気で何かやる気だな」
「もっちろん。犯人には特大パフェを奢らせよう」
「そうだな」
 どこまでが本気なんだと、暁良は再び脱力した。が、どうやらお見合いは単純な話ではないらしい。これは、誰が企んだことなのだろう。謎が増えたのだった。
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