半妖姫は冥界の玉座に招かれる

渋川宙

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第50話 河童調査へ

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「ともかく、今から河童のところに行くぞ。きゅうりを盗まれたと警察に訴えられているんだ。迷惑掛けるなと説教しないといかん」
「い、今から」
「当たり前だろ。ほら、さっさと紅葉が用意した着物に着替えろ。その高校生姿じゃ王として格好が付かん」
「ええっ。現世にもあの格好で行くの?」
 あれってこの平安時代風な冥界では目立たないけど、現世だと目立つと鈴音は顔を顰める。これが卒業や入学シーズンならばまだ目立たないだろうが、残念ながら季節は五月。今はとっても目立つ。
「とやかく言うな。お前は早く半妖だという自覚を持て。人間の常識に囚われるな」
 そんな文句は健星の無茶な要求となって跳ね返ってきた。半妖と言われても、鈴音は自分が狐になった時の記憶はないし、今まで十七年間問題なく人間として生きてきたのだ。その常識を捨てろと言われても難しい。
「ん?」
 しかし、その常識が問題になってるんじゃなかったっけ。
「なんだ」
「その人間の常識に合わせるために、今回の選挙があるんでしょ。捨てちゃ駄目じゃん」
 鈴音の指摘に、健星はむすっとした顔になる。おおっ、これは珍しく口で勝てたってことか。やったね。
「さすがは鈴音様でございます」
 すぐにユキがパチパチと拍手。まったくもう、ユキの鈴音大好きには困ってしまうが、今は気持ちよかった。
「だとしても、王という自覚も必要だ。そう言うならば、さっさと妖怪側の常識も身につけろ」
 そしてよほどムカついたのか、健星はすぐに別の要求をしてくるのだった。



「ここなの? また学校に近い場所であったのね」
 さて、結局は振り袖袴姿となった鈴音は、河童が目撃されたのが学校の近くを流れる川だと知ってビックリしていた。というより、ここに本当に河童は棲めるのか、非常に疑問になる。
 というのも、川の両側はがっちりコンクリートで固められ、歩道があるのは三メートルは上だ。川の両端に一応は歩ける場所があるが、それは整備の人が歩く程度。ここからどうやってキュウリを盗んだり、相撲を取ったりするというのか。
「普段は別のところに棲んでいるんだろう。上流か海側かは解らんが、お前が次期王になるらしいと知って、この辺りで悪戯を繰り返しているんだ」
「はあ。やっぱり私のせいなんだ」
 妖怪がらみで何かが起こる度に自分のせい。本当に嫌になってくる。
「全員が全員、王の言うことを聞くなんてあり得ないからな。就任した後もこういう嫌がらせはある。仕方がないと割り切れ」
「そう言うけど」
「総てを救うのは無理だぞ。この間のような人間に被害が及ぶ場合もある。しかし、それを出来る限り減らすのが俺たちの役目だ」
 健星はそういう割り切りは必要だと真剣だ。それに鈴音はそうよねと頷く。しかも、減らすのは俺たちの役目って言い方がちょっと嬉しかった。だから、今は目の前の事件に集中しようと決める。
「ねえ。河童って職員室を荒らしたりするかな」
 そしてふと、これだけ近くで目撃されているのならば、犯人が同じということはないかと気づく。
「ないとは言い切れないが、河童のやり口ではないな。それに、河童が現われたのならば、職員室はびしょびしょだったはずだ」
「ううん。それは言ってなかったわね。職員室がズタズタだったって話だったな」
 全校集会での説明を思い出し、濡れていたという表現はなかったと鈴音は付け加える。まあ、詳しい部分は省略されているかもしれないし、先生たちは生徒の悪戯じゃないかと考えているみたいだけど。
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